読書会のため、名前だけは知っている名作を読んだ。やっぱり現在まで残るだけのことはある。面白かった!!
『第一部』
名前はフィリップ・ピリップなんだけど、ピップということになった。幼く死んだ五人の兄がいたらしく、両親が死んで20歳年上の姉の「手で」育てられた。と言っても姉は支配するのが好きでいばり屋でピップはろくな者にならない駄目人間扱いしてきたけど。
姉の夫のジョー・ガージェリーは鍛冶屋で善人。お母さんがお父さんに酷い目に合わされたから、自分の家庭では反対が良いんだって。だから妻に支配されているこの家庭を他からのように思っている。
ヒップが7歳の時、怪しい男に捕まった。「家から食べ物とヤスリを持って来い。持ってこないと特別な力でお前を呪い殺す」と言われて本気にして、夜中に怖い怖いお姉さんの台所から食べ物を、ジョーの作業所からヤスリをくすねて持っていった。
翌日、男は脱走兵だって分かった。ピップは二人の脱走兵が捕まる場に居合わせて、自分が密告したんじゃないよ!という必死の合図を送った。男は何を察したのか「そういえば、昨夜鍛冶屋の家に忍び込んで食べ物をくすねたぜ」と言った。
数年後、町に住む大金持ち引きこもり老嬢ミス・ハヴィシャムから退屈しのぎの相手として屋敷に呼ばれた。扉を開けたのは、ミス・ハヴィシャムの養女で、ヒップをとってもとっても見下すエステラという美少女。彼女はヒップの階級、手、服装、発音をすごくすごく馬鹿にする。するとヒップはそれまで満足していた鍛冶屋暮らしが嫌になってきた。ああ、教育を受けたいなあ。エステラと結婚できる紳士になりたいなあ。
ミス・ハヴィシャムは擦り切れたウェディングドレスを着続け、屋敷の時計はすべて9時20分で止められ、居間には虫に食い尽くされたウェディングケーキが置いたままになっている。
あとになって明かされるんだけど、高慢に育ったミス・ハヴィシャムには、母親違いの弟と憎しみ合い、その弟と組んだ結婚詐欺師に騙されたという事情がありました。
ピップはしばらくミス・ハヴィシャムの屋敷を訪れていたが、ジョーの従弟(鍛冶屋の奉公働きで、だいたい14歳から21歳の7年契約)になれる年齢になると、ミス・ハヴィシャムは従弟契約金(このあたりよくわからない)を与えて「これっきりだよ」と言う。
以前はあれほどジョーの弟子になりたかったのに、ミス・ハヴィシャムの屋敷、美少女エステラを知ってしまったら、鍛冶屋職人になんてなりたくなくなっていた。
4〜5年後、姉のガージェリー夫人が何者かに襲われて寝たきりになってしまう。ヒップは現場に残された凶器が、数年前に食べ物を与えた脱走兵がヤスリで削り取った足かせではないかと思う。すっかり性格も穏やかになったガージェリー夫人だが、発音にも支障が出て意思の疎通も図れない。そんな折にちょうどピップと同じ年齢で、身寄りを亡くした少女ビディがやってきた。ビディは以前初めてピップに文字を教えた相手で、遠縁の老婦人の世話をしていたので、ガージェリー夫人の世話も引き受けた。
ある日、弁護士のジャガーズ氏が訪ねてきて告げる。「ピップ少年に大いなる遺産を渡そうとする人物がいる。条件は、決してその相手の身元を探らないことと、上流階級にふさわしい教育を受けること、そしてずっとピップと名乗ること」
ピップは大喜びで受諾する。
ジャガーズ弁護士はジョーにも手付金を渡そうとするが、善人の彼は拒否した。ピップは嬉しく思うと同時に、ジョーのあまりの無学さを恥ずかしくも思うのだった。
この遺産の持ち主は誰だろう?候補①は脱走犯が社会的成功し自分と同じような境遇の少年を引き上げようとした。候補②はミス・ハヴィシャム。
ピップは断然候補②だと確信して、自分は気に入られて、エステラとも結婚させてくれるんだ!と有頂天に。
ロンドンに旅立つ前に身支度を整えると、今までヒップを「役立たずで恩知らずでバカで将来ろくな者にならない」と扱っていた人々が平身低頭。ヒップは新調したスーツでミス・ハヴィシャムに挨拶に行く。だがエステラはレディになるためにどこかで教育を受けているという。
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下級階級の少年が夢の立身出世物語か!文章は軽いというかコミカルな感じ。
登場人物はそれぞれが特徴立っている。ジョーはとことん無学な善人、ジョーの妻(ピップの姉)は田舎のいばりんぼ、カージェリー夫人を訪れるパンプルチョーク氏やウォプスル氏は田舎だけで通じる地位にいて弱気をくじき強きを助け、ジョーの職人オーリックは田舎のいばりんぼ職人、ビディは田舎のいい子。
ミス・ハヴィシャムの暮らしは怪奇なんだけど、なんだかコメディでさえある。本人も実は楽しんでないか??(本人は楽しんでいないのは分かるけど、文章でそんな感じがしちゃう)エステラは徹底的に高慢。
