茂木健の作品一覧
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Posted by ブクログ
ジュリアナ。
その町は、望むものすべてを与えてくれる。
たった100ドルで購入できる豪邸。
美しく整備された街並み。
いつも幸せそうで、優しい住人たち。
しかしこの地には、ある秘密が隠されていたのだ……
『ゴシックタウン』エミリー・カーペンター
うぉぉぉ、こういう本大好物なんだよ……!
日本では因習にまみれた村の小説ってたくさんあるけれど、
海外を舞台にした作品は、それほど多くは思い浮かばない。
でも昔から、この手の洋画は山ほど観てきた。
『ヴィレッジ』『ギャザリング』『サイレント・ヒル』。
そして何と言っても、アリ・アスター監督の『ミッドサマー』。
(大好きな因習トラウマ級映画だ……)
しかもこの『ゴシックタウン』は、
シャーリイ・ジャクスンの系譜に連なるゴシックホラー。
まさにジャクスンの『くじ』を愛してやまない私には、
読まないという選択肢がない作品だった。
✧
主人公の女性ビリーが、まずとてもかっこいいのだ。
ニューヨークで一流レストランを経営していたシェフ。
心理カウンセラーの優しい夫ピーターと娘メレディス、
そして猫のラムジー。
(あらすじでなぜ「猫」が出てくるのか。
それは読み進めるうちに、徐々にわかることになる……)
コロナ禍でレストランを閉業したビリーは、
しばらく専業主婦として暮らしていたものの、
ある一通のオファーを受け、家族でジュリアナに移住する。
✧
新しい土地で新たなレストランを開業し、
最初こそ順調すぎるほどの滑り出し……だったのですが、
徐々に不穏な出来事や、小さな違和感が目立つようになる。
常に誰かに見られている感覚。
いくら探しても見つからない、蓋のない井戸。
毎夜家族が見る不気味な悪夢。
そして、徐々に夫と猫の挙動がおかしくなり始めるのだ……
合間合間にジュリアナの隠された歴史が挟まれるので、
読者は今後起こるであろう悲劇をうっすら予感してしまう。
それでも、親切すぎる住人たちの誰が黒幕なのかわからず、
最後まで嫌ぁぁな空気感が続く。
この雰囲気、めっっちゃ好きです。
テレビシリーズ化も進んでいるとのことで楽しみ。
Posted by ブクログ
舞台は1954年のアメリカ。朝鮮戦争から帰ってきた黒人兵アティカス・ターナーは姿を消した父を追って伯父ジョージと幼馴染レティーシャと共に謎めいた都市アーダムに向かう。父は白人の若者と行動を共にしていたらしい。黒人差別がまだ激しかった時代に危ない目に遭いながら漸く辿り着いたアーダムで彼らは魔術師ブレイスホワイトが創設した秘密結社のディナーに招待される。アティカスはそこで自分が秘密結社にとって特別な存在であることを知る。
話は各章ごとに魔術をもって支配しようとするブレイスホワイトたちの争いに関わる主役が変わる。アティカスだけでなく父のモントローズ、伯父のジョージ、その妻ヒッポリタ、息子のホレス、幼馴染のレティーシャ、その姉ルビー。そして彼らが関わる事件は幽霊屋敷、悪魔人形、SF的異世界、白人女性になる変身薬などそれぞれに面白い。魔術に恐れ、また魅力に魅せられながら秘密結社の歪んだ権力闘争を行う白人たちと最終章でいよいよ戦う。これは魔法冒険ファンタジー小説である。
アティカスたちが魔法を自由に操るわけではない。
話のひとつひとつがホラーめいた恐怖感はまったくない。その意味ではハリーポッターレベルである。ドキドキするのは彼らが白人の差別意識に遭遇した時にリンチされるんじゃないかという恐怖感くらいだ。
なぜラヴクラフトカントリーという題名なのか。アーダムという街の名前や各章のタイトルはラヴクラフト作品のオマージュになっているが、クトゥルフの神々によるコズミックホラーの影は一切ない。
あとがきによれば、人種差別的考えを持っていたラヴクラフト=人種偏見という意味で使われているようだ。つまりこの題名は「人種偏見の国」という意味なのだ。特にアメリカでは黒人差別の時代に自由を求めて白人と闘うヒーロー、ヒロインの小説が今世紀に入って多く出版されているが、日本人の私にはどうしても他人事になる。それでも魔術やSF的な要素が入っているから黒人差別の背景を度外視しても面白いのだといえる。
Posted by ブクログ
〈「わたしの話はここで終わります。わたしは地球に帰ってきました。ふり返ってみれば、わたしの人生に語るべきものなどありません。わたしはなにも生み出さなかったし、なにも残していないのですから。それでもわたしは、まだなにかやれるような気がしました。そこで、花を一輪だけ持ってあの砂漠に戻り、穴を掘りはじめたのです」〉
戦争の後について、ロボットが語り出すシーンが特に好きでした。戦闘用のロボットはそこで何を見たのか。色彩豊かな作り込まれた遠い未来を背景にして綴られる、美しい愛の寓話。遠く、自分のいる場所を求める少年の冒険譚としても楽しむことができました。その世界を私の拙い脳味噌が、しっかりと辿れることができるのか分からないのですが、読み終わった時、愛と想像力をもっと素直に信じてみたくなるような余韻がありました。短い物語ですが、充足感のある物語でした。