風車と巨人

風車と巨人

小説・文芸
2,640円 (税込)

13pt

彼女は、真実を撮っているつもりだった。

「不老因子」の発見で脚光を浴びるがん研究者・嘉山宗弘。
彼を追う人気ドキュメンタリー番組「十一時の肖像」の撮影を始めた三田紗矢子は、やがて嘉山の成果の根幹を揺るがす研究不正疑惑に辿り着く。
否定する大学と告発する医師で証言は食い違う。
それでもカメラを回し続けるなかで、疑いは次第に“真実”の輪郭を帯びていく。
疑いを抱いたまま切り取られた世界は、どこまで現実なのか。

記録と虚構の境界が静かに崩れていく――。

【著者略歴】
岩井圭也 いわい・けいや
1987年生まれ、大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年『永遠についての証明』で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞してデビュー。多彩なジャンルの作品を発表しており、近著に『サバイブ!』『真珠配列』『あしたの肖像』『拳の声が聞こえるか』がある。

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風車と巨人 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    - 嘘も百回言えば、真実になる。


    「厄介なのは、本人にも噓をついている自覚がない場合だ。噓も百回言えば、真実になるんだよ。少なくとも当人にとってはな。」

    ✎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    テレビ局の下請け制作会社で主に報道系を担当する三田紗矢子。入社七年目にして 人気ドキュメンタリー番組『十一時の肖像』に自分の企画書が通る。

    三田が追うのは 母親が乳がんを患った時に見つけた、気鋭のがん研究者・嘉山宗弘教授。人間の老化を止め、がんの進行も抑制するとされる「不老因子」を発見し 脚光を浴びる嘉山教授の存在を広く知ってもらいたいと意気込む三田。

    しかし、密着取材を続けるうちに 教授の言葉に違和感を覚え始める。

    やがて、三田は「不老因子」の研究不正という噂にたどりつき…。

    不正が事実であれば 番組は放送できない。はじめは嘉山教授の疑惑を払拭しようと動き始めた三田だったが、 不正の信憑性が増すにつれ 三田の作る「作品」は姿を変えていく。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    岩井さんもインタビューで仰られていたように、「不老因子」は「STAP細胞はあります!」の事件が根底にあるそうです。

    誰が嘘をついている?
    それともみな真実を語っている?

    やばい!面白い!

    研究の不正を暴くストーリーのようにみえて
    次第に 三田の様子がおかしいことが気になり始めます…。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    「わたしは嘉山教授の不正の証拠を必ず見つける。だって、それが使命なのだから。」

    「そこに至るルートが多少ねじ曲がっていても、ゴールさえ正しければ、悪を絶すことができる。」

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    はぁぁ〜ずっと心臓がヒリヒリ ビリビリする読書でした。
    人が誤った方向に進んでいく様子を読んでいくってさ、ヒリヒリよね。 そしてバクバクでもあるよね。その過程が すごく丁寧に描かれていてね。流石です! どんどん読み進めちゃいます。

    で、タイトルの『風車と巨人』とは

    セルバンテスの古典名作『ドン・キホーテ』の有名な一節に由来しています。
    自分を正義の騎士だと思い込み、風車を巨人と勘違いして突撃していくドン・キホーテの姿は嘉山なのか、それとも…

    (Google AIより)

    あとね やっぱりね 人が判断を誤る時って その時の精神状態だな〜って改めて思った!
    過度なプレッシャーと睡眠不足。そう!睡眠不足!これ本当そう。初めての出産で全然眠れなくなっちゃった時に本気で我が子をどこかに預けようって旦那さんに相談してたこと思い出した。今では不可解な考え! ちゃんと食べてちゃんと寝ろ!!

    ってことを客観的に見てくれていた吉沢(突然の)。良い奴だったな。

    そしてそして、肝心のラストですが
    めっちゃ予想の斜め上!!
    これを面白いと捉えるかは あなた次第!!(あたりまえ)






    0
    2026年10月10日

    Posted by ブクログ

    共感できない好きになれない主人公と悪そうな相手役、内容も地味であまり興味がソソられなかった前半だったが、著者の筆力でジワジワと「この先どうなるの?」という興味で最後まで一気見でした。ラストも主人公の一本筋の通った解決策で納得。筆力で読ませる重厚感ある内容でした。

    0
    2026年09月21日

    Posted by ブクログ

    不老因子の発見者・嘉山宗弘のドキュメンタリー制作をする三田紗矢子が彼の研究不正について追いかける話

    自分だけが知っている真実が誰にも信じてもらえなかったとして
    それは妄想と何が違うんだろう

    主人公が手に取ったのは振るうほど嘘つきになる諸刃の剣

    私たちは普段
    画面の向こうで起きる炎上や告発
    悪意や暴走を
    誰が正しくて誰が嘘をついているのか
    分かりやすい物語にしてエンタメとして消費している

