作品一覧

  • 雨の島

    雨の島

    小説・文芸

    4.3
    1巻2,640円 (税込)
    ごく近い未来を舞台に、ウイルスプログラム「裂け目」から送られる親しい人々の記憶と、台湾の自然、動植物をモチーフとして描かれる美しい6つの短篇集。著者自作のカラー博物画6点収録。
  • 海風クラブ

    海風クラブ

    小説・文芸

    4.3
    1巻3,080円 (税込)
    白い犬の後を追いかけてきたタロコ族の少年と、自分を売ろうとする父親から逃げてきた少女。山の深い洞穴で二人は出会い、心を交わす。 少年が少女の村に、少女が少年の村へ入れ替わり出ていくのを、巨人は見つめていた。 山は巨人の体であった。人々に忘れ去られた最後の巨人ダナマイ。彼の言葉を解すのは、傷を負った動物たち。 時を経て再会する二人を軸に、様々な過去を背負う人々を抱えて物語は動き出す。 舞台は原住民と漢人、祖霊と神が宿る台湾東部の海豊村。 山を切り崩すセメント工場の計画が持ち上がり、村の未来を前にして、誇りを守ろうとする人々と、利益を享受しようとする人々が対立する。 巨人がなおも見つめ続ける中、かつてない規模の台風が村を襲い、巨人と人間の運命が再び交差する――。 物語を動かすのはつねに、大いなるものに耳を傾ける、小さき者たち。 ★2023年台湾書店大賞小説賞受賞 ★「博客来」ブックス・オブ・ザ・イヤー入選
  • 自転車泥棒

    自転車泥棒

    小説・文芸

    4.1
    1巻1,100円 (税込)
    失踪した父と同時に消えた自転車の行方を追う「ぼく」。台湾から戦時下の東南アジアへ、時空を超えて展開する壮大なスケールの物語。 ※この電子書籍は2018年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
  • 眠りの航路

    眠りの航路

    小説・文芸

    4.1
    1巻2,376円 (税込)
    父子二代の記憶へ漕ぎ出す 鮮烈な長篇デビュー作 台湾を代表する作家であり、世界的に注目を集める作家・呉明益の長篇デビュー作の待望の邦訳。のちに『自転車泥棒』や『歩道橋の魔術師』にもつながる原初の物語である。 台北で暮らすフリーライターの「ぼく」は、数十年に一度と言われる竹の開花を見るために陽明山に登るが、その日から睡眠のリズムに異常が起きていることに気づく。睡眠の異常に悩む「ぼく」の意識は、やがて太平洋戦争末期に神奈川県の高座海軍工廠に少年工として十三歳で渡り、日本軍の戦闘機製造に従事した父・三郎の人生を追憶していく。戦後の三郎は、海軍工廠で働いた影響から難聴を患いながらも、台北に建設された中華商場で修理工として寡黙に生活を送っていた。中華商場での思い出やそこでの父の姿を振り返りながら「ぼく」は睡眠の異常の原因を探るために日本へ行くことを決意し、沈黙の下に埋もれた三郎の過去を掘り起こしていく。三郎が暮らした海軍工廠の宿舎には、勤労動員された平岡君(三島由紀夫)もいて、三郎たちにギリシア神話や自作の物語を話して聞かせるなど兄のように慕われていたが、やがて彼らは玉音放送を聴くことになるのだった――。
  • 複眼人

    複眼人

    小説・文芸

    4.3
    1巻1,430円 (税込)
    太平洋に浮かぶ神話的な島と、近未来の台湾。二つの島に巨大な「ゴミの島」が押し寄せる時、謎の「複眼人」が姿を現す――。世界14か国で翻訳。台湾現代文学の担い手による代表的長編、待望の本邦初訳!
  • 歩道橋の魔術師

    歩道橋の魔術師

    小説・文芸

    4.2
    1巻1,078円 (税込)
    1979年、台北。中華商場の魔術師に魅せられた子どもたち。現実と幻想、過去と未来が溶けあう、どこか懐かしい極上の物語。現代台湾を代表する作家の連作短篇。単行本未収録短篇を併録。

