あらすじ
転校が決まった“相棒”と自転車で海へ向かう少年たちの冒険「僕たちのミシシッピ・リバー」、野球部最後の試合でラストバッターになった輝夫と、引退後も練習に出続ける控え選手だった渡瀬、2人の夏「終わりの後の始まりの前に」など、美しい四季と移りゆくひとの心をテーマにした短篇集「季節風」シリーズの夏篇。まぶしい季節に大切な人を想う、夏の物語12篇を収録。
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Posted by ブクログ
電車の中では読めない本。
『小学五年生』を描くことの得意な作者が、元気でキラキラして、そしてちょっぴり切ないお話をいくつも載せているのが、この“夏”だと思って読み始めた。
もちろん、『僕らのミシシッピ・リバー』は、その筆頭だと思うし、『終わりのあとの始まりの前に』も、少し年上の高校生の話ではあるけれど、そういうイメージで読めた。
別れのお話が多い。
夏って、そんな感じだったっけ?
気温もテンションも楽しさもピークなのが夏・・・と思っていたが、考えてみると、ピークということは、あとは下るしかないということなのだろうか。
そういえば、お盆も終戦記念日も夏だ。
蛍も一週間の輝き、蝉も二週間くらいしか生きられない。
銀河鉄道の夜も夏の話だったっけ?
夏祭り・・・お祭りというのも、もともとは死者の霊を祀ることだ。
もちろん、読後感の悪い作品はひとつもない。
終わりの中に再出発が必ず描かれている。
けれど、再出発するためには、そこに残されていくものもある。
再出発する人にエールを送るとともに、残されて忘れられていく者への鎮魂歌を贈る、そんなお話が多くてしみじみとする。