認知ではなく、認識(パーセプション)に関して触れたマーケティングの本。
その商品を認知されるだけではダメで、
なぜその商品を使うべきか、使うことによる効用を正しく認識されることの重要性が書かれている。
パーセプションを確立するにはいくつかのパターンがある。
1.事象
事実や事象を見てそれがこうである、と認識する。
例えば、かつてハイボールブームを巻き起こしたサントリーは、若者がハイボールで乾杯する酒場を意図的に都内に出現させた。
意図的に作り出したこの事象をメディアが取材することで、「衰退していたウイスキーが、ハイボールで若者に人気になっている」というパーセプションを世の中に広めるきっかけとなった。
2.リテラシー
ユーザーが持つ前提知識とのギャップによって生まれる。
例えば、スウェーデンでは数年前に、オーガニック食品を2週間食べてもらい、子供達から検出されてた化学物質の数値がゼロになった、という実験を動画マーケティングを行った。
スウェーデンでは、オーガニックが身体にいいと言うことが認識されていなかったため、これによる効果がかなり大きかった。
3.グループ
どこに所属しているかによって見え方が変わる。
例えば、電動車椅子が挙げられる。
介護や障害者向けのグループであれば、移動が困難な人向けの補助製品、パーソナルモビリティのグループであれば次世代の移動手段としてみられるように、投入するカテゴリーによって見られ方が変わる。
4.タイミング
コロナ禍のマスクがまさに。
風邪の人がつけるくらいのマスクが、コロナ禍では全員が感染予防だけでなく、他人からの見られ方を気にしてつける。
社会のタイミング、状態によって変わった典型例。
5.コントラスト
東京タワーとスカイツリー。
スカイツリーが出来るまでは東京タワーが高いイメージで、観光スポットだったが、今では同じタワーではスカイツリーの方が高いし人気。
以下、事例ごとに紹介。
・アリエール
2000年代前半
「除菌」を付加価値として訴求。
天日干しをすればバイ菌は無くなると思ってた消費者に対して、
専門家と研究を行った結果を発表し、それだけでは菌は無くならないことを訴求し、通常の選択では菌は無くならない、洗剤で除菌した方が良いと言うパーセプションを確立した。
・森永ラムネ
19年に大ヒット。
二日酔いにはブドウ糖を取れるラムネが効く、と言う口コミが広まり一気にヒット。
元々は子供用のお菓子というイメージだったことに対して、二日酔いに効くという認識を得ることで4年前の2倍の売り上げになった。
・atama plus
AIを活用し、基礎学習能力を上げると言う認識を得る。
大手学習塾のZ会が個別指導教室にatama+を活用した学び方を導入したことで、生徒の成績がグッと上がった。
この成果を受け、その他の大手塾でatama+の導入が進んだ。
そして19年3月には大手予備校の1つ、城南予備校が長年培ってきた集団授業型の学習カリキュラムを全面廃止し、atama+を活用したカリキュラムへと完全に切り替えた。
城南予備校の決断は塾業界にインパクトを与え、他の塾も続々導入し、塾業界はAI学習に対して新たなパーセプションを持ち始めた。
メディアの露出が増えたことを機に、大企業との提携や、AI技術を活用した専門人材の育成、資格試験の勉強と効率化といった魅力的な新事業の相談が舞い込むようになったそうだが、すべて断った。
広く認知を取りに行くよりも、基礎学力の習得はAIによって効率化できるという、限られた小さな領域のパーセプションをつくり上げるべきだという判断からそうしたらしい。
あえて「日本国内の塾マーケットの中高生に基礎学力を向上させる」ことに絞り、地道に啓発してきた結果、塾業界に新たなパーセプションが生まれるに至った。
・資生堂のメンズ化粧品 uno
男が化粧をする、と言う認識では売れなかった。
「第一印象は作れる」と言うパーセプションを作り成功。
その認識を持ってもらうべく、起業家向けセミナー、転職・就活セミナーで紹介した。
そしてこのセミナーの様子をメディア露出させると言う形でパーセプションを広げた。