松家仁之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
凄く良かったの一言。
初めは建築事務所での仕事ぶりなどが淡々と綴られているが、建築に少し興味ある方ならば『建築家はこんなことまで考えているのか』と感動するに違いない。
建築とはただ便利の追求やオシャレだけでなく、暮らしや生活に感じること(感性の部分)、四季、そしてちょっとした生活の中の悦びなども全て考えて作る仕事なのだなあと感じられたことがとても幸せだった。
恋愛要素もあるけど、スパイス程度なところも良いかな。
そして、人間も建築も全て諸行無常でありながら、それでも良いものは長く引き継がれるような余韻がある。うっすら涙すら出てしまった。
読めて良かった。自分の仕事ぶりに悩んだ時(建築関係でなくても)、指標になりそうな良書。 -
Posted by ブクログ
『ぼくは年寄りの話を聞くのが好きだ。仕事でインタビューした老人は数知れない。小説家、哲学者、ピアノ調律師、料理研究家、彫刻家、杜氏、助産師、聖書の研究家、外科医、質屋、などなど。一部の例外を除けば、経験してきたことの総量と話のおもしろさは比例する。定年間際の地味な男性アナウンサーを聞き手に、しんしんと降りつもる雪のような老人の話に耳を傾けるラジオ番組があれば、ぼくなら間違いなく聴く。すぐに眠ってしまうかもしれないけれど、それはそれでいい』
「考える人」という雑誌を創刊号からしばらく定期購読していたことがある。いつの間にか定期購読は止めたのだけれど、それが著者が雑誌から離れた時期と重なっているのはただの偶然か、何か雑誌の雰囲気の変化に感じるものがあったからなのかは、自分のことながら解らない。ただ、著者の名前は作家になる前の編集者として見知っていた。その雑誌が主催した養老先生の講演会に運良く参加できた時に、一度だけお顔を拝見したこともある。その印象が強く残っているせいか、壮年期の主人公の男性が著者の姿と重なって見えて仕方がない。
作家となった松家仁之の文章は、どちらかと言えば何かが引っかかってしまうようなざらついたところの無い端正な文章という印象。勝手な分類では堀江敏幸の文章を読んでいる時と同じような心持ちで読める作家、という位置付け。けれど、作家転身後の三冊目である本書は、そんな印象とは少しだけ異なる、やや情報過多のおしゃべりな口調。あちらこちらで編集者として見聞きしてきた言葉や事柄についての説明めいた文章が挿入される。ああ、これはきっと建築家・中村好文の影響だな、とか、それは哲人・養老孟司の飼い猫マルの哲学の影響だろうな、などと小説の流れとは関係の無い想いがついつい浮かんでしまう。因みに、お二人とも考える人の初期から連載を持っていた。更に余計なことを言うならば、堀江敏幸も創刊号から度々短篇を寄せていた筈。
余計なことばかり考えながら読んでしまうものの、物語はさらさらと流れて行く。どこかへ向かう意思をはっきりと示さない主人公と同じように、流れに身を任せて行くだけの物語と言えば、そう言えてしまう。それは好ましいことなのかどうかも不問のまま、最後の最後まで主人公は流れに身を委ねて終わる。これは偏見なのかも知れないけれど、この小説を好ましいと受け取るか否かには性差があるようにも思う。主人公の息子の恋愛事情を入れたことで、男女間の不均衡に対して平衡を保つ重しとしているのかも知れないけれど。
小説としての面白さについては置いておくとして、やっぱりこの人の文章を読むのは心地よい。それは物事を無暗に決着させない視点が根底にあるからなのかも知れないと今回改めて気付いた。 -
Posted by ブクログ
よい小説
高輪ゲートウェイの文喫の福袋で買った本
作者も知らず、作品も全く知らなかったけど、本を手にとったとき、なんとなく嬉しかったのを覚えている。
ゆったりとしたときの流れにうっすらとした人間関係が散りばめられている。
ゆったりとしたストーリー展開と何かが起きるわけでもない流れはつまらないと思う向きもあるだろうし、当世風ではないかもしれない。
けれどリアルな世界ってこうだよねと思わせる作品。
先生の人間性もよいな。白い巨塔の里見先生みたい
全体が抑制された人間関係でこういうコミュニティ憧れる
建築史も少し知れるのもよい
最後まで読んだ。
ラストは、あっけないけど人生ってそんな感じ
感動した -
Posted by ブクログ
北海道を舞台にした三世代家族小説。
『火山のふもとで』に引き続き、好みだった。。!
時系列というよりは、登場人物たちの記憶のアソートのようなものに感じられた。一つ一つのシーンが繊細かつ濃厚に描かれていて、読み終わった後も断片的な情景がふと思い浮かぶような余韻の長い小説だった。特に、歩と始が幼少期に訪れた冬の教会、歩が授かった終油の秘蹟のシーンが神秘的で頭に残った。
度々北海道の雪景色が描写されていて、冬読むのにぴったりだった。とりわけ私は、自身の故郷なので、共感できる感覚や体験、考え方が多く、身近なものとして読み進められた。一方で、地方小説ではあるが、「誕生」「成長」「老い」「死」など人生の機微がたっぷり詰め込まれていて、だれしもが共感できる部分があるんだろうなと思った。