プロフィール

  • 作者名:伊藤計劃(イトウケイカク)
  • 性別:男性
  • 生年月日:1974年10月14日
  • 出身地:日本 / 東京都
  • 職業:作家

武蔵野美術大学美術学部映像科卒。『虐殺器官』でデビュー。2009年『ハーモニー』で第30回日本SF大賞、第40回星雲賞日本長編部門を死後受賞。 2010年同作の英訳版がアメリカでフィリップ・K・ディック記念賞の特別賞を受賞。『屍者の帝国』(円城 塔と共著)、『METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS 』などの作品を手がける。

作品一覧

  • メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット

    メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット

    小説・文芸

    4.4
    1巻1,012円 (税込)
    暗号名ソリッド・スネーク。悪魔の核兵器「メタルギア」を幾度となく破壊し、世界を破滅から救ってきた伝説の男は急速な老化に蝕まれていた……。戦争経済に支配された世界と、自らの呪われた運命からの解放のため、伝説の英雄ソリッド・スネーク最後の戦いが始まる。全世界でシリーズ3300万本を売り上げた大ヒットゲーム完結編を完全小説化!
  • ハーモニー

    ハーモニー

    小説・文芸

    4.4
    1巻1,045円 (税込)
    〈ベストセラー『虐殺器官』の著者による“最後”のオリジナル作品〉これは、“人類”の最終局面に立ち会ったふたりの女性の物語――急逝した著者がユートピアの臨界点を活写した日本SF大賞受賞作。※本文中にHTMLタグのような表記がありますが、これは本書の仕様です。
  • 虐殺器官

    虐殺器官

    小説・文芸

    4.4
    1巻1,100円 (税込)
    9・11を経て、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは? ゼロ年代最高のフィクションが電子書籍版で登場。
  • Running Pictures―伊藤計劃映画時評集1

    伊藤計劃映画時評集

    小説・文芸

    4.0
    1~2巻814~836円 (税込)
    「マトリックス」「シックス・センス」「ファイト・クラブ」「トゥルーマン・ショー」「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」――デビュー以前に著者が運営していたウェブサイト「スプークテール」で書き続けられていた映画時評67本+αを、2分冊で完全集成。数々の名作とほんの少しの「トンでもない」作品が、伊藤計劃のあらたな視点と映画に対する大いなる愛情をもって語り直される。第1巻は44本を収録。
  • The Indifference Engine

    The Indifference Engine

    小説・文芸

    3.9
    1巻1,045円 (税込)
    ぼくは、ぼく自身の戦争をどう終わらせたらいいのだろう・・・・・・戦争が残した傷跡から回復できないアフリカの少年兵の姿を生々しく描き出した表題作をはじめ、盟友である芥川賞作家・円城塔が書き継ぐことを公表した『屍者の帝国』の冒頭部分、影響を受けた小島秀夫監督にオマージュを捧げた2短篇、そして漫画や、円城塔と合作した「解説」にいたるまで、ゼロ年代最高の作家が短い活動期間に遺したフィクションを集成。
  • 屍者の帝国

    屍者の帝国

    小説・文芸

    3.8
    1巻858円 (税込)
    屍者化の技術が全世界に拡散した19世紀末、英国秘密諜報員ジョン・H・ワトソンの冒険がいま始まる。天才・伊藤計劃の未完の絶筆を盟友・円城塔が完成させた超話題作。日本SF大賞特別賞、星雲賞受賞。
  • 伊藤計劃記録 I

    伊藤計劃記録

    小説・文芸

    3.7
    1~2巻814円 (税込)
    メタルギアソリッド、リドリー・スコット、押井守、そしてウィリアム・ギブスン――個人ブログ「伊藤計劃:第弐位相」を中心に、SF、映画、ゲーム、さらに自らの病について綴られた数々の文章。その独特の語りと、冷静かつユーモアを湛えた世界への視線で、作家デビュー以前から類いまれな才能をうかがわせた2001~2005年までの文章を収録する全記録第1弾。
  • NOVA1【分冊版】社員たち

