行動経済学が理解できる本である。なぜか、最近この行動経済学が、かなり気に入った。この問題をどう行動経済学で考えるか?を考えるだけで、随分と視野が広がる。人間って、なんと矛盾した生き物であることだと思うが、そこに人間らしさがあるのだろう。
トランプを行動経済学で見てみると、 「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」や「America First(アメリカ・ファースト)」といったシンプルで力強いスローガンは、愛国心や自己防衛の意識といった感情に訴えかけ、国民に特定の行動(トランプ氏への支持など)を促すナッジとして機能し、支持を集めた。メキシコ国境問題を語...続きを読む る際に、「麻薬密売人」「犯罪者」といった言葉を繰り返し用いることで、移民をネガティブな存在として印象付け、壁を作り、不法滞在者(でない人も)を国外に追い出した。「CNNは嘘をついている」などを繰り返しいうことで、支持者が主流メディアの情報を疑い、自分の発言のみを信頼する状況を作り出し、支持者は「トランプの言うことは本当で、他のメディアは嘘をついている」と思い込むようになり、彼の主張が浸透しやすくなった。とにかく、大統領が率先して分断•差別するから威力がある。「失われた栄光を取り戻す」を繰り返しいうことで、昔の強いアメリカの頭で突き進む。トランプの行動は、有権者の非合理的な意思決定傾向(バイアス)を誘導し、この非合理的行動が、実に時代を先取りしているのが、トランプなのだ。
経済学は、「人間の決断はすべて情報にもとづいた合理的なものであり、あらゆる品物やサービスの価値と、あらゆる決断によってもたらされるだろう幸せ(効用)の大きさについての正確な観念によってくだされる。こうした仮定のもとでは、市場のだれもが収益を最大にしようとし、経験を最高のものにしようと努める。」ということを追求してきた。
しかし、行動経済学は、人間の判断や行動が非合理であることを追求する。
人は物事の価値を比較によって判断するものである。比較対象として「おとり(デコイ)」となる劣った選択肢が存在すると、ある特定の選択肢が魅力的に映りやすくなり、選ばれやすくなるという相対性の法則を示している。つまり、人間は、相対的な観点から物事を選択するのである。これは、販売のシーンで活用されている。売れないものも置くことで、売れ行きが良くなる。
カルガモのように、最初に見たものが、母親である。物事を選ぶのは、最初に見たもので選ぶ。それを、アンカリング効果という。無料だと分別なく、いらないものでも、欲しい。無料のためなら、地の果てまで駆けつける。それほど、無料は人間をワクワクさせる。糖質ゼロも、ゼロに惹きつけられ、魅惑的だ。
社会規範と市場規範があり、親切に対してお金を払うものではない。関係が崩壊する。愛はお金で買えない。ビートルズも歌う「キャントバイミーラブ」と。
興奮すると、見境がなくなる。ドーパミン効果は、全てを許す。だから、興奮するとコンドームをつけるのも忘れるのだ。セックスするために、愛してなくても愛してるとさえ叫ぶのだ。情熱はわたしたちが思っている以上にあついのだ。困ったモンだ。行動経済学は、冷静にデータをとって分析する。
高い化粧品ほど、美しくなるって思い込むのは人間だ。プラシーボ効果は、エジプトのミイラの粉でさえ、万病に効くのだ。聖者が触ると病気が治るのはプラシーボ効果なのだ。民間伝統秘薬でがんが治るって、ありえないのに治る人もいる。多くは、死んでしまうが、人間は一度は死ぬのだ。
共同で使用する冷蔵庫にあるコーラは、なくなるが、冷蔵庫に置いた1ドル札はなぜかなくならない。共同トイレのトイレットペーパーも同様で、そのささやかな罪は容認されるのだ。シェークスピアは、「人間とはなんとすばらしい傑作か!」と表現した人間像とは違う非合理であることに、行動経済学は、解明し、理論づけるのだ。
オレオレ詐欺は、行動経済学に基づいて完成する
犯人はまず、「息子が事故に遭った」「トラブルに巻き込まれた」など、緊急かつ深刻な事態を装い、被害者に強い不安や動揺を与える。
この情動ストレスが高まることにより、被害者は冷静な思考が難しくなり、「騙されているのではないか」という合理的な疑いを抱く余地が失われる。視野狭窄となる。動揺している状態では、人は複雑な状況を深く分析するよりも、提示された具体的かつ単純な解決策に飛びつきやすくなる。
詐欺師が警察官、弁護士、銀行員などの権威ある立場を装うことで、「この人物の言うことは正しいに違いない」と無意識のうちに信じ込ませる。複数の人物(例えば、息子とその上司、警察官など)が関わっているかのように見せかけることによって、「多くの人が関わっている=本当の事態に違いない」と認識させ、信憑性を高める。そして急がせ、周囲の人に相談させないようにする。
返報性の法則を使い。人は他者から恩恵や親切を受けた場合、「お返しをしなければならない」という強い心理的義務感を抱かせる。詐欺者は親身になって話を聞き、トラブル解決に協力的な態度を示すことにより、被害者に対して「この人は信頼できる」「助けてもらっている」と感じさせ、最終的な金銭の要求を断りにくくさせる。シナリオはできているのだ。こうやって、年寄りのタンス預金を奪う。行動経済学のたくましく、完成された構造に感心をするのだ。
ダン•アリエリーは、アンカリング効果、無料の魔力、損失回避などを提唱。
行動経済学は、ダニエル・カーネマン が確立。『ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるか?』が代表作。2002年にノーベル経済学を受賞。リチャード・H・セイラーが、『行動経済学の逆襲』が代表作、2017年にノーベル経済学を受賞している。
なぜ?を考える上で、行動経済学は、わかりやすいロジックが見つけることができる。