渡辺邦夫のレビュー一覧

  • メノン~徳(アレテー)について~

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    「徳は教えられるか」、それ以前に「徳とはそもそも何か」という問いに導かれて、
    それらの問いに答えることはできるのか、そのような問いにどうすれば多少なりとも答えられるか、という方法の問題にも話題がおよぶ。

    想起説、仮設の方法、行動における正しい思わく、など、色々な話題が出て来て面白かった。

    また、岩波版の先行訳と比べると、ソクラテスのモノローグとして対話篇を読むのではなく、ソクラテスが相手に合わせて話題や議論の進行に彩をつけている部分にまで注意をはらう近年の研究成果をふまえて、解説や訳文が作られている。
    そのため、先行訳とは読んだ時の印象が思った以上に変わったことに驚いた。

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    2022年06月16日
  • ニコマコス倫理学(下)

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    上巻では人柄に関す徳の話が続いたが、
    下巻では下記の内容でバラエティに富んでいる。
    6章「知的な徳」7章「欲望の問題」
    8~9章「愛について」10章「幸福論の結論」

    6章では魂自身の性向として
    「技術」「学問的知識」「思慮深さ」「知恵」「知性」
    の五つの性向に分けてそれぞれ解説している。
    正しい行動のためには「思慮深さ」が必要だが、
    「思慮深さ」は全てを支配下に置くわけではなく、
    各々の性向は別物であるという結論を出している。

    7章では抑制のなさと快楽を追及して、
    抑制の無い人の快楽には苦痛が伴うが、
    美しいものを愛したり、立派な行動をしたり、
    という快楽には苦痛が伴わないと結論を出してい

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    2020年06月27日
  • ニコマコス倫理学(上)

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    アリストテレス先生「幸せって何だっけ」の巻

    「幸せとは何か?」というテーマの講義だが、
    早々に「徳に基づいた魂の活動」と結論を出している。

    徳とはある性向における中間性のことであるとし、
    例えば「勇気」なら超過すると「向こう見ず」になり、
    不足すると「臆病」中間が「勇気」であるとしている。

    「向こう見ず」は勇気に似ているが、
    必要の無い時は勇敢に振る舞い、
    本当に恐ろしいものに耐えられない。
    「勇気」は普段は穏やかだが、
    必要な時は恐れるべきものにも立ち向かう。
    「臆病」は恐れる必要の無いものでも恐れる。

    このように様々な性向に関して検証していっている。

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    2020年04月23日
  • ニコマコス倫理学(上)

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    光文社古典新訳文庫でもこれだけ難しいか。哲学を読み解く力が未熟だと感じた。個人的には全てを読む必要はないと感じた。

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    2025年02月08日
  • ニコマコス倫理学(下)

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    アリストテレスの説明の仕方は、当時の文化、価値観に即したものであるが、読んでいくと、「現代と一緒じゃん」となる価値観がほとんどだ。「人は愛するよりも愛されることの方が嬉しいと思っている」とか「友人こそ最も重要である」とか。

    「もっとも」と言う単語を多用しすぎている気がしていて、何が最も(1番)大切なのかが明確になっていない。加えて、少し説明が細かすぎて冗長でもある。本書は哲学本と言うよりは自己啓発本に近いのかなと感じており、もし哲学本だとするならば、相当読みやすいなと感じた。

    「アリストテレスもそう言ってた」という引用の仕方で、自分の主張の正しさを補強するのもありなのかもしれない。

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    2024年06月14日
  • ニコマコス倫理学(上)

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    批判を恐れずにいうならば、この本は「中間」が最も優れていることを丁寧に解説する本である。また、いくつかの徳(アレテー)が紹介されているのだが、その中でも最も素晴らしい徳は、正義の徳(アレテー)であると言う。それは、正義の徳だけが、自分だけでなく、他人に対しても適応されるからである。

    裁判や仲裁においても、その「中間」の美徳は採用されており、片方が一方に損害をもたらしたら、他方も同じ程度の損害を与えられることで、「中間」に戻すということだ。あらゆることがこの「中間」の考え方を適用できるのが興味深いところだった。