    その向こう側に本人にしか見えていない真実があるかもしれないのに

    真実のためについた嘘は真実そのものまで嘘にしてしまうんだろうか

    「あれは風車だ」と笑う人間の目には見えない巨人が
    本当はそこにいるのかもしれないのに

    多分この感想はドン・キホーテ側に寄りすぎている

    0
    2026年09月13日

    Posted by ブクログ

    P318で「アッ」と声が出てしまった。そして、そこからの着地点は予想もつかないものでした。狂気的なラストと感じました

    0
    2026年08月24日

    Posted by ブクログ

    カメラは嘘をつかない、が、編集は物語る。研究不正を追うドキュメンタリー制作の内側で、疑いが「真実」の顔をして立ち上がっていく過程が恐ろしい。証言は食い違い、確証はないまま、映像だけが説得力を帯びる怖さ。記録とは何か、編集とは何か。否定する大学と告発する医師、どちらを信じるかではなく、「信じたい方を選んでしまう」人間の性を突きつけられる。記録と虚構の境界は、崩れるのではなく、最初からなかったのかもしれない。

    0
    2026年08月17日

    Posted by ブクログ

    がん研究の教授の不正疑惑と、彼を追うドキュメンタリー番組制作者。
    自分の信じることが正義なのか、
    正義のためなら何をしてもいいのか、
    不正を正当化してでも伝えたいこととは‥

    2人の、何かに取り憑かれたかのような執念。
    自分の正しさを疑わず、正当化し続ける姿に引き込まれました。

    普段からネットニュースやテレビの番組などでの視聴者を煽るような書き方、印象を誘導するような番組や記事に違和感を感じることがありました。
    その違和感の正体が少し見えた気がする‥
    きっと、こういうことは実際にあるんだろうなと思わせるストーリーでした。

    0
    2026年08月12日

    Posted by ブクログ

    真実を追求する重さ
    嘘が必要になる(と思い込む)瞬間
    目的のためにはなりふり構わない感じ
    狂気じみていてゾワゾワした。

    医療業界にいるものとしては過去の捏造事件のことも頭をよぎり、誠実に実験した結果を受け止めることの重さを感じている
    報道業界のことはわからないけど
    モノになるならないは「そこにある真実」よりも「作り方による」んだろうか?と想像をすすめてしてしまう

    0
    2026年09月21日

    Posted by ブクログ

    著者作品、久しぶりのヒット。
    新刊が続いていたが、なんだか最近ピンとこなかったので(私だけ?)

    究極の真実とはなにか・・・いろいろな社会問題を秘めた壮大な人間の心の奥底を見た気がした。
    同じ感覚をもつ正義<信念は、共鳴するのか。

    小説はエンディンクを迎えたが、どんな先が待っているのか、現実世界を想像するのは難しい。

    0
    2026年09月07日

    Posted by ブクログ

    医学分野での研究不正疑惑を暴くというあらすじに飛びついた感じで手にしたものの、私の予想とはかけ離れた着地点で驚き!

    本のテーマから、STAP細胞とその研究者をイメージした人が多いようだけれど、私はまた別の研究者のイメージだった。(誰とはいわないけど)

    近年の様々な社会現象から医学研究そのものが、科学ではないな…と感じている私にとって、論文というものはやはりあてにならないシロモノだなと実感してしまった。
    論文にさえしてしまえば、再現可能かどうかも問われないなんてなんでもありじゃないかと思う。

    岩井圭也さんがそのあたりを見事に暴いてくれたのはさすが!

    嘉山教授も三田も真実を追究したり証明することに夢中になりすぎて、何が真実か分からなくなってしまったのだろうけれど、こういうことは少なくないはず。
    嘘がよくないことは当たり前だけど、大切なものを守るために時と場合によって人は嘘を使いこなして生きているわけで…
    その嘘の重大性も大切なものの重大性も人によって受け止め方は様々なのだ。

    研究者が夢を追いかけることは素晴らしいし、始めは世界を救うためにと思って研究するのだろう。けれど、きっと様々なしがらみで本来の意思が失われたり歪曲してしまうことは少なくないはず。
    お金や名誉といったものに縛られずに研究できればよいのだろうけれど、なかなかそうはいかない。

    医学というものが、こんなに崩れやすい論文を元に人の生命を握っている…
    みんなもっと気づけばいいのに…と改めて思う読書でした。

    0
    2026年09月04日

    Posted by ブクログ

    O保方H子さんの「STAP」細胞はあります」を連想。電気泳動画像の切り出しに博士論文との一致、再現不可能。でも主張を取り下げない限り「不老因子は存在するんです」パロディか?ドン・キホーテを愚かと言えない自分なりの真実問題と学会、象牙の塔の歪み。あの時の早大の対応もひどかった…。ここまではドクター岩井さんらしいが、違和感を感じたのはメディアの捉え方。ドキュメンタリーは報道以上に事実に忠実。一度でも証拠捏造や“演出”の甘い誘惑に負けた輩に仕事回す訳ないし、作品?を仕上げられるとも思えない。

    0
    2026年08月28日

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