松家仁之のレビュー一覧

  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    たまたま手にとったこの一冊を、2025の夏休みに読破。贅沢な時間を過ごしました。まるでその場にいて見ていたような設計事務所の細部の描写、夏の家の様子、風景などにすっかり魅せられました。小説と同じ時代にほんの少し建築に関わった自身の思い出が、今、全く違う仕事をしていて思い出すこともなかったのに、数十年ぶりに押し寄せてきました。先生が主人公に伝えたこと、その言葉が染み入りました。

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    2025年08月30日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    下巻は⭐️⭐️⭐️⭐️にしたけど、穏やかな上巻では5つ。
    女性の登場人物がほぼ2人なのにも関わらず、優雅で静かな時が流れる…

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    2025年07月30日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    軽井沢が舞台。なんとなく土地勘があるからなんか嬉しかった。
    覚えておきたい言葉、文があって、いくつかページの端を折った。

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    2025年07月18日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    毎年夏に事務所機能を移転する浅間山のふもとにある、設計事務所の山荘「夏の家」。新卒入所の主人公が、この山荘で過ごすひと夏の時間が静かなタッチで描かれていて、自分も軽井沢の澄んだ空気の中にいるような気持ちになりました。
    三度の食事の支度や買い物、掃除洗濯、山の日々の暮らし。日常を丁寧に過ごすことが建物を創ることに繋がっていくのかもしれない。設計の専門的なことはわからないけれど、レトロ建築が好きなので、ずっと残っていくものを創る意味についても考えさせられました。
    読み終わってもまだ「夏の家」にいるような余韻が続いています。
    美しい小説でした。

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    2025年06月23日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    いよいよ設計図が確定し工事が始まる。堀の外では安保闘争やオリンピックなどで騒がしく、工事にも影響が。宮内庁の責任者の幼少期が語られる唐突感もあるがのちに納得。紆余曲折あるが、静かに丁寧に物語が進む。物語としては無駄なことも多いのだろうが、その細かな書き振りが真実味を増している。最後は驚いたが、この作者ならではの締めかたでなるほど。

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    2025年05月25日
  • 天使も踏むを畏れるところ 上

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    戦後10年ほどを経てようやく社会が軌道に乗り、戦災で焼け落ちた皇居の新宮殿を造成する話。天皇皇后、皇太子、皇族、宮内庁、建設省、大蔵省、通産省、文部省、東京都などの職員、ゼネコン(と大工さん)、建築デザイン事務所など、非常に複雑な思惑が絡み合う。それだけなら、ああみんな勝手なことを言うし、ポジショントークだし、我田引水だし、そんななかで情熱を持った主人公が頑張って素晴らしい宮殿を建てましたとさ、めでたしめでたし。と言う陳腐な小説になるところ。本作は、複数の主人公の生い立ちから青年期に経験した数々の出来事(空襲体験、留学、メダカを買うことなど)、浮気も含めた日常生活、食の好みまで描いていことで、それぞれに人物に対すて強い思い入れを持つことができる。まるで大河ドラマで、全体の主人公はいるのだが、一話一話の主人公もいて、緻密に重なっていく感じ。史実に基づいたフィクションではあるが、本当にその一幕を見ているような臨場感。

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    2025年05月12日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    ミア・ファローが、じっとこちらを見つめている。その右頬あたりに白抜き、横書き三段組でタイトル。同じフォントの漢字の上に小さくローマ字を添えた作者名。映画かファッション関係の雑誌のような装丁だが、著名な編集者でもある著者三冊目の小説である。なぜ表紙がミア・ファローなのかは読めばわかる。処女作が軽井沢、二作目が北海道、そして今度は吉祥寺。舞台となる町や村にある種の選択眼が働いているようだ。

    岡田匡は四十代後半の雑誌編集者で、金融関係の研究所に勤める妻と離婚したばかり。息子はアメリカ留学中で卒業後も海外で暮らす。マンションは妻に明け渡し、自分は井の頭公園を見下ろす古い家を改装して住むつもりだ。優雅な独り暮らしのはずだったが、偶然、かつて愛した佳奈が近くに住んでいることを知る。着々と進む改装工事と、どうなるか予測もつかない佳奈との関係。四十代の独身男がかつてふられた女性に再会し、あれこれと妄想をふくらませるという、他の作家が書けばあられもない話が、この人の手にかかると、こういう具合になるかという小説の手本みたいな一編。

