あらすじ
“黒トカゲ”と呼ばれる、社交界の花形で暗黒街の女王である女賊。彼女は日本一のダイヤを手に入れるため、宝石商の娘の誘拐を図る。名探偵明智小五郎との頭脳戦は、いつしか淡く切ないものに様相を変え……
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Posted by ブクログ
わたしが購入したものは、装丁が和風なタッチの百合のイラストで美しいです。
百合というのも、官能的で話に合っていると思います。
お話の中での表記は「黒トカゲ」ですが、タイトルは「黒蜥蜴」なのですね~。
タイトルと美輪明宏が演じているということは知っていたのですが、読んだことはなかったので、わくわくしながら読みました。
もともとスパイや怪盗ものが好きなこともあり、とても楽しく読めました。
何といっても黒トカゲのキャラクターが素敵です。
スタイルがよく、素晴らしい美貌を持つ女性、なのに一人称は僕で、盗賊。
美しいものが好きで、宝石や絵画だけでなく人まで盗み、自分の嗜好のために殺してしまう。
話の中の賭けだけでなく、キャラクターとしての魅力や存在感も明智探偵に勝っていると思います。
盗みの手腕はそうでもないですが、盗んできた人間を剥製にしたり、溺れさせてみたり、なかなか非道なことをしていますが、それでも擁護というか、応援したくなる魅力を感じました。
(基本的にわたしは割と何でも悪役を応援する傾向にはありますが…)
単に悪い部分だけでなく、鮮やかな手腕や魅力的なキャラクター、たまに人間くさいところも描かれているからこそ好きになってしまうのでしょう。
彼らに対する江戸川乱歩のやさしい眼差しというか父性というか、生み出したキャラクターへの愛を感じました。
そのスタイルと美貌で、その盗みによって得た資産力で、大抵のことは思い通りにできる彼女が、どうして明智探偵に惚れてしまったのでしょうか!
アイリーンがライバル視していたシャーロックホームズに自分と同等、それ以上の知性と魅力を感じ惚れてしまったように、彼女もある意味唯一自分を理解してくれる明智探偵を愛おしく思うようになったのでしょうか…。
そうでなければ、顔と推理力、変装だけが取り柄の明智探偵ごときにマダムの心を盗まれてしまうなんて、許せません(笑)