無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
執筆期間15年のミステリ・ロマン大作『鈍色幻視行』の核となる小説、文庫化。「本格的にメタフィクションをやってみたい」という著者渾身の挑戦がここに結実・・・・・・! 遊郭「墜月荘」で暮らす「私」には、3人の母がいる。日がな鳥籠を眺める産みの母・和江。身の回りのことを教えてくれる育ての母・莢子。無表情で帳場に立つ名義上の母・文子。ある時、「私」は館に出入りする男たちの宴会に迷い込む。着流しの笹野、背広を着た子爵、軍服の久我原。なぜか彼らに近しさを感じる「私」。だがそれは、夥しい血が流れる惨劇の始まりで・・・・・・。謎多き作家「飯合梓」によって執筆された、幻の一冊。『鈍色幻視行』の登場人物たちの心を捉えて離さない、美しくも惨烈な幻想譚。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
遊郭「墜月荘」に暮らす「私」には、名前も、生年月日も、そして自分が男なのか女なのかさえ分からない。
三人の「母」に囲まれながら、「交流部」や「料理部」など、館の中で繰り広げられる異様でおぞましい出来事を目にし、経験していく「私」。その無垢ともいえる視線を通して描かれる人間の欲望や狂気、そして少しずつ揺れ動いていく感情が、何とも不気味で、それでいて美しい。
読み進めるほどに、「私はいったい何者なのか」という疑問が膨らんでいく。そして最後に明かされる、その正体――。ここで物語の景色が一変する。思わず「そういうことだったのか」と唸らされる衝撃の結末だった。
本作が『鈍色幻視行』の中に登場する「作中作」であり、断片のまま終わらせるには惜しいと感じた恩田陸さんが、一つの作品として完成させたものだというのも興味深い。実際、『鈍色幻視行』では、この『夜果つるところ』という小説そのものをめぐって、さまざまな人物が語り、解釈し、謎を深めていく。
『鈍色幻視行』を読んでから『夜果つるところ』へ進むのか、それとも私のように『夜果つるところ』を先に読むのか。どちらからでも楽しめる仕掛けになっているようだ。
期せずして後者となった今回は、まず「物語の中の物語」を旅したことになる。
さて、これから『鈍色幻視行』へ。
『夜果つるところ』で感じた違和感や謎が、今度はどのような形で浮かび上がってくるのだろうか。
恩田陸さんが仕掛けた、もう一つの「旅」の続きを、しばらく存分に楽しみたい。
Posted by ブクログ
『鈍色幻視行』の作中作として登場した『夜果つるところ』が、実際に一冊の作品として書籍化されたもの。
遊郭「墜月荘」で暮らす人々の日常や、そこを訪れるさまざまな人々との触れ合い、そして徐々に浮かび上がってくる惨劇を描いた作品です。
読んでいて強く感じたのは、非常に幻想的で、どこか夢の中を漂っているような作品だということでした。
登場人物たちは主人公を含めて本当の名前を明確に語られることがなく、人物そのものよりも、その人物が何を感じ、何を考えているのかという「内面」に重きが置かれています。そのため、物語の出来事を追いながら謎を解いていくというよりも、登場人物たちの感情や記憶、そして「墜月荘」という場所そのものが持つ空気を味わう作品なのだと思います。
ただ、個人的にはこの部分が少し難しく感じました。
私はどちらかというと、事件が起こり、そこから手掛かりを拾いながら真相へ迫っていくような本格ミステリーが好みなので、人物や出来事がかなり概念的・幻想的に描かれている本作は、正直なところ少し読みづらかったです。
また、『鈍色幻視行』を先に読んでいるため、本作で描かれる出来事の一部については、すでにある程度知っている状態で読んでしまったことも大きかったと思います。そのため、「この先どうなるのだろう」という驚きや、真相が明かされたときの衝撃はどうしても薄くなってしまいました。
一方で、『鈍色幻視行』を読んだときには断片的にしか知ることのできなかった「作中作」が、こうして一つの小説として実際に読めるという仕掛け自体は、とても面白いと思いました。ただ、やはり私自身は「物語の謎を解く」ことを期待して読むタイプなので、本作の魅力である幻想性や曖昧さを十分に楽しみきれなかった、というのが正直なところです。
作品としての雰囲気や独特の世界観は非常に印象に残りましたが、個人的な好みとしては『鈍色幻視行』のほうが楽しめました。
『鈍色幻視行』を読んだうえで、その作中作そのものを味わいたい人には面白い一冊だと思います。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。