あらすじ
解散危機(?)を乗り越えた僕らの前に現れたのは、新メンバー候補の少女、志賀崎伽耶。芸能人夫妻の娘でモデルで女優というハイスペックぶりに加えて、パートはなんと僕と同じベース!
ライヴ前日のクリスマスイヴには、バンドメンバーの四人全員と順番にデートする約束をとりつけてしまい、朝から夜までぎっちり分刻みのスケジュールに。果たして全員つつがなく満足させられるのか? 新加入メンバーにより恋もバンドも大波乱の予感!
燃料投入でさらに加速する超高純度青春ストーリー、第3弾!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
伽耶はいいキャラだったしタクトとの曲も気になる次回作が楽しみ!
蒔田シュンの実家を訪ねるシーンは叙述トリックを意識されてたのかなと思う、普通に騙された。
イブのクアドラプルデートは笑ったしホント真琴ちゃん最高だな……。
華園先生が手術に向かう、ある意味死への覚悟の中で送り出した、Adventすなわち「待誕祭」と、そこに重なるPNOのアンコール曲、、すごすぎます。
仄暗い悲しさ
久しぶりの杉井先生の作品です。
個人的には「さよならピアノソナタ」以来でしょうか。
1巻を書籍で持っていたのですが、引っ越しの際に処分して
しまっていたようなので、電子書籍で大人買いをしました。
杉井節ともいうべき、少しクラシックの作品や表現を多用する
文章回しと、青春群像劇と思わせる中にも、仄かにかおる
病や死の雰囲気を感じさせるのが、なんとも物悲しいなと
思ってしまう、良いシリーズです。
Posted by ブクログ
どんどん作曲できる真琴は凄い。予約投稿が後の伏線になるとは。
花園先生の描写は痛々しくて読むのがつらい。真琴の心に一番刺さっているのでは。
Posted by ブクログ
やっぱり杉井光作品ではこのシリーズがベストだと思う。
音楽を描写する詩的表現が巻を追うごとに研ぎ澄まされていっている。後書きでSF作品の詩的さに言及しているけど、その影響が大きいのかと合点した。
あとは細かいことだけど前巻に引き続き叙述トリックが仕込まれてたのが個人的には好みだった。
拓斗さんと作った曲の公開が無かったけどこれは次巻以降?
Posted by ブクログ
ああぁ、このラストはズルイ! いつまでも心がざわつくじゃないか!
シリーズ3巻目。
4人目かい! と突っ込まずにはいられなかったわけだけど、いやあ、実に作者らしい、愉しくて切なくて苦しくて心臓がキュウとするお話だった。
その4人目の女の子だけど、境遇も抱えるものも、それに対する真琴のやり方も、もうね、何もかも杉井光だよなあと思ってしまった。うん、大好き。
凛子の言うとおり、真琴が困っている女の子を拾ってくるのはもう仕方がない。
そしていつも全ての鍵は音楽の、ライブの、中にあるのだ。
少女達のボケの絶妙さや、クリスマスイブの超絶スケジュールに笑わせてもらっていたら、ラスト話の不穏な展開に胸がドンドン苦しくなって来た。
実は2話目で葬式に流す曲の話が出て来た時に一度もしかしやらと思ってヒヤヒヤしたのだけど、それにホッとしてたら二度目が来たので余計にドキドキしてしまった。
そして最後のスマホの場面。
もうね本当に怖かったんだからね。
恐れで動悸が激しくなったよ。
だけど、これで安心できるとは限らないのだよなあ。
それでも、きっと救いのある未来が待っていると信じて次巻を持ちたいと思う。
Posted by ブクログ
前巻が少女達にとってPNOが楽園であると示すエピソードになったなら、今巻はその楽園を作った真琴にとってPNOは楽園足り得るのか?という点を描いていたような
そう思えば、演奏面において真琴より秀でた伽耶の登場は真琴がバンドに居続ける事は正しいのか?と問うと共に、楽園に居ると選ぶのであれば何を楽園の外に置き去りにしなければならないかを問い掛けているかのようだったよ
真琴が新メンバー候補・伽耶のプレイングを耳にして心が揺さぶられる、なんてのは前巻でも似たような展開が有ったけど、今回はまた別種のものだったかな
キョウコの時は真琴の立ち位置が乗っ取られるかのような感覚だった。でも、伽耶は真琴とは異なるベースを操るから乗っ取りにはならずにPNOを別種の存在にさせかねない作用として効いてくる
けど、元々は感情の赴くままに奏でていた真琴にとってPNOは特定の形を持つバンドとまでは必ずしも確信できていない状態。また自らの音楽が急拡大していた事態に心が追い付いていなかった事もあって、真琴はバンドを外から見たいなんて言い出したのかもしれない
真琴の代わりにバンドへと仮加入した伽耶は瑞々しさに溢れたタイプだね。若い憧れを以てPNOに入り込んだ。そこには父への反発なんていうそれこそ若年時代にしか出来ない振る舞いも見て取れるし、芸能社長に騙される危うさも見える。先にバンドに加入した凛子達が音楽体験における危うさを持っていたのに対し、伽耶の場合は人格形成における危うさが見て取れるね
