あらすじ
スマトラ島地震のショックで記憶を失ったインドネシア人女性。その莫大な財産を独占しようとする弟が片っ端からあたった記憶快復療法の可能性は2つに絞られた。不可能を可能にするメフィスト・コンサルティング・グループのダビデなる男、そして千里眼の異名をとる岬美由紀。今、ここに因縁の2人の運命が交差する。歴史を意のままに操るダビデの隠された日常と生い立ちが初めて明かされる、書き下ろし新シリーズ第9弾!
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Posted by ブクログ
松岡圭祐による千里眼新シリーズ第9弾の上巻。
本作では久しぶりにダビデが本領を発揮し、世の中を大きく動かす様がまざまざと描かれる。それはインドネシア大津波で精神を病んだ女性を正気に戻して欲しいという弟の依頼を叶えるためにアフリカで核爆発を起こさせるほどの実力を持っている。そのアフリカでも、ボタン恐怖症に陥った娘を治して欲しいという独裁者の依頼を受け、一週間でそれを解決して見せる。その手法は冷酷でもあり、人の命と引き換えに利益を得るメフィストコンサルティングの大黒柱として揺るぎない地位を得ていることを改めて読者に実感させる。
その対比のように、同じ特別顧問であってもジェニファー・レインは雑で詰めの甘い人物として描かれ、美由紀の手によってその存在が白日の元にさらされる。
メフィストコンサルティングにノン・クオリアが絡み、物語の先が気になる。相変わらずのテンポの良さでページを繰る手を休ませない。美由紀とダビデがこののちどのように絡んでくるのかも興味を引く要素の一つだ。