簡単に、大金持ちになる道がひらけたようだけど、階級社会でこんな夢のような一発逆転もあったのか、というか、こんな一発逆転じゃないと乗り越えられない階級差があったのだろうなあ。
『第二部』
ロンドンに行ったピップの新生活で、新登場人物紹介みたいな記載が続く。
弁護士ジャガーズは依頼人を右!左!と捌いて偽装もどんとこい、人間を軽く見ている感じ。
中年事務員ウェミックは、事務所では面白味もないのだが、犯罪記念品コレクションしたり、自宅は自分の手でこじんまりした小さい屋敷に庭園を整え、仕事と個人を完全に別けているなかなか面白い・笑
ピップが勉学や礼儀作法を教わることになったのは、ミス・ハヴィシャムの遠縁のポケット氏。まず顔を合わせたのは、ポケット氏の息子で会計士見習いのハーバード。実は昔ミス・ハヴィシャムの屋敷でボクシングごっこをしたことがあって二人は意気投合。ハーバードは「ぼくはあの時自分がミス・ハヴィシャムのお気に入りになってエステラと結婚できるかと思っていたんだけど駄目だったよ。君は幸運を掴んだんだね」と言う。ますます謎の後見人はミス・ハビシャムだと確信するピップ。
ええーそうかなあ、あの老嬢は他人のこと眼中になさそうだよ。
ハーバードはピップを「君は鍛冶屋だからヘンデルと呼ぶよ」という。…なぜ渾名を?ピップでいいじゃん。あと「遺産を受け取るのはピップと名乗ること」なんだけど大丈夫なのか?
ピップはポケット氏の屋敷に下宿することに。彼は子沢山で、ポケット夫人の祖父だか父だかが名声を築いたらしく、家でもそのように振る舞っている。ポケット氏の屋敷に下宿ししているのは、不機嫌・愚鈍・見栄っ張りお坊ちゃんのドラムルと、母の過保護で教育が遅れたスタートップ。
とにかく出てくる人物人物が特徴際立っているので、第二部の最初の頃は紹介エピソードみたいな感じ。
そしてこの物語はピップが昔を思い出して書いている形式で、「羽振りがよかった頃は節操のない無駄遣いをしまくったもんだ」と語る。どうやら「大いなる遺産」はピップの元には定着しなかったらしい。
そんな無駄遣いとしてハーバードの事務所にも別宅を作り意味のない贅沢な家具に、珍妙な従卒を雇って成金丸出し。
このピップのいい気になる性格は、第一部から見受けられたし、ジャガーズ弁護士は最初から「急に大金を手に入れたらきっと大失敗するけれど、別に私には関係ないし?」と言い伝えているし、ヒップの弱点として「無駄遣い、ハーバードに兄貴風を吹かせる、将来手にする莫大な財産を自慢する」と看破される。
そんなある日、鍛冶屋の兄貴ジョー・カージェリーが訪ねてくるという知らせが。ピップはすでに上流階級の一員のつもりだから、あれほど仲良くあれほど気を使ってくれてあれほど良い人のジョーを「田舎ものと自分が一緒に歩いているところを見られたら恥ずかしい」などと考えるようになっている。自分が敬意を持っているスタートアップとか、ハーバードとかなら構わない。しかし不機嫌・いばりんぼ・不誠実なドラムルにだけは見られたくない!
<人生を通じて私達の最悪の弱さや卑しさは、もっとも軽蔑する人がいることで表に出てくる。(P373)>
ピップの部屋にやってきたジョーは、ピップを「さようです、サー」と敬語で話す。これがジョーの「けじめ」なのだ。自分の願いはピップの役に立つこと、ピップが幸せになること。こうして紳士となった(成金衣装成金インテリアなのが記述で分かるんだけど)なら、自分とピップには区切りが必要だ。もし今日の訪問で不都合があったのなら、すべて自分の責任だ。なぜなら自分はロンドンにいられる人間ではない。自分は鍛冶屋の服を着て、鍛冶屋や、泥んこの土地にいなければいけない。今度自分たちが会うとしたら、ピップが鍛冶屋を覗く時だ。
そしてそうまでして訪ねてきたのは、大事な伝言を預かっているからだという。それは「ミス・ハヴィシャムの屋敷にエステラが戻り、ピップに会いたいと言っている」ことだった。それを伝えるために、この場違いな場にやってきたのだ。
そして帰っていった。
ピップは大急ぎでミス・ハヴィシャムの屋敷に向かう!ジョーの鍛冶屋には顔を出さない!なんてヤツ!他の人たちは「自分こそあのピップの保護者、友人」などと嘘をついているっていうのに。
久しぶりに会ったエステラはとてもとても美しく上品なレディになっていた。ピップは、自分が彼女と結婚させてもらえると思い込んでいるので有頂天。
ミス・ハヴィシャムはピップに「あの子を愛して、愛して、愛しなさい!あなたを傷つけたとしても、あなたの心を引き裂いても愛しなさい!本物の愛とは、やみくもな献身、無条件の自己卑下、完全な服従、全て逆らってでも相手にすがり、深い傷を負って、全身全霊を捧げなさい!」と言い渡す。