松家仁之のレビュー一覧

  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    この作家の文章は静謐で自然描写も丁寧で優しく北海道の四季、自然を描いている。
     40歳手前の別居中の男と東京から男と別れて子供時代を過ごした道東で郵便配達をしての男女の触れ合いを描いている。
     音を主軸に厳しい北海道の冬と短い春、秋の気候の描き方が美しい。 
     題名のフランシスは何処から来ているかはこの本を読んでください。

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    2025年10月25日
  • 優雅なのかどうか、わからない

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    50手前の編集者の男が妻とアメリカ留学した息子を持ちながらも離婚をする。周囲からは子育ても終わっての一人暮らしでゆうがだなと羨望を持ったか言葉もかけられる。離婚前にしゃないでの不倫相手と別れていたが、離婚後再会し、付き合い始める。井の頭公園の近くの古い一軒家をかり、大規模改修して住み始める。大家の七十過ぎの女性はアメリカにゆき息子と生活をしている。不倫相手だった三十半ばの女の父が脳梗塞で倒れ認知症に侵され始め、彼女と一緒に生活をし介護をもうしでるが、彼女からは良い返事がない。
     50手前の男の心模様を描いた小説である。肩を凝らずに松家仁之の「火山のふもとで」とは異質のシチュエーションの本である

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    2025年10月16日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    新刊『天使も踏むを畏れるところ』
    読み終えたところで、デビュー作を手にした。

    あの建築家・村井俊輔の事務所で働く
    若い建築家・坂西徹が主人公。

    村井設計事務所で働く建築家たちが
    「夏の家」でのびのびと仕事をし、恋もする。

    『天使も踏むを畏れるところ』より歳を重ねた村井俊輔が
    青年の坂西を通して生ることを楽しんでいる姿が描かれている。

    品性もあり、また人間臭さも感じられる作品。

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    2025年10月16日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    下巻2巡目。

    新宮殿造営の話ばかりでは窮屈だな
    そう思っていると、美智子様と衣子の
    何気ないやり取りに心がほぐれほっとする。

    P223
    〈宮殿はくつろいでもらう場ではない。宮殿はハレの舞台なんだよ〉

    一向に交わることのない村井と牧野。
    ズレはおおきくなるばかりだった。

    読んでいて、牧野を理解したいという気持ちはあったが
    最後まで寄り添うことはできなかった。

    今作はフィクション。
    でも、新宮殿建設に尽力した人々の名は歴史に残り
    この後も消えることはない。
    名を残すことなく去った人たちも
    みな、誇りを持って仕事をしていたのだろうな。

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    2025年10月16日
  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    「火山のふもとで」がとても良くて、「沈むフランシス」も手にとりました。
    やっぱり情景描写がすばらしく素敵だった。
    私の祖父母が道東に住んでいたこともあり、一層目に浮かぶ景色だった。
    この小説で感じるのは「瞬間」を生きているという感覚。自然も、佳子と和彦の関係も。
    こんな生き方してみたいなと思ったり思わなかったり…。
    この小説は登場する「場所」が少ないのが魅力になってると思う。
    2人の過去は多く語られないのもいい。
    安地内村の、特に和彦の家にスポットライトがあたっている感じが北海道の深々とした雰囲気と相まって素敵でした。

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    2025年10月16日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    ネタバレ

    言葉選びが美しく、情景がありありと浮かぶ。幼い頃見た情景や温もり、匂いや手触りを思い起こさせる。文章から記憶が刺激され、心が揺れる。
    麻里子との馴れ初めから蜜月描写は違和感しかなく、雪子の方が好意的に書かれていたのは、結末への伏線だったのかも。どこにも未来を匂わせる描写はないのに、見事に感じさせられる。
    長いけど、満足度の高い密度の高い小説だった。

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    2025年10月14日
  • 天使も踏むを畏れるところ 上

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    宮殿は戦争で焼け落ちた。
    焼失した宮殿の再建計画が動き始める。

