あらすじ
20世紀アメリカが生んだ鬼才、幻想と怪奇の作家、ラヴクラフト。彼の想像力の産物であり彼自ら病的なまでに憑かれていたクトゥルフ神話が怪しく息づく代表作「インスマウスの影」と「闇に囁くもの」。デラポーア家の血筋にまつわる恐るべき秘密を描いた「壁のなかの鼠」、彼の知られざる一面を垣間見せる異色作、ブラックユーモアの「死体安置所にて」の全4編を収録。深遠な大宇宙の魔神の呼び声が、読者を太古の昔から永劫の未来につづく暗黒世界のとりこにすることはまちがいない。
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Posted by ブクログ
①インスマスの影
好奇心から怪奇な伝承が伝わる街を訪れてみたわたしは、そこで恐ろしい話を聞かされて――。
終盤で回収される伏線とメリーバッドなエンドに、普通のホラーにはない哀愁を感じた。異形を単なる敵やモンスターとして描写しない点がラヴクラフトらしさ。
②壁の中の鼠
かつて陰惨な事件が起きた館を引き取り改修した、その犯人の子孫に当たるわたし。飼い猫がしきりに壁の奥を気にすることから、息子の友人らと共に探索に出かけると――。
這い寄る混沌の名が出ることから、これも神話の一端になるのか。終盤、流れで一気に読み終えると、その不条理な結末に二度読みしてしまった。
③死体安置所にて
葬儀屋だった男が仕事を畳むことになった、ある災難とは――?
世にも奇妙な物語的というか、典型的な因果応報譚というか、ブラックユーモアな感がある。
④闇に囁くもの
洪水が発生した地で見つかった奇妙な生物の死骸。それについての寄稿文を書いたわたしに手紙が届く。写真やレコードなどの資料と共に手紙をやり取りしていたが、手紙の主はやがて身の危険を訴えるようになり――。
後年の作品なので、名前だけだが神話生物が多数登場する。手紙のやり取りだけで読む者に恐怖をじわじわと感じさせる手法はさすが。
そして最後の一文にはゾクリとさせられた。手紙の主ははたしてどうなったのか。
Posted by ブクログ
クトゥルフ神話TRPGが好きで、手を出してみた。インスマウスの影から、あのクトゥルフの世界独特の不気味さと、好奇心が擽られる展開(TRPGの探索って感じ)で好き。
BADENDな落ちも好き。
"インスマウスの影"、"壁の中の鼠"、"闇に囁くもの"は名状しがたい生物が色々出てきて面白い。
"闇に囁くもの"は、内容も一転してるしタイプだし都合のいいこと書いてあるし、捨てろって言われてたテープを持ってこいだとか、不自然すぎて悪魔の誘いとしか思えず。行ったところで、彼の周囲から腐臭がしたり、声を出しても口元の動きが髭で見えない、椅子から一切動かない、怪しすぎる笑
痺れを感じたコーヒーは、飲み干していたら死んでいたのだろうか?
だから〆はやっぱりな、という感想。
"死体安置所にて"は、異常な話ではあるがゾンビなので人間の怖い話。生前は復讐しなくちゃ気が済まない性分の、世間から嫌われていた男だったが、主人公がケチって小さい棺桶に入れるため両足を折ったら、遺体であるにも関わらず、主人公の足首をあちこち切る復讐をした。
Posted by ブクログ
クトゥルフ神話の原典。古典ホラーで、典型的だけど印象深い仕組みのものが多かった。現代のスプラッタや人間の醜さ系の惨い強さとは違うので、安心して楽しめるタイプのホラーだと感じた。
TRPGで有名な、「イア、イア、クトゥルフ、フタグン!」などのクトゥルフへの祈祷文も登場する「インスマウスの影」の最後が好き。
Posted by ブクログ
「インスマウスの影」:旅行のさなかに訪れたインスマウスというさびれた町。その町では魚顔をした人々とその嫌なにおいが充満している。このような街の雰囲気作りや人々の描写・人知を超えた生物の描写など
はさすが、コズミックホラーの第一人者であった。
そして、オチとして、訪れた主人公自体がインスマウスの人物の血統であったというのも面白かった。
この物語の背景に筆者の自身の血統に対する嫌悪感や有色人種に対する偏見があるというのを読んだが、それがありありと感じられた。
「闇に囁くもの」:地球外生命体が地球に降り立ち、自身の目的を達成するために活動を続けており、その活動を妨げる物には容赦をしないというホラー。地球外生命体というと怪獣みたいなのを想像してしまい、あまり怖くかんじないのは、私が穢れや場が呪われる、といったホラー小説を読みすぎのせいなのでだろうか。