    NOVA【分冊版】

    小説・文芸

    -
    1~11巻110円 (税込)
    とにかく社長が出てきてくれないことにはなあ……おれたち社員はどうなるんだ?北野勇作(『かめくん』で第22回日本SF大賞受賞)のペーソスあふれるショートショート。SF界屈指の翻訳者/書評家・大森望の責任編集でお届けするオリジナル日本SFアンソロジー『NOVA1』(全11編)の分冊版。「社員たち」(解説:大森望)に併せて、「序」(大森望)収録。【作品冒頭】 敵の攻撃によって地中深く沈んでしまった会社を残された同僚たちといっしょに掘りはじめてもう半年近くになるのだが、あてにしていた失業保険がなかなか出ないこともあって、いよいよ貯金が心細くなってきた。そのせいなのかどうなのか帰宅すると、ねえ今日はどうだったの、どんな感じなのよ、などと妻がしつこく尋ねてくる。

ユーザーレビュー

  • 虐殺器官

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    戦争やテロ、監視社会、国家と個人の関係など、現代にもつながる問題が物語の中に凝縮されている。

    特に印象に残ったのは、「人はなぜ殺し合うのか」という問いと、そこに「言葉」が深く関わっているという発想。人を動かすのは、必ずしも武器や暴力だけではない。言葉が人の意識や感情を変え、ときには世界そのものを動かしてしまう。その怖さが強烈だった。

    正義とは何なのか、戦争とは何なのか、そして自分たちは本当に自由な意思で生きているのかと考えさせられる。

    0
    2026年10月08日
  • 虐殺器官

    Posted by ブクログ

    哲学書を読んでるみたいだった。でも、頭が拒否するのではなくその世界にのめり込んでいった。ラストの主人公の選択は衝撃的だが分かる気もする。

    0
    2026年10月07日
  • 虐殺器官

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    2012年4月に読んだらしいが例の如く1ミリも覚えてないので再読(おれの人生はこんなことばっかりや)。

    おもしろいし、よくできた話だ。
    文体は淡々としているが主人公は飄々として軽口もちょっとは叩く。また、周囲のキャラクターによって、海外の諜報アクション映画のようなテイストになっている。

    以下、がっつりぜんぶ丸ごとネタバレする。





    少し未来の話。
    主人公のクラヴィス・シェパードはアメリカ軍の特殊検索軍1分遣隊に所属している。仕事は主に暗殺である。
    この日も4人組のチームで戦場へ向かう。ヨーロッパとロシアの間にある砂漠と森の町で、虐殺を繰り返すお偉いさんを殺す任務だ。最新装備を身につけ、標的Aの国防大臣のもとへ難なく辿り着く。背後から喉元にナイフを押し当て、尋問する。
    「お前はなぜ殺した?」
    「なぜだ。わからない」
    50過ぎの国防大臣は、自分のやってきたことと、国土が壊滅していってることに、本当にたった今気がついたかのように困惑し始める。クラヴィスは、こわなに狂った言葉が返ってくるとは予想していなかった。なぜおれは殺したんだ教えてくれ、と詰め寄る大臣の首を切り裂き、心臓にナイフを突き立て、殺した。もう1人来るはずだった標的Bのアメリカ人は、急遽予定を変えたらしく現れなかった。

    その二年後、4人の作戦メンバーのうちのひとりのアレックスが、自分の車の中でガス自殺した。葬儀の次の日、クラヴィスは思い返す。あれから計5回作戦に加わったが、そのうち4回のターゲットに入っていた男、ジョン・ポール。世界中あらゆるところに現れるとされながらがも、いつも捕まらない男だ。軍からは少しずつ情報が開示される。現代において、ピザを買うだけでも親指での認証が必要だ。網膜、指紋、顔紋などあらゆる生体認証がなければ生活は成り立たない。だがジョン・ポールはそのような痕跡を何一つ残していない。どうやって航空機のチケットを買っているのか、どうやって生活しているのか。

