あらすじ
君には、警察学校をやめてもらう。
この教官に睨まれたら、終わりだ。全部見抜かれる。誰も逃げられない。
警察学校初任科第九十八期短期過程の生徒たちは、「落ち度があれば退校」という極限状態の中、異色の教官・風間公親に導かれ、覚醒してゆく。
必要な人材を育てる前に、不要な人材をはじきだすための篩、それが警察学校だ。
週刊文春「2013年ミステリーベスト10」国内部門第1位、
宝島社「このミステリーがすごい! 2014年版」国内編第2位、
2014年本屋大賞にノミネートされ、
90以上のメディアに取り上げられた既視感ゼロの警察小説!
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
■第一話 職質
宮坂定(みやさかさだむ)
平田和道(ひらたかずみち)
「いつ辞めるんだって訊いてんだよ。明日か、今日か。いまでもいいぞ。お前には無理だから。警察官なんて絶対に無理。これからすぐに退校の手続きをとってやる。どうだ。ん?」(P.11・植松教官)
成績の悪い平田と、平田を庇うように成績の悪いふりをする宮坂。過去平田の父親に命を助けられた宮坂は、平田のことが放っておけなかった。しかし平田は宮坂がわざと成績の悪いふりをしていることに気づいていた。見下されていると感じた平田は、入浴剤とトイレの洗剤で宮坂を巻き込み自殺を試みる。
■第二話 牢問
楠本しのぶ(くすもとしのぶ)女子の中で最も小柄
岸川沙織(きしかわさおり)女子の中で最も大柄
楠本しのぶは元インテリアコーディネーター。仲の良い岸川に、最近脅迫状に悩まされていると打ち明けられる。
ある日楠本は学校内の立体駐車場で誰かに突き落とされ、動くパレットに足を挟まれ、そのまま意識を失う。
意識を取り戻し、風間に渡されていた携帯電話で教官室に電話をかける。風間に繋がり助けを求める。
宮坂が助けに来る。しかし、リフトの操作をしてくれない。
怒り、パニックになりながら助けを乞うが、風間と宮坂が助けてくれる気配はなく、岸川との間に何があったのか、脅迫状を出した理由を問う。楠本は、婚約者を車で轢き殺した犯人が岸川だったと語る。
■第三話 蟻穴
鳥羽暢照(とばのぶてる)
稲辺隆(いなべたかし)
鳥羽は白バイ隊員を目指していて、非常に耳がいいのが自慢。鳥羽と稲辺は親友。
ある日稲辺が無断外出の疑いをかけられる。呼び出された鳥羽は教官に「外出した疑いのある夜、稲辺は自習室で鳥羽を見たと言っているが本当か」と聞かれ、「いいえ」と嘘をつく。自分の日記に、自室で事故の音を聞いたと嘘を書いてしまった手前、自習室にいたことを認めることができなかったのだ。
裏切られた稲辺は、射撃訓練場に鳥羽を呼び出し、不意打ちで接着剤のついたイヤープロテクターをつけさせる。プロテクターの中には蟻が潜んでいた。鼓膜を食い破る蟻が。
■第四話 調達
日下部准(くさかべじゅん)
樫村巧実(かしむらたくみ)
日下部は級長で、クラスダントツの最年長で、元ボクサー。樫村は陰で「調達屋」と呼ばれている。樫村の調達に気づいた日下部は、教官に報告すると伝える。すると樫村は、学科の点数をあげるから見逃してくれ、と「交換」を持ち掛けてきた。
樫村の言う通りにした日下部は、授業で教官から投げかけられた難問に難なく答える。褒められると思ったのも束の間、先日起きた小火騒ぎの犯人ではないかと疑われることとなる。
数日後、また警備勤務の当番がやってきた。先日と同じ、樫村とのペア。耐え難いものを感じながら練習交番に向かうと、樫村と風間の姿が。風間は特別授業と称し、樫村が尾崎の犯罪に加担したことを言い当てる。
■第五話 異物
