あらすじ
君には、警察学校をやめてもらう。
この教官に睨まれたら、終わりだ。全部見抜かれる。誰も逃げられない。
警察学校初任科第九十八期短期過程の生徒たちは、「落ち度があれば退校」という極限状態の中、異色の教官・風間公親に導かれ、覚醒してゆく。
必要な人材を育てる前に、不要な人材をはじきだすための篩、それが警察学校だ。
週刊文春「2013年ミステリーベスト10」国内部門第1位、
宝島社「このミステリーがすごい! 2014年版」国内編第2位、
2014年本屋大賞にノミネートされ、
90以上のメディアに取り上げられた既視感ゼロの警察小説!
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
2014年本屋大賞
『教場』長岡弘樹 ――人を削ぎ落とし、人間を残す試練の場。
警察学校という「閉鎖空間」を舞台に、そこに集う訓練生たちが心身ともに追い詰められながら、警察官としての覚悟を問われていく。
長岡弘樹『教場』は、ミステリの形式を借りつつも、本質的には“人格の矯正装置”としての警察学校を描いた群像劇である。
本書は連作短編の形で進み、各話が一人の訓練生を主人公に据える。物語を通して、白髪の義眼を持つ教官・風間公親の存在が一貫した軸となる。彼は一見冷徹で非情な人物だが、その厳しさの根底には「命を預かる職への責任感」がある。
風間は生徒を救わない。だが、見放しもしない。ただし「生き残れる者」だけを導く。そこにこの作品の倫理がある。
風間は、いわゆる「正義の教師」ではない。
彼は生徒を追い詰めることで、彼らの“人間の根”をあぶり出す。
嘘、恐怖、保身、憎悪、復讐──その全てを曝け出した上で、それでも立ち上がる者だけが卒業できる。
彼の義眼は、「人の本性を見る眼」の象徴だ。
片目を失ったことで、もう一方の眼(洞察)が異常に研ぎ澄まされている。
風間が求めるのは完璧な警察官ではなく、欠落を自覚した人間だ。
つまり『教場』とは、**“正義を学ぶ場”ではなく、“人間の限界を知る場”**なのだ。
「教場」とは、警察官以前に“人間”を選別する場所
『教場』は、警察学校を舞台にしたミステリとして読めるが、その本質は哲学的である。
それぞれの物語で問われるのは「正義」でも「友情」でもなく、**“現実の重さに耐えられる人間か”**という一点だ。
長岡弘樹の筆致は感情を排し、淡々とした観察者の視点を保つ。
しかし読後には、倫理や人間の弱さについて深く考えさせられる。
警察学校を舞台にしていながら、実は「社会の縮図」そのものを描いているのだ。
Posted by ブクログ
不思議な警察小説、全知全能の風間教官だが
昔のSFショートショートみたいな悲喜劇を
傍観する(介入する・しないの差が激しい)
警察学校にくるヤツは精神のねじ曲がった系
が多くて警察不信になってしまう