安岡治子のレビュー一覧

  • 貧しき人々

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    初めてのドストエフスキー。この年になるまで読んだことがなかったことに恥じる。ただただ圧倒。手紙だけのやり取りだけで、主人公である二人の感情の起伏状態、貧しくとも互いを労わり励まし続け、自分の周りの人達や状況を伝えあうのだか、その表現の豊かなこと‼︎ 娘が昔を回想して描く描写など、目の前にその風景が見えるよう。貧しくとも心まで貧しくならず、尊厳を保つことの美しさ。心を豊かにするのは決してお金ではなく、人の温情なのだという。

    訳者のあとがきより「人と人との繋がりが希薄になる現代こそもう一度読み直されるべき小説ではないか。」まさにそう思う。

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    2016年02月27日
  • 地下室の手記

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    新訳ではありますが、久々に手にしてみました。
    凄いですな、これは。
    主人公の倒錯の果ての自意識過剰・自己中心意識には憐れみを覚えると同時に読者(あるいは当方)自身の欺瞞を抉り出されているようで慄きを感じる。
    また、リーザの設定などヨーロッパを知っていればより深くこの本を味わえるんだろうと思いますな。
    それにしても「本を読んでいるみたい」とは痛烈な知識人(あるいは良心ぶる市民)批判、とにかく身を隠すばかりです、当方は、はい。

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    2014年02月10日
  • 地下室の手記

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    この手記の主人公の惨めな姿に、自らを重ね合わせてしまうのは私だけであろうか。
    この主人公は現代に特有の深刻な人間像の、1つのモデルになっていると思う。高度な知識人、教養人にありがちな、自意識の肥大化、その自意識と目の前の外界がうまく結合せず、自意識の中でもがき苦しむ人々。高等教育が普及した現代にこそ、書物や受け売りの知識で作り上げられた脳内が最上の世界と考える、このような人間が増殖しているのではないだろうか。

    高度に知識、教養が発達したからこそ、外界での人間関係が上手くいかず、もがき苦しんでいるのであろうか。主人公はあくまで、周りの人間が無条件に自らを蔑んでいるような述懐をしていたが、その実

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    2013年12月08日
  • 貧しき人々

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    暗い気持ちになりたくない方にはおすすめできません。
    社会の最下層で貧しくひもじい思いをしながらもお互いを手紙で励まし合う物語…とにかく救いがありません。

    カラマーゾフや罪と罰等の長編も良いですが、こちらの処女作もドストエフスキー好きとしては外せません。

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    2013年11月14日
  • 地下室の手記

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    とにかく陰鬱で何一つ上手くいかず、この世で1番くらいに捻くれた男の物語であり、読むのは大変だった。
    しかし、共感できる箇所、「もしかしてあの人に似てるのでは」と思う箇所が数々あった。自分の、人の、そして人生の普遍的などうしようもなさや苦しみを共有してくれてる本なんだと感じた。だから、こんなに世界的に有名で読まれてる本なのかな?と。

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    2025年11月16日
  • 貧しき人々

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    ネタバレ

    金持ちが気まぐれに差し出す金は慈善として高く評価され人々の心を打つが、貧乏人が必死に自分を削ってまで少しだけ金や物を与えても、感謝されることは少ない。主人公は見栄っぱりで、お茶にも入れなくていい砂糖を入れるタイプの初老男性。彼には大切な娘のように思っている親戚の女性と手紙のやりとりをして、己の貧しさを理解しながらも、一番大切なお金をその女性にこまごまと差し出していた。それは真心からくる優しさであり、彼女に優しい人間だと思われたいからだった。しかし、彼女はお金がない生活に耐えきれず結婚を決意してしまう。もう手紙のやりとりはできない。主人公らのささやかな友情も、最後には良い思い出の終着点としてしか

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    2025年09月13日
  • 貧しき人々

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    初ドストエフスキー。
    40代の老役人マカールと身寄りない娘ワーレンカの手紙のやり取りのみな作品。

    ドストエフスキー、これを24歳で書いてるの凄すぎてそこに感動したし、180年前の物語も今に通じるところがあるよね、貧困か〜。
    2人が困っているのはそうなんだけど、お互いがお互いにとってなによりの心の支えになっているのがよかった。支えがなければどうなっていたんだろうか(これからどうなるんだろう…)

    最後はまさに驚き!!
    訳者によるまえがき等とてもありがたい情報で読者に優しい作りなのもよい。
    他の作品も読んでみたいと思った。

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    2025年08月20日
  • 貧しき人々

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    ドストエフスキーの処女作。(1846年発表 日本は江戸時代 鎖国)

    中年男性マカール(下級役人)と孤児で病弱な娘ワルワーラの手紙のやりとり。書簡体小説は馴染みがなく(『あしながおじさん』ぐらい)、長い手紙にちょっとびっくり、かつ新鮮でした。

    2人共に、貧しく切羽詰まった生活の中、自分の全てをさらけ出して、思いのたけを表出していました。お互いがお互いを思う気持ちに溢れ、喜怒哀楽が切実に伝わり、せつなくなりました。一方で、年の差のある2人の強い心の結びつきは、純粋そのものでした。

