あらすじ
酸素欠乏症を引き起こす時限式爆発物を追い、名古屋の中心街をF1で疾走する臨床心理士・岬美由紀は最悪の事実を突きつけられる。それが高校に仕掛けられたと。そして残された時間は1時間を切っていると――。いじめや自殺、社会格差など、現代日本の抱える問題に鋭く切り込みながら、美由紀の新たな側面を描き出す。シリーズの新たな地平を切り拓く第5弾。異色の社会派エンターテインメント!
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
松岡圭祐による千里眼新シリーズ第5弾。
岐阜県の高校で生徒だけによる籠城から独立国宣言をへて、自治による運営がなされていく。一方でそれを取り巻く大人たちは高校生たちがなぜそんな行動に出たのかを理解しない。そんなすれ違いは、現実の世の中でも案外そこかしこでみられるのではないかと、自分の身にもつまされる展開だった。
特に、随所で重要な役割を果たす生徒・五十嵐がパチンコが他の賭博同様、絶対に勝てないことを論文発表すると、総理大臣をはじめとする国家権力側がなりふり構わずに生徒を弾圧しようとするくだりは、主旨は違えど一昔前の学生運動を彷彿とさせる。そういう意味で、意外と現実の世の中は危うい土壌の上に成り立っているのではないかと空恐ろしくなった。
相変わらず結末に至る過程は非常にご都合主義的展開で、事の真相についてもそんなことでそんなになるかよ!とツッコミを入れたくなるが、物語としてはやはり面白いことは間違いなく、相変わらずテンポよく読ませるのでついついページを繰る手が止まらなくなってしまう。