あらすじ
取手駅構内の小さな書店の店長に抜擢された彩加。しかし意気込んで並べた本の売れ行きは悪く、店員たちの心もつかめない。一方、ライトノベル編集者の小幡伸光は、新人賞作家の受賞辞退、編集者による原稿改ざん騒動などトラブル続きの中、期待の新人作家との打合せのために取手を訪れる。彩加と伸光が出会った時、思わぬ事実が発覚し……。書店を舞台としたお仕事エンタテインメント第五弾。文庫書き下ろし。
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Posted by ブクログ
「作品の力ってヤツ」伸光が何度も口にする。
作品っていうのは不思議です。作家が編集者が、最良の作品を作ったと思っても、売れるものもあれば、そうでないものもある。売れる作品を読者が手にしても、嵌るものもあれば、そうでないものもある。
きっと、作品を作る時は、誰も(作家も編集者もイラストレーターも)手を抜こうとは考えない。読書子も、時間的・環境的・金銭的制約のため、すべての作品を読むことはできないゆえ、厳選を重ねて手にする。それでも、途中で投げ出すものも少なくない。
ラノベはわからないけど、発行時はそうでもなくても、何年かして爆発的なヒットになるものも少なくない。たまたま再読した時に、ぐっと”嵌る”一冊も少なくない。読み手の琴線や経験値にも依存するのかもしれない。これも、作品の持つ”力”なのかもしれない。
”作品の力”は、購買までのパワーでしょうか。読者が会得する感情を誰かに伝えるパワーでしょうか。さらなる次作へ期待を載せるパワーでしょうか。作家へ作品へ抱く期待。そんなものが”力”になるのかもしれないと、感じる。
エンディングの彩加さんとお父さんの場面、かける言葉は、きっと、、「お父さん自身の夢、まだこれからでも遅くないんじゃないですか」
Posted by ブクログ
宮崎彩加
取手駅改札内「本の森」の店長。こだわりの文芸棚を配置し、工夫を凝らすが売り上げには結びついてない。
昼間のワンマンオペレーション時に万引き騒ぎも頻発し疲弊気味。サラリーマン風の常連客の純文学の知識の深さに触れ、天狗の鼻を折られるように文学への浅い関わりに気づかされる。
中谷茂之
本部の統括部長。
小幡亜紀
新興堂書店本部マーチャンダイジング部勤務。三歳になる息子の光洋には親バカ的に接する。
小幡伸光
大手出版社の編集者。ライトノベル編集部、ライトノベルレーベル「疾風文庫」編集長。今の会社にコミック編集者として採用されたにもかかわらず、編集長ときてライトノベルを担当することになった。新興レーベルである疾風文庫のPRと新人発掘のために新人賞を企画。大賞の原滉一を担当することになる。
田中幹
都内の国立大学を六年目で中退。携帯代を止められ仕方なく彩加の店のアルバイトに応募し働き始める。勢いで書いた作品を「原滉一」のペンネームで疾風文庫の新人賞に応募し大賞を受賞する。コミックやライトノベルに詳しく、彩加の新しい棚作りを助ける。
戸塚健太
彩加の店と同じチェーンの柏店店長。本屋大賞参加スタッフのひとり。彩加より一回り近く年上の彼を心の中で「柏のムーミン」と呼んでいる。
しかし彼の仕切る柏店は本屋大賞とは無縁そうなラノベやボカロ本が目立つ所に陳列されている。彩加は彼をひそかに「柏のムーミン」と呼ぶ。
松江和幸
疾風文庫の編集者。契約社員。もともとコミックやラノベのファン。本多光流の原稿を勝手に校正し、「原稿書き直し事件」と炎上す?。
責任を取って編集部を辞めようとするが伸光に留意され作家に関わらないホームページの管理業務などを担当する。
森野哲平
疾風文庫の編集者。正社員。世田谷の大きな家に両親と祖父母と住んでいるおぼっちゃま。おっとりした素直な性格だが、おっとりしすぎて仕事はいろいろポカをする。部長のひとことで佳作の神谷傑の担当になる。
相馬大輔
ライトノベル編集部の部長。五十代後半。
黒田吾郎
ライトノベル編集部の契約社員。
天野賢斗
ライトノベル編集部の契約社員。
高遠夏音
疾風ノベル大賞選考委員。三十代の紅一点。
狩野雄二
疾風ノベル大賞選考委員。三十二歳。島根の作品に触発されてこの世界に入った。
島根峻
疾風ノベル大賞選考委員。四十代後半。
高梨愛奈
新興堂書店吉祥寺店の元アルバイト店員。書店への就職はできなかったが、出身校の私立中学の司書教員としての採用が決まった。
太田英司
沼津でトルコパン専門店を営む。彩加の彼氏、正確には片思い。
