飲まずにはいられない、描かずにはいられない。
永田カビ31歳、自分を見失い、アルコール性急性膵炎に……
慢性的な生きづらさ、創作による苦しみから逃れるため、どんどん増えていく酒量。ある日、耐えきれない腹痛におそわれ病院に行くと「アルコール性急性膵炎」と診断され即入院となる。この本は、その入院生活
...続きを読むと退院後・コミックエッセイを再度描くに至るまでを描いた実話である。
発達障害の薬の副作用もありアイデアが浮かばない絵が描けない苦しみから逃れるために酒に溺れた永田カビは、アルコール性急性膵炎となり入院した。入院中は、吐き気や痛みや熱に苦しみ、血がドロドロで採血が困難なほどだった。
入院中に最初の作品の英語版かアメリカの名誉ある漫画賞を受賞したり、「食」をテーマにしたコミックエッセイの依頼が来たり、歯痒い思いをした。
前作のコミックエッセイで両親に辛い思いをさせたことに罪悪感を感じた永田カビは、入院中フィクションのコミック執筆に力を入れる。点滴の取り扱いや流動食に苦労する中で数値が安定して退院することになった永田カビだが、一生酒は飲めず、一生薬を飲んでいかなければならないことや食事に制限がついたことに落ち込み、母親に「不可避な変化って辛いな」と愚痴っていると、母親は「逆を言えば、一生お医者さんに面倒見てもらえるということだから安心」と言われて少し元気が出た。
ただ食事制限が「油ものは禁止」というざっくりしたものだったので、スーパーで脂肪分の少ない食品を探して食べるようにし、かまぼこなどの練り物やイングリッシュ・マフィンやベーグルなどのパン類を重宝した。
だが、なかなかフィクションのコミック執筆が進まず、酒からなかなか逃れられない辛さが限界にきていた永田カビの希望になったのは、「一人交換日記」の感想をメールで送った卯月妙子さんの言葉「死なないことが難しいのは百も承知です。でもどうか明日が続く先に思いがけない希望が待っていることを願い死なないで欲しいと思いました」だった。
コミックエッセイの執筆に消極的だった永田カビは、佐々木ののかさんの文章を読んで、「作品として自分を昇華し開示する」コミックエッセイのカッコよさに感動した永田カビは、入院中の闘病などを題材にしたコミックエッセイの執筆に着手する。その決心は、卯月妙子さんの「描くことに自由であってください」という言葉も背中を押した。コミックエッセイの執筆の中で、「作品の良し悪しは、どの視点で描くかによる。自分の生きづらさやさみしさや作品のテーマは「誰かと特別な存在同士になりたい」という愛を求めている願望だ」ということに、永田カビは気づいた。
コミックエッセイでブレイクしたのに、親への罪悪感からコミックエッセイを封印してスランプに陥っていた漫画家永田カビのスランプ脱出記としても楽しめる実録闘病コミックエッセイ。