■糖質疲労の定義
食後高血糖及び血糖値スパイクにより、
①食後に、眠い、だるい、食べた割にはすぐに小腹が減る、集中力が持たない、イライラする、首の後ろがずんと重くなるといった症状を自覚する状態
②この状態を自覚せずとも周囲から指摘される状態
③自分で「食後血糖値」を測定して140mh/dl以上になっている状態
■血糖値スパイクとは、食後高血糖とその後の血糖値の急峻な降下。
■糖質疲労の解消には「カーボラスト」
カーボラストとは、糖質を最後に食べる食べ方。ご飯やパンなど糖質に手を付けるのは早くても一口目を食べ始めてから20分後を推奨。必ずしもベジファーストである必要はなく、ミートファーストやフィッシュファーストでもよい。
「三角食べ」は血糖値スパイクを起こす。
■高齢者の熱中症予防に「スポーツドリンク」は危険。
スポーツドリンクは500mlあたりの糖質量が31g程度。別な形で表現するとスポーツドリンクは6200mg/dlのブドウ糖濃度。血糖値は100mg/dl程度なので圧倒的な濃度差がある。かいた汗の代わりにスポーツドリンクを置き換えるべく飲み続けていたら、気づかぬうちに血糖値が上がって脱水状態と同じことになる。
こうした病状は「ペットボトル症候群」と名付けられ、炭酸系の加糖ドリンクと同様に恐れられる。エナジードリンクもだめ。
■アスリートは普段から糖質を控え、脂肪をエネルギーとして使える体をつくり、試合でも脂肪を燃やして持久力を高めるという「ファーストアダプテーション」という食事法を採用している。
運動前に高血糖をきたすとその後に急峻な血糖の下降が生じ(つまり血糖値スパイクを生じて)糖質疲労を起こす。
箱根駅伝の一区間やハーフマラソンといった20km程度(1時間程度)の運動では運動中のエネルギー補充は、ほぼ不要とされている。それでも箱根駅伝で低血糖で動けなくなる選手が出てくるというのは、運動前の糖質摂取に問題があるのだろう。
■日本人は欧米人と比べインスリンの分泌能力が遅い。欧米人に比べると、少ない糖質量でもインスリンが追いつかなくなって血糖異常を起こしやすい。
■中国人では食後高血糖(≒糖質疲労)は成人の二人に一人であると報告されている。日本人でもそうなのだろうと思う。その背景として、東アジア人ではインスリン分泌が欧米人より少ない(遅い)ことがある。これは東アジア人では太ることもなく高血糖が起きるといういこと。
欧米人は血糖異常を呈さぬようにインスリンを多量に出して血管内のブドウ糖を脂肪細胞に取り込ませることができるため、高度の肥満症の人が多くなる。欧米人で見かける高度の肥満症がインスリン分泌の少ない日本人では糖質疲労の形になって表現されている。いずれも根っこにあるのは糖質の過剰摂取。
■肥満(内臓脂肪の蓄積)がメタボリックシンドロームの必須項目とされているのは、実は日本だけ。世界的には太っていなくても血糖や血圧や脂質の異常を認めればそれだけでメタボリックシンドロームと診断される。
■20歳以上の二人に一人が糖質疲労。
「血糖異常=太っている人がなるもの」というイメージは日本では当てはまらない。
■欧米人の場合、インスリンの分泌能力が高いので、糖質を大量に取ると、インスリンも大量に分泌され、その働きで糖が脂肪にどんどん取り込まれ、肥満になる。肥満になって脂肪細胞から分泌されるホルモン(アディポカインという)の影響でインスリンの働きが邪魔されるようになってから血糖異常につながる。
一方、インスリンの分泌能力が弱い日本人は、ある程度の糖質をとるとたちまちインスリン分泌が追いつかなくなり、太る前に血液に糖が溢れる高血糖となってしまう。糖質疲労のある人で努力の割に痩せられないという経験のある人がいるとすれば、食後高血糖は若干改善したとしても、なお最大限にインスリンを分泌し続けてしまっているからかもしれない。
■ロカボの7ルール
①1日に取る糖質の量は70〜130g以内
②お腹いっぱいになるまで食べる
③カロリーは一切気にしない
④タンパク質、脂質、食物繊維をしっかりとる
⑤糖質とタンパク質、脂質のバランスも気にしない
⑥糖質抜きを目指してストイックになるのはNG
⑦早食いをせず「カーボラスト」でとる
■糖質を控えるとカロリー消費が1日300kcalも低下してしまうことや、タンパク質や脂肪を摂取すると満腹感を作るホルモンの数値が高く、長く分泌され、空腹感を感じさせるホルモンの数値が低く、長く抑制される。
■日本人はバターやお肉の脂を「食べる方がよい」
脂質の質を問題にされる方がおり、そういう方の多くは動物性脂肪=飽和脂肪酸が問題だと思っている。しかし、2013年に動物性脂肪(飽和脂肪酸)を控えることでかえって死亡率を上昇させてしまうという論文がシドニーのグループから発表された。ちなみに、「日本人は動物性脂質の摂取量が多いほどの脳卒中の発症率は低い」という論文が出ている。
■血中コレステロールが心配だからと「卵を控える」のは無意味
食べるコレステロールを控えると、それを補うように肝臓がコレステロールを合成して血中に放出し、食べるコレステロール量が増えると、肝臓がコレステロール合成を休む。
■タンパク質と脂質は、空腹感をもたらすホルモンである「グレリン」の分泌を長く抑制するので、満腹感が長続きする。逆に糖質はグレリンを抑える作用が弱いので、お腹いっぱい食べても小腹が空きやすい。
■マヨネーズを加えると血糖値が劇的に上がりにくくなる
■1食あたりの糖質は「おにぎり1個まで」。おかずを増やしてお腹を一杯にする。
■「満腹中枢」を正常に戻すには、タンパク質と脂質をお腹いっぱい食べること。
■血糖値スパイクが起こると酸化ストレスが大量に発生し、血管を傷つけるので、血糖値スパイクを繰り返せば「傷←→修復」の繰り返しで動脈硬化が進み、脳梗塞など脳細胞の死滅を招く病気につながるリスクも高まる。血糖値の上下動の大きさ(=血糖値スパイクの大きさ)と認知機能とに負の相関(血糖値の上下動が大きい人ほど認知機能の点数が低くなる)という報告がある。