    主人公は離婚で落ち込む様子もなく、古くはあるが暖炉やカンチ・レバーのあるテラスつきの一軒家という恵まれた物件を破格で手に入れ、知り合いの建築家に改装を依頼し、その計画を実に愉しそうに語る。炊事、掃除も苦にならない凝り性の男が妻の干渉から逃れての独り暮らし、おまけに愛想のいい猫まで居ついている。こんな羨ましい話はない。やれ、家具は北欧がいいだの、ワックスは蜜蝋入りだの、お得意の薀蓄が顔を出す。

    この人の小説には必ずといっていいほど料理の話が出てくるのだが、今回も青唐辛子を網で焼いたり、餃子を手作りしたりと、相変わらずこまめに働いている。その合間合間に、アオバズクやらシジュウカラやら、武蔵野の森をねぐらにする鳥に、カマドウマまで顔を出し、自然のなかに季節の移ろいを感じさせる仕掛け。会社や仕事の話はほとんどなく、わずかに谷崎潤一郎とオランダの画家の話が出てくるくらい。あとは、武蔵野の名残りを残した界隈に酔狂にも古い家を借り、好みの家に改装をする歓びを淡々とつづる。このままでは国木田独歩ではないか、と思った頃に蕎麦屋での出会いが用意されている。

    離婚した主人公は、佳奈への思いを隠しきれない。佳奈も過去の別れ話を忘れたように食事をともにする。このままうまくいくのかと思ったところに佳奈の父が倒れ、介護が必要になる。匡の方も、せっかく改装が進んでいる最中なのに、もとの持ち主がアメリカから帰国するので、家を出なくてはならなくなる。なだらかに流れていた曲が終盤に至るや急激な転調が次々と襲い掛かってくるといった曲調で、敏腕編集者らしく、さすがにつぼを押さえた展開である。

    熟年離婚(というには少し若いが)、親の介護、子どもの結婚問題と、今の世相をたくみにとりいれたリアルな設定に、この著者ならではの都会的なセンスに溢れたインテリアや絵画、暖炉や薪ストーブといった自然志向のアイテムを配した、サービス満点の小説である。個人的には、人間なら八十歳になる、ふみという名の雌猫がいちばんのお気に入り、パンを捏ねるような前あしの仕種を、メイク・ブレッドというのだとはじめて知ったのは収穫だった。ひとり寝のベッドにそっと入ってくるところや、匂いつけをするところ、そして姿を消す場面。去年逝った我が家の猫を何度も思い出し、鼻の奥がつんとなった。罪な小説である。

    自分なりの決まりごとがあり、それを通すことが心地よい男が、別のシステムに従って動く他者である女と、どう生きてゆくか。愛し合ってさえいれば、自我は抑えられるものなのか、それはずっと長きにわたって可能なのか、一度結婚に失敗した男と、愛してはいたが、妻のある男との展望のない生活を続けることのできなかった女が、再び出会うことで、新しく何かがはじまるのか。互いの思いやりや気遣いが透けて見えるおだやかな日常をおびやかす身辺の瑣事。どんなに起伏のない日常を送る読者にも感情移入をゆるす、いかにも静かな身辺小説は、松家仁之の独壇場である。四十代後半にしてはその行動や心理がいかにも若く思えるのは、こちらが歳をとっているせいなのだろう。この作家が好きなファンには前作よりも受け容れられるのではないだろうか。

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    2014年10月20日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    装丁は鈴木成一さん。なぜカバーの表紙が外国人なんだろう。髪型はベリーショートで佳奈を思わせるけど。
    カレル・ファブリティウスの絵は印象的。
    暖炉の燃やし方。私はふみふみというけれど、メイク・ブレッドの好きなふみ。吉祥寺の古い家。アメリカで同性と暮らす息子。親の介護。不倫と離婚。

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    2014年10月07日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    吉祥寺が舞台!2人が行ったお店はここかしら、とか、2人が歩いた場所はあそこかしらと思いを巡らせながら一気読み。
    古い一軒家を少しずつリノベーションしていくところがとても素敵♪

    でも、どうしてこの装丁なのでしょう。火山のふもとでの装丁は素敵だったのに…。この表紙だけが残念。

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    2014年09月04日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    昔、ブックカフェで最初の数ページ読んで、何となく忘れられなかった本。
    小さな本屋さんに平置きされてるのを見付けて買った。
    雪道を走る列車、森の中に建つ別荘、真っ暗な夜道、暖炉の薪の爆ぜる音と匂い、耳をすませば聴こえてくる野鳥の鳴き声、そしてそれらを見下ろす火山
    自然の前でのそれぞれの人の淡々とした営みと、それぞれの想い
    本を読んでいる間、私はずっと青栗村で過ごしていました。

