この道20年以上のプロ書店員・すず木です!
前月に配信された新作マンガで実際に読んで面白かったものの中から<少年・青年マンガ><少女・女性マンガ>それぞれ勝手に「今月の書店員すず木賞」としてご紹介!
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今月の書店員すず木賞
少年・青年マンガ
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逓信所飛脚行代員1871号の異日常
国民の皆さん! ! ! 起床の時間です!
巨大集合住宅に
夜明けを告げる放送が鳴り響く。
労働の時間だ。
国家のため、
逓信所飛脚行代員1871号は、
今日も手紙を運ぶ。
魔境に棲まう異形達へと。
緻密に描かれるディストピア!絵の隅々から情報を読み解く、考察必至の異色作!!
巨大集合住宅に夜明けを告げる放送が鳴り響きます。
「健全な国民は、健全な国家規律から!!」
“国家” “規律” “労働”を提唱する厳格な管理社会の中、住人たちに手紙を届ける任務を行う逓信所飛脚行代員1871号の目を通して描かれる異質な日常。
一見静かな日々の中に潜む不穏さと、抑圧された世界で交錯する人間性の欠片を描いたSF作品。
「ディストピア」という言葉をご存知でしょうか。
SFの世界で描かれる反理想郷や、徹底的に統制された管理社会のことを指します。本作は、まさにそんな息の詰まるようなディストピアを舞台にした物語です。
読み始めるとまず、その独特な世界観に圧倒されます。
薄暗く、どこか黴臭さすら漂う陰鬱で荒廃した世界。
大きな団地のような建物の中だけで全てが完結しており、住人たちの姿は人間とは大きくかけ離れています。しかし、不思議なことに彼らの行動や感情からは人間臭さが溢れ出ており、「彼らは元からこの姿だったのだろうか」と思わず勘ぐってしまいます。
そもそも異形である彼らと我々は何が違うのでしょう…。
この世界で、住人たちが生きるかすがいとなっているのが「手紙」です。
手紙が届くか否かが、そのまま生きる活力にも絶望にも繋がっているのです。
さらにユニークなのが、手紙に「賞味期限」があるという設定。
手紙に含まれる感情を「はかり」で計測することでその期限が判明する描写からは、まるで感情が質量を持った世界であるかのような不思議さを感じます。
しかし、その手紙にすら検閲が入る描写があり、彼らの感情さえも規制されている事実にゾクゾクさせられます!
他にも、箱根細工のような箱に入った「密粗計」というアイテムや、「9時」になることで移動を強いられるルールなど、私たちの常識とは異なる「時間」や「空間」の謎が散りばめられており、SF好きにはたまらないものがあります。
居住区もランクによって分かれており、工場など単純労働者であるほど劣悪な環境での生活を強いられているようで、労働棟の生活環境はまさに監獄そのものです。
格子戸で区切られた独房のような部屋、過酷な缶詰工場での労働。
1等国民になって専用の居住区へ移るには「人民券」が必要ですが、労働で得られる額はたかが知れています。そのため食事を我慢したり、人民券を得るために売春に手を染める者も現れます。
「望むものを得るためには、やりたくなくても、やらなければいけないのか。それとも自分を守るために拒絶すべきなのか」――どちらが正解なのか、物語は私たちに冷徹に問いかけてきます。
本作の根底にあるのは、「コミュニケーションとは何か」、そして「人は何を大切に生きるべきか」という切実なテーマです。
分かりやすさや展開の早さがもてはやされる昨今、本作はそのトレンドに真っ向から立ち向かっています。
決して消費されるだけのマンガではなく、読者自らが絵の隅々まで目を凝らし、情報を読み取る必要がある作品です。
混沌とした世界観の中に、表現者としての強い信念が感じられる、じっくりと没頭したい至高の傑作です!!
少女・女性マンガ
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勉強はできても、自分の見た目には自信がない高校生の未来。
幼なじみのさえはかわいくて、未来の気になる男の子・アキヒコとも仲がいい。
そんなある日、未来は知ってしまう。
さえが大きな夢を目指して努力していること、アキヒコがさえを好きだということ。
傷ついた未来がさえに放った言葉は、本当は誰に向けたものなのだろう…?
誰もが自分にないものを求めてもがき、涙する。
そんなわたしたちの呪いを打ち破る、劣等感の向こうにいるあなたと手を繋ぐものがたり。
同時収録:真夏の夜の夢
◆◇◆単行本カバー・カバー下イラストを収録◆◇◆
「何者か」になりたい私たちへ。羨望と葛藤の果てに見つける、自分だけの居場所。自身にかけた呪いからの脱却を描いた物語!