    クラヴィスと同僚のウィリアムズはチェコに赴いた。ジョン・ポールのかつての浮気相手のルツィアがいるからだ。クラヴィスは彼女に近づき、チェコ語の講師を依頼する。
    ジョン・ポールはサラエボで妻子を失った。核爆弾により、サラエボの街は一瞬でクレーターを作った。IDトレースによれば、そのとき彼はルツィアのアパートにいた。その後の半年を自宅で引きこもって過ごし、突然有名PR会社に入り、国家をクライアントとする案件を複数担当したらしい。かれが担当したすべての国が内戦状態へと転がり落ち、虐殺が発生した。その後ジョン・ポールは強制されて会社をやめる。そして、この男の足跡は交通機関、ウェブコマースなどすべてからぷっつりと途絶えた。最後の認証は、プラハのショッピングモールだ。
    ルツィアと親しくなったクラヴィスは、任務でありながら彼女に惹かれていく。あるとき、自分やルツィアを尾行するものに勘付いて調査するが、逆に近まってしまう。背後から現れたのはジョン・ポールだった。
    彼はクラヴィスに語る。私は虐殺に共通する深層文法を見つけたと。各国のうちでもっとも情報を統制しやすい立場につき、それらの言葉たちを流布する。それだけで、徐々にみんなが虐殺へと向かうのだと。この文法による言葉を長く聴き続けた人間の脳には、「良心」と呼ばれるものの方向っけを捻じ曲げる。
    ルツィアは、クラヴィスが軍人であることも、ジョンが虐殺を扇動していることも、知らなかった。ジョンはまた消えた。手首を拘束され、酒に仕込まれたナノマシンにより、外部デバイスから簡単に神経へと激痛を与えられる状態にされたクラヴィスにできることはなかった。ただ激痛にのたうち回り、ルツィアを裏切っていたことを暴露それ、だからこそもう痛みを与えてくれ、断罪してくれと願うことしかできなくなる。しかし殺される直前、ウィリアムズたちのチームが突入。間一髪クラヴィスは救出された。

    次の作戦はインドだった。インドもまた核爆弾を投下された国で、国境沿いには穴ボコだらけである。インドの武装勢力に、ジョン・ポールが同行している可能性があるという。ということは、ルツィアもそこにいるかもしれない。クラヴィスは、もう一度彼女に会いたいの願っている。会って、ひとこと赦すと言ってもらいたい。
    今度の任務は、日本政府から武装勢力の幹部の逮捕を依頼されたという名目だが、本当の目的はジョン・ポールの逮捕である。
    クラヴィスは、戦闘適応感情調整と呼ばれる脳神経医学的処置を受ける。現地では、多くの少年少女兵と対峙することになる。銃弾を躊躇なく適切な判断で子どもたちの脳に叩き込むために必要な処置だ。本作の時代において、テクノロジーはとてつもなく進歩しつつも、人工知能よ研究は頭打ちになっていた。戦地において生身の人間にしかできないことが、いまだに多くあるのだ。かくして国家は、正規軍の兵士たちを丁重にもてなすようになる。このカウンセリングもその一環である。クラヴィスは、自分が戦場で犯す罪を背負う資格がない、その罪が虚構であるという恐れを抱いている。彼は戦地で死と隣り合わせになることで、自分の生を実感している。しかしそのとき抱く殺意が、カウンセラーと化学物質によって作られたものだとしたら、生の実感も、罪も、全部嘘っぱちではないのか。カウンセリングによる感情の調整、感覚のマスキング、薬物投与により、兵士たちはは痛みを感じることなく痛みがあるこまだけを知覚できる状態となる。
    少年兵、少女兵たちを殺して回りながら、作戦は無事に遂行された。そこには、念願のジョン・ポールがいた。
    護送は列車で行う。クラヴィスとジョンは、列車内で会話を交わす。

