あらすじ
児童文学のノーベル賞にあたる、国際アンデルセン賞作家賞受賞! 世界的注目作家の新たなる代表作。闘蛇と王獣。秘められた多くの謎をみずからの手で解き明かす決心をしたエリンは、拒み続けてきた真王の命に従って王獣を増やし、一大部隊を築き上げる。過去の封印をひとつひとつ壊し、やがて闘蛇が地を覆い王獣が天を舞う時、伝説の大災厄は再びもたらされるのか。傑作大河物語巨編、大いなる結末へ。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
人と王獣。本来結ばれないはずだった絆をエリンが結んでしまったことでこんな哀しい展開を迎えるなんて…
獣のことを、リランのことを、知りたくて知りたくて走り続けて、いつか野に解き放ってあげたくて試行錯誤してきたはずなのに、その結果戦の武器にせざるを得なくなるなんて、本当に人間はなんて醜く愚かで哀れなんだろうかと心底思う…
でもエリンが言っていたように「人は殺し合いをすることで均衡を保とうとする獣」であるなら、それが人を人たらしめる所以なんだろうなとも思う。
戦争は良くないと言いつつも、時が経てばまた争いの火種が生まれて同じことを繰り返す。
自分たち人間が醜く愚かな生き物だってわかってるから、そうじゃない動物たちを愛でたり慈しんだりする心が生まれるのかな…
エリンの、そしてリランとその子供たちの最期はとても辛くて悲しくてショックだったけど、その後の王獣たちは野に解き放たれて人間の戦の道具にされることがなくなったのは良かった…
素晴らしい物語でした✨
子供の頃にぜひとも読みたかった…!(T-T)
Posted by ブクログ
学問と戦争の話だとも思った。基本的に好きなんだけど、ラストシーンが悲惨すぎて辛いし、そういう悲惨さに向かって展開する物語を読み進めていくのも辛かったので、元気な時に読んだ方がいい。明らかになったラストを見て、核戦争のこととかも意識してあるのかなあと思った。知識と教訓が受け継がれていても、後世の人間は毒性の薄い闘蛇を育成できないかと考えはじめそうなので、なんかそんなに明るいラストでもないような気はした。。
Posted by ブクログ
もしかして、エリンとイアルとリランは──
いやいや、そんなことにはならないはず……と祈りながら、家事を放棄し読みふけりました。
やがて迎えた結末は読まなきゃよかったとすら思うショッキングなラスト。
悲しくてしばらく言葉がでませんでした。
エリンがもっと家族の時間を過ごせて、王獣たちはみな寿命を全うするという別ルートの結末をください…
しかし、この物語は、ひとつの国の歴史であり現実であると考えると、この結末でなければ未来への希望は見えなかったかもしれません。
臭い物に蓋をするようなことはせず、受け止め、考え行動し、松明の火をつないでいかなければ。
読み終えて2日が経ちますが、この結末が徐々に受け入れられつつあります。
Posted by ブクログ
こんなにも壮大な物語に出会えたこと、この作品を書いてくれた作者、この物語の登場人物、すべてに感謝したい
あまりにも辛いが納得の最終巻だった。人と獣はどうあるべきかを問うストーリーに圧倒され続けた。自分の信念を最後まで貫いたエリン、彼女を育てた周りの人々の人生が幸せなものであったことを願う
もうほんまに思い出すだけで泣ける、人生最初で最後の1番大好きな作品
Posted by ブクログ
友人の勧めで読んだ
アニメも見たことがあるが、話がだいぶ違い、少し新鮮な感覚で読めた
あとがきに、本来は闘蛇編と王獣編で完結の予定だったことを知った
作者曰く、その二編で完成した玉のようなものらしいが、もっと先が読みたいとの声で続編を書いたらしい
続編を出してくれて本当に良かった
あの世界観を長く楽しめるのは本当に嬉しい
外伝を読むのもとても楽しみ
Posted by ブクログ
中学生か高校生の時に読んで、約10年ぶりに再読。あの時はこんなに深い物語だと理解できていなかったのではないかと思う。読み終わった後、放心状態になるくらい考えさせられた。