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    2026年10月04日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    面白かったなー
    上巻でめげそうだった人物の多さにも慣れ
    皇居新宮殿のことがもっともっと知りたくなった
    しかし牧野!面倒だがどこか憎めない感じもあった上巻からますますの傍若無人ぶり、最後に痛い目に遭えばいいのに…が、そうはならずに村井は新宮殿の設計者をおりるだけとなる
    宮内庁とは何とモヤモヤした場所だろう
    がしかし、村井構想の皇居はそんな秘話を包み込んで今も美しく品格をもって、あの場所にある

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    2026年08月27日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    建築のことだけを、そして住む人使う人のことを考える
    仕事でありそれは生活の一部となる

    どっちを選ぶのかはわからない
    本人としては選んだつもりはないのだろう

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    2026年08月03日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    こんなに穏やかで豊かな小説に触れたのはひさしぶりです。でも、穏やかすぎてなかなかページが進まず。ペースが上がったのは、色恋がチラホラし始めてから。穏やかさを満喫する余裕は私にはないのか?

    とにかくディテールが鮮明で、ついつい登場する建築物を検索して架空のものと知り、驚いてしまいます。流れる空気もいいですね。登場する人たちも、みんな穏やかで素敵です。

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    2026年05月12日
  • 天使も踏むを畏れるところ 上

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    登場人物も多く、章によってあっちからこっちからの話の展開になるがそれでも面白い!
    建築物、皇族あれこれネットで検索しながら読み進めていくと面白さが増す。新しい天皇との住まいを作ります!という話を軸に、皇族の関係者の話やら上様のライフワークの生物学研究やら史実ベースで語られるエピソードも興味深い。
    どんな宮殿が出来上がるのか、戦後の天皇陛下の在り方も織り交ぜつつ、都心のど真ん中の立地でこんなにたくさんの人が思いを巡らしながら設計しているのかと思うとものすごい労力を使っているんだなと痛感する。下巻も楽しみ。

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    2026年05月04日
  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    派手な話では無いけれど、その時の音、匂い、季節、空気を文章から新鮮に感じられて、しみじみと良いなあ。

    沈むフランシスってそういう事だったのね!?

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    2026年04月14日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    これはなんでこの表紙なのかな?
    優雅な暮らしだった。ドラマ化しそう。
    作者の実体験?
    嫌いな感じではなかったよ。いいなと思ったよ。

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    2026年03月21日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    柔らかなタッチで、少しずつ少しづつ物語に巻き込まれていく。劇的なシーンをいくつも想像しがちであったが、目に浮かぶのは、浅間山、北軽井沢、旧軽井沢の風景だ。

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    2026年02月15日
  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    読んでいると、そこに風景や人の様子がありありと目に浮かぶ文章はすごいと思う。
    何人かの人が出てくるが、基本的に善意の人ばかりでほっとする。
    久しぶりに小説を読んだけれど、やっぱりいいなと思った。集中力が減退しているのも、感情の揺れが鈍くなっているのも発見した。

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    2026年02月10日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    建築家の事務所に入所した青年が、北浅間の夏の家で過ごしたかけがえのない日々を綴った小説。まず浅間山や軽井沢で過ごす風景がありありと浮かんでくる、優しい・自然への愛情に満ちた主人公の描写が美しい。加えて建築に携わる者として、優しさと同時に建築に対する愛情が深い建築家の人柄(恐らく吉村順三がモチーフ)に惹かれた。建築家が建てた教会について語るシーンでは、「一般的に建築家が建てる建築は大きく歌いあげる様なものが多いが、先生の建築は朴訥で聴こえなければそれでいいというような静かな建築」、と語られていた。常々思うが建築家が作る作品を体験するとその人の人柄が見えることが多い。今回の先生もまさに人柄の描写と作られる建築のイメージが一致する描写だった。

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    2026年01月10日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    「火山のふもとで」の村井さんが、戦後に新宮殿を設計した時のお話。史実を元に書かれたエピソードが多々あり、昭和史の一部分を知ることができた。

    牧野の振る舞いには苛立ちを覚えたが、宮内庁造営責任者としての立場からすると、そうしたくなる理由もあったのだろう。村井さんの外部告発以降の話からなんとなくそう思えた。

    上下巻合わせて1000ページ以上の大作。上巻はなかなか読み進められなかったが、下巻はなかなか面白く読めた。ある意味、牧野を悪者とした書き方が作品を面白くしたと思う。

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    2025年12月27日