あらすじ
会長室の調査により、次々と明るみに出る不正と乱脈。国民航空は、いまや人の貌をした魑魅魍魎(ちみもうりょう)に食いつくされつつあった。会長の国見と恩地はひるまず闘いをつづけるが、政・官・財が癒着する利権の闇は、あまりに深く巧妙に張りめぐらされていた。不正疑惑は閣議決定により闇に葬られ、国見は突如更迭される――。勇気とは、そして良心とは何かを問う壮大なドラマ、いよいよ完結へ!
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Posted by ブクログ
背帯の文言
「この国を覆う、おそるべき良心の不在。恩地元最後の闘い」
今回も読んでいて、腹がたった。
国民航空、関連会社「国航開発」の政・官・財界との癒着、私腹を肥やす利権等、魑魅魍魎が蔓延するデタラメぶりがあまりにひどい。
この物語が単なるフィクションであるなら、腹も立たないだろうが、登場人物の氏名は実在の人物の名前をもじったもので、実在する人物だからだ。
ここで登場する自由党の竹丸副総理など、政界のドンとして君臨し、汚職事件で逮捕されたあの人だ。
現在も政治家の金権体質は、あいも変わらず変わらない。
本書で、架空の人物である、常務にまで成った行天四郎の行動がひどい。
客室乗務員と社内不倫をするわ、運輸省航空局の官僚に、その愛人とのマンションを提供するわ、そのなりふり構わない行動は人間としてどうかとおもう。
『行天四郎』は国民航空に於いて、利権に群がる魑魅魍魎を具現化した人物なのだろう。
本巻では、地検から呼び出しを喰らう所で終わっている。
国航開発の社長である岩合は、「岩合天皇」と呼ばれていた。その放漫経営により、私腹を肥やしていたが、ついに解任された。ここだけはスッとした。
最後に会長の国見は解任。
恩地は再び、ナイロビ支店長赴任を命ぜられ、本意ではないが、ナイロビへと向かう、残念な結果となっている。
最後に作者の『あとがき』で、山崎豊子が述べている。
「今回は非常に勇気と忍耐のいる仕事であったが、その許されざる不条理に立ち向かい、それを書き遺すことは、現在を生きる作家の使命だと思った」
偉大な作家の、この『あとがき』は重い。