あらすじ
バンドとして本格始動した僕ら四人は、二学期になってもトラブル続き。
クラシックしか認めない堅物の凛子母がバンド活動に怒って退学を迫ってきたり、ファンキージャズドラマーの詩月祖父がいきなり僕を拉致したり、生徒会長にごり押しされて文化祭の女装コンテストに出場する羽目になったり!?
挙げ句の果てには大物音楽プロデューサーとメジャーデビューをかけて勝負することになり、文化祭ライヴはオーバーヒート必至!
恋も音楽もノンストップの超純度青春ストーリー、待望の第2弾!!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
相変わらず、文章から音楽が聴こえてくるような読書体験だった。
凛子の家庭のことだったり詩月の祖父のことだったり、高校生だけでは解決しようのない出来事は山ほどあって、それでもなんとか足掻いて頑張る姿が眩しいなぁ。
プロデューサー候補とのやり取りとか真琴の悩み事とか、色々抱えたまま文化祭ライブに集束する終盤が最高にかっこいい!!
Posted by ブクログ
久々にこの人の作品を読んだけど、文体や語り口、物語の展開、言葉の選び方がやっぱり自分に合っているのを感じる。パターンはよく似ていたりするからずっとは飽きるけど離れるとやっぱり恋しくなるみたいな。
例の部分は自分も完全に誤解していたしやられたと思った。
要所要所でこちらの承認欲求満たしてくるのも、せこいけど上手いよなあ。
Posted by ブクログ
いつもに増して杉井光の青春バンド物の良さが溢れている。鈍感主人公っぷりもここに極まる。
今回は朱音がとてもいい描かれ方をしていてめっちゃ好きになってしまった。ぜひ続編を〜!
Posted by ブクログ
大好きな作家の一年ぶりのシリーズ第2巻。
面白かった。胸が震えた。泣きそうだった。良かったぁ。
あいかわらず真琴はへたれだけどそれでも何かを諦めたり出来なくて、どうにかしようとあがく。
それはまさしく作者の主人公だよなあ。
凛子を最後に後押しするのも、詩月のおじいさんを死の淵から呼び戻すのも、自分たちのバンドを輝かせるのも、彼の意志なのだ。
そして音楽がどんなときでも彼らを包んで繋いで、たとえ全てが消え去っても、いつまでも残り続けるのだろう。
それを僕も信じられる。
それにしても詩月のおじいさんがイケオジだよなあ。
そして死の淵を彷徨う彼に届けとばかりに腕を骨を奏でる真琴。
どんだけ音楽バカなんだろうか!
けれど『後先考えられるやつはバンドなんてやらない』のだ。
それはそれでなんて幸せなことだろう。
ヒロイン三人と真琴との漫才も2巻になってそれぞれの役割が洗練されてどんどん面白くなってるし、ここで女装ネタが炸裂するとは!
いや、やっぱり、女装は最高だよね!笑
そして真琴の壮大な勘違いで終わるラストの締まらなさが、またいい味出しているよなあ。
最後に、ほんの少しなのだけど、華園先生の登場する(本人そのままではなくても)場面は毎回胸が切なくて苦しくなった。
実は、第2巻が出るとは思っていなかったのだけど、すごく嬉しい。
それと共にぜひ、第3巻を、いや4巻も、出して欲しい。
そしてもう一度、元気な華園先生の姿を、きっと描いてくれると信じている。
熱い!良い!
すごくよかったです。
ヒロイン達とのラブコメ要素もありつつ、村瀬君が鈍感すぎてそれ以上進まないので、とても良いバランスでしたw。何かの間違いかと思うくらい間違いが起こらないから、信じられないくらい信じられるという言葉がまさに表してますね。ただ、肝心なところで鋭いという。イベント前にハプニングが起こるんですが、これの結末も良かったです。ライブの一番良いタイミングでの演出は熱くなりましたね。私自身音楽は全くわからないですけど、雰囲気で楽しめましたし、ド青春音楽小説って感じで最高でした。あと女装最高w
Posted by ブクログ
同じテーマ性の作品なのだから『さよならピアノソナタ』要素を何らかの形で出してくるかもと思っていたけど、まさかこういう形でお出しされるとは!
