【感想・ネタバレ】騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編(下)―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

「簡単なことだ。あたしを殺せばよろしい」と騎士団長は言った。「彼」が犠牲を払い、「私」が試練を受ける。だが、姿を消した少女の行方は……。暗い地下迷路を進み、「顔のない男」に肖像画の約束を迫られる画家。はたして古い祠から開いた異世界の輪は閉じられるのか。「君はそれを信じたほうがいい」――静かに魂を揺さぶる村上春樹の物語が、いま希望と恩寵の扉を開く。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

色々伏線もあって、一度では解釈が難しい内容でした。

主人公である肖像画家と秋川まりえ
2人にしか見えない世界が見えることで、負の連鎖を断ち切る『輪を閉じる』迄の試練を各々に課されます。

そのプロセスが余りにも表現だけの世界のようにストーリーの展開が遅く感じられましたが、
人として完璧と思える免色さんには、大きな欠点が見えてきました。
時折出てくる謎のスバルフォレスターの男も主人公の別の顔として登場しているではと思い至りました。
なぜなら主人公は、肖像画家として描く前にモチーフと会話を通してじっくり向き合う時間を必要とし、本質を捉え作品にして行くからです。

最後に秋川まりえが、苦手としていた免色さんについて、負の感情が年齢とともに消えて行く心境変化、主人公が離婚したと思っていたユズと概念の変化(自身の変化)により、復縁する結末も印象的でした。

補足するならば、
主人公の心の傷となっている妹『小径』コミチに対して、
新たに誕生した子どもの名前が『室』ムロ…
騎士団長殺しの絵画や歴史の闇を葬るのではなく、受容して生きて行くというメッセージの締めくくりになっているようでした。

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2026年05月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この4冊の長編小説を通して彼が我々読者に伝えようとしていることは
事実というモノの弱さ、そして、信じることの強さ
なんじゃないかと思った。

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正しい知識が人を豊かにするとは限らんぜ。客観が主観を凌駕するとは限らんぜ。事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ。

私は揺らぎのない真実よりはむしろ、揺らぎの余地のある可能性を選択します

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作中にもこのような文章があるように、真実というモノの価値に一石投じるような作品だと思った。

そして主人公と免色の対比構造──確かなモノがないこの世で、信じることを望むか、その曖昧さに価値を見出すか──も、最後に明かされて今まで読んできた中で曇っていた部分が一気に風に吹かれて快晴になったように感じた。

そして度々出てくる風の歌を聴けなどの過去作品からのオマージュに、ハルキストはニヤけてしまうだろう。

とにかくすごく良かった。
長編小説の苦手な僕がすごく読み入ってしまった。

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2026年03月10日

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ネタバレ

手を繋いで保育園から自宅まで帰るラストシーンは村上春樹作品には珍しいのでは、と思う。だいたいが、大切な人の何かが損なわれてしまって、読んでいてモヤモヤするものが残るパターンが多いのではないかと…。
復縁⇒子育て(しかも愛情がたっぷり)のこの図式は歓迎。

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2025年08月19日

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ネタバレ

すごく惹かれ続けた物語だった。なんだかちょっとだけ不思議な世界。あるものないもの、そんな差なんて本当にあるの?と問いかけられているようだった。未来は不確かで、今のこの瞬間は儚くて、未来にとってはどうでも良かったりして、でもそこにあるものもあって、そしてそうであっても、今をないがしろにしない。なんかそんな普通であり、普通でない物語が心惹かれた。

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2026年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

悪が、純度100%の悪としては描かれず、
主人公に宿る悪(=スバルフォレスターの男)
免色に宿る悪(=スズメバチ、クローゼットの前に立っていた男)として、「普通の(免色に至っては普通以上の)善良な人間」にも宿る普遍的な悪(闇とも言い換えられる)を描いていたのが村上作品の中で新しいと思った。

ねじまき鳥クロニクルでは、
皮剥ぎボリスや綿谷ノボルなど、読者にとことん嫌悪感を抱かせる純度100%の悪が描かれていたが、
この作品の免色渉は、とにかく自制的でスマート。

私はすごく好感を持てるキャラクターだったな。
そんな人間でも、悪を抱えている(キリスト教でいう原罪)ということなのだろうな…

悪は外在して善と対立して存在するものではなく、
内在して善と混ざり合っているもの….ということか。

免色渉は、ダンスダンスダンスの五反田君に少し似ている。隙のない感じとか。
五反田君の方が若くて繊細で傷つきやすく脆く危うかったけど。死ななかった世界線の五反田くん。

あとあんまり関係ないけど、これ上下巻2冊でよくないか…???
4冊に分解する必要あった?

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2025年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

雨田具彦の介護施設からの流れで、騎士団長殺しの絵の登場人物がオールスターキャストで出てくる。イデア、メタファー、時間、空間。

騎士団長は自分のことをイデアだと言い、顔ながは自分のことをメタファーだと言う。

顔ながはさらに、生身の人間がメタファー通路に入るのは危険だ。順路を間違えると、とんでもないところに行き着くことになる。奥の暗闇に潜み、とびっきりやくざで危険な生き物である、二重メタファーがあちこちに潜んでいる。と言う。

有と無の間には川が流れていて、顔のない男の船に乗らないと渡れない。

イデアを理解するというのは顔のない男の肖像画を描くようなものだと理解すればいいのか?それがイデアを理解すると言うことのメタファーなのか?

雨田具彦も何らかの物質化したイメージを見ていたと思う。亡くなる間際でずっと自分一人で抱えて来たものが何らかの形で晴らされてスッキリできたよう。よかった。

主人公が騎士団長を殺し、メタファー通路に入ったことと秋川まりえの救出とが今ひとつ結びつかない。騎士団長は秋川まりえを救出するためには自分を刺さなければならないというような意味のことを言っていたと思うのだが。開いた環を閉じることと秋川まりえを救出することとの関係は?

