【感想・ネタバレ】スパイ教室14 《夢幻劇》のティアのレビュー

あらすじ

ライラット王国での“不可能任務”を終え、『灯』は1名を除いてディン共和国に帰還した。そして1年が経過――。防諜任務に励む《浮雲》のランの新たな任務は――【救国者『灯』が二心を抱いていないか調査せよ 】

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落ちこぼれ少女達が死亡率九割超の『不可能任務』に挑むスパイファンタジー!

「戦争はコスパが悪い」として、スパイ達による情報戦が繰り広げられる世界のとある国で発足したチーム『灯』。
そこに集められたのは各地の養成学校の落ちこぼれ少女達で、ボス兼教官の青年・クラウスは凄腕のスパイだが口下手&超絶教え下手なポンコツだった!

本作は、そんな彼女達が超難度の任務に挑み絶体絶命のピンチに陥りつつも、なんやかんやそれを乗り越えていくお話となっております。
(最終的にクラウスさんがごり押しでなんとかしちゃったり?)

スパイものならではのトリックも随所に散りばめられており、アクション要素もあり。
尖った能力とどこかしらに難がある個性的な面々の会話によるコミカル要素も。

このような題材のものとして、読みやすく非常にライトに楽しめる1作です!

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Posted by ブクログ

クラウスの離反という衝撃で幕を閉じたサードシーズンに続くファイナルシーズンはクラウスの居なくなった『灯』はどのような現状かを外側から描くものとなっていたね
それはまるで幾つものインタビュー記事を読んでいるかのよう。けど、聞き手が防諜スパイであり話し手に国家反逆の疑いがあるならば、インタビューの意味は異なってくる。それは尋問に等しいもの
しかし、元『鳳』のランにとって『灯』は共に共和国を守り抜くと近い合った同志。ランが『灯』を探り続ける間に抱き続ける懸念は尚更に今の『灯』がどうなっているかを気にさせるものとなるね


『灯』として得てしまった大きな変化はそれこそクラウスの喪失なのだけど、それ以上にライラット王国における革命を経た事で彼女らが大きく成長した事も変化と言える。特に養成学校にて『灯』が尊敬すべきスパイとして喧伝されているのは、当初の彼女らが落ちこぼれであった事を考えれば尚更意外に思えるね
ただ、意外な変化という意味ではランにもそれは該当するか。『鳳』においてはどこか頼りなくて「ござる」口調の変な妹分みたいな存在という認識だったのだけど、『巔』に加わった彼女は最前線で活躍するスパイらしくなったね。それは彼女が更に強くなった事だけに限らず、彼女に付き従う後輩が現れた事も関係しているのだろうけど

かつての『灯』と『鳳』は大志を同じくして国を守ると誓いあった。なら、異なるチームに居たとしてもランと『灯』が協力するのは当たり前の光景に思えて
それだけにランが国を守る為に『灯』を疑わなければならないのは心苦しい展開。これ、そもそも『灯』を率いていたクラウスが裏切っただけに仕方ない側面もあるのだけど、それ以上に『灯』が自ら疑われるような行動に出るが故にランは彼女らへ疑いの目を向ける事を辞められない側面があるのが非常に厄介だね

一方でそうした感情の揺らぎを主に見せるのは後輩であるヴィニベルガの役割か
元より『灯』に対して複雑な感情を持っていた彼女は『灯』が語る内容に感情を乱され続ける。対してランは動揺をこそ覚えはすれ、それを表には出さないようにしていたね。それが最終的な『灯』相手の防諜において優劣を設けるわだけど
この点はランの優秀さを改めて強調すると共に、ランを上回るスパイ術を披露した『灯』の本気が垣間見える結果となったか


この巻では主にランが主役の立ち位置を採っているけれど、読者的に気になるのは前巻終盤のあの選択から今まで『灯』は何を心に抱えて過ごしていたか。それがインタビューの形で見える形となっているね

《暁闇計画》の成就を望むか阻止を望むか。クラウスによって突き付けられた問い掛けは『灯』をバラバラにする事はなかったけど、他方で『灯』とクラウスの道を決定的に違える分水嶺となった
一般的に考えれば大量虐殺兵器の使用を望むなんて簡単には同意できない話だけれど、『灯』が基本的に戦争に拠って荒廃した国で過ごしてきた少女達であり、その後の世界においても様々な痛みを見てきた事を思えば、むしろ当然の選択だったのかも知れないと思える
しかし、彼女らの師であるクラウスは全く別の選択を行った。そして彼女らはクラウスを上回る事なんて一度も出来なかった。なら、『灯』には未だ見えていない視点なんてものがあるといえるのかも知れない。クラウスへ更に追い付こうとする中でクラウスが見ているものが見え、場合によってはクラウスすら見えない何かが見えるかも知れない
この巻で『灯』が選んだのはそうした道か

でも、作中で彼女ら自身が言及しているように、かつては落ちこぼれと揶揄されていた彼女らが国で英雄か何かのように称えられ、サラを始めとして理想へ向かって動き始めた者も居る。それはクラウスが用意した祖国で得られる幸福の一端だろうね
それでも彼女らがクラウスへの慕情を捨てきれなかったのは驚きの理由によるものだったね
《暁闇計画》の真実を前にクラウスに守られてしまった彼女らはいわばクラウスから落第を言い渡されたようなもの。あれだけクラウスの教えを受け、彼女らだけで革命を実現した筈なのに、更なる不可能任務に連れて行って貰えなかった
そこで『灯』が抱いた悔しさと決意は『灯』らしさに満ちたもの。ただし、これまでの『灯』に全く見られなかった要素もそこには見えて

自分達にとっての安息の場、疑似家族の象徴を自ら破壊した。それは世界が知る『灯』の姿が変革を始める序章を飾るに相応しい爆炎だったのかも知れない
そして、その炎はもう一人に火を付けるね。最後に残った『鳳』として『灯』を超えると誓うランがこれからどのように『灯』と向き合っていくかも気になるね


プロローグで喪服に身を包んだ『灯』の誰か、ガルガド帝国で魔王へと片鱗したクラウス、世界中のスパイが狙い出した《奈落人形》、そして第三勢力へと突き進む『灯』。全ての要素がこれからどう絡み合っていくのか全く予想できない作りなだけに、このファイナルシーズンが私達に何を見せてくれるのか、とても期待を持てる始まりでしたよ

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2025年12月21日

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