第1巻では音楽を通して少女達と楽園を築き上げる工程が描かれた。続く2巻では楽園外での環境が少女達にどう影響するか、その際に真琴が築いた楽園はどのような助けとなるのかという点が描かれたような
一度ピアノを挫折してしまった凛子だから、バンドを通して復活できたならピアノの道に戻そうとする動きがあるのは当然。そのような揺り戻しに対し真琴達は他人故に凛子の家庭問題に首を突っ込むのは難しい。詩月の時は音楽を通して華道の腕前を上達させる事で親の束縛を黙らせたけど、凛子の場合は同じ音楽でありながらより難度の高いピアノに集中させるという親の意向が有り、凛子の母が軽蔑するバンドの人間である限り抗議すら聞いて貰えない
だから対処法を誤って初ワンマンが大コケしかねない状況に陥ってしまった。というより、凛子が発していた弱々しいメッセージを真琴が正しく汲み取れていなかったというべきか
ただし、結局は真琴達に出来るのって音を鳴らす事だけなんだよね。凛子を母の拘束から解き放つのは音楽しかない
真琴は凛子が音楽を奏でられる最高の舞台を用意した。でも、それ以上に凛子から弱々しさを吹き飛ばすのは選曲理由だろうね。真琴はいつだって凛子をステージの中央へと、楽園の真ん中へと招いてくれる。それは凛子に束縛する母から逃げる場所も立ち向かう場所もあると知らせるものとなる
最後、これを家庭の問題ではなく「わたしの問題」と言い切った彼女の姿は勇ましい
詩月に生じた問題もやはり他人にはどうしようもないもの。詩月の家庭環境も禄郎の病魔も一介の高校生である真琴に出来る事なんて一欠片も無い
代わりに、真琴に出来る事はここでも音を鳴らす事だけ。けれど、今度は聞かせる相手が異なっているね。余命が限られ親族の多くから嫌われる禄郎にとって、家庭に居場所が無く自分を頼る孫娘の行く末は喫緊の課題。それだけに詩月が慕う真琴に対して査定の形で音楽を奏でさせたのは、音楽を通して真琴は詩月が頼れる人間であるかを見定めようとしたからか
真琴が禄郎と行ったセッションは2回だけ。どちらも禄郎から合格点を貰えた訳じゃない。詩月を救える音楽ではない
真琴の音楽が真の意味で届いたのは禄郎を三途の川から呼び戻す際か。
聞かせる相手は意識が無いのだから本物の音を鳴らす必要はない。音の無い幻想のセッション。傍目に見る分には奇怪で奇妙な音楽。けれど、絶望に顔を伏せた詩月、詩月の行く末を見守れぬまま無人島へ旅立とうとしていた禄郎を引き止める最上の音楽となるね。
禄郎を呼び戻し、詩月を絶望から引き上げた。それは真琴で無ければ出来なかった事、そこに楽園があると示すセッション。禄郎が与えた合否判定は何よりも真琴の音楽への賛辞と思えたよ
そして朱音のエピソードはキョウコとの対決を含みつつ進行する話となったね
話の立ち上がりこそ朱音が詩作をしてみたいと言い出した事から始まっている。けれど、あっという間にPNOのマネージングについての話に移り、キョウコの登場へ至るからこれらのエピソードが朱音のものであるとは感じ難い。というより、朱音の話を展開しつつPNOの話を進行させた感じか
朱音は作詞をする理由を取り分を増やす為なんて嘯くけど、その実態はPNOを確かな居場所とする為なんだろうなと察せられるね
PNOに入るまで幾つものバンドを潰してきた朱音。PNOは真琴の才能に拠って潰れそうにはない。代わりに自分がいつまでも必要とされるか判らない。だから真琴が完璧に出来ているとは言い難い詩を担当する事に拠ってPNOに自分の居場所はあると確定させたかった感じか
だとしたら、キョウコの誘いは真琴を揺さぶるけど、同じくらい朱音を動揺させたんじゃなかろうか?
真琴にとってはキョウコのプレイングを眼の前で見せられて戦力外通告させられた形。朱音にとってはPNOが無くなってしまうかもしれない形。どちらにとっても切実で、バンドを続ける為に何をすればいいか魂懸けて考えねばならない問題
これは先の凛子や詩月の話と比べると、真琴達にはどうにか出来る余地のある問題。けど、プロミュージシャンを納得させるわけだから、実際にどうにか出来るかは別問題
ここで活きてくるのは朱音の詩作か。朱音は詩を作る上で「I need you」をどう訳すかを悩んでいた。この言葉の対象が誰であるか、何であるかは読者にとっては明瞭なのだけど、物語としても真琴としても不明瞭なまま。すると、真琴にとっての「I need you」の対象である美沙緒の話題になって、当然朱音はより真琴から必要とされたいとの想いを強くする事になって…
この必要とされたいとの感覚は双方向のものだね。勘違いしている真琴は当然として、不要と言われた朱音達にとっても互いを必要としている。このような感情から、PNOはバンドという形をしている事で楽園に成るわけではなく、あの4人で成立している事で楽園としても成立しているのだと見えてくる
そうこうしている内に真琴の中でキョウコを倒すという感覚が優先度の低いものになっていく様は印象的。キョウコから戦力外通告された事もバンドを解体されそうな事も腹が立っている。けれど、キョウコに認められたいとかそういう想いは何処かに置いてきてしまった
真琴が音楽を届けたい「たったひとり」、それはあの瞬間において間違いなくPNOの為だったのだろうなと思ってしまうよ。真琴にとっての居場所であり、凛子も詩月も朱音も居る居場所。そしてあの曲の詩を書いたのが朱音であるならば、朱音に最も届けたい歌となって
それを思えば、朱音が最後に告げたかもしれない言葉が「I love you」ではなく「I need you」に連なる言葉であるだろうと思えば、真琴の歌はきちんと朱音に届いたのだろうと思えるよ
そしてラストのオチですよ(笑)
確かにキョウコの発言は紛らわしかったけど、それが真琴を盛大に勘違いさせPNOの動力源に成るなんて誰が想像しただろうね(笑)
真琴ってこれまでも凛子や詩月の告白同然の言葉に全く気付かずスルー、なんて事態が多発していた。つまり彼を極度のニブチンと捉えればこのような事態もそりゃ生じ得るんだろうけど、それにしたってあんまりな勘違いですよ!
本作は基本的に真琴の視点で進行するから気付き難いけど、キョウコが指摘したように実はPNOにおいて最も厄介な問題を抱えているのって真琴なのかもしれないね(笑)