原リョウの作品一覧
「原リョウ」の「そして夜は甦る」「愚か者死すべし」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「原リョウ」の「そして夜は甦る」「愚か者死すべし」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
九州大学文学部美学美術史科卒。1988年『そして夜は甦る』でデビュー。『私が殺した少女』で第102回直木賞を受賞。『愚か者死すべし』、『天使たちの探偵』などの作品を手がける。
Posted by ブクログ
▼再読・・・・か、再再読か(笑)。
原りょうさんの、遺作。探偵沢崎シリーズ最終作(別に何も完結していないけど)。
舞台は2010年から2011年で、小説上梓が2018年。
▼とある金融会社と暴力団の繋がりが、殺人に繋がり、私立探偵・沢崎が巻き込まれる・・・・というような段取りなんですが、当然ながらこのシリーズは、
<段取りだけ聞いても全く面白そうに思えない>
<段取り的に言うと、キモなことが意外と分からないまま平気で終わる>
この話も、犯罪の動機とか手段とか、そのあたりはよくわかりません(笑)。
良く分からないまま終わります(笑)。
▼このシリーズの大いなる魅力は、レギュラーの素敵な面々と沢崎のやりとりなんですが、第1作(1988)から、実に設定上22年が経過しています。第1作でチンピラだった男が、中年男になって親の介護をしていたりする。そのあたりの味わいが極上です。一方で、沢崎さんはなんと、いまだに携帯電話を持っていない。スマホではないですよ。携帯を持っていないのです。携帯を持っていない探偵・・・。ただ、沢崎さんにとっては、伝言サービスのおねえさんとのやりとりが必須だから、仕方がない(笑)。
そのあたり、ほとんどもう、大気圏を突破してファンタジーの領域に突入した極上のハードボイルド。スルメか昆布か沢崎か、という味の渋さと奥深さ。3年もすれば、またきっと再読します。なにしろ、ミステリーとしての段取りは物凄く複雑なうえに説明が不足していて、よく訳が分からない。分からないから覚えられない。すぐに忘れるから、再読すると、ほぼ七割がたドキドキして楽しめてしまうのです。
実に小説らしい小説です。大好きです。
ある意味、今、日本人に親しみのある小説家で言うと、村上春樹さんがいちばん近いと思います。村上さんの長編も、「なにがどうして起こったか」なんて、絶対だれも分からないでしょう?きっと書いてる本人も「分って」はいないでしょうから(笑)。
でも、おもしろい。
分かるか分からないかよりも、面白いか面白くないか、ですよね。
▼おおまかな備忘録(ネタバレあります)
・金融会社の支店長・望月という中年男性が、沢崎を訪れ
・赤坂の料亭の女将のなんとかさんの、信用調査を依頼
・ところがそのなんとかさんは死んでいた。妹さんが継いでいた。混乱。
・望月さんに会いに職場に行ったら、強盗と出くわす。さらに、支店長であるはずの望月さんが失踪している。
・さらに、そこで海津という好青年と知り合う。さらに、結局強盗は金庫を開けられなかった。警察が金庫を開けたら、帳簿に無い現金が数億円あった。
・海津青年は、助手っぽくなる。沢崎に、「僕の父親では?」と問う。なんだけど、あちこちでそう言っていることが分かる。実際、父親は分からない。
・望月の別宅のマンションで、暴力団関係の死体が発見される。
・望月の家族への取材などで、潜伏先をさぐる。
・望月はやがて自首してくる。恐らく暴力団の裏資金の洗浄とかしてた。
・だがその望月は、沢崎の依頼人の望月ではなかった。依頼人は「望月の名前を騙った誰か」だった。
・その誰か、が、料亭の女将の線から(だった気がする)とある金持ちに特定される。先代の女将と、悲恋の間柄だった若死にした画家の物語。
・その「誰か」さんが、悪人ではなく、海津青年の実の父親であることが分かる。
・しばらくして、沢崎は新しい西新宿の事務所に転居しているが、2011年3月11日、東日本大震災に襲われる。
Posted by ブクログ
【900冊目記念レビュー】誘拐されたヴァイオリンの天才少女を探せ! ハードボイルドの名作シリーズ、第102回直木賞受賞作
■あらすじ
私立探偵沢崎のもとに依頼の電話が入る。依頼人の自宅に行くと、いきなり誘拐犯の扱いを受けてしまう。事情を聞くと、依頼人の娘であるヴァイオリンの天才少女が誘拐されてしまったというのだ。
警察から犯人扱いをされる沢崎だったが、続けて犯人から身代金の運搬を指示されてしまう。図らずも誘拐事件に巻き込まれてしまった沢崎は…
■きっと読みたくなるレビュー
900冊目のキリ番記念に読んだのは、骨太な私立探偵小説、ハードボイルドの名作。第102回直木賞受賞作です。
始まっていきなり面白い。依頼人から呼び出されたと思ったら、あっという間に事件に巻き込まれる。ドタバタ劇から主要人物の背景説明が一気になされ、探偵フェーズに入っていく。もう物語なら抜け出せず、最後まで一気読みですよ。
なんつっても主人公である沢崎がカッコいいすね~ 令和の時代だと絶滅してそうな男くさい男、相手が警察だろうが暴力団だろうが決して負けず、自身の考えを貫いてゆく。そんな彼もかつて仲間との間でとある出来事があり、心の傷を抱えている。
もはや精神力だけで私立探偵を続けているようにも見えてきますね。依頼人のため、真相を導くため、無骨でクールにひとつひとつ丁寧に捜査を進めていくのです。他の登場人物たちも人間臭くっていいすね。特に刑事やヤクザたち、いかにもプライドの塊って感じで最高に好きです。
またストーリーも秀逸ですよね。ひたすら人探しになりがちな私立探偵小説ですが、いろんなイベントが差し込まれて読み手を飽きさせない。
中盤、身代金を追って、とある老婆を尾行する一幕があるんですが、どうなることやとドキドキハラハラの緊迫感に潰されそうになる。さらにこの局面では、驚きの真相が待ち受けており、読者はすっと足をすくわれるのです。こういった工夫された展開が素晴らしいんすよ、もう安心して楽しめますよね。
物語が終盤になると、いよいよ真相が浮き彫りになってくるんですが… 果たして大金の使い道は何だったのか? この誘拐事件は何だったのか? 本作におけるコアとなる謎については、なかなかの強烈な事実が提示されます。人それぞれ様々な想いや背景があるのはわかるけど、犠牲者は声をあげることができないことを忘れてはいけません。
ハードボイルドとしても、ミステリーとしても楽しめる名作でしたね~。読み終わったあと、じっくりと余韻に浸ってしまう作品でした。原尞先生の沢崎シリーズ、まだまだ読み残してるので、ゆったりまったり読みたいなーと思いました。
■ぜっさん推しポイント
本作の強みは「古めかしさ」ですね。何でもクラシックの良さってのがあって、眺めていると味わい深く吸い込まれてしまうような、あの感覚です。
沢崎の目線で物語が語られてゆくのですが、ひとつひとつの行動が良く言えばシブイ、悪く言えば古臭い。ビル窓ごしにブラインドを開け、夕焼けが広がる街並みを眺めて思いをはせるなんざ、今どきキザすぎて誰もやりません。でもそれを沢崎がやると、とてつもなくカッコイイんすよ。往年の石原裕次郎を思い出しちゃいました。