【感想・ネタバレ】騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編(下)―(新潮文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

終わり方がとても好き。

ラストはみんながあるべきところに収まったという感じですかね。
あんなにいろんな事が巻き起こったのに、全部きれいにまとまって読後感がとても良いです。

顔長が出てきた穴に入った辺りから私の中ではジブリのような世界感で脳内再生され、一気に不思議の国に誘われた感じがしました。

登場人物クセがすごくてどうなのよ?と思うことも多かったけど、終わってみればみんな好き。

その後みんながどんな風に暮らしているのかまだまだ見ていたい気持ちにさせられました。

面白かったです。

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2024年03月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後の最後でついに内なる無意識の世界と現実世界が交錯して、世界観により一層引き込まれた。

フロイトによれば、人間は元来、内なる無意識の領域に性的本能や破壊本能といった原始的な衝動を秘めているが、その衝動は普段は自我や超自我の理性によって抑制されているという。
人間として理想的な姿になろうとすることで、即物的で衝動的な感情を押さえ込んでいるのである。
しかし、「無意識の中に潜む原始的な本能・衝動が自我や超自我の理性による抑制を超えたとき、世界は、人間はどうなるのか?」個人的には物語の主題の1つはここにあると思った。

「私」が本能的に雨田具彦の隠された絵を開いたこと、衝動的に免色と穴を掘り返したことを皮切りに、パンドラの箱を開けたかのように起こり始めたイデア界を巻き込む不可解な出来事たち。
妻に捨てられた嫉妬、人妻との刹那的な快楽、見知らぬ女の首を絞めたときの終末感、捕虜の斬首訓練、ウィーンで惨殺された恋人、忘れ得ぬ恨み。様々な人物の性的本能、破壊本能が入り混じる。

その中で、自己に潜む無意識は「白いスバル・フォレスターの男」や「クローゼットの前までやってきた謎の男」となって「私」や免色の前に現れ、徐々にその存在感を大きなものにしていく。

ここまで見ていくと、無意識=負の感情=イデア界、理性=現実世界だと錯覚しがちだが、実際は定義的に全く逆である。
プラトンによれば、イデアとは「あらゆる物事における完全で理想的な姿」であり、イデア界は理性を使う人が見る世界なのに対し、現実世界は感覚だけを使う人が見る世界、言うなれば不完全な像にすぎないものだという。(だから、イデア界、メタファーの世界では音も匂いも味も存在しなかったのかと納得した。)

きっとイデア界は、私たちが理性を意識せずとも使っているように、無意識の中に存在するのだろう。その静かな分水嶺が衝動的な行動によって破られたことで、2つの世界が入り混じった。
そしてその世界の交わりを分ち直すのもまた、衝動的な行為、言い換えれば人間的な感情だった。雨田具彦の宿敵に見立てたイデアを殺し、触れれば温かい妹との思い出を辿って
「私」はイデア界との繋がりに蓋をすることになる。
結局人は皆、美しい肖像画のような理想的な姿を追い求めようとも、本能や衝動には抗えない。でも、そういった未完成の肖像画のような感情もある種、人間を人間たらしめている素敵な要素のうちの一つである。拙いですがそう感じとりました。

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2023年10月24日

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ネタバレ

絵から出てきたイデアの騎士団長を殺したことにより、メタファーの世界への入り口が開かれる。それによってのみ姿を消した少女を見つけることができると言う。そこでの試練を乗り越えた先には。

メタファーの世界では、主人公の過去を辿ると言う感じ。つまりは、過去の自分を見つめ直すということを暗喩しているのだろうか。過去の自分を乗り越えた先に新しい自分があり、その象徴として姿を消した少女があるのだろうか。
時だたった少女にとっては淡い思い出にしかなっていないところからも、そんな感じに読めた。
そして、そんな試練を乗り越えたからこそ、妻との生活もやり直せることにやったんだろう。
また、妻の受胎も夢の世界を辿ってなったというところが、『1Q84』をオマージュしているのかなとも思った。他の作品のオマージュもあるかもしれないが、特に気づいたのはこれだった。

また、絵画が織りなす物語というが、絵画を描いているときには作者の思いがこもっているが、それをどう解釈するかは見る人次第であるので、ここから、このような物語が紡がれているのかな、っと感じた。

メタファーの世界で払った対価は、顔のない男の似顔絵を描くと言うことだったが、それは自分との約束なのかな。とも思った。また、それが、プロローグの謎なのかとも伏線が回収され、面白かった。

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2023年04月07日

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ネタバレ

メタファーもイデアも、メタファーとイデアとして存在していた。
そのことが従来の村上作品とは、一線を画す一作。
あるのかないのかわからない、無限に舞う紙吹雪の中から特定の一枚の紙を探すような頭の働かせ方ではなくて、たしかにこの中に探しているものがあるのだと思いながら読み進めることができるのはやはり安心感がある。
あるけれども見えなかったのなら、それは私の責任だし、見えなかったことを見えなかったままにすることが私は苦痛ではないので特に問題にはならない。
時々クスッと笑えるユーモアも散りばめられていて、エンターテイメント要素もしっかりある。
一気に読みました。

