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「ここも一応、東京なんだがな」と言われてしまう“まほろ市”は、東京のはずれの大きな町だ。まほろ駅前で、ひとり便利屋を営む多田啓介のもとに、高校の同級生・行天春彦が転がりこんだ。高校時代、教室でただ1回しか口を開かなかった、ひょろ長い変人だ。ペットあずかりに子どもの塾の送迎、納屋の整理…ありふれた依頼なのに、行天が来てからは、やたらきな臭い状況に追い込まれるハメに。さて、本日のご依頼は? 多田・行天の魅力が全開の、第135回直木賞受賞作。
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Posted by ブクログ
「あんたはきっと来年忙しくなる」 「旅をしたり、泣いたり笑ったりさ」 「とてもとても遠い場所。自分の心の中ぐらい遠い」 まほろ駅前の便利屋の多田が依頼を受けて「息子」として見舞いに行った曽根田のおばあちゃんの予言だ。 新年早々、多田は子犬を預りながら、市バスが間引き運転をしていないか監視をするという...続きを読む仕事をしていた。ふと気付くと子犬がいない。と、バス停のベンチに座っている男の膝に子犬は抱かれていた。 「お前、多田だろ」 その男は高校時代の同級生、行天だった。小指の傷で分かった。高校の工芸の時間、裁断機を使っていたとき、同級生がふざけていて、小指がスパッと飛んだ時の傷跡である。行天はその時すぐに拾ってくっつけたので、くっついてはいるが、いつまでも生々しい傷跡を残していた。 行天は小指が飛んだ時に「痛い」と言った以外は、高校時代、全く言葉を発しなかった。 だから、行天は高校時代、多田だけでなく、誰とも友達ではなかったのだが、何十年ぶりかであったその夜、自分から話しかけてきたのだ。 「あんた、今何の仕事してんの?なあなあ」とちゃらけた感じで。 真冬なのに、素足にサンダル。「今晩、多田の事務所に泊めてくれ」と言う。 二人ともずっとまほろ市にいたのに、高校卒業後会わなかった。行天は多田の予想に反して結婚歴があり、子供も一人いるということだった。多田は順調に幸せな人生を歩んでいるという行天の予想に反して、離婚して子供はいなかった。そして、大学を卒業して順調に就職したにもかかわらず、今は便利屋をしていた。行天は今は家族はおらず、帰るところも無いようだった。 そのまま行天は多田の事務所に居候を続け、たいして役に立たない従業員として働いた。 まほろ市は東京の町田市がモデルになっているそうである。 東京か神奈川かどっちつかずの町。夜はヤンキーであるれる町。東京都南西部最大の住宅街、歓楽街、電気街、書店街、学生街。スーパーもデパートも商店街も映画館もなんでも揃い、福祉と介護制度が充実している。まほろ市民として生まれた者は、なかなかまほろ市から出て行かず、一度出て行ってもまた帰ってくる割合が高いそうだ。 そんな、まほろ市の「便利屋」多田のところには、さまざまな依頼がくる。大抵は自分でやれないことはないのに人にやってもらいたい依頼。 依頼者の代わりに動物を預かったり、探し物をしたり、家族の送迎をしたり、物置の片付けをしたり、人を匿ったり…。 「便利屋」の仕事を通して、様々な人間模様が見えてくる。一見「教育ママ」でありながら子供に無関心な親。その結果、知らぬ間に闇バイトに巻き込まれている子供。DV、風俗、暴力…。 多田も行天も心に深い傷を負っている。そのため淡々としているが、実は傷ついた分、誰かを愛そうと無意識のうちにしているのが分かる。だから二人の行動は滑稽だが暖かい。 「旅に出るよ」と予言があった割には、「まほろ市」の中から出ず、まほろ市の中を深く、そして人の人生の過去を深く旅する小説だった。
ゆるーい雰囲気のお話をのんびり読みたいと思って手に取ったので、いろいろとちょうど良かったです。登場する人物達は、いちいち個性的で愛着が湧きました。ゆるーい中にもシリアスな場面が適度に織り込まれていて、私好み。このコンビいいですよね。ずっと見ていたくなる魅力があります。
