松家仁之のレビュー一覧
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上下二冊本の長篇天皇小説。著者のデビュー作『火山のふもとで』の前日譚にあたるという。いちおう読まないといけないか。
物語としては、1968年に完成した皇居新宮殿の設計と建築をめぐって、「戦後天皇制」をどう表象するのか、「天皇」が現前する空間をどのように体験させるのか、設計者の建築家と予算を仕切る宮内庁の担当官、「技術」一辺倒の建設省の若い技官とが陰に陽にしのぎを削り合うプロセスが読みどころになっている。特定の視点人物の語りで一貫させず、立場の異なる人物それぞれに語りを担わせてそれを組み合わせていくというスタイルだが、不思議と多声的なテクストとは感じられない。その点がこの小説のポイントであり、問題点だろう。 -
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なんという綺麗な本なの。
聞いている音を通して、実際はわたしはただ活字を読んでるだけなのに、景色がとても鮮明に美しく広がる。
清少納言の枕草子
「春は、あけぼの。やうやうしろくなりゆく山やまぎは、すこし明あかりて、紫むらさきだちたる雲くもの、細ほそくたなびきたる。」
に通じるものがある。
本作
「春はまず空からやってくる。」
「抜けるような青空でもなく、雪を生むぶ厚い雲でもない、かすみで薄ぼんやりした白く明るい空が広がるようになった。」
御法川さんが見た夕焼けのシーンでは、自然と涙があふれてた。
目の前は本なのに、御法川さんの言葉でわたしのまわりが雲とオレンジの夕焼けが広がった。
その後もね。御法川さんの「無理をして起きあがろうとは絶対にしないこと」の言葉に涙があふれた。
呼吸を聞くだけでも、いろいろなことが分かる。
そう、緊張してると呼吸って浅くなるもんね。
でもその音に意識を向けたことってあったかな。
自分自身にも、かかわっている相手にも。
かたちあるものはいつか消えてしまう
消えたものは、かたちを失うことでいつまでも残る
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松家仁之『沈むフランシス』新潮文庫。
デビュー作の『火山のふもとで』を皮切りに本作の『沈むフランシス』『光の犬』と、3ヶ月連続で新潮文庫から刊行されるようだ。
タイトルの『フランシス』とは一体何か。表紙に犬かキツネのような生き物の顔の写真が掲載されているが、これが『フランシス』ではない。読んでみてのお楽しみなのだが『フランシス』とは全く予想外の意外なものだった。
自然豊かな北海道の小さな村を舞台に描かれる男女の恋愛の物語。静謐な自然を背景に儚くも、綺麗ごとだけでは済まない恋愛の形が少しずつ明らかになっていく。
他人との付き合いに煩わされることなく、自分のことなど誰も知らない自然豊かな田舎でひっそり暮らしたいという主人公の撫養桂子の気持ちはよく解る。自分も昨年、隣近所の無い田舎の中古の平屋に住み始めた。地域の住人とは最低限の付き合いをすれば良いし、他人の目など気にしなくとも良いので、非常に楽である。
本作に描かれる撫養桂子と寺富野和彦の30代半ばの男女の肉体を優先する恋愛関係も解らないでもない。恐らく2人は結婚などという形式的なことなど頭には無く、残された若さを肉体的なつながりで費やしたいと思うのだろう。
都会での仕事を35歳で辞め、男とも別れ、北海道の小さな村に郵便局の非正規社員となった撫養桂子は郵便配達をする毎日を送っていた。やがて、桂子は川辺に佇む木造家屋で世界中で収集した音をオーディオで楽しみながら暮らす37歳の寺富野和彦と知り合う。2人は急速に惹かれ合いながら、身体を重ね合う日々を送る。
桂子は、和彦の噂を耳にすると共に和彦に対する疑惑から心が揺れ動きながらも、肉体は和彦を求めていた。やがて、村を嵐が襲い、和彦の川辺の家にも危機が迫る。
読んでみるとデビュー作の『火山のふもとで』の出来が良く、そこまでのレベルではないが、巧い小説であると思う。
本体価格550円
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ネタバレ離婚して古い一軒家を条件付きで借りることになり、
自分好みにリフォームを進めるなかで、既婚時代に付き合っていた佳奈が近所に住んでいる事実がわかった。
アメリカに留学中の手のかからないできた息子には、同性の恋人がいて、
佳奈の父の手術後の認知症が進行するのを見守り手伝いながら
気ままな野良猫のふみの愛想の良さに和む日々。
季節が変わる頃には、改装した一軒家も大家さんの都合で引き渡さなければならなくなり
佳奈との関係も曖昧なまま、ふみとの別れ。
一見優雅だろうけれど、孤独でもある。
岡田氏が説明することにたいして、別れた妻がそんなに得意になって説明しなくていい、
ってところがたしかに男の人ってそういうところあるかもってわろたw
佳奈の魅力、父の介護の大変さ、猫のふみちゃんが死んでしまったところは涙出そうになった。
だけど生活を疎かにしない感じが、いいね。)^o^( -
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第二次世界大戦で焼け落ちた明治宮殿。戦後15年経った後にようやく新宮殿を造営することになり、それに関わった建築家の村井俊輔(吉村順三がモデル)とその周囲の人々を丁寧に描いた作品。
題材がとても興味深いのと、小説としても面白いには面白いのだが、描写が丁寧すぎて、退屈だなぁとどうしても思ってしまう部分も多い。
建築が好きな人にはおすすめ。吉村順三、東山魁夷、谷口吉郎、丹下健三等を明らかにモデルにした人物が出てくる。
ただ皇居の宮殿は一般人が入ったり近くで眺められるような種類の建物ではないため、小説にある設計の検討過程と実際に建築された建物との「答え合わせ」が読みながら出来ないのが、少し辛いなあと思った。
昭和天皇が敗戦後15年間も、「御文庫」という、戦争の爆撃を生き延びるためだけにつくられた防空壕のような、住み心地最悪のコンクリート構造物に住んでいたとは全く知らず、とても驚いた。
また戦前は現御神であった天皇の存在が、戦後には「象徴」と形を変えたことで、象徴としての天皇を示すにふさわしい皇族のあり方を踏まえた宮殿の設計、というテーマがとても面白いと思った。
皇居に面したオフィスで、毎日皇居を見ながら仕事をしているだが、そんなふうに皇居の中の建築について考えたことがなかったので、目から鱗だった。 -
Posted by ブクログ
先の大戦後、新しい皇居=新宮殿がいかなる顛末で建てられたのか、建築家をはじめ宮内庁の職員、侍従など、その難事業に関わった様々な人々の生き様を交えながら、事実をベースにフィクションとして再構築して描く、なんとも濃厚な物語。
天皇家の面々の一般人には見えなかった姿も(それが事実かは別として)赤裸々に描かれていて、戦後新しい皇室を模索しながらも、“民間”ではない戦前の皇室と、“民間”を受け入れた戦後の皇室の軋轢などはさもありなんと思わされた(美智子様、雅子様の苦労よ。。)。
しかし、主要な人物の個人的な生き様まで詳細に記述されるため、あれ?これ新宮殿建てる話しだよな?と本題どこいった状態になりがち。まぁそれはあとで、そういう人だから、そういう思考をするのだと納得に繋がるわけだけど、それにしても本題の進みが遅すぎたのがもったいなかった(まだ下巻あるし)。