あらすじ
盲目の吟遊詩人ライスリングが歌う「地球の緑の丘」の調べは、宇宙を行くものすべてに望郷の念を呼び起こすのだった・・・・・・名作の誉れ高い表題作はじめ、“月を売った男”D・D・ハリマンの「鎮魂曲」など、宇宙に進出し始めた人類の夢と冒険を描く、ハインライン中期の傑作十一篇を収録。
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Posted by ブクログ
「面白かったよ、チャーリー。悪い点もいろいろあったが、素晴らしい、ロマンチックな世紀だったね。そして1年ごと素晴らしくなり、さらに興奮させられるものになってきたんだ。そう、わしは金持ちになりたかったことはない。長生きして、人間が星々に行くまで生きていたかっただけだ。神様に味方していただければ、自分も月まで行きたいと思っただけだ。」
Posted by ブクログ
これはよかったな、と思える作品。
ユーモアあふれる作品もあれば
最後まで読んでいけば考えさせられる作品もあり。
それと「月を売った男」の後日譚作品があります。
それは「鎮魂歌」という作品。
やっぱりこの作品も哀愁が漂います。
恵まれていることが果たしていいことなのか。
そう考えさせられてしまいます。
表題作は
一人の詩人の死までの記録です。
ファンタジー色が強いかも。
SFの要素はきちんとあるのですがね。
あの名作を髣髴とさせる作品も
あったりします。
ネコさんかわいい。
Posted by ブクログ
それほどハインラインは好きじゃあないかなー、と思いつつ、この短篇集の「地球の緑の丘」は30年近く読みたくてずっと探してたんですが、やっと最近読めて、「ああ…こんな話だったんだ」と、ライスリングに惚れました。
真乃呼さんの「緑の世紀」で知った時には絶版だったので。
覚える程に読んでしまいました。最期まで歌い続けるライスリングは、かっこよすぎです。
Posted by ブクログ
[宇宙操縦士 Space Jockey]
ストーリーとしては今読んでもちょっとローテクな宇宙船のパイロットの話。なんで月への直通ロケットがなくて、地球と月の軌道上で2回も乗り換える必要があるのかというのを経済面から説明しているところなんて、いかにもって感じ。やっぱアメリカだよ。ペプシで宇宙に行けるはずだわ。
バカ息子のせいで軌道が狂っちゃうところも、いつものハインライン。必ずこういう権力をかさに着た大バカ野郎がでてくるんだよな。ハインラインは寛容なんだけど、俺の精神衛生上はこういう奴らはもっとボコボコにしてすっきりさせて欲しかった。
[鎮魂曲 Requiem]
これが「月を売った男」であれだけパワフルだったハリマンかと思うと、なんか寂しいものがある。結構ハインラインって泣きの作家なのかな?まあ「夏への扉」書いてるくらいだから、今さら何言ってんだってことかもしれないけど。
この前のやつがえらくパワフルな話だっただけにちょっと地味だけど、しみじみといい話。あのときは共同経営者とか会社関係者とかに邪魔されて、月へ行くことは出来なかったハリマンだけど、今回も遺産ねらいの親族が邪魔してむかつく。殴ったろか、ボケ!って、俺が熱くなってどうする。やっと月にたどり着いたときには既に...、っていうのも悲しいね。
[果てしない監視 The Long Watch]
月基地の司令官が、月の核兵器を使って独裁者になろうとする。それを知った一人の中尉が核爆弾を分解している途中で被爆してしまう。今となっては珍しくもないプロットだけど、すいません、最後のページ読んでるときに、地下鉄の中で泣きそうになったっす。今だと「夏への扉」とか読んでも泣いちゃいそうだな、やばいなあ。
ハインラインの核物理の説明はわかりやすくていい。プルトニウムとか触れそうなほどリアル。
[坐っていてくれ、諸君 Gentlemen, Be Seated]
空気漏れの穴は尻で塞ぎますか。月面の地震の脅威に関する考察はなかなか鋭い。ハインラインもちゃんとしたSF作家だったんだなあって感心したりして。
[月の黒い穴 The Black Pits of Luna]
ハインラインお得意のジュブナイル。月面の観光旅行で遭難した弟を救出するっていうそれだけの話だけど、ヴァーリイの短編なんかに共通する居心地の良さがある。当然ヴァーリイの方が影響を受けたんだろうけどさ。
主人公の父親も母親も間抜けなのがちょっといつものハインラインらしくないような気がするけど気のせいか?
[帰郷 It's Great to Be Back!]
