松家仁之のレビュー一覧
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なんという綺麗な本なの。
聞いている音を通して、実際はわたしはただ活字を読んでるだけなのに、景色がとても鮮明に美しく広がる。
清少納言の枕草子
「春は、あけぼの。やうやうしろくなりゆく山やまぎは、すこし明あかりて、紫むらさきだちたる雲くもの、細ほそくたなびきたる。」
に通じるものがある。
本作
「春はまず空からやってくる。」
「抜けるような青空でもなく、雪を生むぶ厚い雲でもない、かすみで薄ぼんやりした白く明るい空が広がるようになった。」
御法川さんが見た夕焼けのシーンでは、自然と涙があふれてた。
目の前は本なのに、御法川さんの言葉でわたしのまわりが雲とオレンジの夕焼けが広がった。
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松家仁之『沈むフランシス』新潮文庫。
デビュー作の『火山のふもとで』を皮切りに本作の『沈むフランシス』『光の犬』と、3ヶ月連続で新潮文庫から刊行されるようだ。
タイトルの『フランシス』とは一体何か。表紙に犬かキツネのような生き物の顔の写真が掲載されているが、これが『フランシス』ではない。読んでみてのお楽しみなのだが『フランシス』とは全く予想外の意外なものだった。
自然豊かな北海道の小さな村を舞台に描かれる男女の恋愛の物語。静謐な自然を背景に儚くも、綺麗ごとだけでは済まない恋愛の形が少しずつ明らかになっていく。
他人との付き合いに煩わされることなく、自分のことなど誰も知らない自然豊かな田 -
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ネタバレ離婚して古い一軒家を条件付きで借りることになり、
自分好みにリフォームを進めるなかで、既婚時代に付き合っていた佳奈が近所に住んでいる事実がわかった。
アメリカに留学中の手のかからないできた息子には、同性の恋人がいて、
佳奈の父の手術後の認知症が進行するのを見守り手伝いながら
気ままな野良猫のふみの愛想の良さに和む日々。
季節が変わる頃には、改装した一軒家も大家さんの都合で引き渡さなければならなくなり
佳奈との関係も曖昧なまま、ふみとの別れ。
一見優雅だろうけれど、孤独でもある。
岡田氏が説明することにたいして、別れた妻がそんなに得意になって説明しなくていい、
ってところがたしかに男の人っ -
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先の大戦後、新しい皇居=新宮殿がいかなる顛末で建てられたのか、建築家をはじめ宮内庁の職員、侍従など、その難事業に関わった様々な人々の生き様を交えながら、事実をベースにフィクションとして再構築して描く、なんとも濃厚な物語。
天皇家の面々の一般人には見えなかった姿も(それが事実かは別として)赤裸々に描かれていて、戦後新しい皇室を模索しながらも、“民間”ではない戦前の皇室と、“民間”を受け入れた戦後の皇室の軋轢などはさもありなんと思わされた(美智子様、雅子様の苦労よ。。)。
しかし、主要な人物の個人的な生き様まで詳細に記述されるため、あれ?これ新宮殿建てる話しだよな?と本題どこいった状態になりがち。 -
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「軽井沢の山荘」で有名な建築家の吉村順三がこの本の「先生」のモデルになっている。
建築のディティールだけでなく、あらゆる描写が丁寧で、細かい。軽井沢の東京よりもひんやりとした澄んだ空気感、鳥の鳴き声や羽ばたき、建築素材の質感まで、頭の中で繊細に浮かび上がる。
小説として大きな展開はほとんどないが、偉大な建築家の先生の元で過ごした、駆け出し建築家の青春がぎゅっとつまっている。
個人の建築設計事務所ってめちゃくちゃブラックで多忙で薄給のイメージがあるのだが、こんなにホワイトな事務所があるのだろうか…?
年末で仕事が忙しかったこともあり、細かい描写が多くて、物語の起伏も少ない本だったので、読