岸美光のレビュー一覧

  • だまされた女/すげかえられた首

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    初ドイツ文学、ずっと読みたかったトーマス・マン完読。

    言葉にならないこの衝撃。
    「だまされた女」は、初老の未亡人が若い男性に激しく恋焦がれる話。未亡人がその娘に自身の恋心を告白する場面が圧巻。そして衝撃のラスト。「だまされた女」ってそういうこと!?と想像を絶する展開に一気読み。
    「すげかえられた首」は、優れた頭脳を持つ青年と見事な肉体を持つ青年、美しい女性の3人が織りなす物語。2人の青年の首と体が入れ替わるというあり得ないストーリーなのだけど、生々しい愛欲の表現が見事すぎてこれまた一気読み。こちらも、そうなる!?という衝撃のラスト。

    意味がわからず退屈な場面がちょこちょこあって時々停滞する

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    2025年09月20日
  • ヴェネツィアに死す

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    ネタバレ

    新訳シリーズということで読みやすさを期待して開いたが、翻訳文学を読み慣れた人でないと疲れるかも。映画を知っていれば楽しめると思う。映画の描写のように、何か常に劇的なことが起こる物語ではないので、夜、眠りにつく前に読むと、心地よい。
    クリエイターや表現者、美を好む人の心に響く作品。美しい死にざまの一つだと思う。

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    2023年12月05日
  • ヴェネツィアに死す

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    ネタバレ

    「ベニスに死す」というタイトルの映画としても知られている作品。(原作)

    初老の主人公・アッシェンバッハは、若いうちから才能を発揮した威厳ある作家であり、長年仕事一筋だった。
    そんな彼は、旅先のヴェネツィアで美しい少年・タッジオに出会い、少しずつ変わっていく。

    アッシェンバッハはタッジオを宿泊先のホテルで見かけるたびに、その美しさを褒めたたえていた。
    それはだんだんエスカレートし、神を想うような言葉でタッジオを礼讃していく。

    ただ目が合うだけの存在。
    互いのことは知っているのに、わざとそうしているかのようにそっけなくし、言葉を交わさない。
    そんな微妙な関係が続く中で、タッジオはアッシェンバ

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    2022年04月21日
  • ヴェネツィアに死す

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    ネタバレ

    同性愛の要素はあるけれども、
    決して露骨なものではなく、
    美の象徴、といった感じのもの。

    その時代ではピークを過ぎた作家が
    出会うことになった輝ける存在。
    その魔力ゆえに、彼は彼が感じえていた
    動物的勘を鈍らせて、結局は最悪の
    事態を招いてしまいます。

    人は誰しもがこういった危険をはらむもの。
    こういった例ではないにしろ、
    いつ、どういったことで、「どうしてこうなった」
    になることか。

    だけれども、最悪の事態と引き換えに、
    堪能できた一時の夢は、美しいものでした。

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    2014年07月12日
  • ヴェネツィアに死す

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    懸命な仕事ぶりで多大な業績をあげた初老の芸術家が、保養先で美少年に出会い、恋に落ちていく様子を描く。それまでの人生からすればまるで逆の生き方、すなわち欲望のままに生き、堕落して行くさまはデカダンスと言えるが、一方で人間らしくまっすぐな生き方であるとも言える。一貫してゆったりとした調子で物語は進んでいくが、その結末はあまりにも甘く、悲しい。

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    2013年10月30日
  • ヴェネツィアに死す

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    ネタバレ

    映画のイメージがどうしても先に立ってしまうけれど、非常に面白かった。アッシェンバッハは幸せに死んでいったのだなと思う

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    2013年02月23日
  • ヴェネツィアに死す