ユーザーレビュー

  • 複眼人

    Posted by ブクログ

    単行本で読んだので、そちらの方に書いた感想を転載しておく。

    呉明益の小説は、『歩道橋の魔術師』『自転車泥棒』を読み、これで3冊目。今まで読んだ2冊が、中華商場や、第二次大戦といった、台湾の歴史的な記憶を拠り所にした物語だったのに対して、『複眼人』は、ファンタジー要素が強く、印象がかなり違う作品だった。

    世界中の人間が捨てたゴミが太平洋沖に集まってできた「ゴミの島」が、台湾に衝突するという事件を中心に、そこにいた様々な人たちが描かれる。一番印象的だったのは、自殺寸前の大学教師の女性「アリス」の話だった。
    「アリス」は、登山に出かけた夫と息子を失ったことで、自殺を考えるようになる。しかし、ちょうどその時、野良猫が家に舞い込み、「オハヨ」と名づけ、育て出したことで、自殺を思いとどまる。「アリス」にとって、この物語は、いかにして夫の「トム」と、息子の「トト」の死を受け入れるかという物語だった。彼女は、「複眼人」という小説を書き、「トト」は、自分の書いた文字の中で生きていたのだとすることで、二人の死を受け入れる。

    「複眼人」というのは、彼女が書いた小説だと思われる物語の中で、これまた「トム」と「トト」だと思われる「男」と「少年」が、死の直前に出会う超自然的な存在だ。複眼人は、人間の男の姿をし、その名の通り、目が複眼になっている。彼の複眼には、一つひとつの個眼に、全く別の様々な情景が映し出されている。

    面白いのは、この「複眼人」が、実在するのか、しないのか、「トム」と「トト」の身に起こったことが、現実に起きた出来事なのかどうかが、分からないことだ。この物語には、「アリス」の他に、台湾の先住民族や海外からやってきた技術者、神話の島から追放された少年などが登場する。それぞれの人物が、それぞれの人生における身近な人の死との関わりの中で、神話のような超自然的な経験をする。「アリス」の物語は、そうした登場人物たちの経験が語られる中に置かれることで、夢なのか、現実なのか、判別がつかなくなる。
    「トム」の遺体は、山の中で見つかったものの、息子の「トト」は、遺体どころか、結局、その痕跡すら発見することができない。そうした現実を、「複眼人」という物語にし、猫の「オハヨ」と生きていくことを決意することで、彼女は受け入れられるようになる。

    0
    2026年03月04日
  • 複眼人

    Posted by ブクログ


    「台湾」
    この小さな島に、複雑な経緯を持つ色々な人々がいる。
    そこに突然“ゴミの島”がたどり着く。

    台湾という島の近未来を通じて、自然の脅威と環境破壊を表の顔、つながっているようでつながっていない微妙な多様性と全てに共通する“命”にもがく人たちの模様を裏に、物語は進む。

    わかり合えるということは、わかり合うことを諦めることでもあるようだ。
    「今日の海の天気はどうだ」
    「よく晴れている」
    どんなに違っていても、かならずそう応えあう……それで互いの気持ちが歩み寄る。

    冒頭からしばらくは、どのように読んでいけばいいのかうまく掴めなかったが、やがて登場人物たちの想いが同期してくると、静かな旋律が心地良く聞こえる。
    そして次第に交わり、大きく響く。

    「傍観するだけで介入できない、私は何者か?」

    0
    2026年01月27日
  • 海風クラブ

    Posted by ブクログ

    『少年があの犬を見かけて既に三日になる。巨人ダナマイもこの三日間ずっと、彼らを注視し続けている』―『第一章 初秋』

    切れぎれの不連続に流れる時間。埋もれてしまった過去の日常の記憶。呼び起こされる郷愁。

    故・天野健太郎翻訳による「歩道橋の魔術師」「自転車泥棒」以来、呉明益を読んで思うことはいつも同じ。翻訳された順番に読んでいるので「複眼人」が翻訳された時に少し驚いたけれど、台湾の自然と固有の民族、そして超人的な存在、というのもこの作家を特徴付ける要素だろう。

