松家仁之のレビュー一覧

  • 泡

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    大げさすぎない淡々とした文章が自分に合っていて心地良かった。それぞれの登場人物のストーリーも全部が白黒つかないいい塩梅。泡ってそのことかい!とはなった。

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    2025年11月23日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    ネタバレ

    昭和を語る上で高成長の東京への波は外せない事例だと感じられる。その波はもちろんお濠の内側にも。
    約半世紀前のことなのに随分と昔のように感じられる。
    と言うか約半世紀前のことなのに、現在も変わらない?

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    2025年10月05日
  • 天使も踏むを畏れるところ 上

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    ネタバレ

    〘皇室〙の話も、建築家の生い立ちからの仕事の話も、ずっと対岸から見てきた事だけどこうやって上下巻の一冊目を手にしたら、しかも昭和の東京中心部の地図なりストーリーなりにふれてしまったらもう、引き返せないという覚悟で読み始めた。

    もう引き返せない、下巻が楽しみ。

    それにしてもお濠の内に住まう方々はいつの世も普遍的なイメージです。
    こう言うことは不敬罪なのでしょうが。

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    2025年09月30日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    ネタバレ

    建築についてあまり詳しくない自分でもその魅力を感じ取れた。夏の家という避暑地に佇む建築事務所で名建築家の先生と共生する設計者たちの生活を丁寧に描れる。特に事件らしい事件はなく、避けられない運命に至る過程が端正かつ瑞々しいな文章で静かに語られていき、いつしか作品の虜になっている自分に気が付く。浅間山の鳴動する活動を背景に、あるときは不穏にあるときは悠久な様子を見せながら物語は進んでいく。コンペの行く先を最後まで見たかった気もするが、それはそれで別の小説になったのだと思う。後世に遺すべき素晴らしい小説と思う。

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    2025年09月29日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    たまたま手にとったこの一冊を、2025の夏休みに読破。贅沢な時間を過ごしました。まるでその場にいて見ていたような設計事務所の細部の描写、夏の家の様子、風景などにすっかり魅せられました。小説と同じ時代にほんの少し建築に関わった自身の思い出が、今、全く違う仕事をしていて思い出すこともなかったのに、数十年ぶりに押し寄せてきました。先生が主人公に伝えたこと、その言葉が染み入りました。

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    2025年08月30日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    下巻は⭐️⭐️⭐️⭐️にしたけど、穏やかな上巻では5つ。
    女性の登場人物がほぼ2人なのにも関わらず、優雅で静かな時が流れる…

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    2025年07月30日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    軽井沢が舞台。なんとなく土地勘があるからなんか嬉しかった。
    覚えておきたい言葉、文があって、いくつかページの端を折った。

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    2025年07月18日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    毎年夏に事務所機能を移転する浅間山のふもとにある、設計事務所の山荘「夏の家」。新卒入所の主人公が、この山荘で過ごすひと夏の時間が静かなタッチで描かれていて、自分も軽井沢の澄んだ空気の中にいるような気持ちになりました。
    三度の食事の支度や買い物、掃除洗濯、山の日々の暮らし。日常を丁寧に過ごすことが建物を創ることに繋がっていくのかもしれない。設計の専門的なことはわからないけれど、レトロ建築が好きなので、ずっと残っていくものを創る意味についても考えさせられました。
    読み終わってもまだ「夏の家」にいるような余韻が続いています。
    美しい小説でした。

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    2025年06月23日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    いよいよ設計図が確定し工事が始まる。堀の外では安保闘争やオリンピックなどで騒がしく、工事にも影響が。宮内庁の責任者の幼少期が語られる唐突感もあるがのちに納得。紆余曲折あるが、静かに丁寧に物語が進む。物語としては無駄なことも多いのだろうが、その細かな書き振りが真実味を増している。最後は驚いたが、この作者ならではの締めかたでなるほど。

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    2025年05月25日
  • 天使も踏むを畏れるところ 上

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    戦後10年ほどを経てようやく社会が軌道に乗り、戦災で焼け落ちた皇居の新宮殿を造成する話。天皇皇后、皇太子、皇族、宮内庁、建設省、大蔵省、通産省、文部省、東京都などの職員、ゼネコン(と大工さん)、建築デザイン事務所など、非常に複雑な思惑が絡み合う。それだけなら、ああみんな勝手なことを言うし、ポジショントークだし、我田引水だし、そんななかで情熱を持った主人公が頑張って素晴らしい宮殿を建てましたとさ、めでたしめでたし。と言う陳腐な小説になるところ。本作は、複数の主人公の生い立ちから青年期に経験した数々の出来事(空襲体験、留学、メダカを買うことなど)、浮気も含めた日常生活、食の好みまで描いていことで、

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    2025年05月12日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    ミア・ファローが、じっとこちらを見つめている。その右頬あたりに白抜き、横書き三段組でタイトル。同じフォントの漢字の上に小さくローマ字を添えた作者名。映画かファッション関係の雑誌のような装丁だが、著名な編集者でもある著者三冊目の小説である。なぜ表紙がミア・ファローなのかは読めばわかる。処女作が軽井沢、二作目が北海道、そして今度は吉祥寺。舞台となる町や村にある種の選択眼が働いているようだ。

    岡田匡は四十代後半の雑誌編集者で、金融関係の研究所に勤める妻と離婚したばかり。息子はアメリカ留学中で卒業後も海外で暮らす。マンションは妻に明け渡し、自分は井の頭公園を見下ろす古い家を改装して住むつもりだ。優雅