山根文博
ライトノベル業界でもヤシ手で知られる編集者。手がけた作品を何本もヒットさせ、メディアミックスでも成功させている。
神谷傑
疾風文庫の新人賞で佳作を受賞した。白白で気の弱そうな顔をした二十歳そこそこの若者。
三浦由季奈
彩加の店で働く学生アルバイト。お洒落がいちばんの関心事のような子だと思っていたがが、彩加がこだわりの文芸棚を片付け「女子のための本棚」を作った際に自分のBL好きもカミングアウトする。
宮里香南
彩加の店のアルバイト店員。ケータイ小説が好き。彩加に「文学的な本しかダメ。やたら難しい本知っていてそういう本しか仕入れない人だと思っていた」と指摘した。
本多光流
松江が担当している作家。四十代後半。ライトノベルがいちばん売れ行きがよかった九〇年代半ばにデビューし、それがヒットして十巻を超えるシリーズになったがそれ以降はヒットに恵まれず、あちこちのレーベルで単発の作品を書いて作家生命を繋いでいる。原稿書き直し事件の被害者。自分に断りなく原稿に赤字を入れたことについて激怒している。
田中幹の母親
専業主婦。息子の様子が気になり店を訪れる。
田中汰一
幹の弟で高校生。彩加の店でラノベを探していた。同級生にこの店で買うように言っている。
小山田寛
共学館営業部。四十歳。
木下
共学館営業部勤務。伸光は小山田を希望したが代わりに疾風文庫担当になる。森野とは同期。
近藤和馬
新興堂書店吉祥寺店ライトノベル担当。独自のラノベ哲学がある。
西正彰
青木書店店長。
夏目
船橋店から柏店に異動。三十代半ば。船橋店の文芸担当として、その名前をよく知られていた。
広瀬
戸塚の部下。
金子
大手チェーン店店長。
父親
高校の国語の教諭。漫画とかラノベを馬鹿にしている。自身もかつて「原滉」のペンネームで純文学の同人活動をしていた。
Posted by ブクログ
本作は版元、作家にスポットをあてた内容となっており、過去シリーズの中では一番読み応えのある作品だと思います。
感動場面もあり楽しく読ませて頂きました。
Posted by ブクログ
松江の気持ちもわからないわけではない。松江は契約社員だから、本来正社員を教育する義務はない。しかし、毎日いっしょに仕事をすれば、ベテランの方が未熟なスタッフをフォローする必要が出てくるし、状況に応じて編集技術をレクチャーしなければならないこともある。時間いくらで雇われている自分が、正社員になぜ無駄な時間を割かなきゃいけないのか、と思ってしまうのだろう。正社員で高い給料を貰っているなら、契約社員よりレベルの高い仕事をしろ、と言いたくもなるだろう。だけど、それを態度に出してはダメだ、と伸光は思う。それを正直に出してしまう松江は、ある意味人がいいのだ。自分の思っていることを素直に出せるというのは、まわりの人間を信頼している証だから。会社という組織の中では、うかつな発言で揚げ足を取られないように警戒するに越したことはない。
「このまま続けるしかないじゃないですか。人の噂も75日といいますし、黙って耐えるしかないでしょう。言い訳すればするほど噂は続くし。我々は黙って、結果を出し続けるしかないんですよ」思いがけない回答だったのか、松江は泣きそうな顔になった。森野の言葉は優しい。厳しいことを言っているようで、松江を激励している。日頃の森野に対する松江の態度を思えば、信じられないほどやさしい言葉だ。
「そうですね。あの子は私より勇気がある。自分の才能の限界と戦う覚悟があるんだから」父親は噛みしめるように言う。
Posted by ブクログ
書店ガール第5巻では、取手駅構内の書店の店長になった彩加と、ライトノベル担当になった小幡伸光の奮闘が描かれている。
彩加は、当初、駅中書店で売り上げが伸びないことに苦慮していたが、途中からは思い切ってバイトの意見を聞き入れ、ライトノベルなど若者向けの棚作りに変えた。その頃から客も増え、バイトたちの結束も強まる。そして、バイトの1人、田中君が、実はライトノベルの新人賞を受賞した期待の新人作家だと判明する。
一方の小幡はラノベの編集室長となるも、新人賞受賞者の受賞辞退や担当編集者と作家のトラブルなど、様々な課題を抱えるなか、新人作家の出版のために奔走する。
そして、作家との打ち合わせのために訪れた取手で彩加と会い、作家が彩加の店のバイトだと知り、一緒に彼の作品を売ろうとする。
オタクで家族とうまくいっていなかった田中が、受賞を機に
家族とわかり合えるようになるシーンはジンときた。