• 武田家滅亡
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    強過ぎた大将

    武田勝頼
    歴史的には評価され難い存在である武将。
    が、実際には武田信玄存命中を超える最大版図を築いた非凡な大将であった。
    この武将の魅力はなんと言っても軍事の才能。
    妾腹ということもあり、順当に行けば家督を継ぐことなく、諏訪衆を束ねる戦闘集団の旗頭かつ有力一門として名を轟かせたことと思う。
    家督を継承しないとなれば気安く前線での戦いに身を置くことも出来、戦功著しい猛将となったはずである。
    しかし、歴史の流れは勝頼を武田家陣代としてしまう。

    先代の負の遺産を背負ったまま、家臣の軋轢が多い家を切り盛りしなければならない環境。
    更に周囲を強力な大名に囲まれ、政治力が必要とされる場面での人材不足。

    #切ない

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    2023年06月04日
  • 宇喜多の楽土
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    西軍の要

    宇喜多秀家。
    謀将の父、直家の息子として生まれ
    秀吉の後見を経て、やがて大大名として名を馳せる。
    ただし、配下の派閥争いを裁くだけの手腕は無く、御家の切盛りもままならぬままに関ヶ原へと向かう。

    豊臣家に対し、忠実に仕えたイメージから
    清廉潔白で真っ直ぐな人物という描かれ方をすることが多く、本作でも地元に根付いた民の為に戦う決意を固める…といった優しい部分が描かれている。
    ただし、個人的なイメージとしては
    爽やかな振る舞いの裏で喧嘩っ早く、他者を下に見る傾向がある人物と思っている。
    (立花宗茂とのエピソード等)
    それは悪い事ではなく、誇りある武将として己の存在に一切の疑問を

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    2021年02月23日
  • 一刀斎夢録 上
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    快刀乱麻の読み心地

    新選組。
    好きだけど題材にした小説は読んだことが無くて
    今回手に取ってみた次第。
    斎藤一の回顧録となっているが
    斎藤が語り手を担うという事で、一般的なイメージとは違う新鮮な切り口となっている。

    聞き手の梶原がかなりしっかりしたキャラクターで
    メインである回顧録を全く邪魔しないので安心して読み進められる。

    1つの時代の終焉と幕開けを
    思想、仲間、刀に込め動乱を駆け抜けていく。

    数々の修羅場で消耗し、失われていくものたち…
    残るものは何なのか。
    『誠』の旗のもと闘い尽くした剣鬼は最後に何を想うのか。

    面白かった。

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    2021年01月01日
  • 佐竹義重・義宣 伊達政宗と覇を競った関東の名族
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    鬼の形容が最も似合う武将

    佐竹義重は文武に優れた名将で、戦・外交・領国経営と多方面に渡り手腕を発揮した…と認識があったのは某歴史ゲームのおかげ。伊達政宗を主人公とする物語の多くでは強敵として立ちはだかり、敵役においても堂々たる武者振りで存在感を放つことが多かった。
    本書にて初めて佐竹義重が主役である小説を読んだが、想像以上に有能かつ侠気溢れる武将だと思った。
    大大名の狭間で外交と闘争を駆使し、立ち回る活躍ぶりは真田昌幸と比肩し得るのではないかと思う。
    小説としては、志木沢先生の書く精神(おもい)の部分が多く取り上げられ、感情移入しやすい。
    佐竹義重は黒田孝高、山中幸盛、武田勝頼等同世代に優秀な武将が多く、生き方

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    2020年09月09日
  • ドロヘドロ 1

    ドロともヘドロともつかぬ魔法

    林田球。
    この方の唯一無二の絵柄に初めて出会ったのは中学生の頃。
    小説『十四歳、ルシフェル』にて……
    挿絵から圧倒的な凶暴さ、そして繊細さを感じ取り この絵柄で漫画化して欲しい!と思わずにはいられなかったのを覚えている。

    さて『ドロヘドロ』。
    登場人物は誰も彼も突き抜けた個性を持ち、グロテスクに見えるが不思議と可愛く感じてしまう。
    魔法というファクターがあるものの
    それが全ての都合を片付ける訳ではなく、
    謎は謎として確立しており、読むほどに続きが気になる。
    降りかかる血、飛び散る内臓、虫けら同然に消し飛ぶ命。
    ものともせずに謎を追え。
    ドロにまみれ、ヘドロの底に沈もう

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    2020年01月20日
  • 少年計数機 池袋ウエストゲートパークII
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    水のなかの目は特に読む価値有り

    全4話 収録されており、どれもテンポが良く
    心情風景や情景が浮かびやすくて一気に読んでしまう。
    特に『水のなかの目』は10年以上前に読んだ時とはかなり印象が変わって面白かった。
    (初見の時はかなりショッキングな内容だと感じた)
    ミナガワという用心棒が出てくるが、良いキャラをしていたので1回きりの登場は勿体なく感じた。だからこそ光るモノを見せてくれたのだが……
    また、この話の核となるアツシというキャラの空虚さが妙にリアル。
    こういう気持ち悪さを持ったヤツは何らかのトラウマを抱えているのが普通だと思うが、アツシそうでもない。
    それ故に歪な存在感が増したが、最後は後味の悪さを残しつつも

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    2020年01月08日