渡辺邦夫のレビュー一覧
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ネタバレ素直な青年テアイテトスを相手に「知識とは何か」を問答する対話篇。この問いにテアイテトスとソクラテスは「知識とは知覚である」「知識とは真の考えである」「知識とは真の考えに説明規定が加わったものである」と3つの仮定を立てて検討するが、結局どれも否定されて終わるという久々にソクラテスらしい結末である。独自の親切丁寧な見出しに100ページ超の解説がついているが、それでも難解だった。テアイテトスくんが素直で前向きに議論についていく分、展開はスムーズなんだけど。特に最後の方の字母がどうとか、全体と全部の違いとかの辺りが解説を読んでも理解が怪しい。「ソフィスト」とテーマ的に繋がっているようなので、そちらも読
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Posted by ブクログ
ネタバレ今作のソクラテスは、美少年を前にしていつになく優しい。「徳は教えられるものなのか」というメノンの質問から始まって、「徳とは何なのか」という大本の定義の問いと行き来しながら、対話を続けていく。最初はメノンのいい加減な定義をいちいち正していたが、メノンの逆切れから「想起説」のお披露目へとつながっていくなど新しい展開もある。あと、解説が懇切丁寧で安心した。
徳とは何か、徳は教えられるか、という話は「プロタゴラス」でもあったが、やはりメノンの若さなのか、プロタゴラスの方が切り返しはうまかったし、論点によっては議論をより進められているように思う。ただ常にソクラテス主導で進む分、「メノン」のほうが話はすっ -
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「善」とは、単なる信条ではなく実際の行為であり、善いことを行為する事こそが善いことである。そしてその行為は、「性向」として、本人がそれを望むがゆえに積極的な態度で行われる必要がある。善きことを「適当な程度」に望む性向が「徳」。例えば、過剰な勇気は蛮勇であり、過少な勇気は臆病であるように。言ってみれば、徳は中庸と呼べる行き方、態度に関わる性向と言えるか。テキトーにやる、のでなく、適当を見極める、なので、非常に能動的かつ精神を働かせる形ではあるが。
個人的に興味深いのは、キリスト教が支配的になる以前は、こうしたバランスを取る事を良しとする生き方が称賛されていたのだ、ということ。アウレリウスの自省録