    日常生活が不自由になるほど、物が買えない状況に、幸いにも私はなったことがありません。2人の立場に自分が置かれたら

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    2025年07月25日
  • 地下室の手記

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    4.0/5.0

    強烈に過剰な自意識と自己批判、そして世間に対する攻撃的な憎しみと諦観。
    あまりに絶望的な1人の男によってひたすら綴られる手記。

    世の中の矛盾や人の愚かさなど、共感する点もあれば、正直かなり難解に感じる部分も多かった。(特に第一部)

    この手記の書き手の男がどこか「自分は劣等生だ」ということをある種の誇りに思ってるようにも感じた。

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    2025年07月18日
  • 地下室の手記

    購入済み

    ロシアの文豪ドストエフスキーの隠れた名作。
    自身が投獄された経験をも反映した本作はなかなか真に迫るものがある。

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    2025年05月03日
  • 白夜/おかしな人間の夢

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    表題の『白夜』と『おかしな人間の夢』はよかった。他はそんなに。特に『おかしな人間の夢』はドスト氏の思想をわかりやすく表していると思う。長編の補助線になりそう。

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    2024年12月17日
  • オブローモフの夢

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    長編『オブローモフ』の中から、「オブローモフの夢」部分だけ独立させて文庫化。全編の抄訳付き。

    先行して発表されていた「オブローモフの夢」だけ独立して楽しむのも、発表順を考えれば問題ないだろうと。なるほどね。
    とにかくこの一篇は村の情景描写が素晴らしいです。彼のゆりかごだった村の様子がこれほど生き生きと描写されているとは。
    全編の抄訳と解説も充実で『オブローモフ』がどんな話かはざっくり理解もできるので、これで興味をもって長編へ挑むとっかかりにもなりそう。

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    2024年09月10日
  • 貧しき人々

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    『カラマーゾフの兄弟』、『罪と罰』を読んでからの『貧しき人々』なので、スラスラ読めてしまいました。
    読み進めるうちに、人間関係や街並みなどが気になるのと、交換されていた『ベールキン物語』を読みたくなるなど、ドストさんの世界観に感動です。
    ただ、最後は切ないです。少し泣きそうになりました。

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    2023年11月09日
  • 地下室の手記

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    俺は「平穏無事」を欲していたのだ。不慣れな「生きた生活」にすっかり押し潰されて、息をすることさえ、苦しくなってしまったのである。

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    2023年08月24日
  • 貧しき人々

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    3.8
    斬新な方法で書かれてて1800年代にもうこう言う手法を思いついてたんだと思うと、本が今でも読まれてるのが不思議 その当時はこうでもしないと売れないみたいな感じではなかったんだろうけど、それでもファンタジーやフィクションってやはり有限のもので型を変えていかないと飽きられてしまうのもneedles to sayだと思うからこの作品が令和の今刊行されたものなら頷けるけど1800年代にこれをやろうと思うのはドスエフはなるほど名のおける作家なのだなーと感嘆せざるを得ない!
    ストーリー自体がしっかりしたものだとは言い難いけど何も起きない貧乏人の文通のやりとりでよく飽きさせず読み進められる作品ができ

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    2023年08月16日
  • 地下室の手記

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    ドストエフスキーらしい文体、生々しさ、そして抉ってくる感じがとても良かった。自分もこういう人間じゃないか?と考えさせられ、ちょっとした不快感すら感じる。でもその「生々しい等身大の姿」をこうして文章で表現できてしまうのだから、ドストエフスキーは恐ろしいなとも感じる。

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    2022年11月29日
  • 白夜/おかしな人間の夢

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    初期の傑作短編でありドストエフスキーらしくない感傷的な作品である「白夜」と、『作家の日記』内から掌編を3つと、エッセイがひとつ収録されています。表題作の二作について、かんたんな感想を。ネタバレがありますので、ご注意を。

    「白夜」
    主人公の夢想家の26歳の男がある夜に、17歳の乙女ナースチェンカと出合う。その四夜の物語。現代のいまとなってはベタな話かもしれないけれど、よかったなあ。スタートが夢想家である主人公の夢想語りなので、これどうなるの? と心配したけれど、胸をついてくる切ないけどあたたかな読後感でした。ピュア・ラブです。頬を伝う涙ぶんのあたたかみ。純粋な愛は、自分の幸せよりも愛する人の幸

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    2022年11月25日
  • 白夜/おかしな人間の夢

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    ネタバレ

    「百姓のマレイ」がよかった。主人公がふと、子ども時代に、農奴のマレイに優しくしてもらったことを思い出す。身分も学歴も関係なく、徳のある人はいるんだということ。色眼鏡で見てはいけないということ。ドストの人に対する優しい視線が心地よい物語。
    一方で、ラストの「1864年のメモ」はよくわからない話だった・・・

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    2021年02月23日
  • 白夜/おかしな人間の夢

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    表題作である偶然出会った妄想青年と少女の恋愛物語が印象的。女のリアルスティックさと男のやせ我慢(ではないのだろうと思うけど)が感じられる。構成もすっきりしていて読みやすい。
    農夫の話ではドストエフスキーの過去作も出てきて面白かった。

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    2021年01月23日
  • 貧しき人々

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    ワルワーラの少女時代は、泣けるぐらい悲しい。
    マカールとワルワーラの手紙からは仲の良さ、と同時に不幸さ、生きづらさを感じる。
    ワルワーラの結婚相手は、ひどい癇癪持ちで、幸せになれないことが分かっている感じが、またさらに悲しい。

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    2021年01月04日