あらすじ
鬼教官・風間公親、殺人現場に再臨場!
●第1話 硝薬の裁き
益野紳佑の妻才佳は、半年前、車にはねられ亡くなった。事故の唯一の目撃者は娘の麗馨だった。警察は幼い麗馨の証言を採用せず、犯人とされた男は不起訴となっていた。
●第2話 妄信の果て
大学四年生の戸森研策は、地元新聞社から内定を得た。ゼミ論文の単位が取得できれば卒業も確定する。前途洋々の戸森のもとへ、担当教授から突然の連絡が入る。
●第3話 橋上の残影
経理事務の仕事をしている篠木瑤子は、十年前に恋人を自死により失っている。その死の原因となった男は刑期を終え、娑婆でのうのうと暮らしていた。
●第4話 孤独の胞衣
短大生の萱場千寿留は工芸家の浦真幹夫と関係を持ち、妊娠した。浦真は中絶費用を渡し、海外に旅立ったが、千寿留は新しい生命の誕生を待ちわびていた。
●第5話 闇中の白霧
名越研弥は、闇サイト経由で違法な薬物や商品を仕入れ、莫大な冨を得た。そろそろ足を洗いたいのだが、相棒の小田島澄葉を説得できずにいた。
●第6話 仏罰の報い
著名な有機化学者である清家総一郎は実験中の事故で両目に劇薬を浴び、一線を退いた。隠棲生活を送る清家の悩みの種は、娘・紗季の夫の素行だった。
※この作品は単行本版『教場X 刑事指導官・風間公親』として配信されていた作品の文庫本版です。
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Posted by ブクログ
警視庁二次試験に向かう雨の中で。未来の自分を想像しながらこれを書く。
硝薬の裁き
万丈ではなく白石麻衣が登場。この話では火薬似よって追い詰めるのが正解。震災の話は初めて知った。
妄信の果て
ドラマでは梨多はアカハラをする嫌な先生だとなっていたが、原作では良い先生だった。ドラマでは最後に暴れさせる必要があるから、しんみり終わるわけにはいかなかったんだろう。カンニングの法則、新しい知見だ。
橋上の残影
病気なことまでは察しがついた。嬉しい。内視鏡カプセルとは面白い発想。パソコン、猫ときて温かいものとは予想外。
孤独の胞衣
事件現場で出産という大胆さが面白い。結果として子供を利用したトリックを使うとき母親は何を思うのだろう。
闇中の白霧
ドラマでも放射線のことは予想がついた。お互いに殺意を抱く男女。その向け方の違いが恐ろしい。リスキーだが迅速な結果を求める男と安全に過程を楽しむ女。どちらがたちが悪いだろうか。
仏罰の報い
一番面白かった。音が難しければ匂いか、と思っていたが予想を遥かに越えていた。捕まらず、かつ報いは受ける。あんな方法があるのか。執念といってもいいトリックだ。京極夏彦曰く、殺人後の工作は非日常から日常へ戻るためのプロセスらしい。そうであれば、失明という非日常への暗転は清家にとっては日常への明転。どんな気持ちで目を潰したのだろう。
そして明かされる移動の真相。そして、未だに十崎は捕まっていない。決着がつくのはいつか。
Posted by ブクログ
2014年本屋大賞の続編
復讐・妄信・罪と罰が静かに交錯する連作集だった。どの犯人も一見“追い詰められた末の犯行”だが、風間は決して情に流されず、わずかな綻びを拾い上げて真相へ迫る。
特に、火薬アレルギーの娘が父の罪を知ってしまう第1話や、形見の時計が復讐を暴く第3話、盲目を装い自ら視力を失った科学者の慟哭が描かれる第6話は、犯人の“歪んだ正義”が胸に刺さる。
どの事件も、動機の切実さが読者の同情を呼びつつ、風間の冷徹な観察眼がその迷いを断ち切る。終章では彼が警察学校の教官となる経緯が明かされ、シリーズ全体へのつながりも感じられる一冊だった。
Posted by ブクログ
風間さんがいれば、
未解決事件などなくなるのではと
思わせるぐらいの万能さ。
ただし、完全な通り魔的な犯行は、
難しいのかな?
本書から、警察学校編に
繋がっていくんですね。