安岡治子のレビュー一覧
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下級役人マカールと天涯孤独な娘ワルワーラの書簡形式による貧乏物語でドストエフスキーの処女作。よく分からんがデビューから絶賛されたらしい。
ワルワーラの名前も手紙ではワーレンカばっかり言ってるので混乱してくる。
お互い貧乏になっていく過程よりも女に借金しても入れ込む心情は現代に通じるものがある。ただしマカールは粘着質的な内気者なので現代ならもっと悲惨な目にあう可能性あり。状況が好転したところでの急展開。ワーレンカの文面も変わるところがリアル。
ところどころ悲惨な死に様が出てくるところも印象深い。
さて解説ではこの話が架空の少女を作り上げたマカールの妄想話の可能性ありとしている。そうだとすると個人 -
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中年の文官と少女との、貧しい2人の文通。年齢的に釣り合わない組み合わせのきっかけはついぞ語られるとこなく、裕福ではあるがこれまた釣り合わない年齢の男との結婚で結末を迎える。解説でも想像しているが中年執筆家が架空の少女との文通をもうそう豊かに書いたとも思えなくもない。恋い焦がれる瑞々しいワルワーラと文官マカールは文通が付き合いの主体であまり会っていないようなのもなんだか不自然でもある。
中年文官も少女もどこまで落ちるのか激貧の一途を辿るところに嫌気が差し始めたところに一転して幸福が訪れつつ一挙にそして唐突な結末となり、何か慣性が働くような余韻がある。
ただ、中盤の暗さと停滞感は間延びしてストーリ -
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面白かったです。特に表題の『おかしな人間の夢』と『メモ』は、ドストエフスキーの作品を理解するために役に立つと思い、学生時代にやったみたいにメモをとりながら丁寧に読みました。『罪と罰』のラストを彷彿とさせる、とても奇妙な、そしてなにか真理を含んでいるように思わされる夢。大胆なキリスト教的信仰告白。彼の作中人物たちが、苦しみにのたうちまわり、傷付いて血を流し、発狂し、殺し殺され首を括りピストル自殺をし、あらゆる痛みを与えられながらも、ほんの数人がようやっと掴んだなにものかを、言葉にするとこうなるのでしょうか? いえ、結論を出すにはまだ早いと思います。これだけが答えではない、むしろこれは彼の思想の一
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とても他人事とは思えない、悲惨な物語でした。今この瞬間、一体どれほど多くの地下室の住人が、日本はもちろん世界中に存在するのでしょうか? 推測するに、インターネットの世界で見かける、異常に自己顕示欲が強くて無意味に悪意を振り撒く人々や、突然無関係の他人に襲い掛かるタイプの犯罪者達等は、この地下室の住人にあたるのではないかと思います。プライドだけは高いのに、現実には何事もできず、疎外され、嘲笑を浴び、傷付き果てて、対象のはっきりしない憎しみを抱いており、なんでもいいから復讐をしたい、恨みを晴らしたい、と思っている…。彼らのような人々は、一体どうすれば救われるのでしょう? 確かに、傲慢という点で彼ら
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ネタバレ今の気分になんてピッタリな小説なんでしょう。主人公は自意識過剰な引きこもり。今は中年なんだけど、若い頃の恥ずかしい話を敢えて手記に書いてみたりして。その気持わかるわかる、虚勢を張ってみたりオドオドしたり。いろいろと空回りして結局、<生きた生活>をするより、地下室にじっとして<平穏無事>でいるほうがいいんだってなる。
なんか、共感しすぎて恥ずかしいくらいでしたね。
そんなにズバズバと思ってること文章化されると、私も同じなんで恥ずかしいんですけど、と……。
最近、ドストエフスキーを読む若い人が増えているらしいけど、この本は今の時代に合うと思う。新訳のせいもあるだろうけれど、読みやすい。ロ -
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実に、実に久しぶりのドストエフスキーさん。
「罪と罰」「悪霊」「白痴」「貧しき人々」「虐げられた人々」「カラマーゾフの兄弟」。
以上の作品を新潮文庫で読んだのは、中学生か高校生のとき。もう25年くらい前のお話です。
そのときのことを正直に述べると、「良く判らん。でも、時折、恐ろしく面白い。そして、読み終わった時に、面白かった!と思った」。
それからずいぶん時間が経って。19世紀ロシアの事情とか、キリスト教、ロシア正教的なこととか、ロシアの貴族階級、社会制度のこととか。
そういうことが判らないと、ホントに隅から隅まで楽しめる訳がないんだな、と。
