川野芽生の作品一覧
「川野芽生」の「紙魚の手帖」「いつか明ける夜を-Genesis SOGEN Japanese SF anthology 2021-」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで203万冊以上配信中!
「川野芽生」の「紙魚の手帖」「いつか明ける夜を-Genesis SOGEN Japanese SF anthology 2021-」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
Posted by ブクログ
同級生が書きおろした脚本「姫と人魚姫」を高校の演劇部で上演することになった。
初めて見た陸の姫に、その不幸そうな美しさに一目で強烈に惹かれた人魚姫は、姫の傍にいるために陸で生きたいと思うようになる…
トランスジェンダーでMtFの真砂は、人魚姫役に立候補した。
良く演じるために、演劇部員たちと作者である滝上は、人魚姫の心情や、アンデルセンの人魚姫はなぜあのような設定なのかなどを考察していく。
なぜ人魚姫は人間になりたいと望むのか、何を持って人間と認められるのか、何を持って自分を認めるのか…
真砂は、完全に女の子になれず、男の子には戸惑いと嘲りを持った態度を取られ、リスクをもってしても完全に望む自分、女の子の身体になりたい自分と、人ならざる人魚から人間になりたいと望む人魚姫の姿を重ねてゆく。
主人公の真砂以外にも、様々な興味深い背景や考え方を持つ登場人物たちが現れる。彼女らの人生は望む通りにばかりにはならないし、そもそも彼女らはどのような人生を望んでいるかは分からない。あっても生きているうちに変わるかもしれない。それでも、様々な苦しみや想いや思想を抱えて生きていくのだ。
数年経って大学生になった真砂は眞青と名乗りを変え、女の子になることを諦めた。
あんなに慎重に計画して望む自分になろうとしていた眞青が、なぜそんな道を選ぶことになったのか、分かれば分かるほど人魚姫を再度演じるべきではと読みながら思った。
文中に登場する、眞青のアカウントIDの由来になった、『ムーンライト』という映画の台詞。
舞台はマイアミの貧民街、登場人物は全員黒人。主人公シャイロンに、父代わりのような存在である男が、海辺で子供時代の話をする。ー月の下、裸足で走り回っていたら、年寄りの女が俺をつかまえてこう言った。
(月明かりの下で、黒人の子は青く見える。おまえはブルーだ。あたしはあんたをそう呼ぶよ。ブルーと)
そうして、彼は言う。ほとんど唐突に。ーおまえの人生はいずれおまえが決めなきゃいけないんだ。誰にも決めさせるな。
以上は本書からの引用だが、いろいろな立場で、いろいろに悩みながら生きていく眞青含む彼女ら全員に、きっとこの言葉が贈られるべきなのだろう。
自分のためだけに人生を選ぶ難しさよ。
Posted by ブクログ
装丁に一目惚れし、あらすじを読んでも絶対に好きだと確信した一冊。角や、翼や、鉤爪や、鱗を、失って久しい者達が、再びそれらを得るまでの物語。とても古くて遠い場所にいる彼らを思い描いていたが、己が今いる世界の彼らでもあった。美醜に囚われ、結婚と子孫繁栄を至上とする者達。反して、周囲からは枷にしか見えないであろう「びょうき」や「しょうがい」によって、呪縛から漸く解き放たれる者達。その姿に、つくづく障壁は社会が作るものだと痛感した。また、自身の非常に強い固定観念にも気付かされた。「写字生」「画家」と読み、イメージする性別が固定化されてしまっている。
掌編、短編、中編から成る本作、まるで音楽の様に楽しめたのが印象的だった。様々な旋律が転調し、反復し、重なり合う。「この物語は何の意味もない言葉で、何の意味も持ったことのない言葉で、綴られるべきなのだ。ほんとうは。」とあるように、本来は何か別の言語で謡われていた曲を、著者が現代の日本語に訳してくれただけなのかもしれない。読むよりも、目を瞑って耳を傾けたい物語だった。
Posted by ブクログ
登場人物が苗字やニックネーム、外見の特徴は徐々に分かるようになっており、性別を曖昧にしたところに作者の優しさを感じた。真砂を受け止めてくれる滝上や宇内がいるのに、他人の優しさに触れる度、自分に対する違和感が強くなり、変えられない身体に悩む真砂だった。高校の時は、まだ、限られた人しか関わらないため、自分を保てていたが、大学生になって、広い世界に出た時、社会という大きな枠組みを認識した途端、自分のゲシュタルト崩壊を起こした。真砂が好きになったのは、ズブズブと自ら不幸にハマっていく女の子で、救いたい一心から、自分の性別を変える決断をする。たかが1人の女で、と思うが、愛されること、愛すことに対し、違和感を感じる自分がいるため、素直に好きだという気持ちを認識できた葉月を前にすると変わりたいと思ってしまうのは、真砂なのだからだと思う。彼女のために自分を捨て、それでも手に入らなくて。人魚姫とそっくり。しかし、物語のように簡単に泡になることもできず、もがいていた。しかし、滝上のタトゥーに救われ、どんなに自分という枠組みからは抜け出せないけれど、なりたい自分にカスタマイズできることを知った。他人に受け入れられない自分を受け入れる強さが持てた時、本当の自分としてようやく生きていけるのではないだろうか。ブルームーンの話や、人魚姫の世界と並行して物語が進んでいて、劇を観ながら登場人物たちの隠れた真実に辿り着くようなお話。皆、何かを抱えて生きている。自分以外にはなれやしないけれど、なりたい自分になるために足掻くことはできるよと、救いもなく見捨てる訳でもなく、青より水色のような儚い物語だった。滝上が個人的に好きで、「燃やしに行く?」というセリフが好き。