    杉浦は建設省から宮内庁へ出向し
    国家的一大事業としての宮殿造営に携わる。

    P424
    〈開かれた皇室ー
    しかし「ここまで」という一線は残っている〉

    チーフアーキテクトの建築家・村井は
    宮内庁の牧野と対立することが多くなっていく。

    1巡目は他の本を挟みながらサラッと読み終える。
    新宮殿の建設、開かれた皇室
    現場にいる人たちはどのような考えで取り組んだのか。
    それぞれの思いをしっかり受け止めたいと思った。

    そして2巡目へ。
    松家さんはインタビューで
    〈プロジェクトの推移を人物の視点を変えながら見ていくことで、
    できるだけすみず

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    2025年10月16日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    ネタバレ

     ようやく上下巻を読み終えた。
     上下巻で1000頁以上、しかも会話も少な目で、びっしり詰まった文字の羅列の文章は、なかなか重かった。
     ただ、戦後80年の今年読むに値する内容だった。そんな思いで、ひっしに食らいついた感がある。

     戦禍で焼失した皇居の明治宮殿を戦後に建て直すというお話。建築家の村井俊輔、官庁から派遣役人杉浦の二人を軸に、彼らの戦前、戦中の生い立ちから、敗戦後の日本、皇室のありかた、サンフランシスコ講和条約を機に国際社会へ復帰、高度経済成長を歩みだす時代を追った。

     上巻は、如何に新宮殿を国民が納得するものにするか、戦後の新しい皇室のありかたと共に考えるというお話と思って読

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    2025年10月12日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    バブルのもっと前、堅調な成長を続けていた頃の、建築家たちの仕事を描いた物語。軽井沢を舞台にしており、全てが静かで美しい。先輩の若い頃の素敵な話を聞いてる感じですが、共感できそうな方は、ぜひどうぞ。

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    2025年10月01日
  • 光の犬(新潮文庫)

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    私達の生き様は、小説家のような筆力がなくても、物語になる、ということを思わせてくれる作品です。それは何を意味するのか。第三者の共感を呼ぶ、ということでしょうか、どんな人生であっても。

    「光る犬」というタイトルは、小説の終盤で、幼い歩が親犬の近くで戯れる子犬達を見ていたところから来ています。でも、なぜこのタイトルにされたのでしょう?

    また、始にまとわりつく消失点は必要だったのでしょうか? 滅びゆく家族ということもまた、人口減少のこの国で、共感を呼びうる一要素なのでしょうか。「光る犬」は始まりであり、消失点とは対照的でさえあります。

    私には少し疑問が浮かんだままです。

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    2025年09月23日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    上巻よりスラスラ読めた。

    防弾ガラスが後から付けられたものとは知らなかった。

    村井の立場になって読むものだから、ホントに腹立たしくなった。
    でも牧野は悪役に描かれ過ぎているような。モデルになった人も、あんな感じだったのか。そうでないなら、ちょっと悪役に寄り過ぎてる感じがする。牧野が「田舎出身」のエリート、さもありなんって感じで書かれてるのだが、作者が東京出身のようで、これもさもありなんって感じ。
    不倫関係が爽やかに描かれているのもちょっと…
    村井が都会的で、洗練されて、冷静で、対応が大人ででも肝心なところは譲らない、筋の通ったセンスと才能のある人であることはわかった。

    侍従長のパートが一

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    2025年09月05日
  • 天使も踏むを畏れるところ 上

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    建築家や建築史などほぼ何も知らないが、「この人は誰がモデルなんだ?」といちいち調べて「ふむふむ」となっている。
    その章の中心人物を間違いながら読んでしまって(杉浦と村井が混ざる)途中で気づくこともあった。

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    2025年09月03日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    ストーリー、お仕事、出てくる筆記具やお料理などなど一つ一つが魅力的でした。知らないものが多く検索しながら読み進めて時間がかかりましたが、それも楽しかったです。
    終盤は急にスピード感が出てあっという間に読み終わってしまいました。

