田中圭一× 『快感❤フレーズ』新條まゆ先生インタビュー

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わが生涯に一片のコマあり

これは、漫画家が血肉を削って描いた「一コマ」にフォーカスしたインタビュー企画だ!
漫画家・田中圭一が、激動の漫画界を生き抜く勇者の元へ赴き、その創作スピリッツを訊きまくる!
さあ!小さな一コマが生み出す大きなドラマを、刮目して読め。
[インタビュー公開日:2014/03/28]

今回のゲスト新條まゆ 先生

新條まゆ

長崎県出身。
1994年、小学館『少女コミック』増刊号にて『あなたの色に染まりたい』でデビュー。
代表作に『快感❤フレーズ』『覇王❤愛人』『ラブセレブ』『愛を歌うより俺に溺れろ!』などがある。
2007年、小学館よりフリーとなり、集英社『別冊マーガレット』、角川書店『月刊Asuka』『月刊ガンダムエース』など、活躍の場を広げている。

今回の「一コマ」作品 『快感❤フレーズ』

1997年~2000年に『少女コミック』(小学館)で連載された新條まゆの代表作。
国語が得意な女子高生・雪村愛音と、ロックバンド・ルシファー(後にリュシフェル)のヴォーカリスト・大河内咲也の、激流のような愛の日々を描いた芸能界ドラマ。
それまでの少女マンガでは描かれなかった過激な性描写が話題になり、その後の過激路線少女マンガの始祖となる。

インタビュアー:田中圭一(たなかけいいち) 1962年5月4日生まれ。大阪府出身。血液型A型。
手塚治虫タッチのパロディー漫画『神罰』がヒット。著名作家の絵柄をまねたシモネタギャグを得意とする。また、デビュー当時からサラリーマンを兼業する「二足のわらじマンガ家」としても有名。現在は株式会社BookLiveに勤務。

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インタビューインデックス

  • マンガに目覚めた記念すべき作品『聖闘士星矢』
  • センセーショナルだった『快感♥フレーズ』 その誕生秘話
  • 起死回生の一コマ「Love Melody」
  • 新條まゆ、その恋愛観

マンガに目覚めた記念すべき作品『聖闘士星矢』

――マンガ家を目指すきっかけになった作品についてお聞きします。

はい。きっかけは『聖闘士星矢』との出会いです。ただ、原作マンガではなくアニメから入ったんですよ。高校3年の時に夕方の再放送を観ていました。紫龍とカミュが大好きでした。特にカミュ。でも、周りでアニメを観ている高校生なんてほとんどいなくて『聖闘士星矢』が大好き!って言っても寄ってくるのはオタクの人ばかり(笑)。

――まだ、この段階では漫画家を目指そうとは思っていないんですよね?

このあたりからです。寄ってきたオタクの人が、そっと差し出してきた同人誌を見て「……こ、これはいったいなに!?」と。同人誌なんて生まれて初めて見たんです。しかも漫画家ではなくて素人が描いたと聞いて「ええっ?!どうして素人がこんな凄いの描けるの?」って。そのころ私は、漫画家はスカウトされてなるものだと思っていたんです。美術の先生が絵の上手い生徒の作品を編集者に見せてスカウトされるものだと。そもそもマンガを描く道具って、スカウトされたプロが初めて支給されるものだと思っていたんですね。だから、同人誌を見て「素人がなぜ道具を持っているの?」って思うワケですよ。
すると、「お店で売っているよ。佐世保(地元)でも買えるんだよ」ということを初めて聞いたんですよ。さらにオタクな人に「この本、じつは1点キツい部分があるの。作品内のカップルが全部オトコ同士なの」って言われて「…は?…な、なに?どういうこと?!」って。同人誌も「やおい」もまったく知らなかったんですけど、とにかく読んでみたんです。これがもう面白くて!それから道具を手に入れて初めて描いてみたんですよ、マンガを。高校3年の時です。

『聖闘士星矢』
 1985年から『週刊少年ジャンプ』で連載された車田正美の代表作。 孤児院で育った少年・星矢が格闘用の鎧・聖衣(クロス)をまとい、聖闘士として同じ境遇の仲間たちとともにこの世に蔓延する邪悪と戦う、一世を風靡したファンタジーアクション。

――なるほど、そこから専門学校を経て投稿、デビューとなるわけですね。代表作『快感❤フレーズ』は、過激なHシーンが話題になった作品でしたが、これは編集部の意向だったのですか?それとも新條さんの提案だったのですか?

