BookLive!書店員×『うつヌケ』田中圭一先生インタビュー

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BookLive!書店員×『うつヌケ』田中圭一先生インタビュー

「漫画家が命を込めた一コマ」を探る独占インタビュー企画。記念すべき第20回は、今までインタビュアーとして聞き手側に回ってきた田中圭一本人を直撃! 2017年、『うつヌケ』で一大旋風を巻き起こした“イタコ漫画家”田中圭一に、長年BookLive! でタッグを組み親交も深い書店員・おにぎりが、彼の漫画家としての本質に迫る! さらにイタコ漫画家のテクニックも動画でお披露目!
[インタビュー公開日:2018/3/30]

今回のゲスト田中圭一先生

田中圭一先生

1962年5月4日生まれ。大阪府出身。血液型A型。
大学在学中に小池一夫劇画村塾神戸教室に第一期生として入学。1984年、『コミック劇画村塾』に掲載された『ミスターカワード』で漫画家デビュー。
2002年発行の手塚治虫タッチのパロディーマンガ『神罰』がヒット。著名作家の絵柄を真似た下ネタギャグを得意とする。また、デビュー当時からサラリーマンを兼業する「二足のわらじ漫画家」としても有名。自身のうつ症状を振り返った作品『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』が2017年に書籍化され、ユーキャン新語・流行語大賞に『うつヌケ』がノミネートされるほどの話題となった。現在は京都精華大学 マンガ学部 マンガ学科 新世代マンガコース/ギャグマンガコースで専任准教授を務めながら、株式会社BookLiveにも勤務。

今回の「一コマ」作品『田中圭一最低漫画全集 神罰1.1』

『田中圭一最低漫画全集 神罰1.1』

2002年発行の『神罰』が、バージョンアップしてさらにサイテー(褒め言葉)に! 手塚治虫や藤子不二雄、永井豪、本宮ひろ志など、漫画界の重鎮をオマージュした画風で、全ページにわたってお下劣パロディーが炸裂する。帯では「ライオンキングは許せても、田中圭一は許せません!!」と手塚治虫の娘・るみ子氏からの檄が飛ぶ、神をも恐れぬ一冊。

インタビュアー:BookLive! 書店員・おにぎり 趣味と実益を兼ねて漫画・アニメにまみれる書店員。長年、BookLive! で田中圭一の企画を担当。インタビュー企画「わが生涯に一片のコマあり」や、動画配信企画「うつ&ペンまつり」などで、定期的に田中圭一ネタをお届けしている。

インタビューインデックス

  • 『うつヌケ』念願の30万部! それでも本質は「漫画家・田中圭一」
  • 漫画体験の原点は、今なお大きな影響を与え続ける『デビルマン』
  • 漫画の面白さはギャップで生まれる “劇画調ギャグ”で決まった方向性
  • 何度でも蘇る“ベテラン新人” イタコ漫画家としての生き方
  • 「手塚タッチ×不条理ギャグ」の到達点となった「一コマ」
  • [スペシャル動画]イタコ漫画家・田中圭一が○○タッチを解説!
  • インタビューをされ終えて(田中圭一描きおろしイラスト)
  • 直筆サイン色紙を1名様にプレゼント!

『うつヌケ』念願の30万部! それでも本質は「漫画家・田中圭一」

――まずは、2017年に刊行した『田中圭一の「ペンと箸」』『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(以下、『うつヌケ』)が、世間を席巻した1年についてお伺いします。このブームと大反響、ご自身で振り返ってみていかがでしょうか?

何よりも『うつヌケ』が、長い間の憧れだった30万部を突破しまして。漫画家の「勝ち組」「負け組」を分けるボーダーラインは30万だと、常々言っていたんです。まさか自分が30万部いくなんて思っていなかったから……(笑)。

――なぜ、ボーダーラインが「30万部」なんですか?

