あらすじ
【第32回ファンタジア大賞《大賞》】
世界が求める『切り札』を巡り、スパイ少女たちの戦線は更に拡大する。
世界と交渉できる力《奈落人形》の保管先を探す『灯』は、新世界の覇権を握らんと大国より送り込まれる精鋭たちの標的となった。激闘が繰り広げられる中、『鬼』の名を冠する心優しい少女が死地を切り拓く――!
落ちこぼれ少女達が死亡率九割超の『不可能任務』に挑むスパイファンタジー!
「戦争はコスパが悪い」として、スパイ達による情報戦が繰り広げられる世界のとある国で発足したチーム『灯』。
そこに集められたのは各地の養成学校の落ちこぼれ少女達で、ボス兼教官の青年・クラウスは凄腕のスパイだが口下手&超絶教え下手なポンコツだった!
本作は、そんな彼女達が超難度の任務に挑み絶体絶命のピンチに陥りつつも、なんやかんやそれを乗り越えていくお話となっております。
(最終的にクラウスさんがごり押しでなんとかしちゃったり?)
スパイものならではのトリックも随所に散りばめられており、アクション要素もあり。
尖った能力とどこかしらに難がある個性的な面々の会話によるコミカル要素も。
このような題材のものとして、読みやすく非常にライトに楽しめる1作です!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
きな臭い世界情勢、自ら破壊した拠り所。そうして始まったファイナルシーズンなのだから、緊迫感に満ちたものになるかと思いきや、冒頭のカラー絵がぽわぽわしているものだから気が抜けてしまったよ!……てか、猫耳メイドになったエルナ、随分と可愛いね…
また、本編序盤や所々でもコメディ調のシーンが見られたりして、陰鬱になりかねない展開を緩和してくれている非常に良い構成ですよ
《奈落人形》こそ世界の命運を握る鍵と睨んだ『灯』が探り始めるのは旧陸軍が主導した極秘研究の関係者か
現状では《奈落人形》って名前ばかりの存在で実在しているかも微妙だし、現実的にはどのような威力があるか判らない代物。けど《叡智の実》への対抗策として生み出された劇物であるならば、誰もが知りたい秘密なわけで
正直、『灯』が《奈落人形》に近付くのを最も阻止したいのは『巔』だと思っていただけに、ディン共和国以外のトップスパイが襲撃してくる展開は意外だったな。けど、それによって改めて《奈落人形》や『灯』が世界の中心として注目されているのだと感じさせる
懸念があるとすれば、これまでの『灯』の立場と現状が全く異なる点か。ライラットでの潜伏任務はそれぞれが離れた場所で行っていた為に孤独であったが、王政の革命という明確な目標があり、最終局面ではクラウスや国の支援も期待できた。しかし、現状の『灯』は国を裏切り多数のスパイが狙う《奈落人形》を求めている為に本当に孤立無援に近しい状況なんだよね
言い換えれば、誰かが重傷を負えばそれだけで『灯』の終焉に繋がりかねず、拠点や安息の地も充分に得られない可能性があると示している
だとすれば、今回戦う事になったオリエッタが操る群衆や何度も蘇る『桜華』は現状においては最悪の相手と言えるわけだ
状況はどう転ぼうと『灯』にとって不利に動くよう仕掛けられている。なら、その中でどれだけ己のリミッターを外せるかは生死を分ける分岐点になるかもしれず
一歩踏み外せば快楽殺人鬼になりかねないアネットが革命任務を経て殺人を厭うようになった話は興味深い。以前の彼女は平気で人を殺めてしまう危うさがあって、けどサラが傍に居る事でどうにか留まっていた。今はサラに加えてエルナがアネットと同じ道を進むと表明した事でアネットの飢餓感が消失した感じか
けど、そうして穏当な真人間になるのではなく、仲間の為なら戦えるスパイへと変ぜられたなら、窮地が常に迫り来る『灯』にとって大きな力となりそうだ
アネット程には単純な変化とならなかったのがジビアか
彼女って気のいいねーちゃんというだけに留まらず、チームのメンタルを保つ役柄を担う部分もあり。また過去から得た教訓についても彼女は広範的に明るい未来を目指しているように思えていた
それだけにジビアの父である『癘魔』と再会する流れは彼女の痛ましい原点を検め直すものであり、同時に彼女が隠していた仄暗さを顕わにするものになるわけだ
ジビアが悲痛な過去を踏まえつつも覚悟を抱いてスパイの世界に身を置いている事は以前から描かれていたけど、『癘魔』が語る真実、そして誰にも明かしていなかった殺人の過去は衝撃的だったな…。それらは一旦明るみに出てしまえば、ジビアという人物の見方を根本から変えかねず、そして彼女自身も人からそう見られていると知ればもう戻れない、殺人鬼の顔がまろびでる。『桜華』を拷問するシーンなど象徴的か
もはや敵を痛めつけているのか自分を痛めているのか曖昧になったジビアの心境。そこで繰り出された明るい声は本当に衝撃的。いや、13巻で長閑な村に存在した研究所について言及された頃から、予想していたけど、やはりリリィはそうした生まれの存在だったのか……
ともすればジビアより悲惨になりかねないリリィの出自。けれど彼女は自身の過去を否定せず卑下もせず。されど背負った上で明るく生きているのか…
それはジビアにとって導きと成る生き方だね。というより、孤立無援と成った『灯』はこうして互いを支え合って生きているのだという象徴的シーンと成る
エピローグ部分にて、モニカとジビアがずっと一緒にいる前提かよ、なんて突っ込み合っていたけど、それって言ってしまえば『焰』が目指そうとしたスパイチームを超えた家族の在り方かも知れず。クラウスが集めたスパイの落ちこぼれがこうして互いを慈しみ合う関係に成るなんて感慨深い成長ですよ
きな臭い噂が聞こえくるガルガド帝国の暴走の渦中にいる筈のクラウスは驚きの行動に。愛するフェロニカを殺した『紫蟻』をクラウスは何故求めたのかと疑問だったのだけど、まさか自分を拷問させる為だったとは…
これってどのような事態に陥っても変心しない為の措置だよなぁ。逆に言えば、これからクラウスが歩むのは以前の彼なら躊躇うような事態か……
まるで現実の歴史、現実の戦争に至る過程を見せられているような気分になるガルガド帝国を意図的に暴走させるクラウスの狙いは何処に在るのか?そして多くの者が辿り着くだろう《奈落人形》にはどのような秘密が籠められているのか?
様々な思惑が交差する世界で生き残る者は果たしてどれだけ居るのだろうね?