山岡淳一郎の作品一覧
「山岡淳一郎」の「生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて」「開成高校野球部の「弱くても勝つ」方法 限られた条件で最大の効果を出す非常識な考え方」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
テレビで中村哲医師が一介の医師なのに遠く離れたアフガニスタンの荒涼とした砂漠地帯にマルワリード用水路を日本のペシャワール会からの資金援助を糧に完成し、元の穀倉地帯であった大地に緑を再生しながら、凶弾に倒れたことを知り、もっと詳しく知りたいと本書を手にしました。
中村氏の祖父玉井金五郎が荒くれ者の沖仲士の待遇改善に玉井組を率いたことや祖母は姐さんと沖仲士から慕われた女丈夫、叔父に「麦と兵隊」を書いた火野葦平がいて、父親は共産党員として労働運動の経歴があり、その祖母の説教が「弱者は率先してかばうべき、職業に貴賤がない、どんな小さな生き物でも尊ぶべき」と中村哲がその信条やこの血筋、精神を引き継いでいるんだと納得しました。
らい病や現地の治療に携わるも住民の幸福には水と食料を現地人の力で水路を築き、それを維持し、拡大することであり、金やモノをばら撒く復興支援ではないと自らも一人の労働者として働く生き様は人を導く宗教を超越した神の心だと感じ入りました。
人々が飢えることなく生活できる基盤があれば、上に立つ人の変な思惑がなければ、戦争は無くなる、少なくとももっと減るのではないかと思います。
中村哲に関わる知らない事実をたくさん知りることが出来た貴重な本でした。
Posted by ブクログ
【炎と水】 山岡 淳一郎 著
本書は、著者による現地や関係者へのインタビューをもとに、外部から中村哲を浮かび上がらせたノンフィクションです。中村哲の考え・活動に加え、当時の経済・政治動向、関係者の経歴や証言などが多数盛り込まれ、多角的に見ることができます。
医療から井戸掘り、そしてクナール川の灌漑活動と、後半に向けて盛り上がってきます。クナール川の水をガンペリ砂漠に引き込み、人口は3万人から15万人に増え、ここでとれる食料は今や65万人の生活を支えるに至ります。因みに、並行して見たドキュメンタリー映画「良心の実弾~医師・中村哲が遺したもの」では、このビフォー・アフターが映し出されますがこれは圧巻。さらに、「百鬼夜行の街」で身の危険を感じながら事業に邁進したにも拘らず、凶弾に倒れる本書の最終章も圧巻です。
中村哲は、村民が意見を出し合いながら長老が差配する「民主的な」現地事情をわきまえずに多くの混乱を生じさせる「三つのU(USA、UK、UN)が嫌い」だったと言います。一方、JICA理事長だった緒方貞子とは意見を戦わせる相手ながら、JICAとの共同事業は良好で、国ごとに異なる状況に合わせる重要性を知らされました。
最終章では、日本に戻った元メンバーが、「こんなに水と緑があふれた国ってないですよ」と呟きますが、ここまで読むと納得できます。また、ガンペリ砂漠の灌漑工事には、江戸時代に構築された中村哲の地元・山田堰を参考にしたそうですが、中村哲の事績のみならず、先人の知恵や日本とは異なる現地事情など、さまざまに考えさせられた一冊です。