ジョゼフィーンがちょっとバカっぽい。月で生活したものはまた月へ帰っていくというストーリーからすると、ハインラインは宇宙開発に対して無邪気なぐらい楽観していたのかな。まあ、この時代はみんなこんなふうに宇宙に単純に夢を託せたのかもしれないけど。
地球の無理解な<土豚>たちには、確かに人間の意地悪さを見ることができるけど、アランたちが月へ帰っていった理由には、逆の意味で選民思想があるような気がする。
[犬の散歩も引き受けます ...We Also Walk Dogs]
ここまででは、この短編集の中で一番好き。ちょっと他の短編とは雰囲気違うけど。ハインラインの小説らしいパワフルな奴らが出てきて、アメリカ人やなあって感じ。金、金って言いすぎだなところもなんかそれっぽい。やっぱアメリカ人って大阪人と一緒やわ。
火星人や木星人を地球上の会議に呼ぶためだけに重力シールドを造っちゃうんだから、相当凄腕の何でも屋には違いない。特許権を守るために会社を造るところとか、最後にオニールをなだめるうまさとか、アメリカ人の企業家魂・交渉のうまさを見た。
[サーチライト Searchlight]
短編っていうよりは、一発ネタのショートショートって感じ。遭難した盲目の少女を捜索するために走査ビームでピアノの音を鳴らすというアイディアは、斬新と言うほどではないにしても、結構いい。実用新案ってところかな。
[宇宙での試練 Ordeal in Space]
回転して人工重力を発生させている宇宙船にとっては外向きの方向がすべて下になるっていうのは、頭ではわかっていても実際に自分の足元に無限の宇宙空間が広がっていると怖いだろうなあ。「スペースキャンプ」に同じような場面があって印象に残ってる。無重力の空間で、命綱がほんの1センチ自分の届く範囲から離れているせいでそれをつかむことができないっていう状況も拷問みたいでやだよなあ。
ただ、そういう状況で高所恐怖症になった宇宙飛行士が、高層ビルで猫を助けただけで治るとはとても思えないんだけどなあ。
遠心力じゃなくて角加速度ですか。勉強になりました。
[地球の緑の丘 The Green Hills of Earth]
この短編集3つめの泣きのSF。宇宙船の事故で失明してしまった元機関士の詩人ライスリング。事故の後も彼はアコーディオンを片手に詩を口づさみながら宇宙を旅していた。彼の最も有名な<緑の丘>は、彼が地球へ帰るために搭乗した宇宙船で起きた事故のとき、宇宙船を救ったかわりに放射能に焼かれながら詠んだものだった。
オールタイムベストでも上位にくるような有名な短編らしいけど、俺はそれほどでもなかったな。もっとも俺は詩とか全然わからないけどさ。
[帝国の論理 Logic of Empire]
金星の開発に雇われている労働者が、奴隷のように扱われているかどうかを確かめるために、実際に会社と契約してしまう。酒を飲んでたとはいえ、ちょっと無理のある設定だな。相棒は正気だったわけだしね。「エリア88」の場合は神崎にシンを陥れようという明確な意図があったから成り立ってたけど。
金星の極地に限定されているとはいえ、金星の大気を呼吸し、金星で栽培した食べ物を食べるというのもかなり無理がある。アフリカだって裸足で川の中なんか入ったら、一体どういう目にあうかわからないのに、金星だぜ。予防注射ぐらいじゃ話にならんのじゃないかね。まあ、この時代の他の惑星に対する理解っていうのはこの程度だったのかもしれないけど。本物の金星人も出てくるし。
残酷な奴隷監督に対する反抗なんて南北戦争以前のアメリカ映画みたいだけど、ハインラインはまさしくそれと宇宙時代の開拓とを重ね合わせてるんだろうな。作者の意図がもうひとつはっきりしないんだけど、そのままだとしたらかなりやばい。小説の中で、ドックに奴隷制度があるのは人間が愚かであるせいだと言わせてはいるけど、植民地での奴隷制度を正当化しているとも取られかねないから、「宇宙の戦士」よりもある意味問題作じゃないのか。黒人の反応ってどうだったんだろう。
Posted by ブクログ
ハインラインの短篇集。一部は苦手なタイプのSF。全体に、月または近くの惑星への宇宙旅行や移住がテーマになっており、その時点で若干苦手。勝手に創りだしたテクニカルタームや地名の羅列にさらにげっそり。
とはいえ、短いながらもテーマや本筋はしっかりしているので、読めるんだけど、最後に「こういう話だったね」という大きな本筋以外残ってこない。
特に表題作とその後の金星人の話では、詩的に無駄に飾られた言葉と、本筋の話からわざとそらしまくる会話の連続で、眠気が…。訳も良くない。
前半の事故でパニック系の話は好きなので、間を取って☆3つ。またいずれ読み返すとは思う。
Posted by ブクログ
不肖鴨、ハインラインが苦手です。というか、「夏への扉」が苦手ですヽ( ´ー`)ノあの甘々で前向き過ぎる展開がもぅだめヽ( ´ー`)ノ
でも好きな人にはたぶんたまらない、ハインラインの代表的な短編集。表題作「地球の緑の丘」は、タイトルだけが一人歩きしている感すら無きにしも非ずの超有名作です。甘くて切なくて前向きで希望に満ちた、ハインラインらしい甘々な作品ばっかりなんだろうなぁ・・と思いつつ読んでみたら、結構ハードな作品もあって予想外。予想以上に興味深く読み進められました。
ハインラインは物語全体の”雰囲気”を重視する作家だと、鴨は思います。この”雰囲気”がしっくり来る人なら、とてもおススメ。