『快感❤フレーズ』の前に読みきりでエッチな内容の作品を描いたんです。担当さんから「エッチなものを描け」って言われて描いた作品です。多くの人気作家を生み出した敏腕編集さんなのですが、「この人が担当になると必ずエッチな作品を描かされる」というウワサのある人でした。なので「絶対にイヤだ。エッチなのは描かない」って抵抗したんです。漫画家仲間からも「もしも、あの担当さんに言われてエッチなの描いたら友達やめるからね!」って言われていたので、なおさらでした。でも担当さんが言うには「エッチな作品は、安易なヒットの近道だと考えられがちだけど、本当は凄く難しいんだ。誰が描いてもウケるというわけじゃない。でも、君の描く男性は色っぽいから成功するはずだ」って言われて、もともとセクシーな男性が好きだったものだから、その言葉にあっさり「描いてみようかな~」って(笑)。

――で、描いてみた結果は?

それがもう、描くのが楽しくて!(笑)
それ以来、誰に言われるでもなく必ず作品にエッチな内容を盛り込むようにしました。

――このインタビューを前に、あらためて『快感❤フレーズ』を全巻読んだんですけど、男が読んでもズシンと心に響く魅力が咲也にはありますよね。この咲也の、強引で上昇志向が強く、常に先を見て行動する性格って、新條さんご自身の性格を反映しているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか?

負けず嫌いですしね。そもそも絵でご飯を食べていこうと思ったけど、目指していた日本画では食べていけないし、じゃあ何で食べるの?って思った時、マンガかなぁ……って感じでした。そもそもマンガにこだわりもなく、特定の漫画家さんの大ファンだったわけでもなかったんです。だからこそ自分を俯瞰して見ることが出来たんでしょうね。どうすればアンケートで人気が取れるか、読者を夢中にさせられるか、についても冷静に考えることができたんだと思います。

――冷静ではあるものの、どこかルサンチマン的な熱い血が流れていますよね。ペン1本で天下を獲るぜ!みたいな。

家が貧乏だったんですけど、周りもみんな貧しかったのでお金持ちがどんな生活をしているかなんて知りませんでした。だから「お金が欲しい」って気持ちは無かったんです。でも漫画家になって、先輩の売れっ子漫画家さんがGUCCIのお店で棚ごと買い占めちゃう現場に同行したり、その人の豪邸を見せてもらったり、なによりも編集者の対応が新人の私と人気作家さんとで天と地ほども違うんですよ。そこで初めて、私はヒエラルキーの底辺にいて「惨めなんだ」ってことに気がついたんですよ。そこで初めて「ああなりたい!」って気持ちが芽生えたんです。田舎にいたら絶対にそんな気持ちは芽生えなかったし、芽生えなければ今の私はなかったし、東京に出てきてよかった、漫画家になってよかったと思ってます。

センセーショナルだった『快感♥フレーズ』 その誕生秘話

――少女マンガや乙女ゲーですっかり定番になった「俺様キャラ」、その元祖って『快感❤フレーズ』の咲也じゃないかと思うんです。それだけ咲也の登場は鮮烈だったと思うのですが、企画した当時、編集部内ではどういう見方をされていたのでしょう?

提案した時、編集部内で大反対されました。こんな強引なキャラを好きになる女性はいない、と。
でも私は、隙間産業みたいな感覚で、他にこういうキャラクターを描く人がいないのなら、咲也みたいな強引キャラもアリなんじゃないかと思い、他の漫画家さんの男性キャラを研究してみたんです。
その結果、当時のトレンドは、王子様キャラ・硬派キャラ・かわいい男の子キャラに大別されることがわかってきました。また、『少女コミック』の作品には、「女の子は没個性、男の子は個性的」という特徴がありました。なので、他の漫画家さんから抜きん出るには他の作品にはいない強烈なキャラが必要だろうと思い、やはり答えは「強引な男の子」だと思ったんです。

――濡れ場が話題になった作品ですが、それは咲也を強引なキャラに設定することで無理なくHシーンに持ってこれるという思惑があったのでしょうか?

