作品一覧

  • 沈むフランシス(新潮文庫)

    沈むフランシス(新潮文庫)

    小説・文芸

    3.9
    1巻605円 (税込)
    都会での仕事を三十五歳で辞め、北海道の小さな村で郵便配達をする女。川のほとりの木造家屋で世界中の「音」を集めながら暮らす男。偶然出会った両者は、急速に惹かれあっていく。からだでふれあうことでしか感じない安息と畏れ、そして不意に湧きあがる不穏な気配。その関係が危機を迎えた嵐の夜、決して若くはないふたりが選択した未来とは。深まりゆく愛と鮮やかな希望の光を描く傑作。(解説・山田真歩)
  • 泡

    泡

    小説・文芸

    5.0
    1巻616円 (税込)
    男子高の二年に上がってまもなく学校に行けなくなった薫は、夏のあいだ、大叔父・兼定のもとで過ごすことに。兼定は復員後、知り合いもいない土地にひとり移り住み、岡田という青年を雇いつつジャズ喫茶を経営していた。薫は店を手伝い、言い知れない「過去」を感じさせる大人たちとともに過ごすうち、一日一日を生きていくための何かを掴みはじめる――。昭和を舞台に描かれる、二度と来ない夏の日々。思春期のままならない身体と心を鮮やかに描きだす、「最初で最後」の青春小説!
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

    火山のふもとで(新潮文庫)

    小説・文芸

    4.2
    1巻935円 (税込)
    ぼくが入社した村井設計事務所は、ひと夏の間、北浅間の「夏の家」へ事務所を移動する。そこでは稀有な感性をもつ先生のもと、国立現代図書館の設計コンペに向けての作業が行われていた。もの静かだけれど情熱的な先生の下で働く喜びと、胸に秘めた恋。そして大詰めに迫った中で訪れる劇的な結末。ただ夏が過ぎても物語は終わらなかった。かけがえのない記憶と生命の瞬きを綴る鮮烈なデビュー作。
  • 光の犬(新潮文庫)

    光の犬(新潮文庫)

    小説・文芸

    4.0
    1巻1,045円 (税込)
    ひとりひとりの人生は奇妙にゆがみ、奇妙に偏っている――。助産婦の祖母、独身の三人のおばたち、会話の少ない父母、のびやかな姉・歩と気難しい弟・始。それぞれの願いと葛藤が溶けあいながら、三世代の時間は進んでゆく。北海道の小さな町を舞台に、失われてゆく一族の姿と、色褪せない人生の瞬間を、記憶をたどるようにして描き出す。読後、静かな余韻に包まれる百年にわたる家族の物語。(解説・江國香織)
  • 優雅なのかどうか、わからない

    優雅なのかどうか、わからない

    小説・文芸

    3.8
    1巻1,324円 (税込)
    Casa BRUTUS連載、待望の単行本化! 48歳にして再び独身になった主人公、匡(ただし)は、吉祥寺にある古い一軒家を老婦人に借り受け、自分好みに改装を始める。気楽な一人暮らしは、順調に滑りだすが、かつての恋人、佳奈とばったり再会。佳奈は、父親とふたりで同じ町に住んでいた……。 「気ままな一人暮らし。うらやましいかぎりだなあ。これを優雅と言わずして、なんと言う」。まわりにそう言われることに違和感を覚えつつ、佳奈との関係を取り戻したいと願う匡だが、彼女の父親は認知症となり、いつしかその介護に巻き込まれていく。自分の家と行ったり来たりの生活は、さらに思わぬ展開となり、どう暮らしたいのか、誰と生きたいのかの選択を否応なく迫ってくる---。 かつて妻や息子と暮らした代々木のマンション、一人になって借り受けた、井の頭公園に接した古い一軒家。吹き抜け、窓、灯り、テラス、暖炉、キッチン……随所にあふれる細かい家の描写が、物語に柔らかな深みを与えている。 流れるような美しい文体で描かれる、松家仁之の、新しい小説世界!
  • 新しい須賀敦子

    新しい須賀敦子

    小説・文芸

    4.0
    1巻1,408円 (税込)
    没後17年を過ぎてもなお、多くの読者を魅了し続ける須賀敦子氏の文学。類まれな知性のうつくしさともいうべきその魅力を読み解く。江國香織、松家仁之、湯川豊の三氏の対談、講演、評論を収録。1)須賀敦子の魅力(江國香織×湯川豊):「須賀敦子さんのエッセイはすべて<物語>になってしまう」と語る江國香織と『須賀敦子を読む』で読売文学賞を受賞した湯川豊の興味津々の対談。 2)須賀敦子を読み直す(湯川豊):起伏の多い人生から生まれた洗練された文章と堅牢な文学を読み解き、その物語性を分析する。 3)須賀敦子の手紙(松家仁之):新たに発見された、親友へ宛てた何通もの手紙を紹介。 4)須賀敦子が見ていたもの(松家仁之×湯川豊) 5)「新しい須賀敦子」五つの素描(湯川豊):父と娘、戦時下の青春、留学、イタリアでの新婚生活、信仰、読書体験、文体など多角的分析。他、略年譜も収録。
  • 天使も踏むを畏れるところ 上
    完結

    天使も踏むを畏れるところ

    小説・文芸

    3.7
    全2巻2,970円 (税込)
    敗戦から15年、皇居「新宮殿」造営という世紀の難事業に挑む建築家・村井俊輔。彼を支える者、反目する者、立ちはだかる壁……。戦前から戦中、戦後、高度成長期の日本社会と皇室の変遷を辿り、理想の建築をめぐる息詰まる人間ドラマを描き尽くす、かつてない密度とスケールの大長篇。『火山のふもとで』前日譚ついに刊行! 上巻。

ユーザーレビュー

  • 火山のふもとで(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    読み終わってしまうのが本当にもったいなくて、最後のほうはずっと惜しみながらゆっくりページをめくっていました。
    好き!

