松家仁之のレビュー一覧
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宮殿は戦争で焼け落ちた。
焼失した宮殿の再建計画が動き始める。
杉浦は建設省から宮内庁へ出向し
国家的一大事業としての宮殿造営に携わる。
P424
〈開かれた皇室ー
しかし「ここまで」という一線は残っている〉
チーフアーキテクトの建築家・村井は
宮内庁の牧野と対立することが多くなっていく。
1巡目は他の本を挟みながらサラッと読み終える。
新宮殿の建設、開かれた皇室
現場にいる人たちはどのような考えで取り組んだのか。
それぞれの思いをしっかり受け止めたいと思った。
そして2巡目へ。
松家さんはインタビューで
〈プロジェクトの推移を人物の視点を変えながら見ていくことで、
できるだけすみず -
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ネタバレようやく上下巻を読み終えた。
上下巻で1000頁以上、しかも会話も少な目で、びっしり詰まった文字の羅列の文章は、なかなか重かった。
ただ、戦後80年の今年読むに値する内容だった。そんな思いで、ひっしに食らいついた感がある。
戦禍で焼失した皇居の明治宮殿を戦後に建て直すというお話。建築家の村井俊輔、官庁から派遣役人杉浦の二人を軸に、彼らの戦前、戦中の生い立ちから、敗戦後の日本、皇室のありかた、サンフランシスコ講和条約を機に国際社会へ復帰、高度経済成長を歩みだす時代を追った。
上巻は、如何に新宮殿を国民が納得するものにするか、戦後の新しい皇室のありかたと共に考えるというお話と思って読 -
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私達の生き様は、小説家のような筆力がなくても、物語になる、ということを思わせてくれる作品です。それは何を意味するのか。第三者の共感を呼ぶ、ということでしょうか、どんな人生であっても。
「光る犬」というタイトルは、小説の終盤で、幼い歩が親犬の近くで戯れる子犬達を見ていたところから来ています。でも、なぜこのタイトルにされたのでしょう?
また、始にまとわりつく消失点は必要だったのでしょうか? 滅びゆく家族ということもまた、人口減少のこの国で、共感を呼びうる一要素なのでしょうか。「光る犬」は始まりであり、消失点とは対照的でさえあります。
私には少し疑問が浮かんだままです。
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上巻よりスラスラ読めた。
防弾ガラスが後から付けられたものとは知らなかった。
村井の立場になって読むものだから、ホントに腹立たしくなった。
でも牧野は悪役に描かれ過ぎているような。モデルになった人も、あんな感じだったのか。そうでないなら、ちょっと悪役に寄り過ぎてる感じがする。牧野が「田舎出身」のエリート、さもありなんって感じで書かれてるのだが、作者が東京出身のようで、これもさもありなんって感じ。
不倫関係が爽やかに描かれているのもちょっと…
村井が都会的で、洗練されて、冷静で、対応が大人ででも肝心なところは譲らない、筋の通ったセンスと才能のある人であることはわかった。
侍従長のパートが一 -
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戦後の天皇制に対する国民感情、建築、芸術、デザインなど表現者たちの思考のプロセス、組織論、などなど多岐にわたるものごとたちについて、変わったことや、変わらなかったことたちについて建築物が出来上がっていく長い過程を通して語られるという構成は、まさに建築のように立体的に物語が立ち上がっていくような新鮮な読書体験だった。
ちょっと長かったけど笑
高度経済成長に向かう上向きの空気感の中で、村井(吉村順三)のような地に足のついた価値観をもった建築家に「新宮殿」造営を依頼したのはあらためて慧眼だったと思う。
これでもかと粘着質に描かれる牧野の暴走は、凡庸とした人物に能力と権利を持たせたらこうなるのだと -
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上下二冊本の長篇天皇小説。著者のデビュー作『火山のふもとで』の前日譚にあたるという。いちおう読まないといけないか。
物語としては、1968年に完成した皇居新宮殿の設計と建築をめぐって、「戦後天皇制」をどう表象するのか、「天皇」が現前する空間をどのように体験させるのか、設計者の建築家と予算を仕切る宮内庁の担当官、「技術」一辺倒の建設省の若い技官とが陰に陽にしのぎを削り合うプロセスが読みどころになっている。特定の視点人物の語りで一貫させず、立場の異なる人物それぞれに語りを担わせてそれを組み合わせていくというスタイルだが、不思議と多声的なテクストとは感じられない。その点がこの小説のポイントであり -
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なんという綺麗な本なの。
聞いている音を通して、実際はわたしはただ活字を読んでるだけなのに、景色がとても鮮明に美しく広がる。
清少納言の枕草子
「春は、あけぼの。やうやうしろくなりゆく山やまぎは、すこし明あかりて、紫むらさきだちたる雲くもの、細ほそくたなびきたる。」
に通じるものがある。
本作
「春はまず空からやってくる。」
「抜けるような青空でもなく、雪を生むぶ厚い雲でもない、かすみで薄ぼんやりした白く明るい空が広がるようになった。」
御法川さんが見た夕焼けのシーンでは、自然と涙があふれてた。
目の前は本なのに、御法川さんの言葉でわたしのまわりが雲とオレンジの夕焼けが広がった。