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    ネタバレ

    ヴェニスではなくてヴェネツィアに死す。そんなところまで現代的な訳なのがちょっとだけおかしい。
    話の中身は単純というか、タイトルで語り尽くされている。アッシェンバッハ老がヴェネツィアにやってくること、老いらくの恋のためにその地を去ることができずに死を迎えること。そんなに単純なのに人を惹きつけてやまないのは、そんな話の古典であるからこそ。
    中編ということもあって、岩波でもそんなに読みにくいわけではなかったが、現代語訳をウリにしているだけあって、読みやすさはひとしお。そんなこともあって星は文句なしの5つ。

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    2012年07月21日
  • だまされた女/すげかえられた首

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    だまされた女、という題名と、裏表紙の説明から
    初老の女性が、若い男性に骨抜きにされて社会的に、そして金銭面でだまされるのだと思っていたら違っていた。彼女が愛していた自然に裏切られたんだと分かった時には思わず声をもらしました。なるほど、そういう事だったんだ・・・。

    すげかえられた首、二人の男と女が出てくるという事で、今度こそ女が騙されて首をはねられ、首と身体を男二人がわけて愛でるのかなと思っていたら違っていました。
    この話は・・・なんていうか、シーターの我儘さが際立っていたような気がします。二人の男の友情の熱さに緩和されそうになっているけれど、なんて酷い女なんだ。

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    2012年03月16日
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(下)

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    そのとらえどころない美を掴もうとする言葉の奔流は僕の琴線に触れた。
    詐欺師クルルが自分の世界漫遊見聞を饒舌に語るという、トーマス・マンが生涯書き綴って、結局第一部しか完成しなかった作品。
    だけど、神は細部に宿る。
    読んでいるこちらもオイオイと思う程の饒舌な語りから立ち表れるのは、愛について、生命について、宇宙について、美について、要するに「はかなさ」。クルルや登場人物たちの言葉や仕草、社会や風景等々の描写は、それを批評するためにあるのでは無く、細部に美を感じるためにある。

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    2012年02月06日
  • ヴェネツィアに死す

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    だいぶ前に読んだので,詳しくは覚えていません。
    もう一度読み直したら、書き直します。

    トーマスマンで読んだ記憶があるのはこの本だけかも。

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    2011年12月20日
  • ヴェネツィアに死す

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    ネタバレ

    理性の象徴のように尊敬されてきた人物が、実は俗物としての本性を抱えていたことが見える。彼は少年に対する自分の感情を一般的な好意と思い込み、老いらくの恋であることを自覚していない。このような孤独な人間ほど現実逃避に走りやすく、進展しない関係性に勝手に舞い上がってしまうものだ。コレラにかかり死ぬ間際でさえ、美しい少年に思いを馳せていた。最後に情熱を注げる相手に出会えたことは本人にとっては幸運だったのかもしれない。交流を避けたことで幻滅することなく、理想像にしたてあげ、勝手に死んだので、結末としては十分だ。恋は叶わないからこそ永遠であり、少年と関わらないことで美しく終える。

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    2025年09月30日
  • ヴェネツィアに死す

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    情景描写がとにかく綺麗。目に浮かぶ景色だけで癒される。好き。心情描写も綺麗で癒される。とにかく作品全体が癒し。

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    2022年06月22日
  • ヴェネツィアに死す

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    トーマス・マンの傑作。
    20代の頃は、若者に恋する年寄りって、身の程知らずだし醜いよなぁと思っていたけど、30代になって、少し気持ちがわかる。
    若い身体、美しさってそれだけですごく輝いていて(まじで光輝いてる)、眩しくて、憧れてしまうし、自分の若い時代を振り返り、みすみす無駄にしたと悔やんでしまうものだ。

    きっともっとしわくちゃになれば、更に思うのだろう。

    最近、老いを受け入れる等の考えが急に増えているし、30代でも若いと言われ、公共交通機関を見渡すと、確かに40代以上ばかりで、さすが高齢化社会だと思うことも多いが、反面トルコに行って、若い人の多さに驚いた。
    若い、というだけでエネルギーが

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    2021年12月12日
  • ヴェネツィアに死す

