あらすじ
会長室の調査により、次々と明るみに出る不正と乱脈。国民航空は、いまや人の貌をした魑魅魍魎(ちみもうりょう)に食いつくされつつあった。会長の国見と恩地はひるまず闘いをつづけるが、政・官・財が癒着する利権の闇は、あまりに深く巧妙に張りめぐらされていた。不正疑惑は閣議決定により闇に葬られ、国見は突如更迭される――。勇気とは、そして良心とは何かを問う壮大なドラマ、いよいよ完結へ!
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Posted by ブクログ
読み終えてから、どんよりとした読後感に覆われてうまく言葉にできず、しばらく感想を書くことができなかった。
最終巻でスカッとする展開を期待していたからだと思う。
この物語の背後にあるものの大きさに圧倒され、どう受け止めればいいのか戸惑う。
それが現実なんだと思うとさらに辛い。
信念を曲げずに生きる恩地と、組織の中でどう動くべきかを見極めながら戦略的に立ち回る行天の対照的な二人。
個人的には、恩地よりも行天の方が気になる存在だった。なぜ行天が気になるのか。
読み終えてからもずっと、ふとした時に考えていてやっと気づいた。
恩地はどこまでも真っ直ぐで、その信念もわかりやすい。
一方で行天は、本心がどこにあるのか最後まで掴みきれなかった。
はじめは恩地と同じ志を持っていたはずなのに、組織の中で生きるうちに少しずつ変わっていったようにも見える。
それが彼の本心なのか、それとも流されてしまった結果なのか。
気になってもう一度最初からざっと読み返してみたけど、私が読み飛ばしたのか、やはりはっきりとは掴めなかった。
私にはなんとなく、行天は根っからの悪人には思えなかった。
恩地と行天、二人の歩んだ道をたどりながら、どうすれば良かったのか考えてしまう。
全てを語らず、読者に委ねる余韻が残されている。
物語の中で描かれる現実の重さや、個人ではどうにもできない状況に、やりきれなさが残る。
それでも、この物語が問いかけてくるものを考え続けることに、意味があるように感じた。
Audibleにて。
Posted by ブクログ
背帯の文言
「この国を覆う、おそるべき良心の不在。恩地元最後の闘い」
今回も読んでいて、腹がたった。
国民航空、関連会社「国航開発」の政・官・財界との癒着、私腹を肥やす利権等、魑魅魍魎が蔓延するデタラメぶりがあまりにひどい。
この物語が単なるフィクションであるなら、腹も立たないだろうが、登場人物の氏名は実在の人物の名前をもじったもので、実在する人物だからだ。
ここで登場する自由党の竹丸副総理など、政界のドンとして君臨し、汚職事件で逮捕されたあの人だ。
現在も政治家の金権体質は、あいも変わらず変わらない。
本書で、架空の人物である、常務にまで成った行天四郎の行動がひどい。
客室乗務員と社内不倫をするわ、運輸省航空局の官僚に、その愛人とのマンションを提供するわ、そのなりふり構わない行動は人間としてどうかとおもう。
『行天四郎』は国民航空に於いて、利権に群がる魑魅魍魎を具現化した人物なのだろう。
本巻では、地検から呼び出しを喰らう所で終わっている。
国航開発の社長である岩合は、「岩合天皇」と呼ばれていた。その放漫経営により、私腹を肥やしていたが、ついに解任された。ここだけはスッとした。
最後に会長の国見は解任。
恩地は再び、ナイロビ支店長赴任を命ぜられ、本意ではないが、ナイロビへと向かう、残念な結果となっている。
最後に作者の『あとがき』で、山崎豊子が述べている。
「今回は非常に勇気と忍耐のいる仕事であったが、その許されざる不条理に立ち向かい、それを書き遺すことは、現在を生きる作家の使命だと思った」
偉大な作家の、この『あとがき』は重い。