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    2025年07月07日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    全体を通せば面白かったが、上下巻1100頁はとてつもなく長い。中弛みもあって苦痛に感じる所もあった。
    ある程度史実に沿った内容と思われるが、官僚を悪者にした方が話として盛り上がるように仕立て上げた感じがする。
    村井とされる建築家は初めから宮内庁関係者に関与されないように基本設計から見せないようにしていたそうですね。施主と建築家との関係が最初からそうでは起こるべくして起こったトラブルだったように思う。

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    2025年06月30日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    軽井沢で時間を過ごしている気分になりました。頭の中で環境を再生しながら読み進めました。
    文字で建築を味わうのははじめての感覚でした。

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    2025年05月30日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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    戦後の天皇制に対する国民感情、建築、芸術、デザインなど表現者たちの思考のプロセス、組織論、などなど多岐にわたるものごとたちについて、変わったことや、変わらなかったことたちについて建築物が出来上がっていく長い過程を通して語られるという構成は、まさに建築のように立体的に物語が立ち上がっていくような新鮮な読書体験だった。
    ちょっと長かったけど笑

    高度経済成長に向かう上向きの空気感の中で、村井(吉村順三)のような地に足のついた価値観をもった建築家に「新宮殿」造営を依頼したのはあらためて慧眼だったと思う。

    これでもかと粘着質に描かれる牧野の暴走は、凡庸とした人物に能力と権利を持たせたらこうなるのだと

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    2025年05月09日
  • 光の犬(新潮文庫)

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    文庫の新刊。昭和の北海道本で、家と家族の物語。北海道を舞台にした小説の中でも、原点のような匂いがして、共感を得られる方も多いと思う。家族それぞれが、相手を思いながら懸命に生きた痕跡を描く。

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    2025年05月03日
  • 天使も踏むを畏れるところ 下

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     上下二冊本の長篇天皇小説。著者のデビュー作『火山のふもとで』の前日譚にあたるという。いちおう読まないといけないか。
     物語としては、1968年に完成した皇居新宮殿の設計と建築をめぐって、「戦後天皇制」をどう表象するのか、「天皇」が現前する空間をどのように体験させるのか、設計者の建築家と予算を仕切る宮内庁の担当官、「技術」一辺倒の建設省の若い技官とが陰に陽にしのぎを削り合うプロセスが読みどころになっている。特定の視点人物の語りで一貫させず、立場の異なる人物それぞれに語りを担わせてそれを組み合わせていくというスタイルだが、不思議と多声的なテクストとは感じられない。その点がこの小説のポイントであり

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    2025年04月28日
  • 火山のふもとで(新潮文庫)

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    四季折々の自然と、人の暮らしと共にある建築設計が、透明感ある静けさをもって描かれていて、とても美しかった…
    主人公が強い意思でもって物語を引っ張っていくタイプの小説ではないけれど、彼らを取り巻く北軽井沢の動植物や火山、実直であたたかみのある建築を生み出す所員らの真摯な仕事振り、作中随所に散りばめられている名だたる建築家、芸術家、作曲家らのマスターピースの気配が、小説全体に深みを与え、高原の心地よい風のように、読者の胸を吹きすぎていく
    続けて前日譚も読みます

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    2025年04月24日
  • 沈むフランシス(新潮文庫)

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    いきなり物騒な始まりですが、中は至ってまともな恋愛小説。
    都会に疲れ北海道の寒村で郵便配達を始めた女性と、小水力発電の管理をする謎の男性。あるいみ、ごく有りがちなストーリー。主人公の女性のキャラクターだけ綺麗に立って、周り登場人物が全体にぼんやりした感じがありますが、何と言っても素晴らしいのはその文体。奇を衒うでもなく平易な文章なのですが、何故か染み込んで来るます。
    『火山のふもと』程の充実感はありませんが、これはこれで良い小品です。

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    2025年04月16日