1冊でもいいから30万部ヒットすれば、作品のタイトルだけでなく、作者名も覚えてもらえると思うんです。そこで「あの漫画を描いた○○さん」と言われるようになると、作家のブランドで仕事ができる。西原理恵子さん(※1)とかまさにそうですよね。そうなったらブランド力目当てで出版社から原稿依頼が来て、その内容を期待した読者が作品を買ってくれる、といういいスパイラルに入る。

――なるほど。

『うつヌケ』は最初、3~5万部売れてくれたら御の字だと思っていて。10万部すら夢のまた夢と思ってたら33万部! 本当にびっくりしましたね。

――想定の10倍以上にあたりますね。

今にして思うと、一緒に組んだ編集さんや単行本の営業、装丁担当、広報の方などのレベルが高かったんです。関わったそれぞれの人たちが10万部クラスの実力を持っていて、全員の力が合わさって30万部になったという感じはありますね。そういう人たちとどう巡り会うかが、作家にはとても大事なんです。いいパートナーが見つかると、過去に最大10万部しか売れなかった漫画家でも、30万部売るチャンスはあるんだってことで(笑)。

――特に『うつヌケ』は、たくさん取材が来ていましたよね。雑誌、新聞、テレビ、ラジオ……メディアを一巡した感じがありますが。

そうですね。ただ、自分の本質を改めて考えた時に、「『うつヌケ』の田中」ではないだろうと思ったので、同人誌、ギャグ漫画、ゲーム業界レポート漫画なども続けています。『CONTINUE』(※2)では、次号から連載も始まりますし。『うつヌケ』から約一年経って、再び自分のポジションに戻ってきたという感じはありますね。

――『うつヌケ』は、世の中が「うつ病」というテーマを見直すきっかけになったという功績もさることながら、これからの漫画の売り方や、今後若い漫画家が芽を出していくためにどうすべきかというマーケティング手法を提示したという点でも、大きい意味を持っていると感じました。

単行本より先に、note(※3)で一話100円で売っていましたからね。原稿料を回収した上で利益が出ていて、最終的には単行本化。このスタイルは新しかったし、雑誌に頼らなくても赤字にならないやり方として見習う点がある、と言われたことは嬉しかったです。
去年は『こぐまのケーキ屋さん』のカメントツさん(※4)や、『やれたかも委員会』の吉田貴司さん(※5)など、そうやってスポットライトを浴びてる作家さんが随分と増えたなと。雑誌でなかなか連載が取れないとか、単行本は出たけど2巻が出ないという漫画家さんも、ダイレクトに作品を売れる流れができ始めているんです。

※1 西原理恵子
高知県出身の漫画家。ラフで大胆なタッチの絵柄や、型破りなギャグが特徴。赤裸々なエッセイ漫画も人気。代表作に『毎日かあさん』『パーマネント野ばら』『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』など。
※2 『CONTINUE』
2001年3月に創刊した、太田出版が刊行するゲーム・アニメ雑誌。2010年2月より休刊していたが、2018年1月に復刊。3月発行のVol.52より、田中圭一の「夏のモンド」が連載開始。
※3 note
株式会社ピースオブケイクの提供によるウェブサービス。個人のクリエイターが文章や写真、イラスト、音楽、映像などを手軽に投稿・販売まで行える。
※4 カメントツ
愛知県出身の漫画家。代表作に『カメントツの漫画ならず道』『僕はせんそうをしらない』など。Twitter上にアップされた『こぐまのケーキ屋さん』は、愛らしくて少しとぼけたこぐまが人気となり、100万RTを超えて書籍化もされた。
※5 吉田貴司
大阪府出身の漫画家。2016年4月からnoteに掲載を開始した『やれたかも委員会』は、女性との「やれたかもしれない」思い出を持つ男性を主役とした、オムニバス形式のラブコメ漫画。2017年に単行本化、2018年1月にはドラマ化もされた。

漫画体験の原点は、今なお大きな影響を与え続ける『デビルマン』

――最近は、多くの媒体でうつ病に関するインタビューが多い圭一先生なんですが、この「わが生涯に一片のコマあり」(以下、「わがコマ」)は、漫画家さんのルーツを追求していくインタビュー企画なので、まずは圭一先生が漫画に目覚めるきっかけになった作品について伺いたいと思います。10歳の頃に読んだという『デビルマン』(※6)を挙げていただきましたが……。

