松家仁之のレビュー一覧
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ネタバレ下巻。新宮殿建設は牧野の暴走に伴って歩調が合わなくなり、ついに村井は設計者の立場を降りる選択をすることになる。上巻から皇帝とはどのような存在か、宮殿とはどういう建物であるべきか、などの問いが繰り返し作中で語られているが、登場人物たちの考え方のずれが致命的になっていくのを見せつけられるようだ。
牧野の暴走と暴言は本当に読んでいて嫌な気持ちになって読むのがしんどくなったが、侍従の西尾さんのパートの軽さに救われる感じがする。とにかく壮大な小説で、この時代を生きてきたような人ならさらにこの小説を楽しめるのかもと思った。緻密な構成に溢れるような専門知識、実在の人物の人柄をちょっとした会話などからにじませ -
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ネタバレ焼け落ちた明治宮殿に代わる新宮殿を建てるという大仕事、宮内庁の杉浦と建築家村井を中心として、様々な人々が書かれる重厚な群像劇。「火山のふもとで」の前日譚ということで、村井の生い立ちや登場人物たちの若かりし頃の話が読める。村井と衣子との不倫がなんの罪悪感もなく気軽におしゃれに描かれている(下巻の紹介「恋人」じゃないだろ、愛人か不倫相手と書けよ)のがイラッとするが、いかにも松家さんの作品という感じでもあるな。衒学的なところもまた、いかにもって感じ。
建築は全然わからないし、天皇や日本現代史は全く興味がなくて小学生レベルの知識すらない始末なのだが、それでも面白く読み進められるのはさすがだ。このボリュ -
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50手前の編集者の男が妻とアメリカ留学した息子を持ちながらも離婚をする。周囲からは子育ても終わっての一人暮らしでゆうがだなと羨望を持ったか言葉もかけられる。離婚前にしゃないでの不倫相手と別れていたが、離婚後再会し、付き合い始める。井の頭公園の近くの古い一軒家をかり、大規模改修して住み始める。大家の七十過ぎの女性はアメリカにゆき息子と生活をしている。不倫相手だった三十半ばの女の父が脳梗塞で倒れ認知症に侵され始め、彼女と一緒に生活をし介護をもうしでるが、彼女からは良い返事がない。
50手前の男の心模様を描いた小説である。肩を凝らずに松家仁之の「火山のふもとで」とは異質のシチュエーションの本である -
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宮殿は戦争で焼け落ちた。
焼失した宮殿の再建計画が動き始める。
杉浦は建設省から宮内庁へ出向し
国家的一大事業としての宮殿造営に携わる。
P424
〈開かれた皇室ー
しかし「ここまで」という一線は残っている〉
チーフアーキテクトの建築家・村井は
宮内庁の牧野と対立することが多くなっていく。
1巡目は他の本を挟みながらサラッと読み終える。
新宮殿の建設、開かれた皇室
現場にいる人たちはどのような考えで取り組んだのか。
それぞれの思いをしっかり受け止めたいと思った。
そして2巡目へ。
松家さんはインタビューで
〈プロジェクトの推移を人物の視点を変えながら見ていくことで、
できるだけすみず -
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ネタバレようやく上下巻を読み終えた。
上下巻で1000頁以上、しかも会話も少な目で、びっしり詰まった文字の羅列の文章は、なかなか重かった。
ただ、戦後80年の今年読むに値する内容だった。そんな思いで、ひっしに食らいついた感がある。
戦禍で焼失した皇居の明治宮殿を戦後に建て直すというお話。建築家の村井俊輔、官庁から派遣役人杉浦の二人を軸に、彼らの戦前、戦中の生い立ちから、敗戦後の日本、皇室のありかた、サンフランシスコ講和条約を機に国際社会へ復帰、高度経済成長を歩みだす時代を追った。
上巻は、如何に新宮殿を国民が納得するものにするか、戦後の新しい皇室のありかたと共に考えるというお話と思って読 -
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私達の生き様は、小説家のような筆力がなくても、物語になる、ということを思わせてくれる作品です。それは何を意味するのか。第三者の共感を呼ぶ、ということでしょうか、どんな人生であっても。
「光る犬」というタイトルは、小説の終盤で、幼い歩が親犬の近くで戯れる子犬達を見ていたところから来ています。でも、なぜこのタイトルにされたのでしょう?
また、始にまとわりつく消失点は必要だったのでしょうか? 滅びゆく家族ということもまた、人口減少のこの国で、共感を呼びうる一要素なのでしょうか。「光る犬」は始まりであり、消失点とは対照的でさえあります。
私には少し疑問が浮かんだままです。
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上巻よりスラスラ読めた。
防弾ガラスが後から付けられたものとは知らなかった。
村井の立場になって読むものだから、ホントに腹立たしくなった。
でも牧野は悪役に描かれ過ぎているような。モデルになった人も、あんな感じだったのか。そうでないなら、ちょっと悪役に寄り過ぎてる感じがする。牧野が「田舎出身」のエリート、さもありなんって感じで書かれてるのだが、作者が東京出身のようで、これもさもありなんって感じ。
不倫関係が爽やかに描かれているのもちょっと…
村井が都会的で、洗練されて、冷静で、対応が大人ででも肝心なところは譲らない、筋の通ったセンスと才能のある人であることはわかった。
侍従長のパートが一 -
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戦後の天皇制に対する国民感情、建築、芸術、デザインなど表現者たちの思考のプロセス、組織論、などなど多岐にわたるものごとたちについて、変わったことや、変わらなかったことたちについて建築物が出来上がっていく長い過程を通して語られるという構成は、まさに建築のように立体的に物語が立ち上がっていくような新鮮な読書体験だった。
ちょっと長かったけど笑
高度経済成長に向かう上向きの空気感の中で、村井(吉村順三)のような地に足のついた価値観をもった建築家に「新宮殿」造営を依頼したのはあらためて慧眼だったと思う。
これでもかと粘着質に描かれる牧野の暴走は、凡庸とした人物に能力と権利を持たせたらこうなるのだと