中澤務のレビュー一覧
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やや毛色の違うプラトン対話篇。
他の対話篇とあわせて読むことで面白さが増すと思う。
大抵のプラトン対話篇では、劇中のソクラテスの言葉が執筆時のプラトンの思考に近いものとして受け取って読まれる。
だが、この『プロタゴラス』でもそうだとは単純には言えない。
「快は、その帰結などを考慮しなければ、それ自体としては善いものである」
「善い快と悪い快の区別はない」
「快苦の大小を現時点からの遠近などで惑わされず(いわば幾何学的に)計算する技術としての知識」
他の対話篇での記述と整合させるには一手間かけないといけないような、これらの記述があるからだ。
しかも、これらは「大衆が同意してくれるか」とい -
Posted by ブクログ
プラトン中期の作品。対話編
仲間内の宴の中でエロスについてそれぞれが賛美するという催しを始める。
アガトンのエロスについての賛美は現代の私たちの感覚からすれば退屈なものであるが、当時の弁論家たちの手法は音の響きの美しさなどで説得力を持たせたそうで、ギリシャ語で読めない以上はただ美しさだけを連ねて内容の無いものに見えてしまうのが残念だった。
少年愛について自己弁護的な賛美(当時社会的に妥当とされていなかった成人後にも関係を持つ行為を正当化するなど)をする者、喜劇作家アリストファネスのオレンジの片割れの由来となる神話など、それぞれの主張は当時の習慣や考え方を私たちに教えてくれる。
印象的だっ -
Posted by ブクログ
プラトンが、ソクラテスとプロタゴラスの対話を描いた本。
大いに繁栄していた紀元前5世紀のアテネ。これだけ抽象的、哲学的な対話がされていたというのは流石だなぁと、今更ながら思いました。
対話のテーマは、人間としての「徳(アレテー)」とは、人に教えることができるものなのか?というもの。
ソクラテスは「教えることはできない」立場、プロタゴラスは「教えることはできる」立場で対話が始まって、徳(アレテー)の性質について論じていたのですが…、最後は確かに意外な結末で終わってしまったなぁと感じました。読者にバトンを渡したってコトなのでしょうか。
文章は新訳のおかげで意外なほど読みやすく、ストレスに感じる箇 -
Posted by ブクログ
ソクラテスの弁がいかに凄まじいことがこのプロタゴラスでよくわかった。ソクラテスの弁明では、何かのテーマに対する実際の弁はなかったから。
ソクラテスとプロタゴラスとの対話が展開されていくのだが、読み進めていくと頭脳がが筋トレされてムキムキにバルクアップされていくような感覚になっていく。
一つ心に刻みたい事が語られていた。
それはソクラテスがある若者に忠告する言葉。
「君が体を大切に思っているのはわかる、しかし心はどうだろう?目に見えない知識や情報などは物よりはるかに危険が大きいのだよ。なぜなら心に一旦入ったら物と違い、突き返すことができないのだから」 -
Posted by ブクログ
初めてプラトンの本を読んだ。非常に平易。ソクラテスが相手との対話を通じて真実を明らかにしようという姿勢だったことはよく分かった。ただ初心者としては,ソクラテスが詭弁を弄して相手を論破しているだけのようにも思えたのも事実。
本の感想ではないが,2千年以上前の人が考えたことを本を通じて知ることができる,というのは凄いことだと改めて思った (勿論孔子とかにもいえます)。と同時に現在でも答えは出ていないと思うし,当時は現在ほど忙しくなくまた物質的にも豊かではなかったと思うので,逆に今以上によく考えられていたのでは,と思う。とすると寧ろ (なかなか哲学する時間や機運のない) 現在こそ古代の哲学に触れる