松家仁之のレビュー一覧
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戦後の天皇制に対する国民感情、建築、芸術、デザインなど表現者たちの思考のプロセス、組織論、などなど多岐にわたるものごとたちについて、変わったことや、変わらなかったことたちについて建築物が出来上がっていく長い過程を通して語られるという構成は、まさに建築のように立体的に物語が立ち上がっていくような新鮮な読書体験だった。
ちょっと長かったけど笑
高度経済成長に向かう上向きの空気感の中で、村井(吉村順三)のような地に足のついた価値観をもった建築家に「新宮殿」造営を依頼したのはあらためて慧眼だったと思う。
これでもかと粘着質に描かれる牧野の暴走は、凡庸とした人物に能力と権利を持たせたらこうなるのだと -
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上下二冊本の長篇天皇小説。著者のデビュー作『火山のふもとで』の前日譚にあたるという。いちおう読まないといけないか。
物語としては、1968年に完成した皇居新宮殿の設計と建築をめぐって、「戦後天皇制」をどう表象するのか、「天皇」が現前する空間をどのように体験させるのか、設計者の建築家と予算を仕切る宮内庁の担当官、「技術」一辺倒の建設省の若い技官とが陰に陽にしのぎを削り合うプロセスが読みどころになっている。特定の視点人物の語りで一貫させず、立場の異なる人物それぞれに語りを担わせてそれを組み合わせていくというスタイルだが、不思議と多声的なテクストとは感じられない。その点がこの小説のポイントであり -
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なんという綺麗な本なの。
聞いている音を通して、実際はわたしはただ活字を読んでるだけなのに、景色がとても鮮明に美しく広がる。
清少納言の枕草子
「春は、あけぼの。やうやうしろくなりゆく山やまぎは、すこし明あかりて、紫むらさきだちたる雲くもの、細ほそくたなびきたる。」
に通じるものがある。
本作
「春はまず空からやってくる。」
「抜けるような青空でもなく、雪を生むぶ厚い雲でもない、かすみで薄ぼんやりした白く明るい空が広がるようになった。」
御法川さんが見た夕焼けのシーンでは、自然と涙があふれてた。
目の前は本なのに、御法川さんの言葉でわたしのまわりが雲とオレンジの夕焼けが広がった。
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松家仁之『沈むフランシス』新潮文庫。
デビュー作の『火山のふもとで』を皮切りに本作の『沈むフランシス』『光の犬』と、3ヶ月連続で新潮文庫から刊行されるようだ。
タイトルの『フランシス』とは一体何か。表紙に犬かキツネのような生き物の顔の写真が掲載されているが、これが『フランシス』ではない。読んでみてのお楽しみなのだが『フランシス』とは全く予想外の意外なものだった。
自然豊かな北海道の小さな村を舞台に描かれる男女の恋愛の物語。静謐な自然を背景に儚くも、綺麗ごとだけでは済まない恋愛の形が少しずつ明らかになっていく。
他人との付き合いに煩わされることなく、自分のことなど誰も知らない自然豊かな田 -
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ネタバレ離婚して古い一軒家を条件付きで借りることになり、
自分好みにリフォームを進めるなかで、既婚時代に付き合っていた佳奈が近所に住んでいる事実がわかった。
アメリカに留学中の手のかからないできた息子には、同性の恋人がいて、
佳奈の父の手術後の認知症が進行するのを見守り手伝いながら
気ままな野良猫のふみの愛想の良さに和む日々。
季節が変わる頃には、改装した一軒家も大家さんの都合で引き渡さなければならなくなり
佳奈との関係も曖昧なまま、ふみとの別れ。
一見優雅だろうけれど、孤独でもある。
岡田氏が説明することにたいして、別れた妻がそんなに得意になって説明しなくていい、
ってところがたしかに男の人っ -
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第二次世界大戦で焼け落ちた明治宮殿。戦後15年経った後にようやく新宮殿を造営することになり、それに関わった建築家の村井俊輔(吉村順三がモデル)とその周囲の人々を丁寧に描いた作品。
題材がとても興味深いのと、小説としても面白いには面白いのだが、描写が丁寧すぎて、退屈だなぁとどうしても思ってしまう部分も多い。
建築が好きな人にはおすすめ。吉村順三、東山魁夷、谷口吉郎、丹下健三等を明らかにモデルにした人物が出てくる。
ただ皇居の宮殿は一般人が入ったり近くで眺められるような種類の建物ではないため、小説にある設計の検討過程と実際に建築された建物との「答え合わせ」が読みながら出来ないのが、少し辛いなあ