思惑ではなく、とにかく私は色っぽい男性が好きで、色っぽい言葉も好きだったので、そういう色気のある男の人を描くためには、エッチなシーンがもっとも引き立つだろうと考えました。なので、結果として濡れ場シーンが多いマンガに行き着いた、という感じす。

――ページをめくると咲也のアップと決めゼリフ、という展開が格好良く、まるで少年マンガのようですごくしびれるのですが、これは『聖闘士星矢』など少年誌の影響でしょうか?

そうではなく、編集さんに初めてネームをみてもらった際に「引きがなってない」と指摘されたんです。当時「引き」なんて言葉も知りませんでした。「マンガは見開き単位で考えるもので、左ページの左上にインパクトのある絵をもって来る。その部分は読者が雑誌をパラパラめくっていると、パッと目に止まって読んでくれる位置。そのうえで、左ページの左下のコマに"引き"をつくってページをめくらせるんだ」ということを教わりました。
当時の私からすると目から鱗でした。それを知ってから、他の作家さんが10ページに1回凄い展開を持ってくるのであれば、私は毎ページ毎ページに凄い展開をもってこようと努力したんです。

――『快感❤フレーズ』は、ストーリーがスピーディーに展開していくのが小気味よいと同時に、今のマンガなら、こんな早いペースはあり得ないと感じました。例えば物語の中盤・第12巻で、「多摩川の両岸にステージを設置して30万人を集める超大型ライブを決行する」というエピソードが出てきますが、普通ならこれは大クライマックスで、そこに至るまでのエピソードを段々と積み上げていって、ついにライブが成功!……ってなりそうなのに、あっさり終わって次の展開、というのがもったいない気がしましたけど。

恋愛の過程を見せるべき作品なので、別にライブのシーンをじっくり見せてもしょうがないって思っていました。それよりも、見せるのはその後。あのライブは、咲也に「30万人ライブを成功させた男」という付加価値をつけるためのものでしかないんです。その後で、そんなすごいライブを成功させた男・咲也に抱かれる……というシーンに女の子はキュンとくるわけですよ。

――そうか。そっちがメインディッシュなんですね。男の脳みそで理解しようとしちゃダメですね(笑)。

――ストーリー展開の小気味よさについて、そのカラクリをもう少し詳しく教えてください。

ストーリーの流れって一般的には「起・承・転・結」ですけれど、私は「起・承・転」までで「続く」とすることで読者に「この先どうなるんだ?!」って思わせる。そうやって読者の気持ちを引っ張って、次号では「結」から始まって次の展開の「起・承・転」までを描いて、またしても「続く!」って流れを毎号毎号くり返しました。でも、今のマンガはコミックスの1巻分で「起・承・転」をやって次巻へ続くってペースですよね。だから雑誌だと「起・承・転・結」の「起」しか入っていないんですよ。
あの当時も、雑誌のアンケートでは、たまたま掲載回が「転」だった作品はアンケート票が入るけど、「起」「承」の作品には入らない、という結果になりがちでした。でも、私は毎回アンケートで票を取りたかったので「結・起承転」を守っていました。

――やはりアンケート票は重要だと考えていたんですね。

『快感❤フレーズ』の1巻目あたりの人気は、けっして順調ではなかったんです。編集さんからも「ああいう扇情的なマンガは少しでもアンケート順位が下がったら打ち切るからね」って言われていました。だから絶対に下げたくなかったんです。

起死回生の一コマ「Love Melody」

――『快感❤フレーズ』のストーリーって、テンポが急だし、やや強引な展開もあったりで、どこか「大映ドラマシリーズ」(※)に通じるものがあるように思ったんですが……

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