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    2014年10月20日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    装丁は鈴木成一さん。なぜカバーの表紙が外国人なんだろう。髪型はベリーショートで佳奈を思わせるけど。
    カレル・ファブリティウスの絵は印象的。
    暖炉の燃やし方。私はふみふみというけれど、メイク・ブレッドの好きなふみ。吉祥寺の古い家。アメリカで同性と暮らす息子。親の介護。不倫と離婚。

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    2014年10月07日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    吉祥寺が舞台!2人が行ったお店はここかしら、とか、2人が歩いた場所はあそこかしらと思いを巡らせながら一気読み。
    古い一軒家を少しずつリノベーションしていくところがとても素敵♪

    でも、どうしてこの装丁なのでしょう。火山のふもとでの装丁は素敵だったのに…。この表紙だけが残念。

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    2014年09月04日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    ネタバレ

    下巻。新宮殿建設は牧野の暴走に伴って歩調が合わなくなり、ついに村井は設計者の立場を降りる選択をすることになる。上巻から皇帝とはどのような存在か、宮殿とはどういう建物であるべきか、などの問いが繰り返し作中で語られているが、登場人物たちの考え方のずれが致命的になっていくのを見せつけられるようだ。
    牧野の暴走と暴言は本当に読んでいて嫌な気持ちになって読むのがしんどくなったが、侍従の西尾さんのパートの軽さに救われる感じがする。とにかく壮大な小説で、この時代を生きてきたような人ならさらにこの小説を楽しめるのかもと思った。緻密な構成に溢れるような専門知識、実在の人物の人柄をちょっとした会話などからにじませ

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    2025年11月24日
  • 天使も踏むを畏れるところ 上

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    ネタバレ

    焼け落ちた明治宮殿に代わる新宮殿を建てるという大仕事、宮内庁の杉浦と建築家村井を中心として、様々な人々が書かれる重厚な群像劇。「火山のふもとで」の前日譚ということで、村井の生い立ちや登場人物たちの若かりし頃の話が読める。村井と衣子との不倫がなんの罪悪感もなく気軽におしゃれに描かれている(下巻の紹介「恋人」じゃないだろ、愛人か不倫相手と書けよ)のがイラッとするが、いかにも松家さんの作品という感じでもあるな。衒学的なところもまた、いかにもって感じ。
    建築は全然わからないし、天皇や日本現代史は全く興味がなくて小学生レベルの知識すらない始末なのだが、それでも面白く読み進められるのはさすがだ。このボリュ

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    2025年11月22日
  • 光の犬(新潮文庫)

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     添島家と言う3代にわたる家族の生老病死とともに北海道犬の4代のはなしをはさみ牧師家族の話も織り交ぜて叔母たち3人の話などもいれて人間の人生のアンソロジーを書いている。祖母が産婆になり、人間の生の誕生を描いている。道東の架空の街を背景に厳しい極寒の冬の描写や天文台に就職して山中の天文の描写もていねいでひきつけられる。ライチョウの話なども興味深い。

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    2025年11月16日
  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    この作家の文章は静謐で自然描写も丁寧で優しく北海道の四季、自然を描いている。
     40歳手前の別居中の男と東京から男と別れて子供時代を過ごした道東で郵便配達をしての男女の触れ合いを描いている。
     音を主軸に厳しい北海道の冬と短い春、秋の気候の描き方が美しい。 
     題名のフランシスは何処から来ているかはこの本を読んでください。

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    2025年10月25日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    50手前の編集者の男が妻とアメリカ留学した息子を持ちながらも離婚をする。周囲からは子育ても終わっての一人暮らしでゆうがだなと羨望を持ったか言葉もかけられる。離婚前にしゃないでの不倫相手と別れていたが、離婚後再会し、付き合い始める。井の頭公園の近くの古い一軒家をかり、大規模改修して住み始める。大家の七十過ぎの女性はアメリカにゆき息子と生活をしている。不倫相手だった三十半ばの女の父が脳梗塞で倒れ認知症に侵され始め、彼女と一緒に生活をし介護をもうしでるが、彼女からは良い返事がない。
     50手前の男の心模様を描いた小説である。肩を凝らずに松家仁之の「火山のふもとで」とは異質のシチュエーションの本である

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    2025年10月16日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    新刊『天使も踏むを畏れるところ』
    読み終えたところで、デビュー作を手にした。

    あの建築家・村井俊輔の事務所で働く
    若い建築家・坂西徹が主人公。

    村井設計事務所で働く建築家たちが
    「夏の家」でのびのびと仕事をし、恋もする。

    『天使も踏むを畏れるところ』より歳を重ねた村井俊輔が
    青年の坂西を通して生ることを楽しんでいる姿が描かれている。

    品性もあり、また人間臭さも感じられる作品。

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    2025年10月16日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    下巻2巡目。

    新宮殿造営の話ばかりでは窮屈だな
    そう思っていると、美智子様と衣子の
    何気ないやり取りに心がほぐれほっとする。

    P223
    〈宮殿はくつろいでもらう場ではない。宮殿はハレの舞台なんだよ〉

    一向に交わることのない村井と牧野。
    ズレはおおきくなるばかりだった。

    読んでいて、牧野を理解したいという気持ちはあったが
    最後まで寄り添うことはできなかった。

    今作はフィクション。
    でも、新宮殿建設に尽力した人々の名は歴史に残り
    この後も消えることはない。
    名を残すことなく去った人たちも
    みな、誇りを持って仕事をしていたのだろうな。

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    2025年10月16日