主人公がイデアやメタファーを経験し、二重のメタファーに飲み込まれる前に抜け出すためには、穴が塞がれていて中が暗闇になっていなければならなかったのか?そのために秋川まりえが免色の家に忍び込むんだとき、騎士団長が見つからないようにした(時間を稼いだ)のか?その間に免色さんは秋川まりえが穴に落ちた可能性を考え、穴を塞ぐと予想してのことだったのか?

鈴と出刃包丁が空間を移動したのは誰の手によるものか?ペンギンのお守りもそうかもしれない。

クローゼットの前にいた人は免色さんかもしれないけど違うかもしれない、というようなことだったが、結局何だったのか?

スバルフォレスターの男は結局何だったのか?主人公の何か汚い部分のようなものなのだろうけど、イマイチ腹落ちできる表現ができない。

ユズは妊娠をキッカケに、自分の人生は自分で決めて来たつもりだったけど、何かに決められているような気がすると言う。「神の見えざる手」的な考えか?

免色さんは自分の子供である(自分の遺伝子が入っている)可能性がある秋川まりえと暮らしたい(暮らすためにどうするか)と考え、主人公は常識的に自分の子供ではない(遺伝子が入っていない)子供と暮らすことを選ぶ。血のつながりとか遺伝子を残すことって何なのか?

怪しい宗教にのめり込んでいるらしい、まりえのお父さんを話に絡めてもらいたかった。

第一部を読み終わってから、第二部を読むまでに時間を置いてしまったせいか、そもそも理解力不足か、第一部で張られた伏線がたくさんあったと思うのだが、第二部を読み終わった今、まったく回収できないモヤモヤ感が強い。村上春樹の作品では大体いつもそうなのだが、いつも以上にその感覚が強い。

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2024年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

秋川まりえが未だ失踪中。
免色と主人公は家で話をする。
免色は秋川笙子と恋に落ちており、まりえはそれに気づいていた。今回の失踪とは関係ないと思うが...
そんな中、
「明日午前中の依頼を断らない」と騎士団長の予言通り、翌日、
雨田から具彦に会いにいかないか と連絡があった。
勿論二つ返事で回答した。
具彦と面会し、核心に迫る事なく、具彦に質問する。
屋根裏にミミズクが住んでおり、環境がよさそうです。
(騎士団長殺しの絵の事はふさた)
それに具彦が反応を示す。そこへ騎士団長が現る。
具彦も騎士団長が生みの親として見えているようだが、
あまりにも情報量が多く処理しきれない様子。
そこへ騎士団長から
秋川まりえを救うには私を殺すしかない。殺せば、具彦も救われる と
私は、思い切って騎士団長に包丁を突き刺す。
突き刺した後、背後に絵の状況の同じ謎の穴から顔ながが覗いている。
私は、顔ながを捕まえ、秋川まりえはどこだ
顔ながはメタファーであり詳しくは分からない。
私は、顔ながを逃し、後を追った。
穴の中は、真っ暗で、顔のない男、白いフォレスターの男、妹のコミチと行った洞窟等、色んな思いや人が現れる。
狭い穴を通り押し出されるように出ると、家裏の石壁で出来た穴である事に気づく。
少しの光も差し込まず懐中電灯で例の鈴を見つけ、鳴らし続ける。そこに免色が現れて、助けてくれた。
私は、ボロボロになりながら、免色にオムライスを頂き、状況を確認した。つい先日、秋川まりえが戻ってきた。しかし、口を一切開かず、状況は不明であり
服等はボロボロだったようだ。
まるで、私と同じ状況だ。雨田にも突然姿を消した事を説明しなければならない。
後日、秋川笙子から連絡があり、まりえと会ってほしい、あなたになら、何か話をしてくれるかも。との事だった。
まりえは、免色の家に忍び込んで、免色がまりえ達の家を覗いている事を確認しようとし、途中で免色が帰ってきてしまい、帰るに帰れなくなってしまった。
困ったまりえの元に騎士団長が現れて、アドバイスをくれた。その通り行動する事により、4日程かけ、脱出に成功した。途中、免色こ家に忍び込んでいたでは、問題があるので、衣服を汚し、傷つけて、山の中に迷い込んでいて記憶がほとんどない事にした。
まりえと私しか知らない情報を共有する事ができた。
それからというもの、鈴の音も騎士団長も現れる事はなくなった。

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2026年07月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

絵を完成させたことで動き始めた物語なだけあって、完成しない絵の方も大きな意味を持っていることがよく分かった。たぶん「白いスバル・フォレスターの男」は主人公のよからぬ感情の象徴で、「秋川まりえの肖像」はまりえを手に入れたいと望む免色の怖さを表している。前者の未完成は主人公が真っ当な人生を歩むことに繋がり、後者の未完成によってまりえの安全が保たれた。「騎士団長殺し」は焼失することで役目を終えた。最後に主人公によって「白いスバル・フォレスターの男」が未来の「騎士団長殺し」のようになることを危惧しながらもその完成を最終的には望んでいることが示唆されるが、再婚することによって独りで無くなった(=他人と共同生活を送らなければならない運命になった)彼にとって自分のよからぬものを克服することが今後の目標となったという意味だと思われた。
絵の完成具合とストーリーラインがリンクしている構造はとてもおもしろい。ただ『世界の終り』や『ねじまき鳥』でも感じたが、「地下に降りていって何かと戦う」という段階になると物語が単調で退屈になる。中短編だと丁度いいが長編だと長く感じる。

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2025年08月23日

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