岸美光のレビュー一覧

  • ヴェネツィアに死す
    新訳シリーズということで読みやすさを期待して開いたが、翻訳文学を読み慣れた人でないと疲れるかも。映画を知っていれば楽しめると思う。映画の描写のように、何か常に劇的なことが起こる物語ではないので、夜、眠りにつく前に読むと、心地よい。
    クリエイターや表現者、美を好む人の心に響く作品。美しい死にざまの一つ...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    「ベニスに死す」というタイトルの映画としても知られている作品。(原作)

    初老の主人公・アッシェンバッハは、若いうちから才能を発揮した威厳ある作家であり、長年仕事一筋だった。
    そんな彼は、旅先のヴェネツィアで美しい少年・タッジオに出会い、少しずつ変わっていく。

    アッシェンバッハはタッジオを宿泊先の...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    同性愛の要素はあるけれども、
    決して露骨なものではなく、
    美の象徴、といった感じのもの。

    その時代ではピークを過ぎた作家が
    出会うことになった輝ける存在。
    その魔力ゆえに、彼は彼が感じえていた
    動物的勘を鈍らせて、結局は最悪の
    事態を招いてしまいます。

    人は誰しもがこういった危険をはらむもの。
    ...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    懸命な仕事ぶりで多大な業績をあげた初老の芸術家が、保養先で美少年に出会い、恋に落ちていく様子を描く。それまでの人生からすればまるで逆の生き方、すなわち欲望のままに生き、堕落して行くさまはデカダンスと言えるが、一方で人間らしくまっすぐな生き方であるとも言える。一貫してゆったりとした調子で物語は進んでい...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    映画のイメージがどうしても先に立ってしまうけれど、非常に面白かった。アッシェンバッハは幸せに死んでいったのだなと思う
  • ヴェネツィアに死す
    ヴェニスではなくてヴェネツィアに死す。そんなところまで現代的な訳なのがちょっとだけおかしい。
    話の中身は単純というか、タイトルで語り尽くされている。アッシェンバッハ老がヴェネツィアにやってくること、老いらくの恋のためにその地を去ることができずに死を迎えること。そんなに単純なのに人を惹きつけてやまない...続きを読む
  • だまされた女/すげかえられた首
    だまされた女、という題名と、裏表紙の説明から
    初老の女性が、若い男性に骨抜きにされて社会的に、そして金銭面でだまされるのだと思っていたら違っていた。彼女が愛していた自然に裏切られたんだと分かった時には思わず声をもらしました。なるほど、そういう事だったんだ・・・。

    すげかえられた首、二人の男と女が出...続きを読む
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(下)
    そのとらえどころない美を掴もうとする言葉の奔流は僕の琴線に触れた。
    詐欺師クルルが自分の世界漫遊見聞を饒舌に語るという、トーマス・マンが生涯書き綴って、結局第一部しか完成しなかった作品。
    だけど、神は細部に宿る。
    読んでいるこちらもオイオイと思う程の饒舌な語りから立ち表れるのは、愛について、生命につ...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    だいぶ前に読んだので,詳しくは覚えていません。
    もう一度読み直したら、書き直します。

    トーマスマンで読んだ記憶があるのはこの本だけかも。
  • ヴェネツィアに死す
    情景描写がとにかく綺麗。目に浮かぶ景色だけで癒される。好き。心情描写も綺麗で癒される。とにかく作品全体が癒し。
  • ヴェネツィアに死す
    トーマス・マンの傑作。
    20代の頃は、若者に恋する年寄りって、身の程知らずだし醜いよなぁと思っていたけど、30代になって、少し気持ちがわかる。
    若い身体、美しさってそれだけですごく輝いていて(まじで光輝いてる)、眩しくて、憧れてしまうし、自分の若い時代を振り返り、みすみす無駄にしたと悔やんでしまうも...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    人生で一番難しい本な気がする……
    正直途中わけわからんくなりながら、ページ進めてた(´・ω・`)
    しかし、トーマス・マン研究の方の授業で『魔の山』のレポートを一ページも読まずに書いて提出した自分を思い出してしまい、若いとは何と恥知らずで痛々しいことか……(人生で一番反省してます)
  • ヴェネツィアに死す
    主人公が予想の100倍ぐらいキモくて最高!勝手に「ロリータ」のような雰囲気の作品だと思い込んでいたがそんなことはなかった。主人公は完璧なる美の体現者たる異国の少年への一方的な愛に身を焦がし、会話さえすることなく街をさ迷って死んでいく。そこにギリシア神話、歪な登場人物、病んだヴェネツィアの空気といった...続きを読む
  • だまされた女/すげかえられた首
    「女」しゃがんだ時にズボンとシャツの間から肌が見える現象をセクシーと捉えるのか、だらしないと捉えるのか。イケメンが俺と同じ事言っても、俺はセクハラで向こうはカッコいいとかお前ら言うんだろー?とか、なんかそういう厳しさね。岩山ですっころぶよりも、膝に来る。
    「首」インド神話。ツマブキさとしと中村シドウ...続きを読む
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(下)
    ユングやアーレントなど、ドイツ語圏の本を読んでいるうちに、なんとなくトーマス・マンにたどりつく。

    マンは、北杜夫経由で読み出して、高校時代にハマっていたのだが、だんだん重厚長大な感じに疲れて、長らく遠ざかっていた。

    光文社ででているエロス3部作?(「ベニスに死す」「だまされた女/すげかえられた首...続きを読む
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(上)
    幼少時から生来の美貌と感受性で人に取り入り、とある貴族の子息に成りすまして世界中を漫遊した詐欺師クルルの半生…のはずなのだが、しかし、小説はクルルが出発地であるリスボンをようやく出発しようかというところで未完に終わる。もっとも、マンがこの小説を書き始めたのが35歳、その後、中断と再開を繰り返しながら...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    【本の内容】
    高名な老作家グスタフ・アッシェンバッハは、ミュンヘンからヴェネツィアへと旅立つ。

    美しくも豪壮なリド島のホテルに滞在するうち、ポーランド人の家族に出会ったアッシェンバッハは、一家の美しい少年タッジオにつよく惹かれていく。

    おりしも当地にはコレラの嵐が吹き荒れて…。

    [ 目次 ]
    ...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    面白みのある作品ではないが、魅力的である。美少年に対する想いが延々と綴られるので、若干人を選ぶ本ではある。映画のほうが良いかもしれない。訳者別に読み比べる価値はある。
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(下)
    マンが生涯通して書き、遂に完成しないままとなった作品。

    タイトルの通り、フェーリクス・クルルの独白形式の本で、序盤の幼少期の回想は多少読み進めづらい。それでも中盤以降にある、パリ・リスボンの街並みやそこでの人々をクルルの視点で観察・分析しているところなどは、具体的かつ詩的で読んでいてとても惹かれる...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    濃厚な死の気配。
    老作家、アッシェンバッハを魅了して止まなかった青白い顔をした美少年タッジオ。彼は、性別や生死をも超越したような存在に思えた。