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    人生で一番難しい本な気がする……
    正直途中わけわからんくなりながら、ページ進めてた(´・ω・`)
    しかし、トーマス・マン研究の方の授業で『魔の山』のレポートを一ページも読まずに書いて提出した自分を思い出してしまい、若いとは何と恥知らずで痛々しいことか……(人生で一番反省してます)

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    2020年07月01日
  • ヴェネツィアに死す

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    ネタバレ

    主人公が予想の100倍ぐらいキモくて最高!勝手に「ロリータ」のような雰囲気の作品だと思い込んでいたがそんなことはなかった。主人公は完璧なる美の体現者たる異国の少年への一方的な愛に身を焦がし、会話さえすることなく街をさ迷って死んでいく。そこにギリシア神話、歪な登場人物、病んだヴェネツィアの空気といった様々なモチーフが混じりあって迷宮的な読み心地を演出している。予想を裏切る面白さでした。

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    2020年01月23日
  • だまされた女/すげかえられた首

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    「女」しゃがんだ時にズボンとシャツの間から肌が見える現象をセクシーと捉えるのか、だらしないと捉えるのか。イケメンが俺と同じ事言っても、俺はセクハラで向こうはカッコいいとかお前ら言うんだろー?とか、なんかそういう厳しさね。岩山ですっころぶよりも、膝に来る。
    「首」インド神話。ツマブキさとしと中村シドウは旅に出ました。途中一目惚れしたのでサトシは竹内ユウコと言う娘と結婚しました。ゆうこの実家に3人で挨拶に行く際に、サトシは急にお参りしたくなりました。その理由は。。。こっちも世の中キビシイなあ。

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    2018年08月16日
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(下)

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    ユングやアーレントなど、ドイツ語圏の本を読んでいるうちに、なんとなくトーマス・マンにたどりつく。

    マンは、北杜夫経由で読み出して、高校時代にハマっていたのだが、だんだん重厚長大な感じに疲れて、長らく遠ざかっていた。

    光文社ででているエロス3部作?(「ベニスに死す」「だまされた女/すげかえられた首」)が面白くて、その勢いで「詐欺師フェリークス・クルルの告白」に進む。

    こちらも、なんだかエロスな話しで、面白いです。マンの重厚長大、質実剛健なイメージがかなり書き替えられたな。

    この小説は、1910年に構想され、書き始めるのだけど、別の作品のアイディアがでてくると、執筆がとまり、落ちついたらま

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    2017年05月01日
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(上)

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    幼少時から生来の美貌と感受性で人に取り入り、とある貴族の子息に成りすまして世界中を漫遊した詐欺師クルルの半生…のはずなのだが、しかし、小説はクルルが出発地であるリスボンをようやく出発しようかというところで未完に終わる。もっとも、マンがこの小説を書き始めたのが35歳、その後、中断と再開を繰り返しながら、この第一部を完成させたのが79歳だと言うのだから、物語が完結する見込みは全くなかった。マン自身も、第2部以降を書くつもりはなかったようだ。

    しかし、未完であることはこの小説の魅力を増しこそすれ、損なうことは全くない。むしろこの濃密さで世界中を旅されたら、とんでもない長編小説になってしまって、大変

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    2017年01月30日
  • ヴェネツィアに死す

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    ネタバレ

    【本の内容】
    高名な老作家グスタフ・アッシェンバッハは、ミュンヘンからヴェネツィアへと旅立つ。

    美しくも豪壮なリド島のホテルに滞在するうち、ポーランド人の家族に出会ったアッシェンバッハは、一家の美しい少年タッジオにつよく惹かれていく。

    おりしも当地にはコレラの嵐が吹き荒れて…。

    [ 目次 ]


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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ

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    2015年01月18日
  • ヴェネツィアに死す

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    面白みのある作品ではないが、魅力的である。美少年に対する想いが延々と綴られるので、若干人を選ぶ本ではある。映画のほうが良いかもしれない。訳者別に読み比べる価値はある。

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    2013年05月21日