あらすじ
凶多くして吉少ない道中、一行は澄みきった、とある小川にたどりつく。三蔵と八戒がその水を口に含むと、なんたることか、2人のおポンポンが見事に脹らむ。これこそ西梁女人国の子母河、一口飲めば子を宿すという。改版。(全10冊)
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Posted by ブクログ
中国明代の白話(口語)文学の代表格にして、「四大奇書」の一つとしても知られる小説『西遊記』の日本語全訳。唐代の僧玄奘(三蔵法師)のインド取経の故事を題材に、孫悟空・猪八戒・沙悟浄の三妖を従えた三蔵の波乱万丈の旅を描く。第6巻では第五十一回から第六十回までを収録する。
本書は、岩波文庫から刊行されている『西遊記』日本語訳シリーズの第6巻である。全百回におよぶ『西遊記』の物語もいよいよ後半に突入するが、相も変わらず西天取経の旅は難行続き。金兜山の独角兕大王との戦いでは、宝器を吸い込む腕輪・金剛琢の前に悟空はおろか助っ人の神々でさえも大苦戦。続く西梁女人国では子母河の水を飲んだ三蔵と八戒が妊娠するわ、三蔵が国の女王はおろか妖怪にまで懸想されるわの大騒ぎ。挙句の果てには悟空がまたしても破門を食らいパーティから追放、その虚を突いて西天取経の一行に成り代わらんとする偽の悟空が現れる始末。それでも窮地を何とか潜り抜けて先へと急ぐ三蔵たちではあったが、彼らの行く手に待ち構えていたのは灼熱の火焔山、そして悟空と因縁深い牛魔王夫妻であった――。
さて本巻で最も印象に残るのは、やはり著名な牛魔王夫妻の登場する火焔山編――ではなく、偽悟空の登場する六耳獼猴編である。悟空二度目の破門の隙を突き、彼に化け西天取経の栄誉を我が物にせんとする偽物が現れるという実に緊迫した展開であるはずなのだが、実際にお出しされたのは本物の悟空と偽の悟空がど突き合いながら方々を騒がせるという実にギャグチックな絵面であった。事の真偽を定めんと二人の悟空がお互い相争いながら天・地・冥の三界を巡るわ、緊箍呪を唱えれば何故か両方に効き目があるわ、観音や三蔵の呼びかけには双方声を揃えて返事をするわと、悟空破門までの鬱々とした前半の流れを吹き飛ばすかのような展開は思わず面食らってしまった。ある意味ではこうしたコミカルさこそが『西遊記』らしさと言えよう。