自分の子どもが死んじゃって妻とも別れるとこになったらどんな気分でどんな生活を送るかなと考えた。けどまったく想像がつかない。今毎日見てる笑顔とか毎日聞かされているしょうもない話とか小言とかから、ほぼ意識していないけど気持ちの潤いをもらっているよなぁと思った。やはり失うのは嫌だ。放っておいてほしいと思う...続きを読むことは頻繁にあるけど、一人になったらかなり寂しいと思う。 その一方で、万が一そんな悲しい出来事を経て一人になったとしたら、その経験は自分を強く優しい人にしてくれるかもしれないとも思った。 「舟を編む」以来、三浦しをんを読むのは二作目だけど、この人の書くものは味わい深くて面白い。「舟を編む」とはちょっと違う雰囲気で意外だった。この人の頭の中どうなってんだと思った。
松田龍平、翔太兄弟で深夜ドラマで昔、放送されていたそうですが、私自身、ドラマは観たことございません。ですが、小説を読んでいくうちに、2人のやり取りが浮かび大変笑いをいただきました。 初めは、マイナスとマイナスの関係で反発する2人が、一つ一つの案件解決する度に、引き合う感じが素敵です。そして、笑いもあ...続きを読むり!読む場所を考えなければ、ニヤけてしまいます。 続編もあるので、続けて読みたいと思います。
数年前から町田に事務所を置いていて、通えば通うほど町田良いなあと感じているこのタイミングでまほろ駅前を投入!ローカル補正も入って大変面白かった。三浦しをんはめちゃくちゃうまいなあ。多田も行天も過去に負った傷を抱えてってキャラ設定で個人的にはあまり好きな造形では無いんだけど、なんと愛すべき二人だろう。...続きを読む文章も軽妙なのに感じ入る部分も多くてとても良かった。永遠にこいつらの話を読んでいたい。自分が週に何日も足を運んでだんだん好きになってる街がモチーフだと思うと星5つにせざるを得ない。とても良かった。
このゆるい感じというかちょっと社会からずれてる人達の話はリアルでとても好きな雰囲気の作品。 多田と行天の相性も良く、会話から行動まで違和感なく読めるし、なんだかんだお互いを思いやってて、いいコンビだなと思う。ドラマ化した瑛太と松田龍平もぴったりだったと思うし、第二弾も面白そう。
映画が大大大好き! 早朝に目が覚めてしまいだるそうに商店街のコンビニへ煙草を買いに来た多田に向かってニヤニヤしながら「お!多田ちゃ〜んw朝帰り〜?」って話し掛ける変なまほろ市民の役やりたい。 そして多田から「誰だあいつ」って思われたい。 原作も超面白かった!多田の行天への扱い(印象?)は原作の方が...続きを読む厳しいw 映画では知ることのなかった行天のさりげない気遣いに萌え死にそうやったし、星さんの意外な一面も知れて良かった。 多田も行天も人と生きていくこと、幸せになることを恐れないでほしい。
まほろ駅前多田便利軒
過去に悲しみを抱える二人のおじさんが一緒に住んだり働いたりする話です。 ちぐはぐなバディものでもあり、寄せ集めの家族のような雰囲気もあり、とにかく二人が穏やかに生きられると良いなと思いました。
三浦しおんさん、いいです。 軽快な展開、魅力的な人物たち。 ちょっと劇画タッチすぎるかなという場面もありますが。 爽やかな読後感です。
非常にわかりやすく小気味のいい文章でとても読みやすかった。話もおもしろい。登場人物は少なくはないけれども、性格や価値観などをもとにしっかりと書き分けられてるから、「あれこれ誰だっけ」とならなかった。 行天の暗い過去に触れつつも、多田の救済がメインとなった1作という感じかな。本当にそんな経験をしたん...続きを読むだろうかと思えるくらい、心理描写が丁寧で、読みながらも想像が掻き立てられて、終盤の多田の告白と行天の台詞にはグッとくるものがあった。
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三浦しをん
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