金井美恵子の作品一覧
「金井美恵子」の「愛の生活・森のメリュジ-ヌ」「噂の娘」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
金井美恵子作品に触れるのは初。
2023年にポリー・バートンによって英訳されてからニューヨーク・タイムズやアトランティック誌に書評され話題になった。
自分も手に取ろうとは思っていなかったのだが帯の文章で、引き合いに出されている映画監督にシャンタル・アケルマンの名前があり興味が湧いた。
読んでみると確かにこれはシャンタル・アケルマンの大傑作『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』っぽさがある。そして同様に引き合いに出されていたルイス・ブニュエルの『昼顔』の感じもある(こちらは本文で明確に目配せされている)
だが『軽いめまい』の主人公の夏実はジャンヌやセヴリーヌのように売春をするわけではない。
郊外の住宅地に中古だが良い感じのマンションを購入し、夫と子供2人、専業主婦の夏実は暮らしている。生活に不平不満があるわけではない。愚痴や文句はあっても満ち足りた毎日を過ごしている。
しかし、日常のふとしたときに軽いめまいに襲われる瞬間がある。
そんな90年代の日本の中産階級の日常描写が描かれているが、この描き方が興味深い。
いわゆる”意識の流れ”小説だが、読点を多用し、意識があちらこちらへと行き交う様子がとても長いセンテンスで語られていく。
そしてあるかもしれない別の日常を他者を通して夢想していく。
ちなみに2024年のブッカー賞のノミネートに『軽いめまい』は入っていたが、2025年は市川沙央『ハンチバック』がノミネートされている。どちらも訳者はポリー・バートンで、英国ではとても人気のある訳者とのこと。柚木麻子の『BUTTER』もこの方の訳で、大きな話題になってるんだとか。
あと巻末にエッセイ集『重箱のすみ』に収められている『めまいの映画史』の再録エッセイが素晴らしくて、金井美恵子の映画評をまとめて読みたくなった。