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    2024年06月12日
  • メノン~徳(アレテー)について~

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    徳は他人から教えられるものではない。最後には結局、徳とは何であるかという問いに戻る。人生において何が大切なのか気づきを得られた。

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    2024年05月26日
  • ニコマコス倫理学(上)

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    幸せを得る方法や、そのために必要なアレテーについて書かれている。
    この本は道徳の頂点にいると思う。価値観などのエッセンスが全て記載されている。多分、2割くらいしか理解出来ていないが、色々な本を読み進めたり、経験をする事で身になっていくのだろう。

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    2024年05月05日
  • ニコマコス倫理学(上)

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    ・アリストテレス先生の倫理学の講義を受けている気分になる。
    ・2300年前の人が書いた講義ノートを読み解くってすごい体験だな。
    ・「幸福とは何なのか」ではなくて、「幸福でいるためには何をするべきか」についての本だった。すごく実践的。
    ・ちょうど良いところを維持して、やるべきことをやる暮らしこそが幸福、っていう内容かなー。
    ・第五巻『正義について』が難しかった...。「不正」とかの用語のニュアンスがよく分からない。
    ・下巻もがんばろ。

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    2023年09月23日
  • メノン~徳(アレテー)について~

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    プラトン哲学のうち、初期に書かれた戯曲。「アレテーは教えられるか?」を問う若者メノンに対し、「そもそも自分はアレテーが何かすら知らない。よって、アレテーは教えられるかを知る由もない」とソクラテスが答える。メノンにアレテーとは何か問い、反駁し続ける事で、事物の本質を自分の頭で考え、「想起」する重要性を読者に説いているように感じる。

    この本を読み、自分の今までの学習はメノン寄りの考え、つまり川上から川下に水が流れるように、智慧者から教わるもの(正当化)に近しいものだったと感じる。プラトンはこれを否定し、生まれる前に人はあらゆる事を既に知っており、学習や経験によって想起する事が知であると解いている

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    2022年06月04日
  • ニコマコス倫理学(下)

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    幸福(エウダイモニア)に至るための知的なアレテーの解説含めた人柄のアレテーとの関係、そして社会的動物としての人間関係のあり方としての友愛(フィリア)と、人間の欲望を制御するための意志の持ち方をを踏まえたうえで「幸福とはどのような状態を指すのか?」を提示した著作。

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    2021年11月27日
  • メノン~徳(アレテー)について~

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    「プロタゴラス」で、ホメロスを引用して“2人で行けばどちらかが先に気付くことができる”と言っていてるのだけど、いいこと言うなあと思う。
    プロタゴラスに引き続きアレテーについての探究。誰もいなければ歴史の中での対話に参加することができると教えてくれたのはセネカなのだけど、プラトンのおかげ。彼らは無理強いもせず、置き去りにもせず、待ってくれる。

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    2021年07月18日
  • ニコマコス倫理学(上)

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    まず驚いたのは、これが紀元前に書かれた?ものであること。そして、倫理観や人生観について、紀元前も現代も大差がないことを実感した。特に第一巻から第三巻については、人格主義の重要性を唱えるコビー博士の7つの習慣の原型を感じた。
    人生におけるアレテー(徳)の重要性と中間性について、その価値観の洞察がすごいと思った。
    第一巻  幸福とは何か
    第二巻  人柄のアレテーの総論
    第三巻  アレテーの観点からみた行為ので構造、および勇気と節制のでアレテー
    第四巻  いくつかの人柄のアレテーの説明
    第五巻  正義について

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    2019年11月29日
  • ニコマコス倫理学(上)

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    昨年末に出たばかりの新訳と知り、興味をひかれ手に取った。翻訳は基本的に新しければ新しいほど良いと思っているが、それにしても本書の訳文は平易な言葉で書かれており、驚くほど読みやすい。訳注も、原語の意味や文脈によるニュアンスの違い、本文での訳し分けなどについて丁寧に解説されており、本文の理解にとても役立つものになっている。

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    2016年06月05日
  • メノン~徳(アレテー)について~