    作家による解説というのは翻訳書では滅多お目にかからないけれど、本書では執筆の経緯や描かれた事実などについて著者自らの説明が巻末にある。その中にこのような言葉がある『もし読者から、これは環境小説なのか?と訊かれたら、私はこう答える。これは小説である』。作家がわざわざそんなことを言うのは、恐らく「複眼人」や「雨の島」で描かれた内容が、どちらかと言えば環境派と呼ばれる人々の共感を得やすい内容であったからではないかと推察するが、作家の理想とする世界がどうであれ作品としては、単純に環境破壊を凶弾するとか、自然に対する畏怖を持てとか、というメッセージがある訳ではないと自分は思う。ただし、そういう気持ちを持っている人々を丁寧に扱っている、ということは事実としてあるだろうけれど。本書で描かれる「原住民」とセメント工場建設を巡る話も、単純に捉えることはできないような描かれ方をしている。

    そんなことを考えてしまうのは、生前、天野健太郎が先行する「眠りの航路」や「複眼人」ではなく「歩道橋の魔術師」を選んだのは何故なんだろうか、という思いがあるから。並べてみると、日台の複雑な関係が綾となって描かれている「眠りの航路」や超人的な存在が登場する「複眼人」に比べて、「歩道橋の魔術師」は台北の商場が舞台ではあるものの、誰でもすっと入って行き易い小説だなと思う。しかしその後に翻訳されたもの、そして本書を読んで改めて思うのは、呉明益という作家を特徴付ける自然との関りや超人的な存在、そして台湾の先住民族という要素は既に初期の段階からずっと存在していたのだなということ。翻訳された順番で「複眼人」や「雨の島」を読んだ時には作風が少し変わったなと思ってしまったものだけれど、それはこちらの勝手な印象だったという訳だ。

    本書には複数の登場人物が主役級に登場するが、誰一人として起承転結のある物語を紡がない。多少もどかしさも感じるような関係性が描かれるのだけれど、『この小説で書いたのは本当にあった出来事だが(遠い歴史でもなければ、近い未来でもない)』と作家が明かすように、安直な物語に矮小化させることのできない事象が、実は描かれている。その切れぎれのエピソードの書かれていない繋がりをどう読むかは読者に委ねられているけれど、そのようなことに思い至るという行為こそ作家が期待していることなのかも知れない。その意味では、確かにこの本は小説ではあるけれど、倫理や他者に対する畏怖というようなものを考えさせられる哲学の書でもあるのかも知れない。

    0
    2026年01月18日
  • 複眼人

    Posted by ブクログ

    大切な人を失った悲しみは永遠に癒えることはなく、抱きしめて生きていくしかない。
    いつしか、ただ記憶に文字に思い出を留めておくだけでなく、その人の成長した姿までをも想像してしまう。
    複眼人は、そんな生と死をとても静かに見つめているような本でした。
    最後にわかる真実はハッキリそれとわかるように書かれているわけではなく、途中途中の心情から汲み取って、じわじわと気付かされていくような展開でした。
    呉明益さんの作品は、静かだけど激しく想像力を刺激するものだと思います。すごくいい。

    0
    2026年01月02日
  • 歩道橋の魔術師

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    役者あとがきの通り、ノスタルジー的楽しみはこの本の大きな魅力だった。けれどこの時代を行きたことがない自分にとっては新しい世界でもあり、切ない、辛い物語の中であってもどこかワクワクした気持ちで読み進めることができた。
    新公園へ遊びにいく過去の自分は双子の少女に恋をしていた。どちらのことも確かに好きだったのだろう。思春期を迎える前から2人と過ごした彼にとって2人を分けて考えることはできなかったのだろう。あまり褒められたことではないけれど共感できる。
    もっと台北市内の様子を観察しておけばよかった。あの博物館ももっとじっくり見てもよかった。もう一度台湾に行くことがあったらじっくり見て回ろう。
    子供の視点からみた世界を上手に描写しているように感じた。大人になった語り手の視点も介入するけれど、それは味付け程度で、やはり子供の頃の観察が基本になっている純粋でまっすぐな文章だと感じた。井上靖のしろばんばもこんな感じだった。
    この人の本はとてもいい。続編?である眠りの航路も読んでみようと思う。

    0
    2025年10月05日

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