    われわれは似たもの同士だな。
    ふざけるな。
    いいや同じさ。虐殺の文法が脳に及ぼす影響は、きみらが作戦前に受ける感情調整にとても近いんだよ。

    クラヴィスは反論できなかった。が、ジョンの今までの話ぶり、今の落ち着いた態度から、軍に内通者がいると予想する。
    そのとき通信が入った。列車後方からヘリが追跡してきているという。チームに警戒を促したその瞬間、列車はレールを外れて横転する。
    気絶から目覚めると、生き残りのチームメンバーたちが交戦中である。銃弾が飛び交っている。クラヴィスも手榴弾やグレネードで応戦しつつ進む。環境追従迷彩をまとって幽霊のようにおぼろげな人影たちが舞っている。何人かは、腕や足を失いながらも、標準射撃姿勢で撃ちまくっている。まるでゾンビだ。
    そのとき思い立つ。奴らは痛覚マスキングを受けている。
    いまこの戦闘は、だれも想像しなかった、同レベルのテクノロジーの恩恵を受けた集団同士の殺し合いであった。クラヴィスがこれまで参加した作戦はそんなものではなかった。すべて、金持ちが貧乏軍隊をタコ殴りにするものばかりだった。
    殺しても死なない痛覚的ゾンビ集団が潰し合う状況。
    クラヴィスは怖気付き、また安堵した。自分はまだ戦闘の中心から離れている。
    しかしやはり進まねばならない。通信がつながっていたリーランドのところに辿りつくが、彼は腕も、腰から下も、吹き飛んでなくなっていた。クラヴィスたちのチームは、初めての完敗を喫した。

    リーランドを含む仲間たちの葬儀。
    肉片を寄せ集め断片をつなぎ合わせてできた遺体たちが、棺には収められている。
    ウィリアムズは、怒りに包まれている。だが自分はどうか。怒りも憎しみも、どこを探しても見つからない。ウィリアムズを真似て怒っている風を装う。クラヴィスは、誰を憎めばいいかわからない。カウンセリングは必要ない。自分を罰してくれる人を、クラヴィスは求めていた。

    最後の作戦はアフリカだった。ヴィクトリア湖で、イルカや鯨が養殖されており、その肉が人工筋肉として輸出されている。だが多くの人はそれを知らない。知ろうと思えば、調べれば、タグを辿ってわかることなのに。
    ヴィクトリア湖は、ケニア、ウガンダ、タンザニアに囲まれた広大な湖だが、ここの沿岸部はいまヴィクトリア湖沿岸産業者連盟という独立国家となり、先進国に承認されている。ジョン・ポールは、今度はここで呪いの言葉を撒き散らし始めている。ジョンはプラハで行方をくらましたが、逆にいえば、プラハの搭乗口で足跡の消えたものが彼である。軍上層部はそこからしらみつぶしに彼の現在地を探し当てたらしい。
    またしてもチームはシーウィードによる湖への降下作戦を取ったが、降下直前に下からロックオンされる。クラヴィスはひとり、管理官の静止を無視して手動でシーウィードを切り離し降下した。仲間たちがどうなったかはわからない。単独で進むしかない。ジョン・ポールを殺すことが本作戦の目的だ。しかしクラヴィスはペンタゴンの意思でも命令によるものでもなく、自分自身の意思でジョン・ポールを殺すために来たのだ。
    湖を抜けた後は、迷彩をまとってじりじりと這い進む。ここのゲストハウスにジョン・ポールがいて、国内メディアを統括する立場についているらしい。
    しかしゲストハウスに到着し、発見したのはジョンでなくルツィアだった。兵士との会話を聞く限り、彼女はジョンの妻ということになっているらしい。あるいは本当にあの後結婚したのか。
    静かに尾行し、彼女の入った部屋に侵入する。部屋には誰もいず、ジョン・ポールの手書き原稿やスピーチ草案などが置き離してある。そこには英語とは思えない様々な記号と単語が並んでいた。理解はできそうにない。そのとき背後で銃の安全装置を外す音が聞こえ、振り返る。ジョンがこちらにら拳銃を向け、悲しそうな顔でこちらを見ていた。ID認証のない時代もののブローニング。
    2人は会話を交わす。ジョン・ポールが、なぜ各地で虐殺を振り撒いているのか、その真相が語られる。まず「虐殺の文法は、食糧不足に対する適応である」ということ。
    そしてそれをばら撒く目的は、「自分の愛する人と世界を守ること」だという。
    現代は個人認証セキュリティによってテロを防いでいると言われているが、それはデータを見れば嘘である。絶望から発したテロは、自爆や特攻まいった、追跡可能性のリスクを度外視したものだからだ。セキュリティでは止められない。
    だからジョン・ポールは、自分の愛する人と世界を守るため、「それ以外の世界で殺し合いをさせる」ことを選んだ。自国の紛争が起きてしまえば、他国への侵略もテロもやっている余裕は消え去る。現に、ジョンが他国で紛争を起こさせたことで、アメリカに対するテロ件数はついにゼロになった。
    「わたしのしていることが正義だとはわ絶対に言わない。わたしはただ、自分が守りたいものを守るために、やれることをしているだけだ」
    隠れていたルツィアが現れる。
    「クラヴィス、この人を逮捕して。アメリカで、虐殺の文法の話を裁判にかけるの。みんな、知る必要がある。選んだ結果としての責任と自由を背負う必要がある」
    そのとき、ルツィアは背後から撃たれ、頭の半分を失った。そこにはウィリアムズが立っていた。クラヴィスは彼に対し発報する。廊下の先からウィリアムズが言う。
    「クラヴィス落ち着け。命令は暗殺だ」
    「彼女は殺さなくてよかった」
    「いいか、暗殺命令は出ていたんだ。ルツィアとジョンは両方とも殺すよう俺は言われていた。俺は俺の世界を守る。家族に、この世界がどんなにくそったれかなんて知らせなくていい」
    国防高等研究計画局としては、虐殺につながる研究に資金を出していたなんてスキャンダルになりかねない。上層部はこの一件を完全に葬るつもりである。
    クラヴィスは、ジョンを引っ張って窓から飛び降りる。ふたりでジャングルを逃げる。クラヴィスは彼に聞く。ルツィアを失い、自分がやってきたことを悔いているか。
    「わたしは悔いていない。わたしは命を天秤にかけた。わたしたちの世界の人間の命と、貧しく敵意の影がさす国の人間の命。わたしは目を見開いたもま、完全に正気で、その選択をした。そうして選択がなされたあとで、どれだけの命がわたしの背中に張り付くことになるか、それもはっきりと自覚したまま選択したのだ」
    ジャングルを抜けると、味方のジープが待っていた。そして、乾いた破裂音が響き渡り、ジョンが額に穴を開けて倒れた。
    発泡したのは自分の部隊の軍曹で、彼は作戦終了を告げた。また、ウィリアムズが死んだことも報告してきた。

