松家仁之のレビュー一覧

  • 火山のふもとで
     村上春樹さんと同じくらいデコラティブな文章で始めは読みにくくて仕方がありませんでした。風景や鳥の鳴き声、そして建築の意匠についての描写が延々と続きます。真ん中くらいまでくるとそれにも慣れてきて、まあまあ読めるようになってきました。これといって変化のない日常を描いた作品だと思いますが、そうでありなが...続きを読む
  • 火山のふもとで
    SNSで何度か紹介されているのを見て。
    あらすじ等の予備知識なく読書できるのは久しぶり。
    結果、とても良かった。実際のモデルになった事務所があるそうで、業界では有名なんだとか…私は全く知らず。

    砥上さんの既刊2作と雰囲気が似ていて、なんかはっきりしないけど芯のある主人公が好きみたい。新たな自己発見...続きを読む
  • 泡

    おもしろかったー。教科書で読んでその後全部自分で集めた辻邦生の小説を思い出した。タイトルとは別に、いろいろな「匂い」が思わせぶりに登場する。どんな匂いかは具体的には分からないけど。
  • 泡

    気になるのは、作者の「最初で最後の青春小説」とあることだ。おそらく、この続きは描かれることがないのだ。
    兼定に関しては、ほぼ語られているのでよしとして。ジャズ喫茶オーブフの今後について、または薫とカオルの人生について、全く語られない岡田のことなど、気になりすぎることが山積みなのだ。

    関西の、温泉と...続きを読む
  • 沈むフランシス
    確かにフランシスが沈んだ・・最後がちょっとわからなかった。
    久しぶりに松家さんの物語を読んだ。「火山のふもとで」に感動して以来。
    松家さんの世界観らしい書き方を感じた。
  • 泡

    高校生を思い出す時、楽しかった記憶は少なく、ただ周りが期待する自分像を作って過ごしていた時期だった様に思う。
    お腹がよじれるほど笑っても、その内容は覚えていない。何を考えてどう行動したのか、誰が好きだったか、何に心を動かされたのかがすっかり抜け落ちてしまっている。
    一人集団を離れても良い、失敗したっ...続きを読む
  • 泡

    登校拒否になった高校生薫が、一風変わった叔父左内兼定の元に滞在する一夏を描いた作品。兼定にも複雑な過去がある。

    薫の高校生活が冒頭に描かれるが、体育教師が大きな顔をしているという記述に自分の高校生時代を思い出し、苦々しくなる。

    白浜をモデルにした砂里浜、そこで出会う人物も皆魅力的である。

    松家...続きを読む
  • 泡

    著者唯一の青春小説らしい。
    ジャズ喫茶オーブフで働く3人の目線で話が繋がれていく。ひと夏の物語。
    それぞれが言葉にできない思いを腹に飲み込んでる。
    スカッとした終わり方ではないし、これからも思い悩む日々が続くのだとは思うけれども、それでも新しい一歩を踏み出せたのだと思う。
    その後のマスターと岡田と薫...続きを読む
  • 泡

    青春小説、登校できなくなった男子高校生が夏を大叔父のジャズ喫茶店で過ごして再生する話という感じの書評を読み、ワクワクして、手に取ったら、○○賞系の本だった。読み始めてしばらく時代が昭和設定だと気づけなかったし、屁・オナラという表現がするっと出てくるまでずいぶん長い。このオブラート感も有意なのかしら。...続きを読む
  • 泡

    不登校の主人公少年が、夏の間遠く離れた土地に逃避し親戚の経営するジャズバーで働き、自分なりの生活の指針を見出していくという物語。
    薫が学校の「イナゴの群れ」になじむこともできず、かといって確固としたやりたいこともなく、これからの自分を想像することもできずというのは、割とポピュラーな感じではある。そん...続きを読む
  • 泡

    3.8

    何かにつけ生きにくさを感じる主人公・薫が、地方の温泉地でバーを営む叔父・兼定の元にひと夏の間身を寄せる。
    そこで巡り会う大人達の中で、少しずつ自分の居場所を見つけて行く物語。


    海辺での酔ったカオルとのシーン等は、尻のあたりがむず痒くなるような(笑)、まさに青春〇〇という感じなのだが…
    ...続きを読む
  • 泡

    三人それぞれ飲み込んできた言葉たちがあって、語られるものも明かされないものも、その匙加減が独特のバランスだった。

    著者らしい静かな雰囲気の文章で描かれる、世代を超えたブラザーフッド的な話というのも新鮮。
  • 泡

    ここ3作ほど松家作品に入り込めなかったが、本作は久しぶりに、描かれる丁寧な生き方を堪能することができた。まだシベリア帰りの男が生きていた時代。彼と交差した、集団の中に適応できなかった若者、少年もその後どうなっていったのか。掌編であるが、その後に流れる時間にも思いを馳せることのできる作品だった。
  • 泡

    読み損ねてしまった。そんな感触です。
    本を読むうちに映像が頭に浮かぶ事はママありますが、松家さん凄さはそれが二次元では無くて三次元で、それも質量を伴って実体化する様に感じられる事です。特に何か大きな事件が起こる訳でもなく、数人の登場人物の日常が静かに淡々と綴られる物語。そういう意味では既読の『火山の...続きを読む
  • 優雅なのかどうか、わからない
    前に井の頭公園の近くに住んでいたこともあり、映画のように映像が浮かび上がってきたわたしはラッキー!
    松家さんの作品は3作目ですが、わたしの中での評価はこんな感じです。
    火山のふもとで>優雅なのかどうか、わからない>沈むフランシス
  • 光の犬
    2017年。もとは「新潮」2015年9月~17年5月号連載。
    23の章からなるが、連載時の回とは一致しないのだろう。後半の章は短め、たった2ページの章もある。

    北海道北見に近い架空の町枝留、明治時代に信州から東京の里子にだされ、また実家に戻ったのち産婆となった主人公添島始の祖母から、両親、叔母ら、...続きを読む
  • 火山のふもとで
    美しくて丁寧な文章だった。

    ひと夏の思い出。
    どこか客観的で淡々とした語り口、すごく盛り上がるような内容ではないが、その世界に浸ってずっと読んでいられる。

    静かな森に佇む家、鳥のさえずり、心地よい風、真摯に取り組むべき仕事、淡い恋…素晴らしい夏のひとときを疑似体験させてくれる。

    主人公が夏の家...続きを読む
  • 火山のふもとで
    物語の筋や展開を追うというよりも、本の中を静かに流れている豊かな時の流れに心をひたす…という小説。
    新潮社に長年務め、業界内では名編集者として有名だった著者の実質的なデビュー作でもある。
    確かに描写のそこかしこに異常なほど書き込まれている部分と、そうでない部分がある。特に著者自身が好きなのであろうも...続きを読む
  • 光の犬
    なかなか上質な作品でした。北海道の架空の町 枝留(エダル)に暮らした三代に亘る家族の静かな時の流れが淡々と語られています。誰かが何かがどの犬が目立つと言うことがないような設定ですが、それでも三世代目の姉弟のうち とりわけ姉の歩の人生が印象深い作品でした。伏線になっている基督教や天文学は作者の思い入...続きを読む
  • 光の犬
    言葉で読ませる作品、久しぶり。
    時代も行ったり来たり、章の中での視点も行ったり来たりしながら進んでいく物語。でも、だから余計に一人一人が引き立つ。時代とか、上下とかそういうフィルターを通さずに「個」が見える。家族だって、一族だって、個の集まりだ。
    そんなそれぞれの想いや景色が織り上げられたような作品...続きを読む