僕は非常にラッキーなことに、『週刊少年マガジン』連載当時の『デビルマン』を毎週追いかけていたんです。みなさんの多くは、単行本であの盛り上がりやどんでん返しを一気に読んで「すごい」って言いますけど、あれを一週間待って読むっていう……すごい体験をさせてもらいました(笑)。

――後世の読者が、もう絶対にできない体験ですね(笑)。

週刊連載の漫画は毎週終わり方に引きがあって、翌週どうなるんだろう、となる。ドラマもそうですよね。DVDで一気に観るのも良いんですが、「この続きは来週まで待たなきゃいけないのか……!」となる、あのワクワク感。それを初めて体験したのが『デビルマン』でした。
それまでは『天才バカボン』とか、分かりやすい読み切りのギャグ漫画目的で雑誌を読んでいたんです。連載漫画は一回見逃すと分からなくなるから嫌だったんですが、通っていたそろばん塾に雑誌が置いてあったので、逃すことなく読めたんです。

――当時『デビルマン』は、テレビアニメと同時に漫画連載がスタートしたそうですね。

テレビアニメはまさに子供のための、「仮面ライダー」や「ウルトラマン」の流れを汲んだアニメでした。毎回悪い悪魔がやってきて、主人公がデビルマンに変身して倒す、っていう。同時に始まった連載漫画もそういう話だと思っていたら全然違って、そこにまず引き込まれましたね。
アキラがデビルマンになり、デーモン族の送り込んできた刺客を倒すところまでのフォーマットは、アニメと近い。ただ、そこから世界中を巻き込んで、どエライことになっていく。あの想定外の展開を毎週追いかける中で、「漫画って面白いな」と感じるようになったんです。

――私はこれまで『デビルマン』の漫画やアニメは未見で、先日、湯浅政明監督のアニメ「DEVILMAN crybaby」(※7)を拝見したんですけど、怒涛の展開とラストに圧倒されました。観た後にしばらく放心して、圭一先生に「やばい」と語彙力のない感想を送って(笑)。あのストーリーが1970年代に作られていたということが、若い世代としてはとてつもなく衝撃でした。

『デビルマン』のラスボスの正体なんか、それまでの「ウルトラマン」や「仮面ライダー」では絶対にありえなかった。永井豪先生も当初予定していなかったそうですから、天から何か電波が降ってきた、みたいなものはあるんでしょうね。
『デビルマン』を最近見直して思い出したのは、「わがコマ」の第一回に登場した新條まゆ先生のエピソード。打ち切りが決まりそうになった時、それまでの話を読み返して、当初では想定していなかったものを伏線に見立てた展開を思いついた。『デビルマン』のとあるキャラでも、そういう後付け設定があるんです。
『デビルマン』は作品としても面白いけど、作り手側からしても奇跡のような漫画。意識しないで打っていた布石が、最後に全部繋がるんです。描いている永井豪先生も、鳥肌が立ったんじゃないかな。

――読者側も、伏線が「狙っていたもの」なのか「後づけ」なのか、というのはなかなか気づかないですよね。

むしろ、最初から伏線にしようと思うともっとあざとくなっていたでしょうし、伏線じゃないからこそさりげないわけで。改めて1巻から読み直してみると、「ああ、ここでも!」っていうのがありますから、永井豪先生の潜在意識の中で、そういった箇所があったのかもしれません。

――それが結果的に良かったのかもしれませんね。

永井豪先生の自伝的漫画『激マン!』で知ったんですけど、『デビルマン』は打ち切りだったそうです。同時に始まったアニメが終わったあたりで、編集長から次の作品を描くように言われたと。
ただ、当時は単行本3巻ぐらいの、ちょうどここから世界を巻き込んで……みたいな展開になっていくところ。永井豪先生は編集部を説得して、5巻まで伸ばしてもらったんです。だから、最後の悪魔軍団とデビルマン軍団との戦いは見開きで終わるんですが、本当なら単行本丸々一冊使って何度も攻勢が逆転して、という大戦争を描きたかったみたいですね。でも今にしてみると、あそこはバンと端折ったからこそ、ラストが活きる気がします。

――いま人気のある漫画は、どれも数十巻に及ぶ長寿作品が多いので、あの話を全5巻という密度で詰めたというのが尚更すごいことだなと感じます。そして「DEVILMAN crybaby」としてリメイクされたことで、新しい世代にも受け入れられている。

いまの若い人は「新世紀エヴァンゲリオン」の不思議なラストも見てますし、『寄生獣』(※8)も知ってますよね。それらの原典たる作品なのに改めて面白いと思える点で、「DEVILMAN crybaby」はすごいなと感心しました。
でも『デビルマン』を読んで「これ寄生獣じゃん!」って言っちゃうんですよ、心ない人は(笑)!