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    とても読みやすい訳でおもしろかった。

    「徳とは教えられるものか」をメノン、ソクラテスとアニュトスとのディアレクティケーにより探究していくもの。

    人間でなかった時から、正しい考えが内在しており、それが質問によって呼び起こされるという「起草」の概念が興味深い。

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    2014年07月21日
  • メノン~徳(アレテー)について~

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    齢50にして人生初プラトン
    何より光文社古典新訳文庫の大胆な試みと訳のわかりやすさに感謝。高い値段は再読の価値ありの判断で納得です。短い内容であっても1日でプラトンが読めるなんて凄いです~
    アレテー(徳)の考察は洞察に富み、過去の拙い認識を改めることができます。
    哲学の入門に最適な新訳と思います。

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    2012年08月18日
  • メノン~徳(アレテー)について~

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    プラトン(渡辺邦夫・訳)『メノン』、光文社古典新訳文庫。

    藤沢令夫訳も以前読んでいるけど、これはまたものすごく読みやすい。
    とくに「探求のパラドックス」に答える場面、
    メノンの召使いの少年が任意の正方形から
    二倍の面積の正方形を作図する方法を考える場面など、
    たぶん誰でもすいすい読めるはず
    (藤沢令夫先生の訳は、原文に忠実に訳すあまりカクカクしてた気がするけど)。

    徳とは何かを考えるというのが主旨の対話篇だけれど、
    むしろメノンの愛らしさのほうに心を惹かれる。
    ゴルギアスを師として弁論術を学び、
    ソクラテスに議論をふっかけるメノン。
    もちろん愚昧なアニュトスとつるみ、
    あるいは『アナバシス

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    2012年04月19日
  • メノン~徳(アレテー)について~

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     「徳は教えられるものではない。」ということを、メノンという青年との対話によって延々と証明していく話。すぐれた徳性をもつ世に知れた偉大な人物の息子は果たしてすぐれた人物になっているかというとどうもそういう例はないらしいということから、いわば帰納的に、徳は教えられるものではないということを論じていく。騎乗の技術、文章の技術、詩作の技術のための最上の教育を彼らに施したにもかかわらず、すぐれた徳をもった人物には至らなかった。もし徳というものが教えられるのであれば、優れた徳を持った父は、子にそれを受け継がせようとしない理由があるだろうか?いや断じてありはしない。にもかかわらず、教える教師がいないという

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    2012年02月27日
  • ニコマコス倫理学(下)

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    ネタバレ

    上巻は「人柄の徳」の説明で終わったが、下巻はもう一つの徳「知的な徳」の分類と説明から始まる。そして幸福と善に関連して愛や快楽の問題に取り組み、観想的な生活を称揚する結論で終わる。
    「究極の目的はそれぞれの事柄を理論的に考察して認識することではなく、むしろそれらの事柄を実践することなのである」とアリストテレスが述べているとおり、あくまで徳を実践することにこだわった内容になっていてすごく地に足がついている感じ。この印象は下巻でも一貫していた。しかし徳を身につける方法は全くお手軽なものではなく、幼少から習慣にして地道にコツコツ頑張るしかないというもので、自己啓発的な読み方を寄せ付けないところがある。

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    2024年07月09日
  • ニコマコス倫理学(上)

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    ネタバレ

    さすが光文社の古典新訳、とても読みやすくて解説も丁寧で助かった。
    アリストテレスは最高の善=幸福とは何か、と問いを立て、「徳に基づく魂の活動(徳を身につけ、優れた活動を行うこと)」と定義する。さらにそこから、徳とは何か、という問題に入っていくのである。徳を「知的な徳」と「人柄の徳」に二分し、「人柄の徳」を習慣によって身につく「中間性を示す選択を生む性向」であると定義して、実際の個々の徳がどんなふうに「中間性」を示しているのか考察していく(例えば、勇気は臆病と向こう見ずの中間である)ところまでが上巻。
    相変わらずひたすら分類と考察を繰り返していくことに終始していて、アリストテレスって感じがする。

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    2024年06月25日