由良求久(ゆらもとひさ)
安岡学(やすおかまなぶ)
由良は車が好きで、以前行われた希望部署の調査票には自動車警ら隊と書いた。運転技術講習会の際、風間に指名され、走行の手本を見せていたとき、車内にスズメバチが現れる。何よりもスズメバチが苦手な由良は、パニックでアクセルとブレーキを踏み間違え、そのまま生徒の列に突っ込む。逃げ遅れた安岡が轢かれそうになる直前、飛び出してきた風間が安岡を突き飛ばす。そのまま由良は風間を撥ねた。
由良は、車内にスズメバチを放ったのは安岡だと信じて疑わず、嫌がらせをしていた。そんな中、風間に呼び出された由良は、スズメバチの巣の駆除を命じられる。そこで、安岡が犯人ではないことを知る。
■第六話 背水
都築耀太(つづきようた)
日下部にハメられ卒業文集編さん委員をやらされることとなった都築。総代の座を狙っているが、卒業が近づくにつれ、不安やプレッシャーに押し潰され、体調を崩してしまう。風間に見抜かれ、退校を言い渡される。
「いつにする?明日か、明後日か。何ならいますぐにでもかまわんが」(P.272)
自分を追い込むために都築は、卒業文集に未来の出来事を記す。
吾能弭謗矣(われよく謗りを弭めたり)−−わたしは国民の非難を防ぎ止めることができた
Posted by ブクログ
2014年本屋大賞
『教場』長岡弘樹 ――人を削ぎ落とし、人間を残す試練の場。
警察学校という「閉鎖空間」を舞台に、そこに集う訓練生たちが心身ともに追い詰められながら、警察官としての覚悟を問われていく。
長岡弘樹『教場』は、ミステリの形式を借りつつも、本質的には“人格の矯正装置”としての警察学校を描いた群像劇である。
本書は連作短編の形で進み、各話が一人の訓練生を主人公に据える。物語を通して、白髪の義眼を持つ教官・風間公親の存在が一貫した軸となる。彼は一見冷徹で非情な人物だが、その厳しさの根底には「命を預かる職への責任感」がある。
風間は生徒を救わない。だが、見放しもしない。ただし「生き残れる者」だけを導く。そこにこの作品の倫理がある。
風間は、いわゆる「正義の教師」ではない。
彼は生徒を追い詰めることで、彼らの“人間の根”をあぶり出す。
嘘、恐怖、保身、憎悪、復讐──その全てを曝け出した上で、それでも立ち上がる者だけが卒業できる。
彼の義眼は、「人の本性を見る眼」の象徴だ。
片目を失ったことで、もう一方の眼(洞察)が異常に研ぎ澄まされている。
風間が求めるのは完璧な警察官ではなく、欠落を自覚した人間だ。
つまり『教場』とは、**“正義を学ぶ場”ではなく、“人間の限界を知る場”**なのだ。
「教場」とは、警察官以前に“人間”を選別する場所
『教場』は、警察学校を舞台にしたミステリとして読めるが、その本質は哲学的である。
それぞれの物語で問われるのは「正義」でも「友情」でもなく、**“現実の重さに耐えられる人間か”**という一点だ。
長岡弘樹の筆致は感情を排し、淡々とした観察者の視点を保つ。
しかし読後には、倫理や人間の弱さについて深く考えさせられる。
警察学校を舞台にしていながら、実は「社会の縮図」そのものを描いているのだ。
Posted by ブクログ
わずか半年の警察学校という短い研修期間中に、プライドを傷つけられたり嫌がらせを受けたりした研修生たちが、相手を殺害しかねないほどの凄惨な復讐劇を何度も繰り広げる展開には、フィクションとはいえ、リアリティの面で疑問を抱いてしまった。人間ドラマとしての見所はあるものの、続編を読むかどうかは微妙なところ。
Posted by ブクログ
警察学校という、これまで自分がまったく知り得なかった世界を舞台にしているという点では、非常に興味深く読むことができた。