――いやいや、『デビルマン』が先でありルーツなんだよ! ということですね(笑)。

※6 『デビルマン』
1972年から1973年にかけて製作されたTVアニメ、および永井豪作による漫画。主人公の不動明は、親友の飛鳥了から、地球の先住人類「デーモン(悪魔)」と自分の父にまつわる話を聞かされる。その後、明はデーモンの一人・アモンに憑依され、悪魔の力と人間の心を持つデビルマンとなるのだった。
※7 「DEVILMAN crybaby」
永井豪画業50周年記念の一環として制作されたアニメーション作品。2018年1月から、Netflixで全世界同時ストリーミング配信された。オリジナルの展開も交えつつ、漫画版デビルマンのアニメ作品としては、初めて物語の最初から結末までが描かれることとなった。監督は、劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズをはじめ、近年では『夜は短し歩けよ乙女』や『夜明け告げるルーのうた』などの劇場版アニメを手がける湯浅政明。
※8 『寄生獣』
岩明均によるSF漫画。高い学習能力を持った「パラサイト(寄生生物)」が人間社会に紛れ込んだ世界で、主人公の新一は右手に寄生した「ミギー」と共生することになる。

漫画の面白さはギャップで生まれる “劇画調ギャグ”で決まった方向性

――次に、漫画家を目指すきっかけになった作品として『かっこいいスキヤキ』(※9)(「泉昌之」名義で、原作は久住昌之・作画は泉晴紀)を挙げていただきました。
実は、以前の「わがコマ」久住昌之先生インタビュー回で、久住先生ご本人に「漫画家を目指すきっかけになった作品が『かっこいいスキヤキ』で、本当に会いたかった」と告白されていたんですよね。“劇画タッチのギャグ漫画”という作風を完成させたところが素晴らしい、と大絶賛していましたが、それが圭一先生の『ドクター秩父山』(※10)にもつながったと。

当時はギャグマンガの変遷期。赤塚不二夫先生から始まって、山上たつひこ先生の『がきデカ』(※11)のように、「何をしでかすか分からない主人公が、周りを巻き込んでしっちゃかめっちゃかする」のが少年誌のギャグでした。大人向けのギャグは、小島功先生の『ヒゲとボイン』(※12)や、黒鉄ヒロシ先生のような、そこにエッチが入ってくる感じで。
そこに80年くらいから劇画調ギャグの潮流が台頭してきて、島本和彦さん(※13)が出てきたのもその頃。熱血少年漫画の絵柄とフォーマットで、ギャグを持ってきたのが新鮮でしたね。ほぼ同時期に『かっこいいスキヤキ』や、しりあがり寿さんによる初期の楳図さんタッチのギャグが生まれました。
笑いを取るために、わざとお笑いじゃない絵柄を採用するムーブメントには大きな影響を受けました。自分がやるなら旧態依然としたギャグではなく、こっちだと。極論すると、『ドクター秩父山』は『かっこいいスキヤキ』を4コマでやってるだけで、そこまで新規性はありません。とはいえ、キャラクターとしての面白さは打ち出せたかなと思います。

――以前、久住先生と『かっこいいスキヤキ』の話をされた時、収録されている短編「夜行」について触れられていましたね。

単にトレンチコートでソフト帽をかぶったおじさんが、駅弁の具をどの順番で食べるかっていう話でね。ゴルゴ13のようなハードボイルドな男が、まずご飯をこのぐらい食べて、最初はこれ、次にこれを食べて……と。劇画調の絵で、美学を語りながらひたすら食べる。こんなギャグマンガ見たことないですよね。あらすじを文字に起こすと、『孤独のグルメ』(※14)そのまま(笑)。
この作品はギャグのつもりで描いたのではない、と久住さんが言っていて驚きました。泉さんの絵で、ギャグとして描いたというバイアスがかかって、ギャグになった。もし、これを谷口ジローさんが描いたら『孤独のグルメ』になってた。絵と内容のミスマッチが、新しい笑いを生んだんです。