    ここまでの話を、クラヴィスは軍の会議や裁判やメディアで何度も語った。彼がやったことは国家機密法違反だったから、告発された。しかし司法の手は彼の元へやってこなかった。なぜなら、アメリカ全土で暴動が発生し、それどころではなくなってしまったからだ。

    クラヴィスはアメリカ全土に向けて自分のやったことを話した。しかしここからの話は誰にも語っていない。

    ジャングルを逃げているとき、クラヴィスはジョンからあるメモを渡されていた。そこにはウェブサイトのURLが書かれており、それは虐殺の文法を生成するエディターであった。
    クラヴィスは、ジョン・ポールと同じ手法で、まったく逆の人々を守ることにした。つまりアメリカ国内で虐殺を行わせることである。
    スターバックスの永遠も、ドミノピザの普遍性も、なくなった。そうなることが唯一分かっていた彼は、家に食糧をたっぷり溜め込んでいた。
    これでしばらくは、アメリカにテロを仕掛けようと思う人はいなくなるだろう。
    クラヴィスは、世界にとって危険なアメリカという火種を、虐殺の坩堝に放り込んだ。アメリカ以外のすべての国を救うために。彼は、ジョン・ポールと同じように、その決断を背負うことを決めた。

    0
    2026年10月09日
  • 虐殺器官

    Posted by ブクログ

    面白かった!社会派的な内容を扱う丁寧な手つきも非常に良かったし、「虐殺の文法とは?」という作品の根幹に迫るときの冒険小説的な面白さもよかった。エピローグの展開が非常に良かった。社会を見つめる目線がシームレスに個人を見つめる目線に移行したのがよかった。

    0
    2026年10月01日
  • ハーモニー

    Posted by ブクログ

    『虐殺器官』でもそうだったが、世界規模の問題なのに主人公はどこまでも等身大・個人的な意志で動いているところがいい。

    0
    2026年09月21日

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