去年の秋は、どうしても気持ちが落ち込んで、何も手につかない苦しい日々を送っていました。
その時期、縋るように繰り返し読んだのがこの本です。
精神科医が語る「絶望とは」そして、絶望と向き合ってきた歴史上の人物の話、吉本ばななさんとの対談まで幅広く書かれています。
第一に、絶望に陥っているのは君だけじ
...続きを読むゃない、というシンプルなメッセージ。
絶望というのは非常に主観的なもので、同じ境遇でもへっちゃらな人もいれば、人生の終わりのように感じる人もいる。
そんな絶望ですが、深い絶望と向き合ってきた歴史上の人物(芥川龍之介やキェルケゴール、フランクルなど)の話は非常に興味深いものでした。
私にとって絶望というのは、極寒の地に一人で立ち尽くすイメージです。心を強く対処法を身につけているならば、ある程度防寒具を着たりして備えられますが、備えのない人間にとっては裸で雪の上に立っているようなもの。体力が尽きたら死んじゃいます。
そこで人に相談して重荷を背負ってもらったり、気分を転換したり、というのももちろん絶望回避の手法の1つですが、本質的に絶望を乗り越える、ということができたなら、それは自分の人生を根底から掘り起こし、新しい人生に目を見開かせる大いなる転機になる、と述べていることに勇気づけられます。
実際のところ、臭いものにはフタをするように、辛い気持ちを紛らせる方がずっと楽だけど、とことん向き合うことにすごく意義があると感じています。
まだまだ弱いからすごく消耗してしまうけど。
本書は絶望しているすべての人におすすめしたいけど、吉本ばななさんファンにも必読です。
吉本ばななさんが「人間が苦悩や絶望にあっても、どこかに救いがあるんだ。その救いをみつける試みのない小説を私は書きたくない。やはりささやかなものであれ、そこに生きる希望を残すメッセージを送り出せる小説を書きたい」と述べていて、ああだから彼女の小説はあんなにもやさしいんだ、とすごくしっくりきました。
しばらく本棚に入れておいて、辛くなったらまた読もう。