――それがご自身の作品の軸になったと。

京都精華大学でギャグ漫画を教える上でも、バイアスをかけるようにと言っています。「イケメンだけどめちゃくちゃヘタレ」のようなギャップで性格と外見を結びつける、それでギャグは容易に作れる、と。あとは劇画風のリアルな絵のギャグ。ギャップで余計おかしくなるんですね。

逆に『釣りバカ日誌』や『総務部総務課 山口六平太』のような、ギャグの絵なんだけど感動モノの作品も、ギャップでよりイイ話になる。そういうことはよく教えています。

※9 『かっこいいスキヤキ』
泉昌之(久住昌之原作・泉晴紀作画)による1983年発行の短編漫画集。収録されている「夜行」は、現在久住昌之として活躍する原作者の伝説的デビュー作。
※10 『ドクター秩父山』
田中圭一による4コマ漫画。埼玉県の「秩父山病院」の医者を主役に、シュールかつブラックな下ネタが展開する。『コミック劇画村塾』等で1986年より連載開始し、アニメ化もされた。掲載雑誌を移動した後に、続編の『ドクター秩父山だっ!!』を連載。
※11 『がきデカ』
日本初の少年警察官「こまわり君」を中心にした、本格的ギャグ漫画の草分け的存在。「死刑!」「あふりか象が好き!」などのギャグで知られる。発行部数は3000万部超。
※12 『ヒゲとボイン』
1974年から『ビッグコミックオリジナル』上で長期連載された、小島功の短編漫画。仕事より酒、妻もいるけど遊びたいサラリーマンライフを描く。2011年2月に休載したまま、2015年4月14日に作者が没した。
※13 島本和彦
北海道出身の漫画家・実業家。石ノ森章太郎を師と仰ぎ、魂のこもった熱く力強いタッチの作品を多数生み出している。代表作は『炎の転校生』『燃えよペン』『アオイホノオ』など。
※14 『孤独のグルメ』
久住昌之原作、谷口ジロー作画によるグルメ漫画。輸入雑貨商を営む井之頭五郎が、仕事の合間に立ち寄った店で食事をする姿を淡々と描く。松重豊主演でドラマ化され、現在シーズン7まで制作されるほどの人気に。

何度でも蘇る“ベテラン新人” イタコ漫画家としての生き方

――作画を担当された『総務部総務課 山口六平太』特別編(※15)の反響はすごいですね。圭一先生ならではのお仕事だと思います。

依頼された時に、どうしよう、断ろうか、とも思ったんですけどね(笑)。こんな機会は一生に一回しかないなと考え直しまして。

――イタコ漫画家としての新しい流れがきているなと感じました。

すでにコージィ城倉さんの『プレイボール2』(※16)や、つのがいさんの『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』(※17)、針井佑さんの『クラッシャージョウREBIRTH』(※18)もいま連載されています。漫画業界も売れなくなってますから、同人活動のようなことをやっている漫画家をはみ出し者にするんじゃなくて、活用しようとしている(笑)。 “イタコ漫画家”は、最初お笑い芸人的な揶揄だったのが、今では作品を受け継ぐための貴重な職人のようになっています。いずれ「第6代赤塚不二夫」とかが出てくるかも(笑)。

――イタコ漫画家から、さらに絵柄を継承する人が出てくるんでしょうか。

先ほど話した通り、最初は劇画調のギャグでスタートして、そこから10年ぐらい『ドクター秩父山』が続くと、さすがにその手法も飽きられちゃって。編集さんに「サラリーマンだけで生活したら?」って言われたこともあります。 もう一回漫画家としてスポットライトを浴びたくて、絵柄をどう変えるか試行錯誤する中で、手塚治虫さんのタッチに行き着いたんです。90年代の前半ぐらい、つまり手塚さんが亡くなって5年ぐらい経ってかな。当時あの絵柄の作品は全くなかったので、この絵はとてもいいじゃないかと。もうないからこそ新鮮だと思って、一生懸命練習しました。

――周囲の方は戦々恐々とされたのでは?