特に面白かったのは、警察官になるために警察学校でどのようなことを学び、どのような訓練を受けるのかが細かく描かれているところ。職務質問、取り調べ、拳銃や運転、警察官としての規律など、普段の生活ではまず知ることのない世界が描かれており、かなり細かく取材や下調べをして書いているのだろうと感じた。
一方で、登場する生徒たちはかなり癖が強い。
もちろん小説なので仕方がないのだが、実際の警察学校にこれほど問題や秘密を抱えた生徒ばかりが集まるわけではないだろう。「こんな人が本当に警察官を目指しているのか」と思う人物もいて、リアリティという意味では少し作り物っぽさを感じるところもあった。
ただ、そこまで個性的で奇異な生徒を集めるのであれば、個人的にはもう一段大きな展開が欲しかった。
一つ一つのエピソードはよくできているし、風間が生徒の言動のわずかな違和感から真相を見抜いていくところも面白い。しかし全体を通してみると、思っていたほどの意外性や驚きはなかった。
例えば、警察学校全体を巻き込むような大きな事件が起き、それを風間がまったく予想していなかった角度から解決する。あるいは風間だけではなく、他の教官が活躍する。さらには、生徒たちと教官たちが対立する「生徒対先生」のような構図になっていく――そんな大きな物語が一本通っていたら、もっと自分好みの作品になっていたと思う。
本作は一つの大きな事件を追う長編というより、警察学校という特殊な環境の中で、それぞれの生徒が抱えている問題を風間が見抜いていく連作短編集に近い。その構成自体は面白いのだが、個人的には「次はどうなるんだろう」と一気に読み進めたくなるほどの強さには欠けた。
警察学校という舞台の新鮮さや、警察官教育について細部まで描かれた面白さは十分にあった。ただ、素材が非常に魅力的だっただけに、もう少し大きな事件や意外性のある展開があれば、さらに印象に残る作品になったと思う。
忘備録
主な登場人物
風間公親
白髪の教官。生徒の小さな変化や嘘、隠し事を見逃さない非常に鋭い観察眼を持つ。警察官としての適性がないと判断した生徒には容赦がない、本作の中心人物。
宮坂定
元小学校教師。ある出来事をきっかけに警察官を志した生徒。物語序盤の中心人物の一人。
平田和道
転職を繰り返した後に警察学校へ入った生徒。宮坂とは意外な縁がある。
都築耀太
成績優秀で、何事もそつなくこなす生徒。感情をほとんど表に出さないポーカーフェイス。
楠本しのぶ
元インテリアコーディネーター。班長を務める女子生徒。取り調べの技術にも優れている。
岸川沙織
楠本しのぶと親しい女子生徒。しのぶとの関係が一つのエピソードの中心になる。
鳥羽暢照
白バイ隊員に憧れて警察官を目指す生徒。人や物の移動速度を見極めることを得意としている。
稲辺隆
剣道二段の生徒。鳥羽と親しくなるが、その関係が思わぬ方向へ進んでいく。
由良求久
自動車好きで、自動車警ら隊を希望している生徒。協調性に乏しく、周囲から浮いた存在。
日下部准
元プロボクサー。妻と娘を持つ32歳の生徒で、級長を務める。実技とは対照的に学科を苦手としている。
樫村巧実
生徒たちが必要とする物を物々交換で手に入れることから、「調達屋」と呼ばれている。
安岡学
小柄な生徒。追跡を得意としており、「異物」のエピソードに関わる。
Posted by ブクログ
警察学校の教官の話です。
警察学校の闇というか、陰湿な描写が多いなという印象でした。
風間教官を軸にした短編集ですが、どの話もあまりハッピーエンドではなく、それでもそこまでモヤモヤが残らない描写は素晴らしいと思いました。
続編も読みたいと思います。