全てを隠すことで民を守ろうとした初代真王をはじめとした過去の人々と、全てを明らかにすることで人々を守ろうとしたエリンたち。
その対比が緻密に描かれており、何が正解で何が不正解か、その答えはないのだと思った。
まさに、人々は争い続けるものであり、エリンの夫イアルも、エリンの死後も闘蛇乗りであった。
エリンが全てを明らかにしてもなお、戦はやまないのだ。
読んでよかったと思える長編。
Posted by ブクログ
エリンの息子ジェシは、母が王獣の訓練をする姿を見たいがために立ち入りを禁止されていた森にこっそりと入って盗み見をしていた。エリンや護衛兵たちはそのことに気がついていたが、母と過ごす時間の少なかった幼いジェシを思うと、注意もしづらく、黙認していた。
ある日、その森の中からジェシの悲鳴が聞こえる。慌てて悲鳴の方へとエリンが走ると、大量の火蟻に身体中を噛まれ悶えるジェシの姿があった。一命を取り留めた息子を連れて、火蟻に襲われた森へとエリンは向かい、森の生き物たちの危険について、生態について、ジェシに話して聞かせる。
狂乱する闘蛇と王獣を止め、死ぬ、エリンの最期も心に残った。それでも、この物語の中で一番心に刺さったのは、エリンとジェシ、イアルとジェシの母と子、父と子が語り合う場面だった。ジェシは、ときに反発をしながらも、ときに意味が分からずとも、母と父の言葉を聞く。こんな風に親から子へ、知恵とも心とも言えない色々なものが語り継がれていくのが、それを聞く子どもの姿が、微笑ましく優しい。だからこそ、そんなさりげない親子の会話があるからこそ、政治に利用され、戦争に駆り出され、死を迎えることになったエリンの姿の悲哀が読み手の目に焼きつく。
この物語は、「語り継がれること」の物語だったように思う。かつて闘蛇と王獣が戦争に利用されたことによって一つの国が滅んだ大厄災の記憶は、語り継がれなかったことによって、エリンが死をもって証明した災厄を再びもたらすことになった。大厄災を知っていた祖先は、二度と災厄を起こさないために規則を作り、真実を秘した。しかし、その善意が、後世の人々の無知を生み、厄災を引き起こすという皮肉を生んだ。
「松明の火を想像してみて、ジェシ。松明の火は自分の周りしか照らせないけれど、その松明からたくさんの人たちが火を移して掲げていったら、ずっとずっと広い世界が、闇の中から浮かびあがって見えてくるでしょう?」
息子の頭に顎をのせ、さわさわと春風にゆれる木々をながめながら、エリンは言った。
「おかあさんね、そういう人になりたいの。松明の火を、手渡していける人に」(p64)
かつて木漏れ日のあたる森の中で母が伝えた言葉は、27歳となった息子の心の中に残っていた。そして、すべての平民が学べる高等学舎を設立することになる。そして、母がついに叶わなかった、保護場で飼われた王獣を野に戻すという夢を、ジェシは果たすことになる。
何気なく伝えた一言が、次の世代に残っていく。そういう物語だった。
Posted by ブクログ
『獣の奏者』闘蛇編〜完結編
2023/07/23頃〜2024/05/10 1回目
最初はなつかしい気持ちだった
エリンの子供なのに大人びた姿、動物のことになると現れる子供らしい姿
大人になってみるとどれも可愛らしい子どもの姿だった
母を失うという壮絶な経験をしてもなお、禁忌とも呼べるそれを解き明かそうとしたエリンの姿は勇敢だったけれど、勇敢な人がひとりいたとて世の中は災いをその目で知るまで変わろうとしない。苦しかった。バスの中で嗚咽しそうだった。
『獣の奏者』という話の中で一番鍵になるのは「母」だと思う。エリンは母を闘蛇に喰われ、イアルは母に売られ、ジェシも母をあの戦いで失う。
惨いと思ったのは、エリンもイアルも母を失ったことを辛く重く心を痛めているはずなのに、二人とも命を落とす覚悟がある。ジェシにそんな思いはさせたくないと言いながら、しっかり思いながら、そんな思いをさせてしまうことを自覚している。
しかし最後のジェシはあまりに強かった。
何度もその話をするのは苦しいだろう。獣ノ医者として働く度に母の背中を思い出すだろう。それなのにまだ母の背中を追っている。エリンとイアルの強かさを継いでいる。きっと孫も凄く強かだろう。