学力は高いが外見に自信を持てない高校生・未来は、幼なじみで可愛く人気者のさえや、想いを寄せる同級生・アキヒコとの関係に悩んでいます。
そんなある日、さえが夢に向かって努力していることや、アキヒコがさえを想っている事実を知り、未来の心は大きく揺らぎます。
劣等感と嫉妬に傷ついた未来は思わず感情をぶつけてしまい――。
自分に足りないものを抱えながらもがく少女たちの痛みと成長を描く、人間関係のリアルに迫るヒューマンドラマ!
人と自分を比較しても、何の意味もない。そんなことは百も承知なのに、私たちはどうしても「隣の芝生」の青さに目を奪われ、自分の足りなさばかりをあげつらってしまいます。
自分は自分でしかないのに、他人の真似事をしては勝手に傷つく――。今作は、そんな誰もが一度は囚われる歪んだ感情を、痛いほど丁寧に、そして鮮烈に描き出しています。
主人公の未来は、自分自身で心をがんじがらめにしがちな女の子。
想い人であるアキヒコのちょっとした言葉に一喜一憂する姿は、思わず応援したくなるほど瑞々しい乙女心に溢れています。
そんな未来の前に立つのが、親友の「さえ」です。
さえは可愛さも、可愛くなるための技術も、アキヒコからの好意も、ありとあらゆるものを持っています。未来にとって彼女は「全てを持っている人」。
自分が唯一勝てるのは学力だけでした。
そんなさえの夢は、途方もなく大きな「宇宙に行くこと」。
無謀とも思える夢へ「やってみなくちゃわからない」と笑うさえに対し、未来は冷や水を浴びせるようにこう告げます。
「どんなに頑張っても、どんなに努力しても、その人には絶対無理って予め決まっていることがあるんだよ。さえちゃんには無理だよ」
ここでハッとさせられるのが本作のタイトルです。
タイトルは『未来ちゃんには無理だよ』。しかし作中でこのセリフは一度も出てきません。
そう、未来はさえに向けて言葉を放ちながら、同時に「自分自身」に呪いをかけていたのです。
男とか女とか、恋愛とか、そういう枠組みを「窮屈」だと笑い飛ばせるさえは、未来にとって眩しすぎるほど自由な存在でした。だからこそ憧れた。
けれど、いつだって大切な友情にヒビを入れるのは恋愛感情です。
物語の皮肉な転換点。未来の予言通り、さえは大学受験に失敗し、逆に未来は自分が本当に行きたかった学部に合格します。
狭い世界に閉じ込められ、息苦しさを感じるさえ。
しかし、さえの夢だったはずの道を代わりに歩むことになった未来もまた、別種の息苦しさに身を焦がすことになります。
結局、自分で望み、自分で選んだ道ではない「不本意な選択」は、どんな形であれ自分自身を苦しめるのでしょう。
しかし、物語は苦しいままでは終わりません。
「何者にもなれなかった」と絶望していたさえは、同級生たちから自分が高嶺の花であり、希望の星であったことを告げられます。
そこで初めて、彼女は自分がちゃんと「自分の道」を歩めていたことに気づくのです。
自分の居場所は、誰かに用意されるものではない。自分で探し、自分で作るものなのだと!!
一見、宇宙飛行士の夢を諦めたように見えたさえですが、彼女は決して折れていませんでした。世界を旅するバックパッカーとなり、SNSのインフルエンサーとして、彼女らしい方法で「宇宙(世界)」へと飛び出していく姿には胸が熱くなります。
一方、偶然再会した未来は、相変わらず不器用で恋愛感情に振り回されていました。でも、それが彼女の等身大なのです。
お互いに必死で努力して、何かを掴み取ろうとしてもがいて、それでもできなくて……。
実は、お互いがお互いを「羨ましい存在」として見上げていた二人。
誰の心にもあるドロドロとした感情をどこまでも分かりやすく、かつ丁寧に描いた本作は、私たちに「夢に向かって進むこと」、そして何より「自分自身を信じること」の尊さを教えてくれます。
今、自分の道に迷っているすべての人に届いてほしい、至高の一冊です。
こちらもオススメ!!
惜しくも今月の書店員すず木賞からは漏れたものの、オススメの作品をご紹介!!
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力を失って見えたのは、世界の本当の美しさだった――。かつて“万能の魔術師”と呼ばれたアミラは、魔力枯れを起こし、すべての魔法を失った。魔力がすべてを支配する世界で、できることなど何もない。しかし彼女は今、風と語らい、火を起こし、料理を覚えながら、生きる意味を探す。魔法のない日々に芽吹くのは、静かな幸福と小さな奇跡。喪失から始まる、再生のセカンドライフ・ファンタジー!
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国の象徴・民の憧れ「騎士団長」。しかしその役割は外面(そとづら)とは裏腹の中間管理職で、上司にコキ使われるだけのものであった。
そんな「厄職」を背負い生きる誇り高き女騎士団長・リンナは、ある日の職務中に巨大なドラゴンに遭遇。国のため応戦するも、日々の激務の疲れがたたり、無惨にも食べられてしまった……。
気が付くとそこはドラゴンの胃の中。そこでの出会いが彼女の人生を変える……!?
