松家仁之のレビュー一覧

  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    ネタバレ

     ようやく上下巻を読み終えた。
     上下巻で1000頁以上、しかも会話も少な目で、びっしり詰まった文字の羅列の文章は、なかなか重かった。
     ただ、戦後80年の今年読むに値する内容だった。そんな思いで、ひっしに食らいついた感がある。

     戦禍で焼失した皇居の明治宮殿を戦後に建て直すというお話。建築家の村井俊輔、官庁から派遣役人杉浦の二人を軸に、彼らの戦前、戦中の生い立ちから、敗戦後の日本、皇室のありかた、サンフランシスコ講和条約を機に国際社会へ復帰、高度経済成長を歩みだす時代を追った。

     上巻は、如何に新宮殿を国民が納得するものにするか、戦後の新しい皇室のありかたと共に考えるというお話と思って読

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    2025年10月12日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    バブルのもっと前、堅調な成長を続けていた頃の、建築家たちの仕事を描いた物語。軽井沢を舞台にしており、全てが静かで美しい。先輩の若い頃の素敵な話を聞いてる感じですが、共感できそうな方は、ぜひどうぞ。

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    2025年10月01日
  • 光の犬(新潮文庫)

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    私達の生き様は、小説家のような筆力がなくても、物語になる、ということを思わせてくれる作品です。それは何を意味するのか。第三者の共感を呼ぶ、ということでしょうか、どんな人生であっても。

    「光る犬」というタイトルは、小説の終盤で、幼い歩が親犬の近くで戯れる子犬達を見ていたところから来ています。でも、なぜこのタイトルにされたのでしょう?

    また、始にまとわりつく消失点は必要だったのでしょうか? 滅びゆく家族ということもまた、人口減少のこの国で、共感を呼びうる一要素なのでしょうか。「光る犬」は始まりであり、消失点とは対照的でさえあります。

    私には少し疑問が浮かんだままです。

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    2025年09月23日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    上巻よりスラスラ読めた。

    防弾ガラスが後から付けられたものとは知らなかった。

    村井の立場になって読むものだから、ホントに腹立たしくなった。
    でも牧野は悪役に描かれ過ぎているような。モデルになった人も、あんな感じだったのか。そうでないなら、ちょっと悪役に寄り過ぎてる感じがする。牧野が「田舎出身」のエリート、さもありなんって感じで書かれてるのだが、作者が東京出身のようで、これもさもありなんって感じ。
    不倫関係が爽やかに描かれているのもちょっと…
    村井が都会的で、洗練されて、冷静で、対応が大人ででも肝心なところは譲らない、筋の通ったセンスと才能のある人であることはわかった。

    侍従長のパートが一

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    2025年09月05日
  • 天使も踏むを畏れるところ 上

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    建築家や建築史などほぼ何も知らないが、「この人は誰がモデルなんだ?」といちいち調べて「ふむふむ」となっている。
    その章の中心人物を間違いながら読んでしまって(杉浦と村井が混ざる)途中で気づくこともあった。

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    2025年09月03日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    ストーリー、お仕事、出てくる筆記具やお料理などなど一つ一つが魅力的でした。知らないものが多く検索しながら読み進めて時間がかかりましたが、それも楽しかったです。
    終盤は急にスピード感が出てあっという間に読み終わってしまいました。

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    2025年07月07日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    全体を通せば面白かったが、上下巻1100頁はとてつもなく長い。中弛みもあって苦痛に感じる所もあった。
    ある程度史実に沿った内容と思われるが、官僚を悪者にした方が話として盛り上がるように仕立て上げた感じがする。
    村井とされる建築家は初めから宮内庁関係者に関与されないように基本設計から見せないようにしていたそうですね。施主と建築家との関係が最初からそうでは起こるべくして起こったトラブルだったように思う。

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    2025年06月30日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    軽井沢で時間を過ごしている気分になりました。頭の中で環境を再生しながら読み進めました。
    文字で建築を味わうのははじめての感覚でした。

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    2025年05月30日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    戦後の天皇制に対する国民感情、建築、芸術、デザインなど表現者たちの思考のプロセス、組織論、などなど多岐にわたるものごとたちについて、変わったことや、変わらなかったことたちについて建築物が出来上がっていく長い過程を通して語られるという構成は、まさに建築のように立体的に物語が立ち上がっていくような新鮮な読書体験だった。
    ちょっと長かったけど笑

    高度経済成長に向かう上向きの空気感の中で、村井(吉村順三)のような地に足のついた価値観をもった建築家に「新宮殿」造営を依頼したのはあらためて慧眼だったと思う。

    これでもかと粘着質に描かれる牧野の暴走は、凡庸とした人物に能力と権利を持たせたらこうなるのだと

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    2025年05月09日
  • 光の犬(新潮文庫)

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    文庫の新刊。昭和の北海道本で、家と家族の物語。北海道を舞台にした小説の中でも、原点のような匂いがして、共感を得られる方も多いと思う。家族それぞれが、相手を思いながら懸命に生きた痕跡を描く。

