あらすじ
火焔山の炎をおさめ、祭賽国を乱す妖怪をとらえ、道々、恩沢をもたらしつつ歩を進める一行の行く手にたちはだかるは荊棘嶺。八戒はおおまぐわを振り回し、悟空とともにいばらをかきわけ、夜を日に継いで師匠を導く。またも日が暮れかかるころ、折よくあらわれた廟の前で馬を降りた三蔵を、一陣の妖風がさらう。改版。全10冊。
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Posted by ブクログ
中国明代の白話(口語)文学の代表格にして、「四大奇書」の一つとしても知られる小説『西遊記』の日本語全訳。唐代の僧玄奘(三蔵法師)のインド取経の故事を題材に、孫悟空・猪八戒・沙悟浄の三妖を従えた三蔵の波乱万丈の旅を描く。第7巻では第六十一回から第七十回までを収録する。
本書は、岩波文庫から刊行されている『西遊記』日本語訳シリーズの第7巻である。前巻より続く悟空と牛魔王夫妻の戦いは神仏総出の大捕り物でもって決着し、火焔山の火を無事消し止めた三蔵一行はさらに西へと歩を進める。道中の祭賽国では妖怪に奪われた仏舎利を奪還すべく悟空と八戒が龍王一味と大合戦を繰り広げ、荊棘嶺では三蔵が樹木の精と風雅な一夜を過ごす。小雷音寺では黄眉大王の力の前に一同絶体絶命の窮地に陥り、駝羅荘での大蛇退治と稀柿衕越えを経て一行が辿り着いたのは朱紫国。長患いに苦しむ王の病を治したのもつかの間、妖怪に攫われた王の正妃を奪還すべく悟空は妖怪の根城に潜入する――。
『西遊記』シリーズも7巻目となった本巻、有名な火焔山編の顛末は勿論、祭賽国編では悟空がかつて己を捕らえた二郎顕聖神君と手を組むという熱い展開あり、朱紫国編では悟空達が病に伏せる王を治すべくとんでもない材料から薬を調合するというコミカルな展開ありと見所は満載である。荊棘嶺・稀柿衕で文字通り道を切り開くなど、(珍しく)八戒の真面目な活躍が多いところも見逃せない。