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2022年10月05日

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ネタバレ

村上春樹の長編にしては終わり方が“分かりやすく”、“綺麗に”終わっているように感じた。ここまで詳細にその後を描いた作品はあまり思い当たらない。

しかし、エピローグへと再び戻るようなっているのは秀逸だと感じた。

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2022年01月09日

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ネタバレ

村上作品としては珍しく纏まったのではないか。元鞘に収まった、と——(夫婦愛の再生,そして新たな命の誕生)。私としては絶対"まりえ"と性交すると思ったんだけど…。最後はとってつけたように、東日本大震災を入れた意味とは?
ワクワク度的には第1部の方が上で、後半にかけて若干失速したかなという印象。でもまあ私は好きですね。

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2023年12月24日

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ネタバレ

肖像画家の「私」のもとに、イデアが形を変えた騎士団長が現れた。どうしたらいいか聞いたところ、午前中の電話に断るなと言われた。

雨田から電話が来た。認知症の父に会いに行くと言う。そろそろ危ないと言うから。「私」はついて行った。

ファミリーレストランに入ったら、スバルのフォレスターがあった!

有名な日本画家、雨田具彦(ともひこ)の施設に着いた。施設で具彦に話しかけていたら、息子の雨田に電話かかってきて外に出て行った。

騎士団長がいた。騎士団長を殺さなければならないと言う。それが第二段階。第一段階はまだ騎士団長殺しの絵を見つけたということである。

雨田具彦の彼女が拷問で死んだ。彼自身も拷問を受けた。そのため、何もいえなかった。心の傷を受けた。

「私」は逡巡の末、まりえを取り戻すために騎士団長を殺した。

顔なががでた!穴から引きずりだした。
メタファーだった!見たものを書く。「こみちさんといったかな?」背筋が凍った。それは「私」の亡くなった妹の名前。なんでーー!怖い!

顔長がでてきた穴に入った「私」。懐中電灯を持ってあるく。川の水を飲んだ。

男がいた。顔がなかった!背が高い。帽子をかぶり、コートをきていた。ペンギンのキーホルダーのかわりに橋渡ししてもある。

カンテラと絵の女性がいた!狭い横穴に入ることになった。「自分を信じるのです」無と有。なんなのー。目を逸らさない

穴を頑張って外に出た。
すべては相対的なものなのだ。

まりえも帰ってきた。2人で騎士団長殺しとスバルフォレスターの男の絵をしまった。

まりえは免色さんの家に三日間いたという。勝手になかに入った。

「私」の以前の妻はまだ離婚届を出していなかった。なぜー。誰の子供かわからないという。今のパートナーとは別れていた。相手は納得していなかったけれど。そりゃそうだろうよ。

「私」は以前の妻の元に戻った。誰の子供かわからないけれど、生まれた女の子がムロと名付けられ、育てることになる。保育園へ送っていく。

東日本大震災の様子が描かれた。津波がやってきた。なぜここでその場面が出てくるんだろう。スバルフォレスターの男をテレビで見かけたと言うことも書かれていた。

以前住んでいた家が焼き落ちてしまった。騎士団長殺しも焼かれたと言うことになる。

何が伝えたいことなのか。すごく難しい小説だった。最初に書かれていた顔のない男とペンギンのキーホルダーの約束はこのあと起きることなのか。描かれていなくてわからなかった。

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2024年04月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全体的にやや説明的過ぎるかもしれない。(個人的解釈ながら)深遠なテーマに対して表現手段としては好き嫌いが分かれよう。3巻までは着地点が想像つかぬままワクワクしながら読んだが、まりえが失踪した時間軸における主人公の過ごした超越世界(イデア)に対して、まりえが過ごしたのは免色の家(現実世界そして騎士団長という名の少しのイデア)という設定には、作者の明確な意図を感じる。つまりは現実は想像と錯覚の賜物であると。イデアがメタファーとなって現実世界を規定し、現実世界の二重メタファーがイデアを通じて再度現実世界を規定する。現象は現象として存在するのみで、それを世界として認知するのは単に人間のイデアの仕業であると。

要素として、アンシュルスの話を盛り込んだり、量子論的な観点でイデアとメタファーの対を説明してみたり、これまでの作品では見られなかったまりえの帰宅やユズとの復縁があったり、色々興味深い事柄は多いものの、個人的な好みとしてはほか作品と比べるとやや劣る印象であった(もちろん小説としては非常に面白い)。

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2022年06月30日

Posted by ブクログ

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暗い穴を長い時間をかけてくぐり抜ける。読者も主人公と同じような気持ちになってくる。
そして最後は人生論のようになる。

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2022年01月19日

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