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    2025年05月03日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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     上下二冊本の長篇天皇小説。著者のデビュー作『火山のふもとで』の前日譚にあたるという。いちおう読まないといけないか。
     物語としては、1968年に完成した皇居新宮殿の設計と建築をめぐって、「戦後天皇制」をどう表象するのか、「天皇」が現前する空間をどのように体験させるのか、設計者の建築家と予算を仕切る宮内庁の担当官、「技術」一辺倒の建設省の若い技官とが陰に陽にしのぎを削り合うプロセスが読みどころになっている。特定の視点人物の語りで一貫させず、立場の異なる人物それぞれに語りを担わせてそれを組み合わせていくというスタイルだが、不思議と多声的なテクストとは感じられない。その点がこの小説のポイントであり

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    2025年04月28日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    四季折々の自然と、人の暮らしと共にある建築設計が、透明感ある静けさをもって描かれていて、とても美しかった…
    主人公が強い意思でもって物語を引っ張っていくタイプの小説ではないけれど、彼らを取り巻く北軽井沢の動植物や火山、実直であたたかみのある建築を生み出す所員らの真摯な仕事振り、作中随所に散りばめられている名だたる建築家、芸術家、作曲家らのマスターピースの気配が、小説全体に深みを与え、高原の心地よい風のように、読者の胸を吹きすぎていく
    続けて前日譚も読みます

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    2025年04月24日
  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    いきなり物騒な始まりですが、中は至ってまともな恋愛小説。
    都会に疲れ北海道の寒村で郵便配達を始めた女性と、小水力発電の管理をする謎の男性。あるいみ、ごく有りがちなストーリー。主人公の女性のキャラクターだけ綺麗に立って、周り登場人物が全体にぼんやりした感じがありますが、何と言っても素晴らしいのはその文体。奇を衒うでもなく平易な文章なのですが、何故か染み込んで来るます。
    『火山のふもと』程の充実感はありませんが、これはこれで良い小品です。

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    2025年04月16日
  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    なんという綺麗な本なの。
    聞いている音を通して、実際はわたしはただ活字を読んでるだけなのに、景色がとても鮮明に美しく広がる。


    清少納言の枕草子
    「春は、あけぼの。やうやうしろくなりゆく山やまぎは、すこし明あかりて、紫むらさきだちたる雲くもの、細ほそくたなびきたる。」
    に通じるものがある。

    本作
    「春はまず空からやってくる。」
    「抜けるような青空でもなく、雪を生むぶ厚い雲でもない、かすみで薄ぼんやりした白く明るい空が広がるようになった。」



    御法川さんが見た夕焼けのシーンでは、自然と涙があふれてた。
    目の前は本なのに、御法川さんの言葉でわたしのまわりが雲とオレンジの夕焼けが広がった。

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    2025年03月26日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    昔の良質な日本映画を見ているような感じがした
    登場人物が頭の中で勝手に、岡田英二、原節子、三国廉太郎、高峰秀子の姿で動くので、とっても楽しかった

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    2025年03月19日
  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    連綿と続く川の流れの中で意図せず出会い意図して一緒に過ごすことを選んだふたり。
    フランシスに堰き止められ灯りを灯し続ける未来が垣間見えた矢先に沈むフランシス。
    連綿と続く川の流れの中で今度はふたり離れずにどこまで寄り添い流れるんだろうか。
    そうかもしれないし枝分かれする川の流れに逆らえず手を離してしまうかもしれない。

    流れてときにとどまる煽りだけは確とした揺るぎない自分自身ですよね覚束なくとも。

    …ジャケ買いしたんですが。
    (雪の結晶鼻に乗ってるし…)

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    2025年03月17日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    丁寧かつ親密な手紙を読むような多幸感。綴られる文章は的確で、その場に自分が居るように情景が浮かぶ。緩やかな時間の流れと感情の機微を捉えるディテール。建築への愛情、仕事への情熱、寡黙で誠実な師への尊敬、才能への嫉妬、秘めやかな恋。隅々まで繊細な為、読み進めるうちに少々疲れてくるが、清冽ながら密度の濃い読書時間を過ごせた。

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    2025年03月16日
  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    松家仁之『沈むフランシス』新潮文庫。

    デビュー作の『火山のふもとで』を皮切りに本作の『沈むフランシス』『光の犬』と、3ヶ月連続で新潮文庫から刊行されるようだ。

    タイトルの『フランシス』とは一体何か。表紙に犬かキツネのような生き物の顔の写真が掲載されているが、これが『フランシス』ではない。読んでみてのお楽しみなのだが『フランシス』とは全く予想外の意外なものだった。

    自然豊かな北海道の小さな村を舞台に描かれる男女の恋愛の物語。静謐な自然を背景に儚くも、綺麗ごとだけでは済まない恋愛の形が少しずつ明らかになっていく。

    他人との付き合いに煩わされることなく、自分のことなど誰も知らない自然豊かな田

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    2025年03月04日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    前に井の頭公園の近くに住んでいたこともあり、映画のように映像が浮かび上がってきたわたしはラッキー!
    松家さんの作品は3作目ですが、わたしの中での評価はこんな感じです。
    火山のふもとで>優雅なのかどうか、わからない>沈むフランシス

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    2021年02月04日
  • 新しい須賀敦子

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    確かに、何度も読みたくなる文章というのはあんまりないし、それが ”いい文章” ということだと思う。

    須賀敦子の文章は、時々読み返したくなるし、何度でも読みたくなる。

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    2016年05月18日