なんだけど、そういうのを差し引いても面白いから、 -
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僕が初めて『地下室の手記』に触れたのはこのヴァージョンでした。内容については亀山郁夫教授が訳したヴァージョンでさんざやったのであまり触れませんが、ここではエッセイ風に書いていることをご了承下さい。
僕が初めてドストエフスキーの『地下室の手記』をすべて読んだのがこのヴァージョンで、記録によると2009年のころになるそうです。内容や解説については先日書いた亀山訳のほうでやってしまったので、こちらではそのかかわりとをつれづれに書いていこうかなと、そんなことを考えております。
そもそも、この存在を知ったのは中学生のとき読んだ太宰治の『人間失格』の末尾に収録されている解説で、引き合いに出されて -
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カラマーゾフの兄弟を一年位前に読んで以来のドストエフスキー。
この『貧しき人々』はドストエフスキーの処女作といわれる。
それ故か、往復書簡という体裁をとっているためか、これまで読んできた罪と罰、死の家の記録に比べ断然読みやすい。
が、短編ということもあるためか、物足りなさを感じる。
下級の官吏と不幸な身の上の若い女性との往復書簡で話が進んでいく。
二人とも貧しく、世間から追いやられたようにひっそりと暮らしている。
これは、恋なのか、親子のような愛情なのか?
往復書簡ということもあり、二人の詳しい背景、関係性などがぼんやりとしかつかめない。
それでも、不幸に暮らす人々の生活、ささやかな幸せなど -
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正直私の読書力が低く、この本の面白さを完全には理解できていないと思います。特に独白部分は意味がわかっても頭に染み込まないように感じてしまいました。
ストーリーはかなりぶっ飛んでいて、主人公の行動や考えがかなり理解できません。しかし、時々共感する部分もあり、それはそれで心が辛かったです。
旧友達への酷い行動も意味わからないし、リーザに対して説教厨になる意味もわからなかったし、アポロンに強くあたる意味もわかりません。常に何かに不満があって爆発しそうな中でリーザに対してだけ自分の弱いところを見せてしまう失態も犯す人間臭すぎる男の訳のわからない話がとても面白かったです。
最後はリーザに金を握らせること -
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ドストエフスキーの処女作というだけで読む気がそそられます。
下級役人のおじさんのマカールと、ワルワーラという10代の娘の手紙のやりとりが綴られています。
当時のロシアの社会背景として、階級差による貧困が大きな問題となっていました。そのため、主人公であるこの2人も大変貧しく生活に困窮している様子が鮮明に手紙の中で書かれています。そういった中でもお互いが深い愛情を持ちながら支え合っていて「貧困」や「愛」というのが大きなテーマとしてある作品でした。
手紙と聞くと物静かで慎ましいような印象を受けがちですが、ほとんど会話のようなやり取りで、ビックリマークも多用されているぐらい感情表現が豊か。なので海外作 -
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貧しき人々
著:ドストエフスキー
訳:安岡 治子
紙版
光文社古典新訳文庫 Aト-1-10
ドストエフスキーの処女作です。
初老の下級官吏と、薄幸の女性との、手紙のやりとりの物語です
淡い恋というか、秘められた恋というか、当人同士だけで、手紙だけのやりとりで忍び合うとか
どうしても、ひんぱんに手紙でやりとりするということはだいぶ前の習慣なんでしょうか。
手紙を通じて、自分のこころに向き合い、好きな相手にどうつたえるか、思わず何かを伝え、それを後からおもって、もんもんとする。それを再び言葉にする。自分にとっては、とても高度なやりとりで、とてもできそうにもないと感じました。
時系列に、交互 -
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むき出しの自己愛。
むき出しのエゴ。
確かにこの男は嫌な奴で、そばにいてもらいたくない。
しかし、この男は、確かに私たちの中にいる。
この勝手さ。
この醜さ。
私たちは、この男を調教してコントロールして、社会生活を送っている。
そんな気がした。
地下室は、私たちが自分自身の中に作った檻なのだろう。
そして、私たちには、ときおり、どこか奥底からこの男の叫び声が聞こえてくる瞬間がある。
人によっては、この男をむき出しにして生きている部分がある。
綺麗な顔で、体裁を取り繕って生きているけれど、お前たちはこの男とどれほど違うというのだ?
と、見せつけられているような気もした。