最後は本当にグロテスクだった。あそこまでの災いが起こるなんて想像していなかった。アニメ化しなくて良かった。
闘蛇の甘い匂いを嗅いでいるようだった。
兵士たちの死に顔が浮かぶようだった。
こうなると知ってもジェシは母を信じていた。強い子。私ならどうするだろう。きっと王獣で飛べない。
アルを飛ばすことを選べない。
最後に母と過ごした四日間はどんな気持ちだっただろう。
けれどエリンは叶えた。王獣を解き放つ願いを叶えた。
素晴らしい人だと思う。ただ、自己犠牲の強さだけはいただけない。
ソヨンはエリンをどんな顔で迎えるだろう。きっと二人とも地獄へ落ちる。戒律を破った者として、災いを起こした者として。それでも二人がしたことは間違っていない。エリンもソヨンも子を思ってしたことだ。
苦しい。暴れたい。これから外伝を読む。母としてのエリンがどうあったのか。きっと優しく、厳しい母であったのだろう。
イアルとの結婚までも気になる。二人がどうやって仲良くなっていったのか、それが気になって仕方ない。
幸せになって欲しかった。イアルと結婚したことを知ったときの安堵感はとてつもない。この二人が結ばれたことが何よりの幸せだったのかもしれない。
ジェシは二人の子に生まれて幸せだっただろうか。二人のことを誇って欲しいとおもう。
あーーーーーーあ
また読み終わってしまってくるしい。
新しい本を探さなくては。
上橋菜穂子の本をもっと読もうかと思う。
子供に勧められて夢中になりまし
とても面白く、感情移入できる、考えさせられる作品です。
王獣の絵はありませんが、どうしてもその容姿がずんぐりむっくりの大きくてまん丸の巨大なペンギンの様な姿しかイメージ出来なくて(^^;;
最後は家族全員と王獣達が平和に暮らせる事を願いつつ読んでいたのですが…
Posted by ブクログ
獣の奏Ⅳ。ファンタジーではあるものの、壮大な歴史小説のように感じ、現実世界にも何か通じるものがあったと思う。エリンと王獣リランが心を通わせているように見えても、やっぱりどこか壁があるという人と獣の限界を感じた。加えて、どうせ最後はハッピーエンドだろ?という斜に構えた見方をしていたので、良い意味で裏切られました。エリンやリランたちも含めた登場人物たちが亡くなったことは、悲しいと思うと同時に物語の深みに還元されているように感じた。
Posted by ブクログ
情報を公開することの大切さよ。雁字搦めに全てを縛り、隠し通す初代真王、そしてアォー・ロゥやカレンタ・ロゥの考えには正直反対である。保守的すぎて、考えがまとまらず返答を遅らせて、結局災禍が起きてしまったのは、現代に生きるトガミリョの失策に他ならない。追い詰められた者はなんでもするというエリンの言葉にある人間の性質を、トガミリョ達は甘く見過ぎだと思った。もっと早く言ってくれ…
匿名
漫画化されたのを全巻読んで、終わりかたに納得出来なかったので、探究編と完結編を読みました。読んで良かったです。
バッドエンドじゃないと仰る方がいらしたが、私もそう思います。と言うか、終わりではなく今は一時の平安という感じ。また、遠い将来に似たようなことが起きるんだろうなと思えてならない。
ジェシと相性が悪くて、読んでてすごいストレスでした。(なんだ、このガキは😡)と思いながら読んでました。(よく考えたら、子供のころのエリンも似たようなもんだったかな?
いちばん許せないのは、身重のアルを飛ばせたことで、自分の大切な者のためなら他者の苦痛を顧みない、そういう行為が物凄く嫌いです。
(アルと子供が無事で良かった)
人とはそういう者だと言われたらそれまでですが、こういう事をする人間は、自身の抑えきれない欲望のためなら同じことをするからです。
…ジェシにあの場面を見せることが必要だったのは、解るんですけどね。
Posted by ブクログ
この本のここがお気に入り
「知らねば、道は探せない。自分たちが、なぜこんな災いを引き起こしたのか、人という生き物は、どういう風に愚かなのか、どんな事を考え、どうしてこう動いてしまうのか、そういう事を考えて、考えて、考えぬいた果てにしか、本当に意味のある道は見えてこない…」