そう考えると、PNOに辿り着いた伽耶は凛子達とは異なる動機や背景によって辿り着いたと捉える事も出来なくはない。凛子達は音楽を自由に奏でられない境遇に息苦しさを感じていた所にPNOという楽園に巡り合った。対して伽耶もPNOは目指していたものの、そこに楽園を見ていた訳ではなかった。真琴への憧れから彼女はPNOを志した
若々しい彼女だからPNOへの加入背景には父親の陰ながらの手助けなんて幼さも見えてしまうが、それを伽耶は許容できないと
そこで真琴の自分勝手な音楽欲が伽耶にまで欲を与える形は面白いね。おまけに「僕は、伽耶の音が欲しい」とか言うなんて。そりゃ伽耶が真琴含めPNOに夢中になるのは当たり前だし、自分が加入した途端に真琴が一時脱退したらむくれるよなぁ(笑)
真琴がソロ活動を模索する中でネットの片隅で出逢った一つの音源。小さな子供にとって秘密の地図を見つけて方々を探し回って宝物を見つける行為が夢の具現であるならば、音楽家にとって音の欠片から関係者の記録を探し回って楽曲を作り上げるのも夢のような行いなのかもしれない。このエピソードを読んでそんな事を思ってしまったよ
何処からどう聴いても良い音源。だけど中途半端な作りで由来も不明。その音に魅了されれば完成させたくなるし、誰がどうしてネットの海に落としたのかも気になってしまう
これは真琴がバンド活動を続けたままであったなら、実らなかった出逢いだろうね
拓人が味わった奏でた音が自分の音では無くなる感覚。昔はそれに対し素直に反発してしまい音は楽曲に成らず誰の耳にも届かなかった。蒔田シュンとの繋がりも途絶えてしまえば、それが日の目を見るなんて本当に有り得なかったのだろうね
そう思えば、生まれ落ちないまま漂っていた音の欠片を何年も経ってから楽曲として作り直すなんて真琴は凄い事をやってのけたね。それはなんて夢のある話だろう
でも、このエピソードにて夢が甘いものとして扱われず苦々しいものとなっているのは現実の儚さを感じてしまう。音は楽曲に成れば消えない。けれど、それを扱う人間はいつか消えてしまうし、聴く人が居なくなっても消えてしまう。
なら、かつては自分の音ではないと反発してしまった音であろうと拓人は蒔田シュンという才能を認めた人が存在したとこの世に刻みつける為に曲をきちんと作り上げる必要があった
そこに真琴が介在できたのなら、真琴が音を拾い上げた甲斐があったというもの
そんな物寂しいエピソードの後に始まるクリスマス編も何とも言えぬ甘さと苦さが両立しているね
クリスマスイブにダブルブッキングならぬクアドラプルブッキングが発生するなんてそれどんな夢次元?と聞きたくなる。しかも、途中で変にバレたりせず誰とも穏やかにクリスマスデートを実行できるとかどういう事です……?
ただ、真琴は四人の少女への恋愛感情が現時点では希薄なものだから妙な背徳感とかも無かったりするのだけど。その傾向は真琴が選んだクリスマスプレゼントにも現れているね。物の見事に音楽関連アイテムばかりで、彼女らのどういった面を重視しているかが浮き出てくるかのよう
どこかの誰かさんみたいにビートルズのレコードを送らなかっただけマシとも言えるけど
こうして都合よく織り成された甘い夢のような時間は守られクリスマスライブの時間へ。そして裏で進行していた苦々しさの静かなインパクトが……
音は楽曲に成れば消えない。だから美沙緒がネット上に上げた楽曲も真琴に届いた為に消える事は無い。つまり、美沙緒という個人が消えてしまう事態が有ったとしても美沙緒が真琴の為に紡いだ楽曲が消える事はない
成功例の少ない手術に対して何か抵抗が出来るとすれば、自分を何処かに残すように祈りを音に乗せて放流する事だったのかもしれない。だからネットに曲を残して、用いたピアノを託して……
こうして託されたなら真琴だって応えなければならない。美沙緒によって結成のきっかけが与えられたPNOは真琴を中心とした楽園。だから伽耶という素晴らしいベーシストが居たとしてもPNOから真琴が抜けるなんて有り得ない
真琴にとってPNOは完璧な楽園とは言い難い。けれどそこを楽園としてしまったなら、楽園が奏でる音楽を求める者達の安息を守る為に彼は音を世に解き放ち続けなければならないわけだ
他方で伽耶を楽園から放逐して終わりにするのではなく、ソロプロデュースの形にしたのは意外だけど、良い着地点だったと思えるね
……その際の台詞がどう考えても告白以外の何物でもなかったのに他意が一切含まれてないって真琴は凄いなぁ(笑)
真琴が楽園で奏でた祈りは届き再会が約束された。彼はもう少しPNOに身を置きつつ、音楽的才覚を発揮していくのだろうと思える暖かいラストでしたよ