日常に疲れたアナタに贈る、夢と癒しの”胃の中”ファンタジー!!
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映画化原作のクイズ小説を渾身コミカライズ!!
「Q. なぜ本庄絆は、一文字も読まれていないクイズに正答できたのか?」
生放送のクイズ番組『Q-1グランプリ』決勝戦。ファイナリスト・三島玲央の目の前で、不可解な奇跡は起きた。対戦相手の本庄絆が、“一文字も読まれていない”問題に正解して優勝をさらったのだ。なぜ本庄は、「ゼロ文字正答」ができたのか? ヤラセか、魔法か、それとも――。クイズプレイヤーの矜持に懸け、三島はこのクイズの答えを探し始める。
映画化・舞台化も果たした小川哲の傑作小説『君のクイズ』を、鬼才・野田彩子が渾身の筆致で完全漫画化!
◆収録内容◆
「君のクイズ」第1話~第4話
エッセイ漫画「行きましょうクイズ大会に」#1~#4
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令和震撼のAIママ物語!始動!!
【奥浩哉さん(漫画家) 円城塔さん(小説家) Kizuna AIさん(バーチャルタレント) 大興奮!!】
大好きなママは、AIでした。
令和8年-
女子高生・しずく。
勉強もバイトもしっかりこなすZ世代女子。
友人たちとの約束を抱えて迎えた楽しい夏休み初日、
父の死をきっかけに突き付けられる仮説。
「ママは「AI」かもしれない」
母を信頼し、母を愛し、母に根ざしてきた少女――
その母が人工知能であったと知ったとき、彼女は茫然と世界にたたずむしかないでしょう。
自分を育て、委ね、寄り添ってきた確からしさが疑われるとき、
彼女は自らの存在も捉えられなくなってゆく?
無縁時代・令和に問う、母とは?娘とは?そして、家族とは?
もはや未来ではない。
これは、現在進行形の母子物語――
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より遠く、より深く考えること――。「答えの決まっている問題ほどつまらないものはない」 ごく普通の高校生・アオは、授業の課題、「麻薬戦争はなぜ終わらないのか」に考えを巡らせていた。そんな時、一通の通知を受け取る…。実はアオは、CIA特殊作戦群に所属する戦闘員(エージェント)でもあった。今回の任務(ミッション)は、麻薬組織ソノラに誘拐された、メキシコ最大の麻薬王の娘・エレナの救出。アオは、指揮官・アレックス、協力員で初参加のニックと共にエレナの監禁場所に辿り着くが、なぜかエレナは「帰りたくない」と拒絶。彼女の抱える問題、そしてアオが出した“解(こたえ)”とは――!?
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くるちゃんは毎日幸せな日々を過ごしている。おいしいごはん、裕福な家庭。正直かなり恵まれてる。でもお母さんはまだ充分に幸せになれてない。だから私がもっともっとお母さんを幸せにしなきゃいけない。だってお母さんの幸せは私の幸せだから。私はお母さんを幸せにするために生まれてきたのだから。
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「あの~~~告白まだスか?」幼稚園時代、決死の告白に「ダンゴムシと同じくらい好き!」と返されてからはや10年。二瓶陽芽は10年間、変わらず幼馴染のマキに片想い中。どうにかこうにかマキに告白してもらうよう努力する陽芽だけど、スーパー天然たらしのマキに逆にドキドキさせられる毎日。幼馴染2人のとびきりアホ可愛い両片想い(?)ラブコメディ♪(このコミックスには「100年の恋もさめなくて[ばら売り] 第1~5話」を収録しております。)
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あの夏、出会ってしまったのは やんごとない秘密--。
水難救助隊になりたくて強豪の翠凛館高校水泳部に入部した山杉汐音。だけど、筋肉フェチゆえに周りの部員の筋肉が気になりすぎて全然練習に集中できない! 同じく1年でエースの海虎くんはいつも筋肉が隠れるラッシュガードを着用。汐音の唯一の救いだったはずが、ある事件をきっかけに彼が肌を隠し続ける秘密を知ってしまい…!?
書店員すず木
2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道20年以上のプロ書店員。
年間に読むマンガの冊数は2000冊以上。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。
現在、全国の三省堂書店(※一部店舗を除く)の店内にある「つながる本棚」に、書店員すず木が毎月テーマを決めておすすめ作品をご紹介する「書店員すず木棚」が設置中!!
最近の書店員すず木:「寄生獣展」に行ってきました!!生原稿の迫力と、マンガが現実に飛び出してきたような展示アイデアが面白く、かなり見ごたえがありました!!ミギーのお皿をゲットしまして、早速お刺身を盛りつけました☆