    0
    2026年10月05日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    「天使も踏むを畏れるところ」を読み始め、
    旅先用に先行していた後日譚を読んでしまった。
    存在を知っていたら、当然、そうなっていたから良いのだけれど。

    北軽、かつて「大学村」と呼ばれた別荘地が舞台。
    (今はどうなっているのか)
    その昔、あの別荘地に憧れ、知人にご案内して頂いたことがある。。
    当時、「先生」のモデル吉村順三を全く知らず。
    舞台である「夏の家」も、たぶん近くを通っているであろうに記憶にないのが悔やまれてならない。

    0
    2026年08月28日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    なんて豊かで静かで優しくて美しい文章なんだ...ずっと読んでいたかった。あ、この感覚私にもあるな、と言う文章に出会うたびに嬉しい気持ちになれる。
    暖炉のシーンを読むだけでも炎の美しさと熱さがヒシヒシと伝わってきて、何気ない生活1つとってもこんなに色鮮やかなんだなぁと改めて。

    建築って面白い。というか、職人の仕事って美しい。心の中の青い炎がメラメラと燃えているのがわかる。確かに同じ景観でも住んでいる人によって不思議と変わるし、芸術でなく現実であることの所以はここだなと。また来年読みたい、夏にぴったりの作品。

    0
    2026年08月16日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    凄く良かったの一言。
    初めは建築事務所での仕事ぶりなどが淡々と綴られているが、建築に少し興味ある方ならば『建築家はこんなことまで考えているのか』と感動するに違いない。
    建築とはただ便利の追求やオシャレだけでなく、暮らしや生活に感じること(感性の部分)、四季、そしてちょっとした生活の中の悦びなども全て考えて作る仕事なのだなあと感じられたことがとても幸せだった。
    恋愛要素もあるけど、スパイス程度なところも良いかな。
    そして、人間も建築も全て諸行無常でありながら、それでも良いものは長く引き継がれるような余韻がある。うっすら涙すら出てしまった。
    読めて良かった。自分の仕事ぶりに悩んだ時(建築関係でなくても)、指標になりそうな良書。

    0
    2026年07月13日
  • 優雅なのかどうか、わからない

    Posted by ブクログ

    『ぼくは年寄りの話を聞くのが好きだ。仕事でインタビューした老人は数知れない。小説家、哲学者、ピアノ調律師、料理研究家、彫刻家、杜氏、助産師、聖書の研究家、外科医、質屋、などなど。一部の例外を除けば、経験してきたことの総量と話のおもしろさは比例する。定年間際の地味な男性アナウンサーを聞き手に、しんしんと降りつもる雪のような老人の話に耳を傾けるラジオ番組があれば、ぼくなら間違いなく聴く。すぐに眠ってしまうかもしれないけれど、それはそれでいい』

    「考える人」という雑誌を創刊号からしばらく定期購読していたことがある。いつの間にか定期購読は止めたのだけれど、それが著者が雑誌から離れた時期と重なっているのはただの偶然か、何か雑誌の雰囲気の変化に感じるものがあったからなのかは、自分のことながら解らない。ただ、著者の名前は作家になる前の編集者として見知っていた。その雑誌が主催した養老先生の講演会に運良く参加できた時に、一度だけお顔を拝見したこともある。その印象が強く残っているせいか、壮年期の主人公の男性が著者の姿と重なって見えて仕方がない。

    作家となった松家仁之の文章は、どちらかと言えば何かが引っかかってしまうようなざらついたところの無い端正な文章という印象。勝手な分類では堀江敏幸の文章を読んでいる時と同じような心持ちで読める作家、という位置付け。けれど、作家転身後の三冊目である本書は、そんな印象とは少しだけ異なる、やや情報過多のおしゃべりな口調。あちらこちらで編集者として見聞きしてきた言葉や事柄についての説明めいた文章が挿入される。ああ、これはきっと建築家・中村好文の影響だな、とか、それは哲人・養老孟司の飼い猫マルの哲学の影響だろうな、などと小説の流れとは関係の無い想いがついつい浮かんでしまう。因みに、お二人とも考える人の初期から連載を持っていた。更に余計なことを言うならば、堀江敏幸も創刊号から度々短篇を寄せていた筈。

    余計なことばかり考えながら読んでしまうものの、物語はさらさらと流れて行く。どこかへ向かう意思をはっきりと示さない主人公と同じように、流れに身を任せて行くだけの物語と言えば、そう言えてしまう。それは好ましいことなのかどうかも不問のまま、最後の最後まで主人公は流れに身を委ねて終わる。これは偏見なのかも知れないけれど、この小説を好ましいと受け取るか否かには性差があるようにも思う。主人公の息子の恋愛事情を入れたことで、男女間の不均衡に対して平衡を保つ重しとしているのかも知れないけれど。

    小説としての面白さについては置いておくとして、やっぱりこの人の文章を読むのは心地よい。それは物事を無暗に決着させない視点が根底にあるからなのかも知れないと今回改めて気付いた。

    0
    2026年06月26日

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