松家仁之のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
先の大戦後、新しい皇居=新宮殿がいかなる顛末で建てられたのか、建築家をはじめ宮内庁の職員、侍従など、その難事業に関わった様々な人々の生き様を交えながら、事実をベースにフィクションとして再構築して描く、なんとも濃厚な物語。
天皇家の面々の一般人には見えなかった姿も(それが事実かは別として)赤裸々に描かれていて、戦後新しい皇室を模索しながらも、“民間”ではない戦前の皇室と、“民間”を受け入れた戦後の皇室の軋轢などはさもありなんと思わされた(美智子様、雅子様の苦労よ。。)。
しかし、主要な人物の個人的な生き様まで詳細に記述されるため、あれ?これ新宮殿建てる話しだよな?と本題どこいった状態になりがち。 -
Posted by ブクログ
「軽井沢の山荘」で有名な建築家の吉村順三がこの本の「先生」のモデルになっている。
建築のディティールだけでなく、あらゆる描写が丁寧で、細かい。軽井沢の東京よりもひんやりとした澄んだ空気感、鳥の鳴き声や羽ばたき、建築素材の質感まで、頭の中で繊細に浮かび上がる。
小説として大きな展開はほとんどないが、偉大な建築家の先生の元で過ごした、駆け出し建築家の青春がぎゅっとつまっている。
個人の建築設計事務所ってめちゃくちゃブラックで多忙で薄給のイメージがあるのだが、こんなにホワイトな事務所があるのだろうか…?
年末で仕事が忙しかったこともあり、細かい描写が多くて、物語の起伏も少ない本だったので、読 -
Posted by ブクログ
松家仁之『光の犬』新潮文庫。
デビュー作の『火山のふもとで』を皮切りに『沈むフランシス』、本作『光の犬』と、3ヶ月連続で新潮文庫から刊行。
明確な主人公が不在で次々と語り手の視点が変わることに戸惑うばかりの普通の家族の終焉が描かれる小説で面白味は感じられない。確かに家族と暮らした北海道犬は登場するものの、タイトルの『光の犬』から想像されるような物語ではない。
3ヶ月連続刊行された中では、最初の『火山のふもとで』がしっかしりしたストーリーとメッセージを含んだ小説だったように思う。『沈むフランシス』や本作『光の犬』に至ると凡人の自分にはちんぷんかんぷんといったところだ。
時代が進むにつれ、 -
Posted by ブクログ
出版社に勤務する主人公の岡田匡は、48歳で離婚したばかり。
住んでいたマンションは元妻に明け渡し、吉祥寺の築50年以上の一軒家をアメリカに移り住む老婦人から借り受けることになる。
大家の老婦人は、内装など自由に施工することを承諾してくれ、老朽化した家を自分に合った住まいに作り上げて行くことになる。
匡は趣味趣向に拘りがあり、知人の建築家のアドバイスを受けながら納得の行く改築を楽しい思いで進める。
独り身になった匡は、周囲から「気ままな一人暮らし。優雅ですね」と言われるが、優雅と云う実感には程遠く、自分ではピンとくるものは全くなかった。
何の問題も無く、順調に一人暮らしが始まったと同時に、偶然に -
Posted by ブクログ
「火山のふもとで」「光の犬」がすごく好きで、以来少しずつ読んでいる作家さん。
40代後半での離婚。井の頭公園近くの古い一軒家を借り受け、思い通りに手を加えていく主人公。
インテリアを初め、物へのこだわりが半端じゃなく、まあ裕福なのねと少々鼻白む。それでいて「優雅なのかどうか、わからない」って、十分優雅なんですけど。
それでも、松家さんの文章は心地よくてずっと読んでいたくなる。家の貸主の老女・園田さんやかつての不倫相手・佳奈、離婚した妻、アメリカ留学中の息子、そして家に居付くキジトラの猫・ふみまで、登場人物(猫)全てが生き方に潔さがあって清々しい。
結局何ということもなく終わるんだけど、人生 -
Posted by ブクログ
出版社に勤める匡は、離婚し井の頭公園近くの古民家に一人住まいを始めた。米国に住む息子と同居することになった女主人から、外観を変えなければリフォームしても良いし、リフォーム代は実費を出す。その代わり、自分が米国から帰ることになったら出ていってほしい、という条件で住み始める。匡は、古民家を自分の好みにリフォームし始める。ちょうどその頃、以前付き合っていた(不倫していた)佳奈と再会する。佳奈は、匡の家の近くに父親と住んでいた。
たぶん松家さんの好みのオシャレな古民家リフォーム、独り身の男性の優雅な食生活。元カノとのオシャレな関係。佳奈の父親の介護という件はあるものの、どう考えてもこれは「優雅」でし -
Posted by ブクログ
ネタバレ離婚をした。から始まる文章、妻の攻撃性をさりげなく強調していく感じ、その上で「そうは言っても、そもそもの非はこちらにあるのだ」ときて、ああ~不倫ね、不倫した側の人ってこういう話し方するよなあと白けた気分で読み始めた。……はずなのに、文章があまりに心地よいので引き込まれてしまう。
古民家の改装は素直に素敵でうらやましいなあと感じるし、日々のご飯は美味しそうで、猫や鳥たちとのやり取りも楽しく、そういう日々のいろどりが過不足なく、坦々とつづられていく。作中の女性は佇まいや所作が浮かんでくるようで、お話の中で落ち着いた光を放っており魅力的だ。
冷静に考えれば、しょうもない不倫男である主人公の反省のか