当時はみんな「それはやめて!」って(笑)。大きな出版社では描けないから、マイナーな出版社でコソコソ描いて、一冊にまとめたのが『神罰』。これが売れましたね。『ドクター秩父山』が3巻分で30万部。そこからは出す単行本は1~2万部止まりでしたけど、神罰は久々に8~9万部売れました。

――『ドクター秩父山』とは、絵柄が全然違いますよね。

最初は新人漫画家だと思われましたよ、手塚治虫みたいな絵で不謹慎なことをやる新人(笑)。今までもTwitterで無茶なことやっていたんですが、インタビューで顔が出ると、「田中圭一ってこんなジジイなの!?」と驚かれる。20~30代の、むちゃくちゃなことやってる頭おかしい奴っていう印象を持たれているんですね。サラリーマンとして長く勤めていたり、大学で教えていたりする姿とは、全然結びつかない。

――ネットでパロディ絵を描いてる田中圭一って、『ドクター秩父山』や『昆虫物語ピースケの冒険』(※19)の人だったんだ! と、後から気づかれる方も多いですよね。

作家としてはうまい生き方だったかもしれません。「ピースケ」「秩父山」で終わってると思ったら、姿かたちを変えて横にいる。いわゆる、猿岩石の有吉弘行さんですね。猿岩石の有吉さんと今の有吉さんを結びつけてる人はあまりいない。再デビューできるのはとても重要です。

――あまり過去に執着していないように見受けられます。

子役時代に売れて、しばらく経ってまた売れるのと似ています。長く生きられるし、今の出来事をきっかけに、昔のことに結びつけてもらえる。声優の古谷徹さんがそうですね。星飛雄馬のような熱血漢キャラだけじゃなくて、「ガンダム」のアムロのようなダメダメなキャラもできる。その上で、自動車番組「カーグラフィックTV」のナレーターとしてクールな感じを打ち出した。この人何回ブレイクするんだろうって思いましたよ。理想ですよね。新しい切り口を見つけて、新たなブレイクを起こしていくのは。

※15 『総務部総務課 山口六平太』特別編
林律雄原作の『総務部総務課 山口六平太』は、架空の自動車会社で"スーパー総務マン"として働く山口六平太が主役の青年漫画。2016年11月に作画の高井研一郎が急死したことで連載が打ち切られたが、『ビッグコミック』2018年4号に、田中圭一の作画で1話限定の特別編「春の到来」が掲載された。
※16 『プレイボール2』
『プレイボール』は、ちばあきおによる野球漫画『キャプテン』のスピンオフ作品。1973年から1978年まで連載されたが、作者の体調不良を理由に未完に終わる。1984年に作者が亡くなって後、2017年に同作のファンであるコージィ城倉により、続編として『プレイボール2』の連載が始まった。
※17 『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』
漫画家・イラストレーターのつのがいによる『ブラック・ジャック』のパロディーギャグマンガ。クオリティの高い手塚タッチが評価され、つのがいは2016年に手塚プロダクション公式の作画ブレーンに登用された。
※18 『クラッシャージョウREBIRTH』
高千穂遙のSF小説『クラッシャージョウ』シリーズのコミカライズ作品。小説の挿絵を描いた安彦良和の絵柄に似せたタッチで、針井佑が作画をしている。『イブニング』2017年19号から連載。
※19 『昆虫物語ピースケの冒険』
1989年から1991年にかけて、『週刊少年サンデー』に不定期で掲載された田中圭一のギャグ漫画。「最強の虫」を目指すオケラのピースケを中心に、人間の顔を持つ着ぐるみのようなルックスの昆虫たちが全国を行脚する。下ネタ、お下劣ギャグは当時から健在。

「手塚タッチ×不条理ギャグ」の到達点となった「一コマ」

――さて、では本題の「一コマ」参りましょう。ご自身の思い入れのある一コマとして、『田中圭一最低漫画全集 神罰1.1』(以下、『神罰』)の一編「シモシモシモーヌ」のオチの大コマをあげていただきましたが、その心は?

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