あらすじ
塩原温泉で未亡人の倭文子を巡り、三谷という美青年と中年紳士・岡田の間で決闘が行われた。負けた岡田が去った後、二人の前を左手右足が義手義足、鼻が欠け、唇のない男がうろつき始める。東京に戻ると息子の茂が誘拐され、彼女も行方不明に。さらに疑わしい人物の自宅から、死体三体が埋められた裸女群の彫刻像が――。次々と襲い掛かる奇怪で残忍な事件に明智小五郎の名推理が冴えわたる!(解説 麻耶雄嵩)
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
さてはて此度も明智小五郎の事件簿である。まさかの小林少年初登場だ。私の江戸川乱歩は少年探偵団から始まっているので、感慨深いものがあった。また本作にて小林少年と並び活躍するのが明智小五郎の恋人、文代さんである。「魔術師」にて出てきたのが初回だったように記憶しているが、彼女も肝の座った女性であり、この作品を魅力的に見せる一つの理由であるように思う。
本作でも比較的犯人はわかりやすい……という指摘があったが、私は終盤に至り明らかにされるまで、厳密には棺桶のくだりまでわからなかった。なかなか凝った作りで、謎解き以外の要素も大いに楽しめると思う。
とはいえ、被害に遭った彼女は一体過去に何をしたのか。恋に生きる女だったのか、はたまた女一人では生きづらい時代に依代を求めていたのか、そこは分からないが、犯人となったかの青年も恐らくは恋に落ちていたのかと思うと、魔性というほかないと思ったものである。